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「『我望む、目の前の敵に風の束縛を……風縛!!』」
烈の声で、目の前に居た魔物を風が戒めるように取り囲む。
「豪、さっさと始末つけろ!」
「了解!」
そして、自分の傍に居た相手へと声を掛けた。
それに、名前を呼ばれた者は、大きな剣を魔物向けて振り下ろす。
風に縛られた体が、真っ二つに切られる。
辺りに響いた魔物の最後の声に、森が小さく振動したように感じるのは、気のせいだろうか?
「相変わらず、馬鹿力だな……鋼鉄とまで言われる鎧を纏った奴なのに、良く切れるよな」
そんな事を考えながらも、最後のトドメを見事に決めてくれた弟へと感心したように声を掛ける。
「えっ?んなの気合だって!」
感心したような兄の言葉に、豪はあっさりと言葉を返した。
「普通は、無理だって……何にしても、依頼は終了。村に帰るか?」
「だよなぁ……でも、最後の雄叫びって奴が気になるんだよなぁ……森が振動するぐらいだっただろう?」
そんな弟に、烈は呆れたようにため息をついたが、村へと戻る事を提示する。
それに、珍しく豪が気になったと言うように問いかけてきた。
言われた言葉は、自分も感じていた事なので、素直に頷く。
「お前も気になったんなら、間違いないな」
「えっ?何がだよ?」
そして、それに烈は納得したように頷いた。
だが、意味が分からないと言うように、豪が首を傾げて列を見る。
「だから、最後のあれは、自分がやられたって事を仲間に伝えたって事だ。この手の魔物は、単独で行動しているけど、仲間意識は強いって事だ。それを証拠に……」
烈の言葉が最後まで言われる前に、響いてきた地響。
そして、揺れる大地。
「あ、兄貴?!」
「来たみたいだね……」
それに驚いて豪が烈を見る、それに烈は冷静に呟いた。
「来たって、何が?」
「さっき言っただろう、仲間意識が強いって」
冷静に呟いた言葉に、豪が聞き返す。
それに、烈はあっさりと言葉を伝えた。
「って、それって……」
「この森の中に散らばっている仲間が集まって来てるって所だろう。ほら、まず一匹目」
ガサリと揺れた叢の向こうから、先ほど倒したモノと全く同じ姿をしたモノが出てくる。
「う〜ん、この森から考えるとざっと数十匹。少なくっても、20匹ぐらい居るんじゃないかな」
「って、冷静に分析してる場合じゃねぇじゃん!」
それを確認してから、烈が分析するように辺りを見回す。
そんな兄の態度に、豪は剣を構えたまま大声で文句を言う。
「ほら文句言う前に目の前の敵ほら、行け」
「って、また依頼以外の仕事かよ!!」
文句を言いながらも、豪が現れた敵に切りかかって行く。
「何時もの事だ。ほらキリキリ働けよ、どんどん来るぞ。さて、こっちも行くか!『風よ、我等を護る壁となれ……今、その姿見せよ、風壁!!』」
どんどん現れる魔物に、何時ものように確実に止めを刺す。
それが、自分達の仕事。
魔物を狩る、ハンターと呼ばれる自分たちの……。
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