風呂から上がると、拗ねたようにテレビを見ている豪の姿がある。
 どうやら完全に拗ねているという事が分かって、烈は苦笑をこぼした。

「豪・・・・怒ってるのか?」

 自分が出てきた事に気が付いているのに、振り返らない弟に声を掛けるが何も反応がない。
 そんな相手に小さく溜息をつくと、烈は冷蔵庫からジュースを取り出す。

「お前も、何か飲むか?」
「・・・・・・ビール・・・」

 返事を期待せずに訊ねたそれに、返されたそれに烈は一瞬眉を寄せる。

「お前、未成年だろう!」
「ビールくらいいいだろう!ヤらさせてもらえなかったんだからさぁ・・・・・」

 文句を言うように戻ってきた言葉に、一瞬烈は言葉に詰まった。
 確かに、拒んだのは自分だが、そんな風に言われるとは思っていなかったのだ。
 だから、そんな風に返されては、承諾するしかない。

「・・・・・・1本だけだぞ・・・・・・」

 冷蔵庫から1本取り出して、豪に投げてよこす。
 放られたそれを受け取り、豪は直ぐにプルトップを開けると一気に口を付ける。

「かぁ〜!やっぱり、風呂上りが、一番巧いよなぁ!」
「……オヤジ…」

 一気に飲んだ後に、グイッと手で口の周りを吹きながら言われたその言葉に、烈は呆れたようにボソッと呟いたその言葉を、豪はあえて無視した。

「……兄貴vv散歩、行こうぜ!」
「…突然、だなぁ……」

 一気に飲んだビールの缶をテーブルに置くと、豪が機嫌良く声を掛けて来る。
 その内容が、余りにも突然だった為、烈はまだ飲み終わっていないジュースを口にしながら、ポツリと文句を言う。

「だってよぉ〜、時間勿体無いだろう!明日の昼には、帰るんだからな!」

 小さな子供のように頬を膨らませての文句に、烈は盛大なため息をついた。

「お前なぁ……少しくらい、ゆっくりしたらどうなんだ?」
「ゆっくりって…ここ着いて直ぐに風呂入って、十分ゆっくりしてるじゃねぇかよ!!」

 自分の言葉に直ぐに返されたその言葉に、呆れてモが言えなくなってしまう。
 温泉に来てまで、なんでこうジッと出来ないのかと、頭を抱えたい気分である。

「烈兄貴!」
「はいはい……もう少ししたら、付き合ってやるよ。だから、せめて、このジュースが無くなるまでは、大人しくしててくれ……」

 盛大なため息をついて、まだ半分以上残っているジュースに口を付けながら、烈は置かれていた新聞を手に取った。

「……無くなったら、付き合うんだな!」
「ああ、約束するよ。だから、もう少しだけ待ってろ!!」

 念を押すように言われたそれに答えて、烈は手に持った新聞を開いて目を通して行く。
 そんな烈の行動を見詰めながら、豪はただそのジュースを飲み終わるのをジッと待つ。
 自分に向けられる視線を感じながら、烈はあえてそれを無視していたが、あまりにも見詰めて来る豪の視線に絶えられなくり、先に根負けしてしまった。

「……分かった、散歩に行こう……」
「えっ?いいのか?」
「……お預け食らった犬みたいに見詰められたら、なんだか苛めてるみたいだからね……ほら、行くんだろう?」

 盛大なため息をついて、烈は豪を促す。

「勿論vv」

 呆れながら言われたそれに、豪は満身の笑顔を見せると、嬉しそうに烈の後に続いた。




「潮風って、気持ちイイよなぁ…」

 ぐっと伸びをして、目の前に広がっている海を見詰める。
 そんな豪を見詰めながら、烈も同じように伸びをした。

「確かに、勉強疲れも、なくなるよ」

 笑顔を見せながら、言われたその言葉に、豪はニッと笑顔を返す。

「来て、良かっただろう?」
「ああ…お前の運に感謝しないとだなぁ」

 烈も満足げに頷いて、笑顔を返した。
 確かに、ここに来れたのは、豪のお陰である。
 それを否定するつもりは無いし、その事に関しては、本当に感謝しているのだ。

 そう、豪の下心さえなければ、であるのだが……。

「……豪、だからって、肩に手を回すんじゃない!誰かに見られたら、どうするんだよ!」

 そっと伸ばされたその手を、ため息をつきながら抓って。烈は呆れた様に歩き出す。

「……誰も居ねぇんだから、いいじゃんか!」
「……良くない!!」

 歩き出した自分に慌てて付いてきた豪が文句を言うその言葉に、即答で返してから、烈は再度ため息をついてしまう。

「……人が、本気で感謝してるのに、傍からそれを壊すんじゃない」

 呆れた様に呟く烈に、豪は両腕を頭の後ろで組む様にしてから、ため息をつく。

「感謝するなら、態度でしめして欲しいんだけど、俺……xx」

 そして、ボソリと言われたその言葉は、烈の一睨みでそれ以上は何も言えなくなってしまう。

「……ちぇ…折角、色々出来ると思ってたのによぉ……」
「…で、その色々って、何をするつもりだったんだい、豪くん」

 ブツブツと小声で文句を言う豪に、ニッコリとした笑顔で烈が問い掛けてくる。
 その笑顔と、しかも「くん」付けで呼ばれた事に、豪は大きく首を振って返した。

「いえ、何でもありません、お兄様……」

 ビクビクしながらそう返すと、烈は盛大なため息をついて、豪から離れた。
 ニッコリ笑顔の烈だけは、要注意であると言う事を、イヤと言うほど経験しているだけに、素直に引いて行った兄に安堵のため息をついた。

「……豪、夕日が……」

 だが、突然名前を呼ばれて呟かれたその言葉に、顔を上げれば太陽が真っ赤に空を染め上げているのが目に入るそれは、目の前に居る人と同じ赤の色。

 一番自分が好きな色。

「……本当に、何もかもを赤く染めるんだな…」

 景色を見詰めている烈がポツリと呟いたその言葉に、豪は小さく頷いて返す。

「…なんだか、吸い込まれちゃいそうだな……」
「ああ…でも、烈兄貴の色だから、俺は吸い込まれてもいいな……」
「……ば〜か……」

 自分の言葉に少しだけ照れた様に返されて、豪は笑いを零した。
 きっと赤く染まっているだろうと思うのだが、今は自分の顔もきっと真っ赤になっているだろう。

 夕日の色が、自分達を赤に染め上げているから……。

「兄貴…キス、してもいい?」
「そんな事、聞くな……」
「んじゃ、OKって事だよなvv」

 嬉しそうに笑って、ゆっくりと烈にキスをしかける。
 赤く染まっているその頬を優しく包みこみながら、掠めるような軽いキス。

「……ご飯食べたら、もう一回お風呂入ろうぜ、烈兄貴vv」
「……バカ………//////」

 耳元で囁かれたその言葉に、烈は自分の体温が上昇するのを感じて、その言葉以外、何も言えない。
 そんな兄を前に、豪は嬉しそうに微笑むのだった。




     

     

 


   わ〜い、終わってない。<苦笑>
   ラブラブ話が書けないので、リハビリのつもりだったのですが…xx
   全く、隠す必要のない小説が出来あがってしまいました。
   そして、更に続きます。<苦笑>

   え〜と、ここを見付けて下さった方、ご苦労様です。
   ですが、更にこの話しは続きます。ので、今度はこのページから更に次のページを探してください。
   お手数を掛けてしまいますが、頑張りましょう!
   次こそは、終わると思いますよ。多分、きっと……xx

   では、次の話しも出来あがった時は更新記録の方に書きますので、また探してみてください。
   本当に、こんな部屋を探してくださって有難うございます。
   そして、続いてしまって、すみませんでした。