綱吉はんの家に行く事が強制的に決定してしもうたので、現在家へと案内されとる。

 今日、初めて会うた人の家に行く事になるやなんて、考えもせぇへんかったんやけど
 やって、の家にさえ行った事がないんやで、やのに、生まれて初めて人様の家に行くんが、初対面の相手やなんて、普通に考えたら有り得へんやろう。

 迷惑やないとは言うてくれとるのやけど、どないしても躊躇ってしまうんは、仕方ない事やと思う。


「そう言えば、くん、帰りは大丈夫?何なら、送って行くけど」


 そないな事を考えとったオレに、綱吉はんが問い掛けてくる。

 確かに、今日着たばかりの土地やから、こないに歩き回ったりしたら家に帰れる自信なんてあらへん。
 せやけど、迷子にはならへん自信はあるんやで!


「心配あらへん。分かへんなったら、そこらに居てる人に聞くから気にせんでもええよ」


 もっとも、聞く相手は生きとらん人なんやけど

 綱吉はんに返答したオレに、ジョットが複雑な表情をしとるのが分かる。
 まぁ、ジョットはオレが生きとらへん相手でも、平気で話をする事を知っとるんやから当然の反応やろう。

 そう言うたら、昔からにも言われとったなぁ、生きとる人に話し掛けなあかんって……
 せやけど、人見知りな自分には、無理な話やねん。
 ええやん、生きてへんのやけど、ちゃんと人には聞いとるんやから!


「……なんだろう、その言葉に、微妙な違和感があるんだけど……」


 安心させるように言うたオレの言葉に、なんや綱吉はんが複雑な表情をしとる。
 その顔は、今のジョットと同じ表情なんやけど

 なんや、二人はシンクロしとるんやろうか?


「今の綱吉はんとジョットの顔がまんま同じなんやけど……」
「えっ?」


 二人の顔を見て、思わず呟いたその言葉に、綱吉はんが驚いたような自分を見てくる。

 なんや、変な事言うたんやろうか?

 ああ、そう言えば、心の中で呼ぶと決めた名前を思わず呟いてしもーたんやなぁ。


「思わず名前で呼んでしもうて、堪忍。嫌やったら、もう呼ばへんから」
「ううん、名前で呼んでもらって構わないよ。長いから、ツナって呼んでもらってもいいから」


 驚いた理由に気付いて、慌てて謝罪する。
 そりゃ、行き成り名前で呼ばれたら誰やって驚いて当然やろう。

 せやけど、謝罪したオレに、綱吉はんが首を振って返してくる。
 しかもや、名前呼びの許可をもろうてしもうた。

 ツナ言うんは、綱吉はんの渾名なんやろうか?
 せやけど、流石に許しをもろうても、渾名呼びは出来へんので、それは辞退させてもらおう。


「そんなら、これからも綱吉はんって呼ばさせてもらうな。ええと、他の人達はどないな呼び方したらええんや?」
「オレは、武でいいのな」
「なら、武はんでええか?」
「おう!」


 綱吉はんから許可をもろうたので、今度からは堂々と綱吉はん呼びしてOKって事やな。
 それから、他の人をどう呼ぶか考えるのが面倒やから直接質問すれば、山本武はん改め武はんが自己主張してくれたんで、確認のために名前を呼べば、これまた爽やかな笑顔で返されてしまう。
 やけど、獄寺隼人はんは、何も言うってくれへん。


「えっと、獄寺隼人はんはなんて呼べばええんや?」
「好きに呼べばいいだろう!」
「なら、一人だけ苗字は変やから、隼人はんって呼ばさせてもらうな」
「勝手にしろ!」


 不機嫌そうな顔をしとる獄寺隼人はんに声を掛けたら、好きに呼ぶ許可をもろうたから、獄寺隼人はん改めて、隼人はんと呼ぶ事にする。
 勝手にしろと言われたんやから、勝手に呼ばさせてもらおう。


「オレの事は、はん付けは必要ねぇリボーンでいいぞ」
「ええの?」
「気に入ったからな、いいぞ」


 3人の呼び方が決まった所で、今まで黙ってオレの足元を歩いとった黒づくめの子供改めリボーンが口を開く。

 まさか、呼び捨ての許可がもらえるとは思ってへんかったから、聞き返したオレにニヤリと子供らしくない笑顔で返されてしまう。
 何が、気に入ったのかは、よう分からへんのやけど


「ええっと、それは、おおきに言うた方がええのやろうか?」
「礼は必要ねぇぞ。どうしてもって言うんなら、オレを抱えて行きやがれ、流石に疲れたからな」


 自分の事を気に入った発言してくれたリボーンに、質問すればなんや命令口調で返されてしもうた。
 えっと、これは拒否権なしに、抱えて行けって事なんやろうか?


「リボーン!何、ズーズーしい事言ってるんだよ!くん気にしなくていいからね!!」


 考えてしもうたオレに、綱吉はんが突っ込みを入れてくる。
 綱吉はんは、そないに言うけど、見た目は子供なリボーンに、この距離は辛いと思うねん。
 オレとしても、抱えて行くんは、全然問題ないねんけど

 やけど、その前に


「綱吉はん、オレの事はでええよ。オレだけ名前呼びなんは、変やからな」


 綱吉はんが、オレの事を言うとるんやから、それを名前呼びにしてもらうんが先やろう。
 それに、ジョットと似た顔の相手から、苗字呼びされるんは、不思議な気分なんやけど
 まぁ、綱吉はんの方がずっと幼い感じやねんけどな。


「あっ!そうか、それじゃくんって呼ばせてもらうね」


 オレが言うた事に、綱吉はんが頷いてくれるんやけど、なしてくん呼びなんやろう?
 確か、オレの方が年上やった筈やねんけど……普通、年上を呼ぶんは、さん付けやないんやろうか?

 まぁ、別にくん呼びでも気にせぇへんのやけどな。


「それでええよ」
「んじゃ、オレはって呼ぶのな」
「しかたねぇから、オレもって呼んでやるよ」


 綱吉はんの言葉に頷いたら、武はんと隼人はんがそれぞれオレの事を呼び捨てにする言うから、頷いて返した。

 綱吉はんだけが、くん付けなんやなぁ。
 そう言えば、隼人はんの事も獄寺くん呼んどったんやから、呼び捨て出来へんのかもしれへんなぁ。


「んじゃ、リボーンはオレが抱えて行けばええんやろう?」
「頼むぞ」
「えっ?何で、そんな話になってるの?!」


 呼び方がそれぞれ決まって納得してから、リボーンへと声を掛ければ、綱吉はんが突っ込んでくる。

 なんや、綱吉はんは突っ込み体質なんやな。
 このメンバーやと、色々大変なんとちゃうやろうか?

 そないな事を考えながら、しゃがんでリボーンを腕に抱き上げる。
 思っとったほどの重さを感じへんかったから、これなら抱えて歩いても問題ないやろう。

 リボーンを抱き上げた時に、ジョットと綱吉はんがまた同じような表情をして自分の事を見とったんやけど、やっぱり、この二人シンクロしとるんやないやろうか?

 もっとも、その顔が複雑な表情やったんは、理由が分からへんのやけど……
 そないな事を思い出したんは、綱吉はんの家に着いてからやった。