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「だから、言ったのに!!」

 珍しく、俺の部屋に訪れた兄貴が、部屋に入った瞬間に口にした言葉。

「兄貴?」

 突然入ってくるなり言われたそれの意味が、全く分からない。
 どうやら、烈兄貴が、俺の部屋に入ってくるなんて珍しい事もあるものだ。
 と言う事では済ませられない自体。
 正直、兄貴の機嫌はよろしくないってのだけは、いやでも分かっちまうんだけどなぁ。

「・・・・・・な、何を言ったんだ?」

 だから、恐る恐る質問をして、兄貴を怒らせている理由というものを聞き出す必要がある。
 正直に話してくれるとは思わないが、それでも聞かずにはいられない。

「覚えてないから、怒ってるんだろう!!」

 だが、それは簡単な言葉で返されてしまった。
 覚えてないから、怒っている?
 それだけでは、本当に何がなんなのか、分からない。
 ただ分かるのは、俺が兄貴に言った事を覚えていないから、怒っているらしいとい事だけは理解できた。
 いや、それは初めの言葉でも、分かる。だから問題は、俺が何を忘れているのかという事。

「約束も守れないなら、あんな事いうな!バカ!!」

 や、約束? 俺、兄貴と何か約束した事なんてあったか?
 大体、兄貴との約束を俺が忘れるはずなんてない。
 それは、誰に誓ってもいいくらいだ。

「兄貴・・・・・・俺、約束忘れた事なんて、ねぇけど・・・・・・」

 だから、少しばかり強気でそう返せば、烈兄貴の冷たい視線が向けられる。

「覚えてないくせに、そんな事がよく言えるな・・・・・・」
「お、覚えてないって・・・・・だから、何を?」

 言われても、兄貴と約束した記憶なんて、一つも思い出せない。
 例え、怒られても、身に覚えの無い事だけは本当なんだから、仕方ないよな。
 本当に、兄貴と何かを約束した覚えは無いのだ。

「・・・・・・覚えてないなら、もういい!!邪魔して、悪かったな」

 内容を聞き出そうとする俺に、烈兄貴はそのまま怒って部屋から出て行こうとする。

「ちょっと待った!!だから、一体俺が何を忘れてるんだよ」

 出て行こうとする烈兄貴を慌てて止めて、俺は訳が分からなくって、少しイライラした口調で問い掛ける。
 そして、それと同じように、出て行こうとした腕を掴まれて、烈兄貴の機嫌は再らに降下状態。
 これ異常ないというほど不機嫌に、俺の事を睨みつけてきた。

「烈兄貴?」

 不機嫌そうに、そして何処となく悲しそうなその表情に、俺は心配そうに名前を呼ぶ。

「忘れないって、言ったのに・・・・・お前が、約束破るから・・・・・・」

 忘れない、約束?
 ま、ますます分からない。
 俺、一体どんな約束を烈兄貴としたんだろう?
 き、記憶の片隅にも残ってねぇぞ!! 大体、烈兄貴がここまで言うんだから、約束はしたんだろう。
 なのに、その内容を俺は綺麗さっぱり忘れちまったのか?兄貴との約束なのに!!

「・・・・・・お、覚えて無くって、ごめん!だからさぁ、俺が忘れちまった約束、教えてくれよ。烈兄貴との約束は、破りたくねぇから・・・・・・」
「・・・・・・本当に、覚えてないのか?」

 不安そうに問い掛けられた事に、仕方なく頷く。
 俺が正直に頷いた事で、烈兄貴はきっと怒るだろうなぁと、覚悟を決める。
 だが、それは見事に期待を裏切られてしまった。

「・・・・・・本当の本当に、覚えてないんだな?」

 再度念を押すように訊ねられた事に、不本意ではあるがもう一度頷いて返す。
 そして、俺が頷いた瞬間、烈兄貴が嬉しそうに笑顔を見せた。

「だったら、賭けはオレの勝ちだぞ、豪vv」

 にやりと意地の悪い笑顔を見せられた瞬間、俺は漸くある事を思い出す。

 あれは、何日か前にした賭け・・・・・・xx

 確か、内容は・・・・・・xx

「賭けの内容は、2日の晩にこの賭けの内容を、豪、お前が覚えているかいないかって事だったよな?オレは当然覚えてないで、お前は覚えているだったから、この賭けは間違いなくオレの勝ちだ。よって勝者は、GW中に、一日だけなんでも命令できるだったよな、豪?」

 ニッコリと笑顔を見せて言われた事に、俺は正直頭を抱えた。
 そう、確かにそんな賭けを兄貴としていたのだ。
 あの時は、烈兄貴とデートが出来るってルンルンだったのに、肝心な約束の日を忘れていた。
 しかも、あんな聞き方をされてしまっては、思い出せと言う方が、無理な話である。

「それじゃ、豪!オレからの命令・・・・・・」

 これで、GW中に烈兄貴と一緒に出掛けるって言う野望が消えてなくなってしまった。
 どうせ、烈兄貴の命令なんて、『自分の勉強の邪魔はするな』とか言うに決まってる。

「4日、オレと一緒に出掛ける事!!」

 俺が小さく溜息をついた瞬間、言われた事に驚いて思わず烈兄貴に視線を向けてしまう。

「聞こえたか?だから、4日は他の約束なんて、入れるなよ・・・・・・」

 少し照れたような烈兄貴のその言葉に、思わず大きく頷いて返す。

「当たり前じゃんか!!」
「本当だろうな・・・・・・今度、覚えてなかったら、その日全てお前のおごりだからな!!」

 烈兄貴の強気な言葉に、大きく頷いて返した。

 忘れる訳がない。

 もっとも、全部俺のおごりでも全然OKだ。
 なにせ、出掛けるために小遣いを貯めておいたのだから・・・・・・。

 明日から、ゴールデン・ウィーク。
 本当、まさにゴールデン!!烈兄貴とデートが出来るのだから!!

 

 

                                 



            

  私にしては珍しく、季節モノです!(笑)
  嫌、って言うか、ちゃんと季節に合わせた話ですね。
  何時も、季節はずれの話を書いてますから・・・・・・((
  言い訳になるんですが、書き始めた季節中には終わらないんです。
  基本的に、書くの遅いので・・・・・・(終わってますね<苦笑>)
  でも、この話は私にしては珍しく1時間も掛かからずに書いたお話なのです。
  しかも、書いてて楽しかったですよ。(烈兄貴の性格が、書きやすかった。<笑>)

  次は、「GIRL」って言いたいんですが、「GIRL」は暫くお休みさせてください。
  そんな訳で、次は「Wizard」か、全く違うお話になる予定です。
  「GIRL」を待てて下さっている人、本当にごめんなさい!!(居るのか、そんな奇特な方が?!)