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綱吉はんのお袋さんが作った料理は、どれも美味かった。
久し振りや、こないにも心が温かくなるようなもんを食ったんは……
せやけど、オレが食べられたんは、綱吉はんの半分ぐらいやったんやけど
オレにとっては、かなりの量を食ったと思えるんやが、全然食べてへん言われてしもうたら、どないしたらええんやろう。
「くん、もう大丈夫なの?」
何とか自分に渡されたお茶碗に入っとったご飯を食べ終えてから、箸を置けば驚いたように綱吉はんに声を掛けられた。
大丈夫言うんは、これで足りとるから心配しとるって事やと思うんやけど、オレとしてはや何時も以上に食っとって、正直言って、かなり苦しい状態なんやけど
「十分過ぎるほど頂いた思うんやけど……」
そないに返したオレに、綱吉はんがなんや複雑な表情をする。
なして、そないな顔になるんか分からへんオレは、思わず首を傾げてしもうた。
『……私から言わせて貰っても、それだけで足りるとは思えないのだが……』
確かに、綱吉はんや隼人はんの半分も食ってへんのやから、ジョットが心配するんは当然かも知れへん。
せやけど、オレにはこれで十分なんや。
昨夜は今日の事を考えて殆ど夕飯を食べられへんかったから、こないにもお腹が空いてしもうたんやけど、ほんまやったら、1日ぐらい食わへんでも全然大丈夫なんやけど
こないにもお腹が空いてしもうたんは、ずっと気掛かりやった事が解決したから安心してしもうたからやと思うんやけど……
「心配せんでも、オレはこれで十分やで」
もう食えへんぐらい、お腹はいっぱいや。
正直言えば、こないに食べたんも久し振りなんやけどね。
心配そうに自分を見詰めとるジョットに、素直に今の自分の状況を説明する。
ほんまに、心配せんでも十分頂いとるんやけど
「いやいや、全然十分だとは思えないから!?」
せやけど、オレの返事は綱吉はんの言葉によって却下されてしもうた。
本人が十分やと言うとるのに、なして周りが心配するのかが分からへんのやけど
「お前、十代目のお母様が折角作ってくださっているんだぞ!ちゃんと食べねぇなんて、失礼な事してんじゃねぇよ!!」
続いて隼人はんからも、文句を頂いてしもうた。
確かに、まだまだ大量に料理は余っとるんやが、オレはもう食えへん。
これ以上食うたら、間違いなく吐いてまうやろう。
「…………せやな、ほなら折り詰めにして貰うてもかまへんやろうか?」
折角の料理を残すんは、確かに気が引ける。
せやから、折り詰めにして貰えへんか聞いてみた。
折り詰めにして貰えるんやったら、明日のご飯が確保出来るさかいオレとしてもほんまに助かるんやけど
「いや、持って帰ってもらうのは問題ないんだけど、お腹空いてたんだよね?本当にそれだけで大丈夫なの?」
隼人はんの言葉で、確かに残してしまうんは、綱吉はんのお袋さんに申し訳ないと考えて言うたオレの言葉に、綱吉はんが頷いてくれたんやが、その後に続けられたんは、やっぱり心配の言葉やった。
確かに、腹の虫を聞かれとるんやから、心配されるんは仕方ないのかもしれへんけど
「折角作ってもらっとるんやけど、ほんまにもう十分頂いとるんやけど」
「お前、少食過ぎだぞ」
「リボーン!お前、何時から居たんだよ!!」
「最初からだ」
素直に言ったオレの言葉に、今まで何処にいたのか突然オレの膝に乗っかってきたリボーンに対して、綱吉はんが突っ込みを入れる。
それに、きっぱりと返された言葉に、感心してしまう。
全然気付かへんかったんやけど、ずっと居ったんや。
突然膝に乗ってこられたんは、流石に驚いたんやけど
「って、お前なんでくんの膝に乗ってんだよ?!」
そして、当然のように綱吉はんが更に突っ込みを入れる。
でも、なして綱吉はんがそないに怒るんかが分からへんのやけど
「失礼だから、降りろよ」
「うるせぇぞ、オレの勝手だろうが」
いや、確かにどないな行動をするんもリボーンの勝手なんやろうけど、オレの膝なんやから一応許可とってくれるとありがたいんやけどなぁ。
流石に、急に膝に乗られるんは、心臓に悪いねんけど
「悪かったな。次からは、ちゃんと許可取るようにするぞ」
「えっ?あれ?」
思わず心の中で思ったんやけど、それに対してリボーンから謝罪される。
オレ、口に出してへんのに、なしてリボーンから謝罪されたんやろう?
それとも、
「オレ、口に出しとったんやろうか?」
「出してねぇぞ。オレは読心術が得意だからな」
えっと、それってオレの心を読んだって事なんやろうか?
それはそれで、楽やからええねんけど
「読まれても、いいのか?」
「別に気にせぇへんけど」
「えっ?!くん、勝手に心読まれても気にならないの?!!」
リボーンの意外な特技に感心しとったら、少し驚いたようにリボーンが質問してきた。
それに、不思議に思いながらも返事を返せば、今度は綱吉はんが驚いたように聞いてくる。
なして、そないに驚いとるんやろう?
「口に出さへんでも分かってもらえるんは、楽でええんちゃうんか?」
「いや、普通はそんな風には思えないから!」
せやから、問い返すように言えば突っ込みで返された。
分からへんのやけど、普通は、そんないなモンなんやろうか?
「そうか?オレも楽だと思うぜ」
「そんな風に思うのは、山本とくんぐらいだよ」
不思議に思もっとったら、武はんがオレに同意してくれたんやけど、それに対しても綱吉はんに突っ込まれてしもうた。
口に出さへんでもええんは、楽やと思う。
それに、心で思った事を口に出すんは難しいんやから、読んでもらえるんやったら、こないに楽な事はないと思うねん。
心が分かるんやったら、オレも分かりたい思うんやけど
そうすれば、おかんの本当の心かて分かる…………
いやや、分かりとうなんてない。
ほんまに、おかんに嫌われとるんやと知るんは、怖いんや。
人に心を読まれるんは、気にせぇへんけど、もしも自分が人の心を読めるんやとしたら、それはとても怖い事やと思う。
オレには、相手が何を考えとるのかを知る強さなんて、持ってへん。
そないに考えた瞬間、ポンポンとまるで慰めるように小さな手がオレの手に触れて来た。
「リボーン」
きっと、オレの心を読んだんやろう。
つぶらな瞳が、オレの事を見上げてくる。
その瞳を前にして、オレは小さく息を吐き出し気分を落ち着かせる事が出来た。
心が読める言うんやったら、オレとおかんの事を知られてしもうたんやろうか。
せやけどリボーンは、それを誰かに話す事はせぇへんやろう。
何となく、そないに思う。
せやから、こないにも落ち着いていられる。
そうやなかったら、オレは今頃ここから逃げ出していたやろうから
「くん?」
ホッと息を吐き出したオレに、綱吉はんが不思議そうに名前を呼ぶ。
オレは、何処か心配そうに見とる綱吉はんに苦笑をこぼす事で返事を返した。

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