今日のダメツナは、気持ち悪いぐらいに機嫌が良い。
自分の勘が、その理由を尋ねる事を拒否している事を考えれば、きっと碌な理由じゃねぇのだろう。
「で、仕事は順調なのか?」
昨日、溜まっていた書類は片付けたが、それで仕事がなくなった訳ではない。
それを証拠に、机の上には山積みの書類が置かれている。
なのに、ダメツナはニコニコと上機嫌なのが気持ち悪い。
「見ての通りだよ」
オレの質問に、ダメツナが笑いながら返事を返してくる。
見ての通りの状況は分かっているが、何でこんなに機嫌がいいのかは分かりたくもない。
「そうみてぇだな」
「って言っても、今は急ぎの書類はないみたいだから、何時も通り終わらせていくよ」
だからこそ、オレが返せたのは無難な返答だったが、それに対してダメツナが、終わった書類を前に置き、新しい書類を取りながら返してくる。
確かに、今ここにある書類は急ぎのものではない。
何時も通りの量なのだから、ダメツナだけでも大丈夫だろう。
そして、ここで漸くあの小さな気配が傍にない事に気付いた。
元々あの子供の気配は薄いが、それでも小さな気配に気付けねぇほど落ちぶれてはいない。
なのに、その気配を感じられないのだ。
このダメツナが、子供を遠去けるはずはねぇから、部屋の近くに気配を感じられねぇのは、明らかに可笑しいだろう。
まだあの子供が来て2日しか経ってねぇのに、あの気配がダメツナの傍にあるのが当たり前の事として捕らえられている。
「雪はどうしたんだ?」
「雪?まだ寝ていたからそのまま寝かしてきたけど、そろそろ起こして朝ご飯食べさせた方がいいかな」
だからこそ、その気配が気になって質問すれば、ダメツナがあっさりと口に出したその内容に、思わず眉間に皺を寄せてしまった。
あの子供が、まだ寝ていたと言う事に対して、疑問に思う。
「どうかしたの?」
不審な表情をしたオレに、ダメツナが不思議そうに質問してくる。
「まだ寝てたのか?」
「多分、まだ寝ていると思うけど……何か問題がある?」
「………ダメツナ、直ぐに様子を見て来い」
ダメツナの質問に質問で返せば、分からないと言うようにまた聞き返して来た。
それに一瞬考えてから、ダメツナに命令する。
「様子を見て来いって……」
「いいから、さっさと行ってこい!」
オレの命令に訳が分からないと言うように呟く言葉を遮って、更に命令すればそれ以上何も言わずに椅子から立ち上がって部屋から出て行く。
それを見送って、ため息をついた。
警戒心の強い子供が、こんな時間まで起きてこないと言う事が、可笑しい事だとダメツナは気付けないからこそ、ダメツナのままなのだ。
子供が、起きてこない。
いや、多分、起きられないと言う事に気付けないのが……