|
警戒されまくりの状態やけど、オレが言うた事に従うて、人気の居らん所へと移動してくれたんはほんま、有難い。
せやけど、正直言うて、囲まれとる今のこの状況は、オレにとってはかなり有難くない状態なんやけど
自分が人見知りや言う事を自覚しとるだけに、こないに知らへん奴等に囲まれとるんは、辛すぎる。
しかも、囲んどる相手は、警戒態勢のままなんやから、落ち着ける訳もあらへんやろう。
人見知りやのうても、この状況は、有難くない思うねんけど
『、すまない』
今の泣きたくなる様な状況に、ため息をついたオレへ、ジョットが申し訳なさそうに謝罪してくる。
せやけど、そないに申し訳なさそうな顔で謝罪される事やないはずや。
この状況を作り出してしもうたんは、迂闊な事を口走った自分に非があるんやから、ジョット一人が悪いんやない。
「……こないになったんは、自分にも非があるんやから、気にせんでええよ」
申し訳なさそうに、自分を見てくるジョットに、何とか必死に笑みを返す。
もちろん、綺麗に笑う事なんて、今のオレには出来る訳もあらへんから、きっと笑顔は引きつっとると思うねんけど
「ここなら、いいだろう」
商店街の近くにあった、小さな公園。
そこに移動してから、黒づくめの子供が一番に口を開く。
確かにここなら、人は居らんし、誰にも迷惑は掛からへんやろう。
ジョットへと確認の為に視線を向ければ、頷いて返される。
「ここで、ええよ」
ジョットが頷いたんを確認して、オレも子供へ頷いて返した。
その間も、銀髪の少年は、オレの事を射殺さん程睨んでんねんけど……
オレを助けてくれた少年は、笑ってんのやけど、その目がちっとも笑ってへんから、逆に怖い。
『、綱吉に指輪を出すように言ってくれ』
「……分かった。それじゃ綱吉さん、指輪、出してくれへん」
本当は呼び捨てにしようかとも思うたんやけど、睨んでくる二人の視線を前に、平気な顔して呼び捨てに出来るほど図太い神経を持ち合わせてへんオレは、さん付けで綱吉言う人に声を掛けた。
当然その相手は、ジョット似の少年や。
オレが声を掛けたら、困惑したような表情を見せる。
どうやら、本当に指輪を出してもええのか、戸惑っとるみたいや。
どんな指輪か知らへんねんけど、そないに大事な指輪なんやろうか?
「……その前に質問するぞ。指輪を出したら、どうするつもりだ」
そないな事を考えとったオレに、黒づくめの子供が質問して来る。
指輪を出したら、どないするって……どないするんやろう?
『私が、直接説明しよう』
「えっ?そないな事、出来るんか?」
子供の質問に、それを申し出た当人であるジョットへと問い掛けるように視線を向ければ、信じられへん内容の言葉が返って来た。
思わず驚いて、オレはジョットへと聞き返してしまう。
「なんだ?」
聞き返すように言うたオレの言葉に、子供が聞き返してくる。
明らかに不機嫌だと分かる子供のその声に、どないしたらええのか分からず、困ったようにジョットを見てしまう。
『、そう言ってくれ』
そないしたら、ジョットが綺麗な笑みを見せて返して来た。
そう言ってくれって……言うても、ええって事なんやろうけど、この人達信じてくれるんやろうか?
「……指輪、出してくれたら、本人が説明する、言うてる」
「えっ?」
戸惑いながらも、ジョットが言うた内容を、口に出す。
こないな事言うても、信じてもらえるとは思えんのやけど、そう言うた瞬間、驚いたように綱吉言う人が聞き返してきた。
「本人が、説明するって……君は、プリーモ…いや、ジョットを知っているの?!」
戸惑いながら質問してくる綱吉言う人の言葉に、思わず首を傾げてしまう。
プリーモって、何やろう?
まぁ、言い直して、ジョット言うたんやから、ジョットに関係しとる事やとは思うねんけど、ジョットを知っとるかと聞かれれば、今現在目の前に居るんやから、知っとる事になるんやろう。
「知っとる言うか、今日知り会うたんやんけど……」
「どう言う意味だ。オレ達をからかってやがるのか?」
綱吉言う人の質問に、ボソボソと返事を返したオレに、黒づくめの子供が、イライラした様にまた銃を向けてくる。
「か、からかってへん!信じてくれへんやろうけど、オレには一般的に幽霊言われるんが見えるんや!」
また殺気を向けられるのを恐れて、慌ててきっと馬鹿にされるやろう自分の事を説明した。
こないな事言うても、信じてくれへん奴は、全然信じてくへんのやけど
それやのに、それが本当やと分かったら、気味悪がって誰も近付かんなるねん。
「…幽霊が、見えるだと………」
言った後に、思わず俯いてしまうんは、反応が怖いから
俯いたオレを心配するように、ジョットが近くに居ってくれるんだけが、今の救いや。
聞こえてきたんは、黒づくめの子供の声。
何かを考えるような響きをもっとるその声に、ビクリと肩が震えてしまう。
どないな言葉が返ってくるのかが分からへんだけに、怖い。
こないな時に、臆病な自分が嫌になるんや。
初めからすべてを諦めとったら、こないにビクビクせんでもエエんやろうに……
それでも、オレと言う人間を、受け入れて貰いたいと思うんは、贅沢な望みなんやろうか?
「ダメツナ、指輪を出せ」
「えっ?うん」
ギュッと握った手に、知らず知らずの内に力がこもる。
そんな中聞こえてきたんは、綱吉言う人に指輪を出せと言う命令口調。
それに対して驚いたんやろう、綱吉言う人が、頷く声が聞こえて来た。
今、気付いたんやけど、この子供は、綱吉言う人をダメツナって呼んどるんか?
なんや、綱吉言う人が気の毒になってきたんやけど
現実逃避するように聞こえてきた内容に、思わずそないな事を考えてしまう。
だけど、聞こえてきた内容をよくよく考えれば、指輪を出すって、オレの言った事を信用してくれたんやろうか?
恐る恐る顔を上げて、綱吉言う人を見れば、首から下げとる鎖に通された指輪を手に持って、それを指に嵌めとるんやけど
シルバーの指輪には、ブルーの石が嵌め込んであって、見るからに立派なんが分かる。
『、炎を点すように言ってくれ』
「はぁ、炎を点すって、どないな要望なんや?」
思わずその様子をボンヤリと見とったオレに、続けてジョットが通訳を頼んでくる。
やけど、言われた言葉の意味が分からずに、思わず聞き返してしもうた。
「分かった」
オレには意味が分からんかったんやけど、綱吉言う人には分かったらしく、頷いてから瞳を閉じてまるでその指輪に力を込めるかのように胸の前に持ってくる。
オレが見守っとる中、ボッとその指輪にオレンジ色の炎が点った。
って、ちょっと待て!火事や、今度は指輪が火事やで!!
なして、何もない所から、火が出るんや?!有り得へんやろう!!
「ちょ、危な……」
「久しぶりだな、デーチモ」
炎が点っとる指輪なんて、危ない思うて、口を開きかけたオレの言葉を遮ってジョットの声が聞こえてくる。
その声に驚いて視線を隣へと向ければ、あれ?なんやろう、ジョットの体が透けてへん??
「プリーモ!」
そして、綱吉言う人が驚いたように声を上げた。
ええと、ジョットはなして綱吉言う人の事をデーチモ言うってるんや?
それに、またプリーモって、ジョットの事や言うんは分かっとるんやけど、名前…やなさそうやし……なして、そないに不思議な呼び方をしとるか分からんのやけど、誰かこの状況説明してくれへんやろうか。
一人置いてけぼりの状態に、小さくため息をついても許されるやろうか。
本気で、お腹が空いとるんやけど、何時になったらオレは、ご飯に在りつけるんやろう。
現実逃避に、そないな事を考えて、オレはもう一度小さくため息をついて、傍観を決め込む事にしたんは、これ以上厄介ごとに巻き込まれとうなかったからや。
もっともそれは、もう遅いのかも知れへんのやけど
|