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カッコよう去ろうとしたのに、それは情けなくも引き戻される事で邪魔されてしもうた。
しかもや、ジョットから言われたんは、オレとジョットとの繋がりが切れてへんのやと言うこと。
即ち、ジョットとは、離れられへん言う事になる。
申し訳なさ気に自分を見詰めてくるジョットに、呆然としてしまう。
一人になってしまうんやと、覚悟を決めとったのに、オレは、一人にならんでもええちゅうこと何やろうか?
でも、ジョットは綱吉言う人に憑いとったのに、今日会うたばっかりのオレの方から離れられへんようになるやなんて、ありえへんやろう!?
「そう言う事ならしかたねぇな、お前にプリーモの事を任せるぞ」
呆然としとったオレなんて関係なく、黒づくめの子供からあっさりとジョットを任されてしもうた。
「そうだね、オレ達には彼が姿を消していると見えないから、君と一緒にいる方がいいと思うよ」
綱吉言う人までもが、ジョットの事をオレに託してるんやけど、それでええんやろうか?
今まで色んな幽霊言われてるんは見てきたんやけど、オレ以外の人にも見えるようになる幽霊なんて、今まで一度も見た事ない。
そやけどや、行き成り姿を現した相手とも平然と会話しとったあんたらも十分普通やないと思うんやけど……
なんや、自分が何を考えとるのか、分からんようになってきた。
えっと、自分が普通やないんは、分かっとるんや。
んでもって、この人等かて明らかに普通やないねん。
やって、子供が玩具かも知れへんねんけど銃持っとるし、何よりも殺気なんてもんまで向けられたんやで、普通の子供には絶対に無理や!
しかもや、指輪が火事になるし、ほんまに訳が分からへん。
頭が、ごちゃごちゃしとる。
『、大丈夫か?』
グラグラし始めた頭を抱えたオレに、何時の間にかまた透けとる状態に戻っとるジョットが心配そうに問い掛けて来た。
それに綱吉言う人を見れば、既に燃えとった指輪の炎は消されとるみたいや。
どないに考えても、あの炎がジョットを実現化したんやと思うんねんけど、どないな原理なのかはさっぱり分からへん。
「……思考が追いついて行けへん、どないして、こないなことになってしもうたんや?」
考えれば考えるほど、どないして自分は冷静で居られたんやろうと思う程におかしな事ばかりや。
納得出来へん事が大量に起こると、人は混乱する言うんは仕方ない事やと思うねん。
そりゃ、普通の人より変な体験談が大量にあったとしてもや、許容範囲を超えとるんやから、混乱するんは当然やろう。
「まぁ、これも縁って奴じゃねぇのか、これからは仲良くしようぜ」
頭を抱えたオレに、オレを助けてくれた爽やか少年がにこやかに口を開く。
言われた内容も、十分に爽やかや。
そやけど、そないに簡単に納得できるものやないと思うねんけど、その辺はどないやろう?
「そんなに簡単な事じゃねぇんだよ!この野球馬鹿!!」
そう思とったオレと同じように感じたんやろう、銀髪の少年が呆れたように爽やか少年を馬鹿にする。
全く持って、その通りや。
離れられへんから言うて、幽霊とは言え人一人をそう簡単に任せられるもんなんやろうか。
しかもや、気付いてへんのならまだしも、彼等とジョットは確実に面識があんねんで
「そうかなぁ、とっても簡単だと思うよ。オレも、君と仲良くしたいって思うから」
困惑した表情で、この中で一番お人好しそうな綱吉はんを見れば、にっこりと笑顔で信じられへん返答を返されてしもうた。
「10代目!」
それに対して、銀髪少年が綱吉はんの事なんやろうけど、10代目と呼ぶ。
そう言えば、最初の時にも、彼は綱吉はんの事を10代目と呼んどったような……綱吉はんは、どっかの老舗のボンボンなんやろうか?
「プリーモが嫌がっているならオレも認めないけど、プリーモは彼の事を気に掛けているみたいだからね、問題があるとは思えない」
咎めるように銀髪少年に呼ばれたんであろう綱吉はんは、にっこり笑って銀髪少年を制した。
その笑顔は、なんやろう、逆らえへん迫力があるんやけど……
「……た、確かにそうかも知れませんが……しかし、こいつは」
「うん、一般の人だって言うのは良く分かってる。でも、オレは彼をこのまま一人にしちゃいけないって思ったんだ。どうしてそう思ったのか分からないんだけど、多分超直感だと思う」
綱吉はんに言われても納得出来てへん銀髪少年に、綱吉はんがまた良く分からへん事を言う。
一般の人やとか、超、直感?一体何の事や。
しかも、さらっと言われたんやけど、オレを一人に出来へんって、そないにオレは頼りなさそうに見えるんやろうか?
そう言えば、オレの年齢教えてへんのやから、なんや勘違いされとるような気がするんやけど
「あ、あんなぁ、一人に出来へん言うねんけど、オレは今日から一人暮らしする、立派とは言えへんかも知れへんのやけど、一応大人やねんど!」
「えっ?」
絶対勘違いされとるんやろうと思うて、オレはしっかりと自己主張してみた。
オレの言葉に対して、全員の視線が驚きの色を宿して向けられる。
黒づくめの子供までもが、驚いた顔しとるように見えるんは、オレの気の所為やないやろう。
「一人暮らしだと、お前、一体幾つなんだ?」
うっうっ、子供に年齢聞かれる、オレって……『そう言うお前は幾つなんよ』って返したいねんけど、そないな勇気が持てる訳もない。
じっと向けられとる視線を受けて、たじろぎながらも、ボソボソと口を開くのが精一杯や。
「……まだ完全に大人って言う年やないねんけど、これでも来月から高校1年や」
「え〜っ!高校1年って事は、オレ達より年上?!」
自信満々に返せへんのは情けないのかも知れへんが、何とか自分の年やのうって学年を言えば、綱吉はんが驚きの声を上げた。
他の2人も同じように驚いとるって事は、同じような事を思っとったんやろう。
「って、なしてそこでジョットも驚いとるんや?!」
確かジョットには、ウチの事情を話したと思っとったんやけど……
そう言えば、ジョットには年齢の事は話してへんかったんやっけ?
でも、今日並盛中で雲雀恭弥から、オレの為に高校入試問題を用意したとかとんでもない事を言われてたんやけど、それも聞いてへんかったんやろうか?
流石に小学生や中学生で一人暮らしなんて、せぇへんと思うねんけど
『……流石に、私もその年だとは思っていなかったんだ』
オレの突っ込みに対して戻ってきたんは、申し訳なさそうなジョットの表情とその言葉やった。
ほんまに、失礼やで!
そりゃ、見た目はこないやけど、ちゃんと高校生らしくりっぱに行動しとったと思うねん……とは、流石に言えへん。
やって、数日前までは、オレかてまだ中学生やってんやから、そないに直ぐに人間変われる訳あらへんやろう。
「……身長の事やったら、言わんといてや、オレかて気にしてんねんから……」
ああ、何やろうどんどん落ち込んで来たやないか。
そりゃ、初対面でオレの年齢を見事に当てられた事なんて一度もないねんけど、だから言うて、オレがそれを気にしてへん訳やないねんで!
身長低いんは、めちゃめちゃ気にしとるんやからな!!
「ええっと、オレもそんなに身長高い訳じゃないから気持ちは分かるけど、流石に、年上だとは思わなかった……ごめんね?」
ため息をついたオレに、綱吉はんが申し訳なさそうに謝罪してくる。
せやどなぁ、謝られる方が辛い時もあんねん。
何や、ほんまに悲しいなってきた。
「もう、ええよ。それじゃ、オレがジョットと一緒に居るんでええんやな……『ダメや』言われても、離れられへんのやから、無駄やろうけど……」
「えっ、うん。オレ達はそれでいいよ。君…えっと、貴方が、それでいいのなら」
「オレも、それでええよ。ちょっとはジョットと離れるん寂しい思っとったんやから」
何もかもを諦めて口を開けば、綱吉はんが、頷いて返してくる。
せやけど、心配そうに言われたそれに、オレはもう一度頷いて返す。
そこで、綱吉はんが、オレの事を君と言い掛けたんを貴方と言い直したんに気付いた。
そう言えば、自己紹介もしてへんかったんやっけ?
「年上やからって、口調は変えんでもええよ。そないに言うっても、まだ自己紹介もしてへんかったんやな、オレは綱吉さんの事は、知っとるのに……」
もっとも、知っとるのは名前だけなんやけど
「そう言えば……それじゃ、改めて自己紹介しておくよ。オレは、沢田綱吉。あっちの黒髪の方が山本武で、銀髪が獄寺隼人」
「宜しくなのな」
「けっ、誰が、宜しくするんだよ!」
オレの言葉に、綱吉はんも思い出したと言うように慌てて自己紹介を始める。
それに爽やか少年が、にこやかに手を振って、銀髪少年には悪態で返されてしもうた。
「えっと、オレは今日からこの並盛で一人暮らしすることになっとる、や」
「オレは、このダメツナの家庭教師で最強のヒットマンのリボーンだぞ」
紹介されたんで、オレも慌てて名前を言えば、黒づくめの子供からとんでもない自己紹介が返ってきた。
なんや、何処から突っ込めばええんか分からへんねんけど
ダメツナの家庭教師で、最強のヒットマンって……普通の子供やないんかい?!
こうして、オレは謎な子供と、明らかに普通やない仲間達と知り会うたんやけど、ほんまに無事にこの町で生きていけるんか、疑問に思うたんは仕方ないことやろう。
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