「危ない!!」
何処から取り出したのか分からないけど、その取り出したものを自分に向けて撃とうとしているランボくんを目の前にして咄嗟に体が動いた。
ランボくんを抱えるようにしてそれから、守るようにするのが精一杯だったけど……
「!!!」
その時聞こえてきたのは、ツナの切羽詰った声とドオンと言う音が妙に遠くで鳴っているように感じられた。
「……い、生きてる?」
そっと目を開けた瞬間見えたのは見た事もない場所。
その場所は、何処か立派な応接室と言った所だろうか……俺は、そんな知らない場所で、床に座り込んだ状態だった。
でも、確かに自分はランボくんを庇ってあのバズーカに撃たれたはずななのに、何で生きているんだろう。
いや、だからって、死にたかった訳じゃないんだけど、ね。
だけど、撃たれた自分が、何でこんな見知らぬ場所に居るのかが分からない。
「?」
状況が分からずに、困惑している中で名前を呼ばれ顔を上げる。
その声は、聞いた事があるような懐かしさを感じさせらる声。でも、初めて聞く声のようにも感じられた。
そこでようなく、自分を包んでいるような煙が晴れていくのが分かって再度キョロキョロと辺りを見回す。
あれ?こんなに煙があるのに、何で俺周りが見えてたんだろう??
「ツ、ツナ??」
そして、視界が晴れた先に居たのは、確かに自分が一番よく知っている人物によく似た人。
そう、似ている。自分の目の前に居た人は、明らかに青年と言ってもいい年の人物なのに、俺の知っているその人の面影があるのだ。
茶色の癖毛に、琥珀の瞳。そして、何よりも自分をそのまっすぐな眼差しで見詰めてくる人を俺は彼しか知らない。
でも、何でつい先程まで一緒に居たと思った相手が、こんなに大きくなっているんだろう。
「ああ、10年バスーカに撃たれたのって今日だったんだ」
「じゅ、10年バズーカ??」
驚いて見上げる中、少しだけ困ったように相手が俺を覗き込んできた。
その言われた言葉の意味が分からなくって、思わず首を傾げた俺に目の前の人が優しく笑ってくれる。
「取り合えず床なんかに座ってないで、ソファに座った方がいいよ」
そして、さり気ない動作で俺を抱き上げて、近くにあったソファに座らせた。
って、口を挟むまもなく、なんて自然なんだろう……いやいや、そこで感心している場合じゃないぞ、俺!!
「あ、あの、10年バズーカって……」
「敬語で話さなくても大丈夫だよ、オレは、綱吉で間違ってないんだから」
どう対応するべきか困惑しながら口を開いた俺に、綱吉だと言った人が優しく笑う。
ああ、その笑顔は確かにツナの笑顔と全く変わってない。
でも、何て言うのか、そのスーツ姿ですごくカッコいいんですけど……それに、身長も……なんでそんなに高くなってるの?!
いやいや、でもそんな事考えてる場合じゃなくって……
う〜っ、でもやっぱり、カッコいい……
「いや、あのそうじゃなくって……」
頭の中で考えた事を自分で突っ込みながら、何とか目の前の相手から今の状況を聞き出そうと口を開けば、少しだけ楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
お、俺、もしかしてそんなにおかしな行動してるんだろうか?
「分かってるよ、時間もないから説明するとね、はランボの持っている10年バズーカに撃たれてここ、10年後の世界に来てるんだよ」
不安に思っていた俺に、ツナが説明してくれる。
えっと、10年バズーカで、10年後の世界に来てるって……
「って、10年後?!それじゃ、今のツナって23歳??」
「うん、勿論、もね」
説明された事を頭で考えて理解した瞬間、違う事に驚いてしまった。
23歳なら、成長してても可笑しくない。
でも、その信じられない内容が、ますます俺を混乱させる。
10年後バズーカに撃たれた俺は、その10年後に来ているんだと言うのは分かった。でも、だからって、直ぐに全てを納得できる訳じゃない。
確かに、目の前のツナはもう大人と言ってもいい、すっごくカッコいい青年だ。
そして、ツナと双子である俺も、勿論同い年なんだから、一緒に成長しているはず
そう気付いて、辺りをキョロキョロと見回してみる。
「、どうしたの?」
突然回りを見回した俺に、ツナが不思議そうに声を掛けてくる。
「だって、10年後なんだよね?だったら、10年後の俺もここに居るんだよね?」
出来れば、ツナと一緒に居たいとそう考えているから、確認するように言えば、少しだけ驚いたようなツナの表情。
「う〜ん、残念だけど、10年バズーカに撃たれた相手は、その10年後の自分と入れ替わってしまうんだ。だから、23歳のは、13歳のと入れ替わって10年前に行っちゃってるんだよ」
「そ、それって、大変な事なんじゃ……」
真剣に質問した俺に、ツナがあっさりと説明してくれた内容を聞いて俺の方が焦る。
だって、普通そんな事が出来るなんて考えもしなかった。
いやいや、普通はそんな事有り得ないのが常識だと思うんだよ、うん。
「大丈夫だよ。10年前の方が今と違って平和だったからね。今日はを外に出さなくって正解だったよ。こう言う時、超直感力を有難いって思えるんだけど……お陰で、と喧嘩しちゃったんだけどね……」
「ツナ……」
焦っている俺に、ツナが安心させるように口を開く。
そして、何処か寂しそうに言われたその言葉に、俺は何と返していいのか分からなくって、ただその名前を呼ぶ事しか出来なかった。
「心配しなくても、10年バズーカの効力は5分。直ぐに帰れるからね」
そんな俺を安心させるように、ツナが笑う。
でも、俺が欲しかったのはそんな言葉じゃない。
ねぇ、俺と喧嘩したって言って、どうしてツナはそんなに悲しそうな顔をするの?
「俺の事なんてどうでもいいよ!ツナ、ツナは今、好きな人と一緒に居るんじゃないの?!」
何処か諦めたようにツナが笑うから、だから聞かずにはいられなかった。
俺は、ツナには幸せになってもらいたいから
だから、ツナがずっと想っているその人と幸せになってくれているんだと、そう信じたかったのだ。
「……どうしてそういう所だけは鋭いんだろうね……居るよ。オレは、ずっと好きな人と一緒に居るよ」
「だったら、どうしてそんなに悲しい顔してるんだよ!幸せじゃないのか?」
「……幸せじゃないって言ったら嘘になる。だって、一番大切な人と一緒に居られるんだから、幸せじゃないなんて言えない……」
そ、それって、ツナはまだ好きな人に想いを告げられてないって事なのか?!
な、何で10年経ってる今でも片想いなんだよ!ツナ!!
「ツナ、どうして、その人に好きって言ってないんだよ!」
「伝えているよ。だって、相手もオレを好きだって言ってくれているんだよ。それは、今も変わらない……でもね、それはオレの欲しい好きじゃないんだ」
伝えているのに、どうして伝わってないの?
ツナが欲しい好きじゃないってどう言う事?だって、好きだって返してくれているって事は、両想いなんじゃないのか!
ズキリと胸が痛む。
今、ツナに悲しい顔をさせている人が居る事がこんなにも胸が痛い。
それは、ずっと10年前から想い続けている相手だと知っているから……。
ツナは、今でもその人が好きなんだと、そう確信させられた。
「そろそろ時間だね、ほら、10年前のオレが待ってる」
「えっ、ツナ?」
その瞬間、ボフンと言う音が聞こえると同時に目の前をまた白い煙が遮ってしまう。
「、オレが好きなのは、だけだよ……」
「ツナ!!!」
そして、聞こえてきたのはツナの声。
それは、幻聴だったのかもしれないけど、確かに俺の耳に聞こえたような気がした。
「!!」
そして、次に聞こえてきたのは切羽詰ったツナの声。
「ツナ……俺……」
「10年バズーカで、10年後のと入れ替わっちゃったんだよ。ランボは大丈夫なんだから、庇おうとしないで!!」
必死な表情で言われる言葉に一瞬首を傾げてしまうが、先ほど10年後のツナが説明してくれたことを思い出した。
確か、10年バズーカに撃たれた者は、10年後の自分と入れ替わるって……それに似たような事を言ってたような……それって
「……ここには10年後の俺が来てたの?」
つまりは、そういう事だよね。
俺が10年後に行ってる間は、10年後の俺がここに居たって事。
「確かに、居たんだけど……そう言えばは、10年後のオレに会って来たって事だよね?」
「うん、10年後のツナに会って来たよ。すごくカッコよかった!」
恐る恐る質問されたツナの言葉に、思わず素直に返事を返してしまう。
だって、嘘じゃなく、本当にカッコよかったんだし……
「そ、そう、なんだ……」
俺の勢いに、ツナがちょっとだけびっくりしたような表情で頷く。
それに、俺は何度もうんうんと頷いて返してから、ちょっとだけ考えてから口を開く。
「なぁ、なぁ、10年後の俺もカッコよかった?」
「………」
わくわくしながら質問した俺に、ツナがそっと視線を逸らしてしまう。
って、何でそこで視線を逸らすんだよ!!
「カッコいいとはちょっと言い難いぞ、どちらかと言えば、か……」
「リボーン!!」
俺の質問に視線を逸らしたツナの代わりと言うようにリボーンが口を開きかけたそれは、強く名前を呼ぶことで遮ってしまう。
な、何、なんで、そんなにツナは慌ててるんだろう……
行き成り大声でリボーンの名前を呼んだツナに、俺も驚いてツナを見る。
名前を呼ばれたリボーンは涼しい顔で、全く気にした様子も見せてないのに……
それどころか、何処か楽しそうな顔でツナを見てるんだけど
「何で、教えてやらねぇんだ?」
「教えなくってもいいんだよ!そんな事よりも、何であんな無茶な事したの!!」
更にリボーンは言葉を遮ったツナに、ニヤニヤと笑いながらからかう様に口を開く。それに今度はツナが不機嫌に怒鳴って、行き成り俺に対して説教を始めてしまった。
な、何で行き成り説教なんだろう……いや、確かに無茶した自覚はあるんだけど、だけどそれは咄嗟の事だったし、10年バズーカの事を知らないんだから、仕方ないと思うんだけど
そ、それに、すっごくツナが不機嫌なような気がする……も、もしかして、10年後の俺が、何かしたんだろうか??
「聞いてるの、!」
「き、聞いてます!!」
考え事をしていたら名前を呼ばれて、ビシリと姿勢を正す。
その間にも、ツナの説教が長々続く。
ほ、本気で10年後の俺が何かしたんだろうか……だから、俺、こんなにも怒られてる?それって、理不尽なんだけど……
10年後のツナも、どっか様子が可笑しかったし……俺と喧嘩したって言ってた……仲直りしてくれるといいんだけどな……
俺と喧嘩したんなら、直ぐに仲直りするとは思うんだけど
そう言えば、直感力が何かって言ってたような……それは、俺の事を心配してくれての行動だったんだから、直ぐに仲直りできると思う。
それにしても、最後に聞こえて来たあの声
『、オレが好きなのは、だけだよ……』
あれは、本当に空耳だったんだろうか?
「お願いだから、無茶だけはしないで……オレには、だけが大切なんだから……」
ぎゅっと抱き締められて意識が現実へと引き戻される。
何時もそうだ。ツナは俺が無茶な事をして怪我をした時や怪我をしそうになった時、こうして抱き締めてくれる。
そして言うのだ、俺だけが大切なのだと……
今にも泣きそうな声で
「ごめん、ツナ……本当に、心配掛けてごめんね」
そして俺も、そんなツナを抱き締め返す。
今、ここに俺がちゃんと居る事をツナに知ってもらいたいから
だから、俺はツナを抱き締め返す。
「謝らなくっていいから、無茶な事だけはしないでよ!」
そして決まって返ってくるのはツナの言葉。
それに俺は思わず笑ってしまった。
ねぇ、10年後もずっとこんなやり取りを続けているんだろうか?
そうだったら、いいのにね……
でもね、一番いいのは、ツナが幸せになってくれる事だよ。
なんて、本人には絶対に言えないんだけど……