(セツ)を連れて、自室に戻り、ベッドにゆっくりと寝かせる。
自分もさっさと休む為に、シャワーを浴びてパジャマに着替えてベッドに戻ると、寝ているだろうと思っていた雪が起きていた。

「起きてたの?」

ベッドの上に座ってまるで訳が分からないと言うように呆然としている雪へと声を掛ければ、オレの声に反応して雪が振り返る。

「ここ、つなよしの、へや?」

どうやら、本当に自分が何でここに居るのか分からなかったのだろう。
小首を傾げながら質問してきた内容に、頷いて返す。

「そうだよ、雪は寝ていたから、オレが運んで来たんだ。汗かいているだろうから、シャワー浴びる?」

雪の質問に答えて、オレも質問で返す。
今日は買い物にも行っていたし、炎天下の中しばらく外に居たのだからさっぱりしたいだろうと思って質問すれば、フルフルと首を振って返してくる。
それから、何故かヨロヨロとベッドから下り出した。

「雪?」
「ここ、ねる、だめ」

突然の行動に不思議に思って名前を呼べば、ベッドから降りた雪がフルフルと首を振って返す。
ここで寝るのは、ダメって、誰がそんな事言ったんだろう?

「どうして、ここで寝ていいんだよ」
「だめ、なの、よごれる、から……」

雪の言葉に疑問に思いながらも言葉を返せば、またフルフルと首を振って返してきた。
その行動から考えると、施設に居た時に植付けられた考えなのだと分かる。
汚れるなんて、こんな綺麗な子に何故そんな酷い言葉を言えるのかが理解できない。

「そんな事ないよ。雪は、ちゃんとお風呂に入って綺麗になったし、もし汚れているって思うのなら、今からシャワーを浴びれば綺麗になれるよ」

そんな雪の考えを覆すように、出来るだけ優しく声を掛ければ、赤い瞳が不思議そうにオレの事を見詰めてきた。

「しゃわー、あびると、きれいになれるの?」

そして、不安そうな声が質問してくる。

「そうだね。寝る前にお風呂に入ったりシャワーを浴びたりして一日の汚れを落として綺麗になるんだよ」

真っ直ぐにオレを見上げてくる雪に、笑顔を見せながら言えば、その瞳が少しだけ驚いたように見開かれた。

「きれいに、なれるの?」

そして、恐る恐る質問されたそれは、まるで自分が汚いモノだと言っているようだ。
そんな自分でも、綺麗になれるのかと言うように質問されたその言葉に、オレは力強く頷いて返す。

「勿論、誰だって、綺麗になれるよ」

そう、血に塗れた体だって、綺麗にしてくれる。
見た目、だけならね……

「しゃわー、あびても、いい?」
「勿論だよ」

心の中で思った事を表面に出す事はせず言ったオレの言葉に、不安そうに問い掛けられて頷いて返す。

その後、オレはもう一度雪と一緒にシャワーを浴びた。
こんな事なら、最初から一緒に入れば良かったかもしれない。

まぁ、でもこれで、雪がベッドで寝てくれると言うのなら、安いもんだ。