三味線音楽について
初めに  平成11年6月に初めて三味線を手に取り、今日まで自分なりに取り組んできました。他のページをご覧になればなれば分かると思いますが、洋楽器一辺倒で過ごしてきた人間が40歳を過ぎて三味線を弾きこなしたい、ある程度本質に迫りたいと考えた人間の奮闘記です。私というフィルターを通して、現状の邦楽・邦楽器・業界を見て貰えたらと思います。特に平成14年から指導要領の大幅改定に伴い、学校現場(主に中学校)で邦楽器を扱うようになります。その辺も見つめながら、三味線の魅力に迫りたいと考えております。
購入動機及びジャンル
決定までのプロセス
 ある縁で三味線を触る機会に恵まれまして、初めて三味線独特の「さわり」なる物を実際に経験し、面白そうだなと思い、購入。しかし、その時に三味線の種類及び用途が分からず、「津軽三味線や民謡でない、色っぽい三味線音楽を目指す。」との考えから細棹ではないかと勝手に解釈し購入。後日、色っぽい三味線弾きを目指すべく、どうゆうジャンルが自分に適しているか決める為、CDショップへ探しに行きました。探しに行って愕然としたのは、あまり置いていないか、あっても民謡・長唄・地唄・端唄・都々逸等、私の知識ではどうにもならず、再度探しに行くことにしました。
 ようやく探し当てたのが、日本コロンビアCOCF-12612邦楽全曲集「三味線」というCDで、ジャケットは3本の三味線の写真が載っている物でした。演奏は長唄三味線(芳村伊十七)・義太夫三味線(鶴澤清治)・新内三味線(富士松菊三郎)の3氏によるそれぞれのジャンルにおける代表曲をまとめた物のようでした。
 この中で新内三味線だけが聞き慣れない名前だったので、興味深く聞いてみました。そして「新内流し」を聞いてこれだと思いました。他の曲も気にいったのはすべて富士松菊三郎氏の演奏でした。

 
間違いがあったらご指摘下さい。  本を読んだり、楽器屋さんに聞いたりして、勉強しておりますが、邦楽の場合、流派が多岐に分岐しております。特に三味線音楽の場合は顕著で、統括的に把握するのは難しいようです。ですから、ここでは素人の特権として、ある程度独断で言い切ってしまうことに致します。
 したがって、専門家の方にとっては間違っていると思われる部分もあるかと思います。しかし、私の経験では、三味線のお師匠さんで、歴史としての三味線・楽器としての三味線について、お弟子さんにきちんと教えられる方は少ないのではないでしょうか?それは師匠が悪いのではなく、三味線という楽器を理解するための適切な本が無いことと考えております。
 ここでは、分かり易くするために、簡単に記述してしまう部分があると思いますが、間違いと考えられることはご指摘いただければ、修正していきたいと考えております。
三味線の種類  楽器の区分けでいうと、細棹・中棹・太棹の3種類に区分けされます。ジャンルでいいますと、義太夫節・津軽三味線が太棹、長唄が細棹、残りが中棹(民謡・小唄・地唄・常磐津・清元・新内等)ということです。 
 私が買った三味線は細棹でした。え??
 また、お稽古用と演奏会用とに分かれており、演奏会用は棹の材質が紅木と呼ばれる堅い木材で作られています。この木は水に沈むほど密度が高く重い材で、日本には無い木材で、値段も高い。それで練習用に胴に使用される花林と同じ材で出来た物を使用するようです。10万円以下の三味線はこの材です。その次に紫檀材、そして紅木材という順番です。

 
  細棹
 「うた」用と呼ばれているものです。長唄や小唄で使用されています。
 胴も一番小ぶりでヒンのある音がします。


  中棹
 多くのジャンルで使用されています。私も「新内」で五厘大の胴の物を使用しています。

太棹は「義太夫節」(文楽)と津軽三味線で使用されています。元々、義太夫の三味線を手に入れた人が自己流で演奏していく内に、今の津軽三味線のスタイルが生まれてきたようです。
 また、太棹に対しての細棹であって、中棹というのはあくまで細棹の変形だという人や、棹の太さで分類するのは間違いで、音楽的に分類する方が良いという人もいます。が、この考え方をする人は実際に三味線を弾かない「楽理系」の人が多いのではと思います。
 実際に楽器を購入して、勉強するためには、こういった区分けは必要では・・・

胴の種類  胴の大きさも、ジャンルによって違います。細棹(長唄)の胴(横六寸五分19,7センチ強、縦五寸九分14,8センチ強)を基準にして五厘大・一分大・二分大というように大きくなってきます。(いずれも中棹)
 音色も小さく軽い胴ほどヒンのある音がして、大きくなれば重みのある音になってきます。新内では、五厘大もしくは一分大の物、地唄が大きく二分大の物を使用するようです。
左上が、地唄用の駒で水牛製です。中に鉛の2個仕込んであり、重くしてあります。これにより、かなり沈んだ音色となります。駒の高さは低めです。
 左下は小唄用の紅木の駒です。棹に使われている紅木材で出来ています。幅広で、駒の高さは高めです。左下は長唄用の駒です。一番、細く、薄く、高さも低めです。使用する糸も細いので、それに合わせてあります。
 右上が新内用に私が使用している駒です。邦楽器店に行って「新内」用の駒を求めても売っていません。練習用には紅木の駒を代用で使っています。
これは余談ですが、駒ケースは自作した物を使っています。上の4個入りのケースはボールペンの贈答用ケース。下の2個入りのケースはジッポー(ライター)のケースを使
用しました。いずれも知り合いに不要となった物を頂きました。どなたでも簡単に作れますので、作ってみたらいかがでしょうか。
駒の種類  駒については、大きさ・高さ・材質等によって音に与える要素が一番多いように感じられます。これも流派によってだいたい決めらます。材質は象牙が主体ですが、紫檀・紅木・竹・つげ・桑などの木製の物、また、水牛・鯨の骨(舎利駒)などがあります。特殊な物では、練習用に音を小さくするための「忍び駒」という物もあります。これは駒が皮の部分にのらないように作られていますので、音が小さいのです。
     揆(ばち)
 小唄以外は、揆という物を使用して、糸を弾きます。揆にも色々種類があり、練習用で木製の物
(樫、つげ)、合成樹脂製(練り揆)、水牛製、舞台用に象牙製を使用します。
 揆の大きさを表すのに重量(匁)もしくはさい尻(付け根の処の1辺のサイズ)でいうことが多いようです。ちなみに右端の揆が合成樹脂の物で四十匁(もんめ)さい尻の大きさでいうと九分の物です。隣のかわいい揆は、新内の上調子で使用する象牙の小揆です。その上は、カセといってギターでいうところの「カポタスト」です。音の調子を上げるのに棹に縛って使います。
 左の写真、右が地唄用の揆で、色の茶色の部分がべっこう製です。かなり大きな揆です。隣が九分の象牙揆です。最終的には象牙の揆が欲しいのですが、新品で購入すると100万円前後はするようです。・・・・