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言われたように指輪に炎を点せば、出来て来た人物はボンゴレ初代ボスであり、オレのご先祖でもあるプリーモその人で、予想はしていたけれど、本当にその姿が出て来たのだから、驚くなと言う方が無理な話だろう。
思わず驚いて、プリーモと大声で呼んでしまった。
そう呼んだオレに、関西弁の子が不思議そうな顔をしている。
それもそうだろう、彼はプリーモの事をジョットと呼んでいたのだから
「……なぜ、プリーモがそいつと一緒に居るんだ?」
当然リボーンも疑問に思ったのだろう、率直にプリーモへと質問。
やっぱり、プリーモと言われるその名称に子供は不思議そうにしている。
「お前達、今日は大阪へ日帰り旅行に行っただろう。それにデーチモに憑いている私も同行していたんだが、この子には姿を具現化していないのに見られていたから興味を持ったのが始まりだ」
「えっ?!プリーモって、オレに憑いてるの?!」
リボーンの質問に返されたプリーモの言葉に、再度驚きの声を上げてしまう。
突然大声を上げたオレに、関西弁の子がびっくりした顔をする。
「何を言っている。私は、指輪に残るモノだと言ったと思うが」
「へぇ〜、んじゃ、オレ等の指輪にもそれぞれ初代の守護者が憑いてるって事なのな」
オレの驚きにプリーモがあっさりと説明してくれるが、それってやっぱりオレに憑いているって事なんじゃ……
プリーモの質問に、山本が感心したように口を開く。
いや、それって、確実にオレ達に初代守護者の幽霊が憑いているって事なんだから素直に関心出来ないんだけど
でも、具現化していないプリーモが見えたと言っていたけれど、山本や獄寺くんに憑いている初代守護者は、彼には見えていないようだ。
それって、オレだけに幽霊みたいな存在のプリーモが憑いてるって事になるんじゃ……
「そう言う事か……」
プリーモの説明に思わず複雑な表情をしてしまったオレの耳に、リボーンの納得したと言うような呟きが聞こえて来た。
そう言えば、とんでもない説明で、すっかり忘れてしまっていた事実を思い出してしまう。
オレ達は、何も知らない子供に対して警戒しまくっていたんだと言う事を
この子は、今日偶然にプリーモと知り合って、プリーモに似ているオレを見てジョットと呟いたんだ。
マフィアとか殺し屋なんて、とんだ言掛かりだった。
そりゃ、殺気に怯えるのだって当然な訳だ。
この子は、ちょっと幽霊が見えるだけどの一般人だったのだから
「そ、それじゃ、オレを見てプリーモの名前呼んでも全然可笑しくないし、オレ達この子にとんでもない言い掛かり付けちゃった事なるんじゃないの!?」
とんでもない言掛かりで、こんな所にまで連れて来て、しかも、この子が言いたくない事まで暴いちゃったなんて、どれだけ失礼なんだよ、オレ達?!
大阪から出てきた子に、並盛は怖い所だって、インプットさせちゃったんじゃないだろうか?
いや、事実並盛って怖いところなんだけど……
風紀委員とか、風紀委員長とか……
特に、風紀委員長は、最強の恐怖のような気がするけど……
「ツナの言う通りなのな、悪かったな」
「けっ!そいつが紛らわしい態度をとるのがいけないんですよ!!」
申し訳なくて、思わず叫んだオレに、山本が素直に謝罪の言葉を口に出す。
それは、本当に申し訳ないと言った様子が伺えたんだけど、逆に獄寺くんは、何時ものように文句で返して来た。
確かに、すっごく紛らわしかったのは否定しないんだけど、だからって、何でそんな偉そうな態度なの?!
「獄寺くん!今回は、誤解したオレ達が悪いんだから、素直に謝ろうよ」
そんな獄寺くんに、オレはため息をつきながら態度を改めるように口を出す。
もっとも、そんな事言っても、改善されるとは思ってないんだけどね。
「気にしてへんよ。オレが紛らわしい事した言うんは、事実やからな」
獄寺くんを咎める様に言ったオレの言葉に、関西弁の子は小さく首を振りながら、獄寺くんの言葉に同意の意を示す。
まさかそんな言葉が返ってくるとは思っていなかったので、オレは少しだけ驚いた。
「野球馬鹿と違って、分かってんじゃねぇかよ」
それが獄寺くんには好印象だったらしく、満足そうな顔をしている。
獄寺くんがこんなにあっさりと、好印象になるなんて珍しい事だ。
多分、彼が年下だと見た目からも分かっているからかもしれない。
突然好感度の上がったと分かる態度を示した獄寺くんに、不思議そうな顔を見せる関西弁の子に、オレは思わず苦笑を零してしまう。
「獄寺くんは、あれが何時もの事だから、気にしなくて大丈夫だよ。でも、本当に誤解して、言いたくない事まで言わせちゃって、ごめんね」
きっと真意を測りかねているんだろう相手に、オレは気にしないように言ってから、ちゃんとした謝罪の言葉を口にした。
そんなオレに、目の前の相手は驚いたようにその瞳を見開いて、ジッと見詰め返してくる。
真っ直ぐに見詰めてくるその瞳を前に、またドキリとしてしまった。
「なして……」
そして、搾り出すように問い掛けてきたその声に、オレはどうしたものかと一瞬考えてしまう。
多分、それは彼の無意識の呟きだったのだろうから
「気に障ったんなら、謝るよ、ごめんね。君がね、自分の事を言った時、震えていたから……」
だからこそ、もう一度謝罪の言葉を口にして、オレがそう思った理由を正直に口にした。
あの時、必死に口に出した後、オレ達の反応を恐れていると分かったから
小さく震えていた彼を、オレは抱きしめて上げたいと、そう思った事だけは、秘密にして置く。
「、心配しなくても、お前を傷付ける者はここには、居ない」
理由を口にしたオレに、彼が怯えたような表情を見せる。
それに対して、傍に居たプリーモが優しく彼に声を掛けた。
その声を聞いて、彼の体から、スッと力が抜けたのが分かる。
ああ、何だろう、プリーモに対してちょっとだけ羨ましいと思ってしまった。
彼は、プリーモに心を許している事が分かるから
「ああ、脅しちまった事は、謝罪するぞ。悪かった」
そんなプリーモと彼を見ていたオレの耳に、珍しくもリボーンからの謝罪の言葉が聞こえてきた。
素直に謝罪したリボーンに、彼が驚いたようにリボーンを見る。
「リボーンが素直に謝るなんて珍しいな」
「悪いと思ったんなら、謝るのは当然だからな」
オレも素直に驚いたので、その気持ちを口に出せば、あっさり自分の間違いを認めるような発言が返ってきた。
そうだった、オレが気付いたのだから、リボーンが気付かないはずはない。
彼が、確かにオレ達に怯えていた事を
だからこそ、彼のトラウマを刺激してしまった事に対しての、リボーンからの謝罪。
「…………ほなら、オレへの用事は終わったんやろう?もう、行ってもええんか?」
リボーンの言葉からも完全に誤解が解けたと言う事を理解したのだろう彼が、少しだけ震える声で質問してくる。
きっと、オレ達が彼の弱い部分に気付いた事に対して、恐れているのだろう。
誰だって、自分の弱い部分など知られたくないモノだ。
「ああ、プリーモが世話になったみたいだからな、礼を言うぞ」
彼の質問に、リボーンが偉そうな態度で返す。
だけど、言われた内容に、彼は少し驚いたようにプリーモを見上げた。
そうだった、彼は偶々、プリーモと知り合っただけなのだ。
オレと言う指輪の宿主が見つかったのなら、彼とプリーモは別れる事になる。
「……短い間やってんけど、一緒に居れたんは、楽しかったで」
ジッと見詰められて、困ったような顔をしているプリーモに、彼は精一杯の笑顔で答えた。
その顔を見ていると、何とかして上げたいと思ってしまう。
「ほんなら、オレはもう行くな」
「行くって、一人で大丈夫なの?送って行こうか?」
まるで振り切るように、そう言った相手に、オレは慌てて質問していた。
このまま彼を一人にしてしまっていいのかが、分からなかったから
「オレは、一人でも大丈夫や」
だけど、オレの質問に返ってきたのは、まるで自分に言い聞かせるような響きの返答だった。
必死に言われたその言葉に、このまま彼を帰したくないと思ってしまう。
その思いが通じたのか、振り返って歩き出そうとした彼の体はその場所から動く事が出来なかった。
歩き出したその足が、まるで引き戻されるかのように後ろに引っ張られる。
いや、それはまるでプリーモと見えない糸で結ばれているかのように、その場から動かなかったプリーモに引き寄せられたように見えた。
何が起きたのか状況が理解出来なかったのだろう彼が、驚いたように辺りを見回す。
そして、その瞳がプリーモへと向けられる。
「…………、言い難い事なんだが、お前との繋がりが切れてないようだ……」
そんな彼の視線を受けて、困ったように呟いたのは、プリーモからのとんでもない言葉だった。
それに対して、絶句した彼の表情は、何とも言えない程、気の毒なものである。
だけど、あのまま彼を一人にするのは、避けたいと思ったオレには、好都合の展開だったのかもしれない。
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