「・・・あり、がとう・・・・・・・ここ、いる、うれしい・・・・・」
そう言った子供の顔には、表情と呼べるモノは見えなかったが、ここに来て、初めて感情と言うものが見えたような気がした。
もしかしたら、笑顔を見せる日も遠くはないのかもしれない。
それには、ダメツナであるこいつが居れば大丈夫だろう。
誰かの心を開く事にかけては、天性のモノを持っているからな。
それは、こいつの母親が無条件にどんな子供でも受け入れていたのと同じように
その本質は、マフィアのボスになった今でも変わる事はない。
それだけは、こいつの中で認めてやれるところだな。
もっとも、ダメダメなのは今も健在で見ているとハラハラさせられちまうが、遣る時はしっかりと遣る、今では表では立派なボスと言ってもいいだろう。
引き取った子供と一緒に夕食を食べている教え子を見ながら、そんな事を考える。
「そう言えば、リボーンは夕飯食べたのか?」
そんなオレに、綱吉が質問してきた。
それに合わせて、子供の視線も自分へと向けられる。
赤い瞳は、本当に宝石のようで、感情など何一つ写してもいない。
それは、子供とは呼べない無表情な顔。
「ああ、もう終わったぞ」
「そっか、終わってなかったら、準備してもらって一緒に食べようかとも思ったんだけど……」
「どっかのダメダメが、書類を終わらせられねぇから、手伝いに来てるんだ。それとも、手伝いは必要ねぇのか?」
「えっ?!リボーンが、書類手伝ってくれるの?!」
そんな子供から視線を綱吉へと向けて、質問に答えれば残念そうに返してくる。
それに対して、呆れたように返せば、心底驚いたと言うような言葉が返って来た。
確かに、オレが書類を手伝う事は殆どない。
だが、今日は子供の為に手伝ってやってもいいと思えたのだ。
こんな事は、もう二度とないかもしれない。
「仕方なくだ、雪の面倒を見なきゃいけねぇんだからな。獄寺にも手伝わせろ」
「……有難う、リボーン。助かるよ」
ため息をつきながら返したそれに、笑顔で謝礼の言葉が返される。
本気でそう言うところは、昔のまま変わらない。
そんな綱吉とオレを子供は何も写さない瞳で見ていた。
ああ、確かに、こいつに感情と言うものを教えてやりたいといった綱吉の言葉に、今なら同意できる。
こいつが笑えば、確かに可愛いだろう。
まるで人形のようなその顔を見て、そう思わずには居られなかった。
そして何よりも、ここに居られる事を喜んでいる子供に対して、情が移らないはずもない。
雪と書いて、セツ……本当に、ぴったりの名前だ。
白で連想されるのは、雪。
そして、赤い瞳は刹那の色。
両方を持つこの子供に、一番似合いの名前。
「お前の為じゃねぇ、雪の為だからな」
笑顔で謝礼の言葉を述べたダメツナに対して、フンと素っ気無く返事を返す。
そうすれば、またダメツナが嬉しそうに笑った。