ドライヤーを持って、(セツ)に近付いたら、凄く怯えている事に気付いた。
突然ギュッと目を瞑って、体を抱き締め、まるで隠れようとするように出来るだけ小さくなる。

そして、しきりに謝罪の言葉を口に出しているのが聞こえて来た。

それに気付いて、慌ててドライヤーのスイッチを切り、直ぐ近くのテーブルの上に置く。

「雪、謝るのは、こっちだから、ごめん。ドライヤーが怖かったんだね」

そっと触れた雪の体は、小さくカタカタと震えていた。
余程、ドライヤーが怖かったのだろう。

初めて怯えを見せた雪を慰めるようにその体を抱き締めて、ポンポンとあやす様に背中を叩く。
それが良かったのか、直ぐに雪は落ち着いてきた。

「ごめん、ドライヤーをそんなに怖がると思ってなかったんだ。雪を傷付けるつもりはなかったんだよ」

落ち着いてきた雪にもう一度謝罪して、ベッドに座り自分の膝に雪を座らせて、その顔を正面から見詰める。
恐怖からか、少し冷たくなってしまった体温に、本当に悪い事をしてしまったのだ思う。

「つなよし、あやまる、ちがう。ごめん、なさい」

本当に申し訳なくて、優しく少し濡れている髪を撫でながら謝罪したオレに、フルフルと首を振って、雪がもう一度謝罪の言葉を返してきた。
シュンとして、俯いてしまった雪に気付いて、慌ててしまう。

「いや、だからね、雪が悪いんじゃないから、謝らなくていいんだよ」

すっかり落ち込んでしまっている雪に、悪くないんだと言っても、まったく顔を上げてくれない。
本気で、どうしたものかと考える。

「えっと、本当は、雪は何にも悪くないんだけど、もし雪が悪いと思っているなら、今日はオレと一緒に寝てくれる?」
「いっしょ、ねる?」

そして、一ついたずら心が働いて、雪に恐る恐る質問するように言えば、不思議そうに雪が顔を上げて首を傾げながら聞き返してきた。
その顔には、やはり表情と呼べるものはなかったけれど、瞳が不思議そうにオレを見詰めてくる。
この瞳の色だけが、雪の心を色濃く映し出す鏡のようだ。

「そう、ここで一緒に寝てくれる?」

不思議そうにオレを見上げてくる雪に、もう一度同じ言葉を伝える。
雪は、じっとオレの事を見上げてから、ゆっくりと頷いてくれた。

「有難う、雪」

頷いてくれた雪の行動が嬉しくて、笑みを浮かべてお礼を言えば、また不思議そうにオレの事を見上げてくる。
その顔に、オレはもう一度笑みを浮かべた。