「オレはね、この色が好きなんだよ」
綺麗な白と、命の色だと言ってくれた。
ずっと、気味の悪いと言われていた自分のその色を、綱吉は初めて会ったあの時から綺麗だと言ってくれた。
沢山の人を見たけれど、自分と同じ色を持つ人は独りも居なかったのに
だからこそ、自分は気味の悪い色を持っているのだと、そう改めて思い知らされたのだ。
でも、この人は、自分の色を好きな色だと言ってくれる。
あの自由など許されなかった檻のような場所で、自分はただ気味の悪いガキで、誰からも嫌われていた。
売られる事が決まった時には、厄介払いが出来ると男達が話していた事も知っている。
だからこそ、目の前の人が言ってくれた言葉は、信じられないものだったのだ。
「・・・・・・・きみ、わるい、いろ、ちがう?」
「気味が悪いなんて思わない。雪の色は、オレが好きな色なんだから!」
恐る恐る質問した自分の言葉に、またギュッと強く抱き締めて返されたそれは、先程言われたそれと同じもの。
抱き締めてくれるその力は、自分にそれを伝える為の強さ。
「雪の色は、雪だけが持っている綺麗な特別な色だよ」
「・・・・・・・あり、がとう・・・・・・・」
必死で伝えてくれるその言葉に、感謝の言葉を返すことしか出来ない。
でも、自分のこの気持ちを伝える為に、抱き締めてくれる綱吉の服をギュッと掴んだ。
「で、お前等は、何やってやがるんだ?」
「リボーン!何時の間に?!」
その瞬間、呆れたような声が聞こえて、驚いたように綱吉が声を上げる。
その声と共に、掴んでいた手をパッと離した。
綱吉は、自分の事を綺麗だと言ってくれるけれど、こんな子供に懐かれている所なんて、誰かに見られたくないだろうと思ったから
でも、綱吉はずっと自分の事を抱き締めたままで、リボーンに文句を言っている声が聞こえる。
「行き成り入ってくるなよな!雪が、吃驚してるだろう!!」
「……なんだ、名前は決まったのか?」
だけど、綱吉に文句を言われても、まったく気にした様子もなく、リボーンは言われたその言葉に聞き返してきた。
「決まったよ。雪(と書いて、『セツ』だよ」
「こいつにぴったりの名前だな。ダメツナにしては、頑張ったじゃねぇか」
そういった瞬間、リボーンが自分の頭にポンッと手を添えてくる。
それから、ワシャワシャと少し乱暴に頭を撫でられた。
「ちょっとリボーン!雪は繊細なんだから、乱暴に扱うなよな!」
「ああ、うるせーぞ、ダメツナ」
それに対して、綱吉が文句を言えば、鬱陶しいと言うようにリボーンが返す。
その手は、まだ自分の頭に触れたままで
躊躇いもせずに、自分に触れてくれるリボーン。
それは、武や隼人、恭弥も同じ。
ここに居る人達は、確かに自分の事を気味悪いとは言わない。
それどころか、普通の子供と同じように接してくれている。
「・・・あり、がとう・・・・・・・ここ、いる、うれしい・・・・・」
ここに今居られるから、自分はこんなにも幸せなのだと思えるのだ。
その気持ちをくれたのは、自分を抱き締めて抱き上げてくれたこの人が居てくれたからこそ
だからこそ、どんなにお礼を言っても言い足りない。
自分に、呼ばれる名前をくれた。
そして、何よりも、嬉しいと言う気持ちを教えてくれたのは、この人が初めてだから