光は、突然目の前に現れる。
こんな自分にさへも、手を差し伸べてくれたのは優しい優しい人達。

もしも望めば、こんな自分でも幸せになる事が出来るのだろうか?






競売は、順調に進んでいく。
それを子供は、何も映さない瞳でただ見詰めていた。
次々に売られて行く子供達を
それを買う醜い大人の姿を、ただ見つめていた。

刻一刻と自分の番が近付いてくる中、その流れは突然の音と共に崩れ去る。

「そこまでだ」

聞こえて来たのは派手に扉を開く音と、リンと響く声。
その声に、反射的に子供は声のした方へと視線を向けた。


そこに在ったのは、光。


見たことも無い薄茶色の髪と琥珀の瞳を持つその人は、額とその手にオレンジ色の炎を持っていた。
その炎は、何者をも魅了するかのような輝きがある。
絶対的な力を持つ、炎の光。

「なっ、なんで、ボンゴレが!」

その色を見た瞬間、今まで子供達をモノとしか見て居なかった醜い大人達が驚きの声を上げる。
それは、恐怖と言う色をも含んでいた。

「・・・ぼんごれ・・・・・・」

聞えてきたその言葉に、ポツリと子供が口を開く。
だがそれは、その場を逃げようとしている者達に掻き消されてしまう。

「この場は占拠した、抵抗する者には容赦はしない」

圧倒的な力を見せ付けて、施設とは名ばかりの屋敷を制圧していく。
商品として扱われていた子供達は保護され、子供をモノとしか見ていなかった大人達はその圧倒的な力で罰せられていく。

「あれ?こんな所に人形があるなんて……」

その様子を子供は何も映さない瞳で、ジッと見詰めていた。
その場に座っている子供に気付いたのは、この部屋に一番初めに入って来た薄茶色の髪に琥珀の瞳と圧倒的な炎の力を持っていた男。
不思議そうに子供を見るその姿は、この中に入って来た時と明らかに違って、何処か幼い印象を受けた。

「ちげーぞ、それも子供だ」

不思議そうに呟かれたそれに対して、真っ黒なスーツ姿の男が呆れたようにため息をついて答える。

「こ、子供って、こんな綺麗な目をしてて、全然動かないんだけど……」

言われたそれに、呟いた男が驚きの声を出す。
全く動かない子供は、どう見ても生きている子供には見えなかったから
だが、驚きの声が聞こえたのだろう、初めて子供が小さく反応を示した。

「き、れい?」

聞えてきたその言葉の意味が分からないと言うように、それを繰り返す。
子供にとっては、一度も聞いた事のない言葉。
だからこそ、分からないと言うようにその言葉を呟く。

「わっ!本当に生きてる子供だ!」

ポツリと呟かれたその声が聞えて、漸く子供が生きているのだと分かったのだろう相手が、納得したというように頷く。
だが子供は声を出しはしたが、その表情は全く変わらない。
赤い瞳には、何も映されてはいなかった。

「……本当に、人形みたいだ」
「アルビノだぞ。マニアの間では高値で取引されているからな」

もう既に制圧された屋敷の中で、椅子に座って動かない子供に、興味が惹かれてそこを動く事が出来ない。
自分達が見詰めている中でも、子供は動かずにその瞳に何も映す事無くただそこに座ってるだけ
綺麗な赤い瞳を前に呟かれたそれに、黒尽くめの男が説明するように口を開く。

「アルビノって、名前は聞いた事はあったんだけど、本当に真っ白で真っ赤な瞳なんだね」

説明されたそれに、感心したように薄茶色の髪と琥珀の瞳持つ男が呟き、そっとその手を子供へと伸ばす。

突然伸ばされたその手に、子供が小さく反応するが、逃げる事はない。

「ねぇ、怯えてるんじゃないの?」

そこに来て、初めて今まで黙って様子を見ていた男が口を開いた。
この中に来た時には、その手に銀色の棒を持ち絶対的な力を持っていたのに、今はその手は前で組まれた状態で銀色の棒は何処にも見当たらない。

「えっ?でも、逃げませんよ」
「逃げねぇんじゃねぇぞ、逃げ方を知らねーんだ」

男に言われて、薄茶色の髪と琥珀の瞳持つ男が返事を返せば、それにまた呆れたように黒尽くめの男が口を開く。
言われた内容に、信じられないと言うように琥珀の瞳が見開かれた。
だがそれは本当に一瞬だけで、直ぐにこの場所を理解してその瞳に悲しみの色を映す。

「……そう、だったね。ここは、そう言う場所だった……」

「10代目!全ての者を捕らえました」
「子供達も全員保護したぜ」

寂しそうに呟かれた言葉に続いて聞こえて来た声が、この地獄と言う日々に終わりが来た事を告げる。


それは、本当に突然。

光は、目の前に降り注がれた。