空を見上げれば、何処までも広がっている青空に、感動を覚える。
 澄み切ったその空を見れば、もう季節が冬なのだと感じられて、烈は小さく息を吐き出した。

 寒さの苦手な自分にとって、冬と言うのは、やっぱり苦手といった方がいいだろう。
 だけど、嫌いでないのには、ちゃんと理由がある。

「兄貴!」

 ボンヤリと空を眺めている中に、嬉しそうな声が聞こえて、烈は振り返った。
 勿論、自分を呼んだ相手が誰か分かっているから、確認するのではなく、早く相手の顔が見たいから、振り返る。

「待たせて、ごめん。寒かっただろう?」

 自分の頬をその大きな手で包み込まれて、烈は笑顔を見せた。

「……寒くなんてないよ…」

 ニッコリと笑顔を見せて、頬を包んでいるその手に自分の手を重ねる。暖かいその手を感じて、烈はそっと瞳を閉じた。

「寒がりの癖に、無理するなよ、兄貴」

 そんな自分に、少しだけ呆れたように言われたそれに、烈はく小を零す。
 だって、本当に寒くなんてなかったから……。

「……お前が居るから、寒くなんてないんだよ……」

 笑顔を見せながら、何時もは絶対に口にしない事を言ってみる。
 そうすれば、豪が顔を赤くするのが分かるから
 少しだけ意地悪するように、仕返しとばかりにちょっと冷たくなっている手を豪の頬に当てる。
 今まで感じていた手の温度とは違って、やっぱりその頬は少しだけ冷たく感じるのに、烈は小さく笑いを零した。

 それは、ここに急いで来てくれのが分かるから……。
 だって、少しだけ赤くなっている頬が、それを物語っている。豪は、走ってこの場所に来てくれたのだと。

「あ、兄貴?」

 自分の行動に慌てている弟の姿に、烈はもう一度だけ笑顔を見せる。
 何時も、自分ばっかりそんな風に慌てさせられているのだから、偶には仕返しもいいだろう。

 こんな風に感じられるのも、やっぱり冬の所為なのかなぁ?

 自分と違って、体温の高い豪。
 だから、冬は、そんな豪に触れているのが気持ちよくって、好き。
 それが、自分が冬を嫌いになれない理由。もっとも、そんな事を言っては、相手を喜ばせるだけだから、絶対に教えてあげない事だけどね。