HUNTER 番外2

「兄貴!」

 知った声が大きな声で、自分を呼んでいるのが聞こえる。
 その声で、一斉に自分へと向けられる人の視線。

 何時だって、目立つなと耳たこ状態な程言って聞かせているというのに、あの弟は、どうしてそれが聞けないんだろう。 
 一層の事、雷でも降らせれば、その頭も使いモノになるかも知れない。

「兄貴!聞こえてねぇのかよ!!」

 そんな事を考えている自分の耳に、もう一度声が掛けられる。
 いや、聞こえない訳がない。
 そんなに離れた距離でもないのに、そんな大声で呼ばれて、気付かないのは、耳の聞こえない相手だけだろう。
 僕は、痛くなる頭を抱えて、そのままその声を無視して歩き出す。

「って、置いていくな!!」

 無視して歩き出した僕に、豪の声が慌てているのが分かった。
 確かに、久し振りの大きな町だから、騒ぎたくなる気持ちも分からなくない。
 いや、どちらかと言うと、分かりたくないのだが……。 
 いい加減子供ではないので、落ち着いてもらいたいと思ってしまうのは、許される事だろうか? 

「兄貴ってば!」

 慌てて追いかけて来る声が、後ろから聞こえてくる。

「……うるさい!いい加減にしないと、その口塞ぐぞ!」

 ぎゃーぎゃーと喚いている弟に、いい加減我慢の限界を感じて怒鳴りつける。

「う、うるさいって…俺は、兄貴に教えてやろうと思って……」

 怒鳴りつけた僕に、豪が言い返してきた。
 それに、不機嫌そのままに聞き返す。

「教える?何をだよ!」
「兄貴が欲しがってた地図、置いてるって……」

 そして、返ってきたその言葉に、僕は一瞬目が点状態で、思考がフリーズした。 
 そして、取り戻した思考で、豪に怒鳴りつける。

「……どうして、そういう事は先に言わないんだ!!!!」
「だって、兄貴、俺の言った事、無視してたじゃん…俺、ちゃんと言ったかんな!」
「ああ、分かった。なら、さっさと買いに行くぞ!」

 呆れながら、豪が先ほどまで立っていた店へと戻る為に引き返す。

 時々思う、僕はどうしてこんな奴と、兄弟なんだろう。 
 そして、思う。
 何時になったら、こいつは一人前になるんだろうと……。

 なんにしても、それはまだまだ先な事だけは、間違い無いだろう。