名前をもらった。
それは、自分と言う人間を認めてもらえた証。

自分の事をうさぎと呼んでくれた友達が居る。
それは、自分のこの目と同じ色を持つ動物だと教えてもらった。

だけど、自分はうさぎが、どんな生き物なのか見た事がない。

自分の事をうさぎと呼んでくれた友達は、旅をしているから本当に数えるぐらいしか自分の所には来てくれなかったけれど、色々な話を聞かせてくれた。
自分の知らない世界の事を聞かせてくれた、大好きな友達。

自由な友達には名前なんてないけれど、それが普通なのだとも教えてくれた。
だけど、人間に名前がないのは変だと言われたから、自分に名前がない事は可笑しな事なのだとちゃんと分かっている。

でも、あの場所に居る子供に名前がないのは普通で、名前など必要のないものだったから
自分達は、商品としか見られていなかったのだ。

だからこそ、自分の名前を貰えた事が嬉しかった。

うん、これが嬉しいって言う気持ちなのだと思う。
だって、心の中がポカポカと温かくなったのだから
自然とその言葉が、自分の口から出たのだと思う。

嬉しいと言う気持ちを言葉にしてから、初めて理解する。
嬉しいって気持ちは、こんなにも心が温かくて、知らず顔が動いたような気がした。

「気に入ってくれて、オレも嬉しいよ。(セツ)が喜んでくれた事が、一番嬉しい」

一瞬自分の顔を見てから少し驚いたような顔をした綱吉が、でも次の瞬間には本当に嬉しそうな顔を見せてくれる。

どうして驚いたのか自分には分からないけど、綱吉が嬉しそうな顔をしてくれたのが自分には嬉しかった。


ああ、これも嬉しいんだ。


自分は、綱吉が笑ってくれるその顔を見るのが嬉しい。

「・・・つなよし、うれしい、うれしい・・・・・・」

自分に自由をくれた綱吉。
自分の事をキレイだと言ってくれたのは、綱吉が初めてだった。

普通の色とは違う色を持つ気味の悪い子供を、キレイだと言って抱き上げてくれたのは、この人が初めてだったから


真っ直ぐに綱吉を見ながら、自分の気持ちを口に出す。

今のこの気持ちを綱吉に知ってもらいたかったから

「……有難う、(セツ)

自分が伝えたその言葉に、綱吉が綺麗に笑ってくれたのが、やっぱり、嬉しかった。


ああ、自分ではなく、この人こそが綺麗なのだとそう思う。

自分に、嬉しいと言う感情を教えてくれた、この人こそが……