春色の公園は、日差しも麗らかで輝いて見える。

そんな、目の前に広がる景色を、ただぼんやりと見詰めてしまう。

だからと言って、暇な訳じゃない。
どちらかと言えば、忙しい身だ。

それなのに、この場所でぼんやりしているのは、待ち人が来ない所為だ。
約束の時間は、とっくの昔に過ぎている。

普段時間にしっかりとしている筈の待ち人からは、何の連絡もない。

、いいのか?』

正直そろそろ時間がヤバクなり始めた俺に対して、心配そうな声が聞こえてくる。

「あ〜、まぁ、そろそろ、まずいなぁ……」

その声にチラリと時間を確認して、小さくため息をつく。

クライアントとの時間が迫ってきているので、流石にこれ以上待つのはまずい。

!」
 
どうしたものかと考えを巡らした俺の耳に、聞きなれた声に名前を呼ばれた。
どうやら、漸く待ち人が来たらしいと、視線を声の方へと向ける。

「お、遅れてごめん。ちょっと、懐かしいヤツに会って……」

向ければ、自分に近付いてくる二つの影。

なんで?二つなんだ??

走り寄ってくるその姿から、自分に謝罪する声が聞こえてくる。
だが、俺的には、どうして影が二つあるのかが理解できなかった。
しかも、もう一つの影は、自分にとっては初めて見る顔で……

まだ、星馬弟が来ているのなら分かるが、何で知らない奴を連れて来たのかが分からない。

「星馬、遅れてきた事は分かったんだが、後ろのヤツは誰だ?」

だからこそ、訳が分からないと言うように、謝罪した相手へと問い掛ける。

「ああ、こいつが懐かしいヤツ。の事を話したら、会ってみたいって言いだしたからね」

いや、会って見たいと言われても、俺はぜんぜん興味ないんだが……
しかも、初対面の相手だ、警戒するなと言う方が無理な話だ。

「心配しなくても、ボクが素で相手できるヤツだから、大丈夫だよ」

怪訝な瞳で相手を見た俺に対して、星馬が笑顔で返してくる。

いや、お前が素で相手する人物は確かに珍しいが、それとこれとは話が別だろう。

「…やっぱり、か?」
「はぁ?」

時間もないし、このまま別れるかと、そう考え付いた瞬間確認するように名前を呼ばれる。
いや、初めて会ったヤツに行き成り名前を呼び捨てにされてかなり驚いたが、俺は漸くそこで名前を呼んだ相手をまじまじと見詰めた。

あれ?何か、初めて会ったような気がしないと言うかなんと言うか……

「……もしかして、ブレット?」

恐る恐る確認するように、名前を呼んでみる。

「やっぱりそうか。烈から名前を聞いてそうじゃないかと思ったんだ」
「って、何でお前がここに居るんだ?!しかも、星馬と一緒に!!」

星馬が連れてきた相手を確認した瞬間、俺は場所も考えずに思わず叫んでしまった。
いや、だって、小学生の時に知り合った、二度と会わないだろうアメリカに帰った相手がここに居るとは思わないだろう。

しかも、自分の友人と一緒に……

、もう時間がないぞ』
「あっ!しまった、星馬悪いが、時間切れだ。これから仕事だからな、これ何時ものプレゼント。家の人と一緒に食べてくれ」

驚いている俺に、タイムリミットの知らせ。
それに時計を見て、慌ててしまう。

「ああ、今日は仕事入ってたんだ……時間遅れてごめん。直ぐに終わるようだったら、まだ話がしたいんだけど」
「いや、どうなるか分から……」
『即行で終わらせてやるから、一つ貸しだぞ』

差し出した毎年恒例のケーキと言うプレゼントを受け取りながら、星馬が質問してきた内容に返事を返そうとした俺の言葉を遮って別な声が返事を返す。

「『昼』、勝手に……」
「それでいいから、頼むよ。僕達は、お勧めの喫茶店で時間潰してるからね」

そう言って微笑む星馬に、複雑な表情をしてしまうのは止められない。
そんな俺達の様子を、もう一人の人物は何も言わずに聞いている。

って、こいつ、どこまで知ってるんだ?

黙って話を聞いているブレットに対して、疑問に思ったがそれを問い掛ける事は出来合い。

「それじゃ、頑張ってね」

手を振って見送る星馬に、盛大なため息をつく。
もう、これ以上の時間は流石にまずいのは事実だ。

詳しい話は、仕事を終わらせてから聞くしかないだろう。

『昼』がああ言ったのだから、今日の仕事は早く終わる事間違いなしだ。

俺は、後ろ髪惹かれる思いで、その場を離れクライアントとの待ち合わせ場所へと急いだ。