眠っている(セツ)を見ながら、少しだけ気分が落ち着いた。
モヤモヤしていたあの気持ちは、リボーンが説明してくれた内容で素直に納得出来たからだろう。

ただ、どうして、あんなにも気に入らないと思ってしまったのか、自分でも良く分からない。

「それにしても、ダメツナの気配でも目を覚ましたって言うのなら、見事だぞ」

自分の気持ちを考えていたオレの耳に、リボーンが感心したように呟いた声が聞こえてきて、意識を引き戻される。
確かに、雪はオレの気配でも目を覚ましたけど、それはオレが気配を消して近付いた訳ではないからだ。

もしも、オレが気配を消して近付けば、雪がどう反応するのかは分からない。

「いや、流石にオレは、気配を消して近付いた訳じゃないよ」
「そうなんですか?」

リボーンの呟きを聞いて、苦笑を零しながら言った言葉に、隼人が不思議そうに聞き返してくる。

流石に、自室で気配を消すなんて事はしていないからね。

でも、今はちょっとだけ後悔している。
そうすれば、雪に警戒されなかったかもしれないのだから

「ダメツナが、言っただろうが、常に気配を消せねぇなんて、情けないぞ」
「自室でぐらい、寛いでもいいだろう」

素直に白状したオレに対して、リボーンが文句を言ってくる。
それに、オレはため息をつきながら返した。

後悔していたとしても、流石にずっと気を張っている事なんて出来る訳がない。
そんな事を日常的に行えるのは、目の前に居る元家庭教師であり、今でも世界一のヒットマンと言われている、リボーンぐらいだろう。

「ダメツナだな」

ため息をつきながら返したオレに、リボーンがボソリと言った言葉は、聞き流す。
何時まで経っても、ダメ出しされるのは分かっているので、今更何を言われても気にしない。

「それじゃ、もう片付いたから、隼人は部屋に戻っていいよ。手伝ってくれて、有難う」
「いえ、オレなんかでもお役に立てるなら、幾らでも使ってやってください!!」
「また、お願いする事があるかもしれないから、その時は、宜しく」
「はい!10代目のお役に立てるのなら、喜んで!」

隼人の入れてくれた紅茶を飲み終えてから、作業が終了したので素直にお礼を言えば、嬉しそうに返事が返される。
それに対して返ってきた言葉に返事を返せば、元気良く戻ってくる返事。

本当に、昔から変わらないよね、隼人は

「有難う、お疲れ様」
「お疲れ様です!では、お先に部屋に戻りますね」
「うん、お休み」
「はい、お休みなさい、10代目、リボーンさん」

そんな隼人に再度お礼を言って、労いの言葉を言えば、礼儀正しく頭を下げる。
そんな隼人に、お休みの挨拶を言えば、嬉しそうな笑みを浮かべて同じ言葉を返された。

オレは、直ぐには、寝られそうにないけどね。
隼人が出て行くのを見送ってから、ため息をつく。

「煩い奴が居なくなると、一気に静かになるな」

その瞬間聞こえてきたのは、リボーンの呟きで、思わずその言葉に苦笑を零してしまった。
確かに、隼人が居なくなっただけで、部屋の中が静かになったように思うのは、存在感を主張している存在だからかもしれない。

まぁ、そんな事本人には絶対に言えないけど

「書類系で手伝って貰えるのは、隼人だけだから、助かるんだけどね」
「そうだな。………で、お前は、何を考えていたんだ?」

苦笑を零しながら言ったオレの言葉に、リボーンが同意して、少しだけ考えてから問い掛けられたそれに言葉を失くす。

自分が、何を考えていたのかだって?
そんな事、オレだって分かっていないのだから

「自分の気持ちが、良く分かってないんだ。こんな事、初めてかもしれない」

武の言葉に、なんとも言えない気持ちになったり、リボーンを警戒しなかったのだと知った時に感じた、モヤモヤした胸の想い。
それが、一体なんなのか、自分でも分からないのだ。

「……ダメツナは、ダメツナのままだな。まぁ、その内その気持ちが何なのか、理解できるだろう。んじゃ、オレも先に休むぞ」
「ああ、お休み、リボーン」

オレの考えを読んだように、呆れたように呟かれた内容は、意味の分からないものだったが、ソファを立ち上がりながら言われた最後の言葉に、慌てて挨拶の事を口に出せば、手を振りながら部屋から出て行く。
それを見送って、オレはもう一度ため息をついた。

部屋の中には、分からない気持ちを抱え込んだオレと、静かに眠る雪だけが残される。