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「お兄ちゃん!!」
突然のその声に、思わず振り返る。
「あの、烈先輩がお兄ちゃんと同じ学校って、本当なの??」
行き成り部屋に入ってきたと思ったら、そんな事を言われて、俺は思わず首を傾げてしまう。
『烈』と言う名前は、どこかで聞いた事があるような気が……。
「烈先輩って、誰の事??」
自分よりも2つ下でまだ中学3年の妹は、興奮した様子で俺を見上げて居る。
それに、意味が分からないと言うように首を傾げてしまうのは、仕方ない事だと思うのだ。
「知らないの?星馬烈先輩よ!!」
しかし、俺の質問に、妹は呆れたようにフルネームを教えてくれた。
その名前を聞いて、漸く目当ての人物が誰かが分かった。
それにしても、何で今更……。
明日で2年の2学期も終ると言うこんな時に、そんな事を言われても、本当に今更でしかない。
「で、それがどうかしたのかい?」
「どうかしたんじゃないわ!どうして教えてくれなかったのよ!!」
突然そんな事を言われても、理解できないから問い掛けたつーのに、逆に怒られてしまう。
って、何で、怒られなきゃいけねぇんだよ!
「…教えてくれなかったって……何で、教えなきゃいけないんだ??」
理不尽な妹の言葉に、内心を隠して問い返す。
「私が、烈先輩の大ファンなの知っていたんでしょう!!」
いや、そんな事、知ってる訳ねぇだろうが……。
と、言うよりも、興味なかったと言う方が、正しいのか……。
何が楽しくって、お前の憧れの相手なんてモノを知ってなきゃいけねぇんだ。
「で、僕にどうしろと?」
「烈先輩に、これ渡して!!!!」
興味が無いが、質問しなければ、話が進みそうに無いので問い掛ければ、目の前に差し出されたのは、一つの綺麗にラッピングされたプレゼント。
「……お前、僕には一度も、プレゼントくれた事、無かったよね?」
その差し出されたプレゼントに、複雑な気持ちを隠せない。
自分の誕生日には、プレゼントを催促するくせに、俺の誕生日には何もくれた事のない妹。
だからこそ、目の前に差し出されたそれが、思わず不機嫌を誘う。
別に、こいつからプレゼントを貰いたい訳じゃねぇが、ちょっとむかつくぞ。
「お兄ちゃんにプレゼント渡しても、いい事無いでしょう!だけど、烈先輩にプレゼントを渡せば、もしかしたら、彼女に……」
「なれる訳、ないだろう……」
夢見る少女宜しく、妄想の世界に突っ走っている妹に、ボソリと呟いても、どうやら夢の世界に出掛けている相手には、聞えなかったようだ。
「だから、お願いね、お兄ちゃんvv」
何が、『だから』なのかよく分からないが、ニッコリと笑顔で差し出されたそれを、無理やり押し付けられて、俺はただ盛大なため息をついた。
俺、。
しゃべっている言葉と、心で思っている言葉使いが違う?
それは、俺が家族をも騙している猫かぶりの天才だから!(いや、威張れないって……xx)
俺の本性を知っているのは、その辺ですれ違うような全く関係のない赤の他人と俺のばーちゃんだけ。
赤の他人が知っているって言うのは、そいつ等の前では、ネコを被る必要が無いからって言うのがまず一つ。
でもってもう一つの理由は、俺が女に間違われて、よくナンパされるつーのが、理由。
俺としても、大人しくしていたいんだけど、女に間違われちまうと、どうしても許せない。
だから、そのナンパしてきた奴等全員を時々、病院送りに……いや、本当に時々な。
殆どは、軽く相手してやっているだけだけど……。
「これを星馬に、渡すのか……」
無理やり押し付けられたその包みを見詰めて、盛大なため息をつく。
何が嬉しくって、男の俺が、男にプレゼントを渡さなくちゃいけないのだろうか。
しかも、学校では、目立たず地味な生徒を演じていると言うのに、何故学校一目立つ相手と接触を……。
いや、そう言う意味では、俺も目立つのか?何せ、学校始まって以来、星馬烈とは、学年で1・2を争っている訳だし……。
「……頼まれちまった事を、無視できないのが、俺の可哀想な性分だよなぁ……」
ため息をつきながら、無理やり押し付けられたそれを、鞄へと仕舞う。
「さて、宿題も終ったし、今日もゆっくりと風呂に入るか」
広げていたノートと教科書も鞄に入れて、大きく伸びをし椅子から立ち上がる。
風呂に入るのが、一日で1番好きな時間。
俺は、日光浴と風呂が必要不可欠な人間である。
「こう言う時って、でかい家に生まれた事には感謝だよな。風呂が、でかいつーのは、有り難いvv」
着替えを持って、風呂へと向う。
この家は、昔ながらの家で、かなりデカイ家だ。
一応、長年に渡って、払い屋なるものを行っている旧家なのだから、当然かもしれない。
ばーちゃんの代で、19代目って言うんだから、かなり長く続いているつー事だろう。
の割りは、俺の両親や妹は、その手の事が超が付くほど鈍感だ。
今、この家に住んでいる人間で、当主であるばーちゃんと俺だけがこの払い屋家業を受け継いでいる。
もっとも俺は、ばーちゃんの手伝いつー名目で扱き遣われているだけのような気もしねぇでもないんだけど……。
もしかしなくっても、20代目は、このままで行くと俺が継ぐ事になるんだろう。
俺以外に、払い屋としての能力受け継いでる奴居ねぇんだから、やっぱりそうなるんだよなぁ……。
俺としては、こんな妖しげな商売継ぎたくねぇつーのが本音なんだけど……。
「」
そんな事を考えながら、風呂場へと歩いていた俺は、名前を呼ばれて振り返る。
そこには、ばーちゃんと言うにはまだ若い俺の祖母が、立っていた。
相変わらず気配がない相手に、小さくため息をつく。
「話しがある、ちょっとおいで」
って、ばーちゃんがそう言う時は、仕事の話しだろう事は、今までの経験上、いやって言うほど実体験済みだ。
「俺、これから風呂……」
一応、言ってみるが、ばーちゃんはその言葉を無視して、さっさと自分の部屋へと入っていく。
着物だというのに、何でそんなにスマートに動けるんだ??
「で、話って?」
「兎に角、御坐り」
拒否権は、相変わらず無しね…。
言われた通り、素直に座る。
言う事聞かないと、後が怖いしなぁ。
俺が唯一恐れている人物は、目の前の相手。
しかも、俺の本性を知っている人だし、今更ネコを被る必要もない。
「で、どんな仕事?」
「相変わらず、せっかちだねぇ。だけど、その方が話が早い。近頃、夢魔が現れるそうだ」
夢魔ねぇ……。
って、俺が、その手のモノが嫌いなの知ってるくせに、んな話俺に持ってくるのかよ、ばーちゃん!!
「……気が乗らねぇ・……俺が、その手のモン嫌いなのは、ばーちゃんが一番良く知ってんだろう」
「そう言うだろうと、予想はしていたんだがねぇ……。そんなに悪いものではないから、私としても、処分するのではなく、飼い慣らした方がいいと思って、お前に任せる事にしたんだよ」
「……飼い慣らすって、動物じゃねぇんだから……」
ばーちゃんの言い方に、思わず盛大なため息をついてしまうのは止められない。
「今回は、動物の姿をしているからね。この表現は間違いないよ。今回の夢魔は、白猫の姿をしているらしいからね」
「…白猫ねぇ……闇にまぎれるには、目立ちそうだな」
「まぁ、今は夢じゃなくって人の生気を食べているだけで、大した害はないようだし、お前が飼い慣らしてくれれば、新しい戦力になると思うからね」
って、簡単に言ってくれる。
勿論、それが出来ない訳がないと分かっているからこその、言葉だろう。
だけど、俺は複雑な表情でばーちゃんを見た。
「………そいつ、手懐けたら、今度の休日に仕事休んでいいか?」
「仕方ないねぇ。どうせ温泉にでも行くつもりなんだろう。そうだねぇ、今日と明日中に事が終れば、休みにしてあげるとしようかね」
「なら、引き受けた」
ばーちゃんの言葉に、満足そうに頷く。
明日、明日中には、そんな仕事を片付けるのは簡単な事だ。
今度の土日は、温泉に行くぞ!!
ばーちゃんは、学校が休みになると、こぞって仕事持ってくるから、交渉しねぇと、何時までたっても休みなんて貰えねぇからな。
「んじゃ、仕事終了は、その猫連れてくればいいんだな」
「ああ。両親には、私から話しておくから、しっかりと面倒見てやるんだよ」
「了解!」
って、言ったけど、折角風呂に入る予定だったのに、これで、後回しになっちまったな。
でも、俺の休みの為だ!今は、我慢しよう、うん。
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