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ずっと気になっとった事が解消されると、人間言うのは何とも現金に出来とるようで、腹が減ってしもうた。
良く良く考えたら、昼ご飯を食ってへんかった事実まで思い出す。
が、残念な事に立派な冷蔵庫はあるんやけど、その中身は見事なまでに空っぽで、今すぐ食べられるようなものはなんもあらへん。
お茶やらはちゃんと準備されとるのに、なして食い物の準備はされてへんのやろう。
せめてカップめんでもあれば良かったんやけど、それすらも見あたらへん。
「しゃあない。買い物には行かなあかんな」
財布の中身を確認して、何とか食材を買うぐらいの金額があるのに安心する。
もう、面倒やし、今日はカップめんでええわ。
他に、明日の朝食用の食材があれば何とかなるやろう。
とりあえず、この周りの確認を兼ねてスーパー探しやな。
出掛ける前に、管理人が居ったら挨拶ぐらいせなあかんやろう……
そう言えば、ちゃんとお菓子の詰め合わせぽいモノが用意されとったから、あれを持って管理人に挨拶に行けばええんやろう。
そう言う所はちゃんとしとるのに、なしてなんも食い物の準備がされてへんのや。
『?』
頭の中で、そないな事を考えとったら、心配そうな声に名前を呼ばれた。
そう言えば、ジョットは並盛の事を知っとるみたいやけど、スーパーの場所とか教えてくれへんやろうか?
「ジョット、買い物に行こうかと思うんやけど、スーパーの場所って教えてくれへん?」
『……分かった』
心配そうにオレの事を見ているジョットに、恐る恐る質問すれば、少しだけ考えてから頷いてくれる。
でも、なしてそないに間があいとるんやろう?
「嫌やったら、言うてくれてもええで、散歩しがてら探すさかい」
返事に間があるんは、気がのらへんからやろうと思うって、出来るだけジョットに迷惑を掛けないように言えば、困ったような表情をする。
その表情からは、嫌やと言う雰囲気は感じられへんのんやけど
でも、何でそないな表情を見せるのかが分からへんので、思わず首を傾げてしまう。
「どないしたんや?」
『……嫌な訳ではなく、私もそこまでちゃんとした地理を把握している訳じゃないからだ』
「なんや、それやったら大体の場所でええよ。目安が分かれば、助かるんやから」
不思議に思って問い返したオレに、複雑な表情のまま返ってきた言葉に、思わず笑ってしまう。
まぁ、ジョットはずっと誰かに憑いとったみたいなんやから、その人物の行動範囲しか分からんのは当然や。
だからこそ、別にそこまではっきりとした内容を求めとる訳やないから、気にせんでもええのに、ほんま、そう言う所は律儀なんやなぁ。
「とりあえず、探索やしこの辺に何があるかは知っときたいんや。それに、分からへんなったら、その辺の浮幽霊に聞きゃええんやしな」
『……………』
笑いながら返したオレに、ジョットが複雑な表情を見せる。
なんや、オレ変な事言うたんやろうか?
よう分からへんのやけど、ジョットが複雑な表情をするのにもう一度首を傾げながら、出掛ける準備をする。
言うても、ここに来る時に持っとったでっかいスポーツバックを置いて、ポケットに財布と携帯を入れるだけなんやけどな。
ポケットの中にこの二つがある事を確認してから、今度から必要不可欠な存在となるやろうカードキーと準備してくれとった菓子詰を手に部屋を出た。
ドアのキーは自動ロックになっとるようやから、忘れんようにカードキーは持ち歩かんとあかん。
忘れたら、管理人に言えば何とかしてくれるんやろうか?
自分が結構抜けとる自覚はしとるから、素直にそないな事を考えてしまうんは、間違いなくやらかしてしまうと言う自信があるからからや。
その時には、ジョットに頼んだらドアを開けてもらえるんやろうか?
それで何とかなるんやったら、助かるんやけどな。
「えっと、まずは管理の人に挨拶やな」
居ってくれると、ええんやけど……
入ってくる時は、居らんかった管理人の事を思い出しながら、エレベーターに乗り一階へと向かう。
軽い音を鳴らしてエレベーターが目的の階で止まり、ドアが開く。
それに従って、エレベーターを出れば、心配は杞憂に終わり管理の人はちゃんと管理室に居ってくれたんで簡単な挨拶を済ませてから、マンションを出た。
管理の人は気さくな人で、親切な事にこの辺の地理を簡単に説明してくれたので、有難い。
兎に角、今の目的は食いもんや!
近くに商店街がある言うとったから、そっちに行けばファーストフードぐらい売ってるやろう。
まずは腹ごしらえしてから、買い物した方がええかな?
「まぁ。行きながら考えるか」
今日の夕飯は、カップめんで決まりやし、明日の朝は普通にパンでええやろう。
って、米とかも買わんといかんのやったな、それは明日でええか……
流石に、今日はそこまでの手持ちがないから、夜に親父に連絡してその辺の事ちゃんと聞かなあかんよな。
そんな事を考えながら、教えられた商店街に向けてゆっくりとした足取りで歩き出す。
でもまさか、この買い物が人生を左右するものになるやなんて、今のオレが知るよしもなかった。
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