外の世界には、こんなにも沢山のモノで溢れているのだと言う事を初めて知った。
何もかもが珍しくて、興味はなくなる事はない。

初めて見る世界は、目に入るすべてがとっても色鮮やかなものだった。





買い物と言っても、全部隼人が選んでくれる。
自分の意見も聞かれたのだが、何を聞かれているのか良く分からなかったので首を傾げれば、苦笑されてしまった。

目の前に並べられている色とりどりの服は、色々な形をしていて、見ていてとても楽しい。
でも、それをまさか自分が着る事になるとは思ってもみなくて、『着替えて来い』と、隼人に言われてどうしていいのか分からなかった自分に、武が笑いながら手を貸してくれた。

今まで着ていた服から、新しく渡された服に着替える。

「流石獄寺、良く似合ってるのな」

着替えを手伝ってくれた武が満足気に呟いたそれに、目の前にある鏡を見て複雑な気持ちになった。
そこに居るのは、真っ白な髪に真っ赤な瞳の自分と、黒い髪に黒い瞳の武の姿。

この外の世界に置いても、自分の色は余りにも異質。

武は自分の姿を見て、似合っているという言葉をくれたけれど、正直言ってその言葉の意味がよく分からなかった。
だから、コテリと首を傾げて問い掛けるように武を見れば、また苦笑してポンポンと頭を叩くように撫でられる。

「服の大きさは問題なさそうだな。なら、適当に選んで、帰るぜ」

隼人も、子供の姿をザッと見て問題ない事を確認してから、しっかりと服を選んでいく。
一見適当に選んでいるように見えるが、しっかりと子供に似合いそうなものを選んでいるのは、明らかだ。

「んじゃ、これは着て帰るでいいよな」
「そうだな。服はこんなもんだろう。後は、季節ごとになるからな」

確実に決められていくそれを、何処か遠くに見ながら、もう一度自分の姿を鏡で見た。
明らかに、他の人達と違う色はそれだけで異質なモノのように見える。

「・・・・・・気味の悪い、ガキ・・・・・・・」

自分の事をそう言っていた男の言葉が、思い出されて思わず呟いてしまう。

まともに自分の姿を見た事のなかった子供にとっては、確かに自分の姿は普通の人達とは違いすぎる色を持っているのだという事を今初めて知ったのだ。

「んっ?なんか言ったか?」

子供の呟きを聞き逃した武が、不思議そうに問い掛けてくるそれにフルフルと小さく首を振って返す。

「そっか?んじゃ、会計も終ったみたいだから、さっさと帰ろうぜ」

言われた瞬間には、武によって抱き上げられて視界が一気に高くなる。
突然の行動に驚いて、子供は慌てて武の服を掴んだ。

「おい、お前は何か欲しいものはないのか?」

そんな自分に、会計を終らせてきた隼人が質問してくる。
質問されたそれに、子供はただフルフルと首を振って返した。

欲しいものなんて、何もない。

だって、欲しいものは、もう既に手に入れてしまったから


あの地獄のような日々から、自由と言うモノを貰った。


それが、子供がずっと欲しかったものだから