どらいやぁって言う怖い物をつなよしが、近くのテーブルの上に置く。
怖い音と風が止んでも、体がカタカタ震えるのを止められない。

今まで、あんな音も温かい風も知らなかったから、本当に怖かった。

だから、怖い事=悪い事をしたお仕置きと言う方程式が出来上がっていたから、必死で謝罪の言葉を口に出す。

(セツ)、謝るのは、こっちだから、ごめん。ドライヤーが怖かったんだね」

何度も謝罪の言葉を繰り返していた自分に、つなよしがそっと謝罪の言葉を口にして自分を抱き締めてポンポンと優しく背中を叩いてくれる。
それに、漸く自分は落ち着く事が出来た。

「ごめん、ドライヤーをそんなに怖がると思ってなかったんだ。雪を傷付けるつもりはなかったんだよ」

もう一度謝罪の言葉を口にしたつなよしが、ベッドに座り直しその膝の上に自分を座らせて、顔を真っ直ぐ見詰めてくる。
本当に申し訳なさそうな表情をして自分の頭を撫でながら謝罪するつなよしに、自分はフルフルと首を振って返した。

「つなよし、あやまる、ちがう。ごめん、なさい」

つなよしは、なにも悪くない。
だって、自分が勝手に怖がって、つなよしを困らせてしまったのだ。
だからこそ、自分がすべて悪い。

真っ直ぐつなよしの顔を見る事が出来なくて、思わず俯いてしまう。

「いや、だからね、雪が悪いんじゃないから、謝らなくていいんだよ」

下を向いた自分に、慌てているつなよしがそう言ってくれるけど、自分がしてしまった事を考えたら、どうしても顔を上げる事が出来なかった。
そんな事をすれば、優しいつなよしがもっと困ってしまうのは分かっていたけど、どうすればいいのか分からなかったから

「えっと、本当は、雪は何にも悪くないんだけど、もし雪が悪いと思っているなら、今日はオレと一緒に寝てくれる?」
「いっしょ、ねる?」

だけど、恐る恐る質問された内容に、驚いて思わずその顔を上げて聞き返してしまう。
いっしょにねるって、自分とつなよしが?

言葉の意味が分かるけど、まさかそんな事言われるなんて思いもしなかったので、不思議だったのだ。

「そう、ここで一緒に寝てくれる?」

自分が見詰める中、つなよしがもう一度同じ言葉を繰り返す。
自分なんかと一緒に寝ることで、つなよしが許してくれるのなら、なんでもない。
だけど、本当に自分なんかと一緒に寝たいなんて思えるのだろうか?
じっとつなよしを見れば、どこか期待したような表情をしていたので、思わずコクリと頷いて返してしまった。

「有難う、雪」

頷いた自分に、つなよしが嬉しそうな表情でお礼の言葉を返してくれる。
だけど、何でお礼を言われたのか分からなくて、ただ綺麗な顔をしているつなよしを見上げてしまう。
そんな自分に、つなよしがもう一度同じ顔をした。

その顔が不思議で、そっと手を伸ばしてその頬に触れたら、また同じ顔。
自分は、その顔が好きなのかもしれない。

だって、その顔を見ていると、嬉しいと思えるから