リボーン曰く、部下が居ないと何も出来ないディーノと言うキャバローネファミリーのボスが家に泊り、は嬉しそうに話をしていた事が気に入らない。

 遅くまで話をしていたので、予想通り次の日の朝、寝坊したに小さくため息をつく。

 あんなヤツに、付き合う必要ないのに




「いってきます!」
「は〜い、いってらっしゃい」

 準備が終わったが、慌てた様子で家を出る。
 しっかりと挨拶をするところが、らしい。

 のその声に、母さんが返事してくる声を聞きながら、家を出た。
 玄関を出た瞬間、オレ達を出迎えてくれたのは、黒服の集団。

「ボンジョルノ、ボンゴレ10代目」
「あっ、おはようございます。えっと、ディーノさんでしたら……」

 それを見て困惑していると分かるに、一人の男が声を掛けてきたのに対して、は律儀に返事を返す。
 そして、あいつの名前を口に出し、説明しようとしたその言葉が玄関のドアが開く音によって遮られた。

「なんだおまえら、むかえなんて頼んでねーぞ」

 聞こえて来たのは、リボーン曰くへなちょこのボス、ディーノさんの声。

「誰もむかえになんてきてねーよ、ボス」

 この状態に呆れたように言われたその言葉に、部下の一人が否定する。

「散歩してブラついてたら、ここについただけだぜ」

 それに続けて言われたその言葉に、誰もが頷いて返した。
 内容から考えても、部下達がディーノさんの様子を見に来た事が窺える。

「駅前のホテルからかよ…」

 否定された内容に、呆れたように呟くディーノさん。
 その遣り取りだけで、部下達に慕われている事だけは良く分かる。

「へぇ、一応部下には、慕われているみたいだね」

 だから、思わずボソリと呟けば、がちょっと驚いたようにオレを見てきたけど、その表情が直ぐに笑顔に変わった。

 どうやらオレが素直にディーノさんの事を褒めたのが意外だったらしい。
 その後は、ニコニコと嬉しそうな表情でディーノさん達を見ている事から、時間が押している事はすっかりと抜けているみたいだ。

「おはよーございます、10代目!!」

 急いでいる事も忘れて、家の前から動けずに居たオレ達の耳に、うんざりする声が聞こえてきた。
 その声に、ビクリとが震えたのが分かって、小さくため息をつく。

 本当に、無駄に元気なヤツだよな、こいつ……。

「早起きしたのでブラブラしてたらここについちゃいました」

 そして言われた内容は、ディーノさんの部下達と同じセリフ。
 本気で呆れてしまうのは、仕方ないだろう。

「……マフィアの頭の構造って、皆同じなのかなぁ……」

 どうやら、オレと同じ事を考えたのだろう、思わずボソリと呟いたそれに、が苦笑を零す。

「それより何なんスか、この連中は?」

 呆れているオレ達には全く気付くことなく、獄寺が警戒したようにディーノさんの部下達を睨む。
 まぁ、どう見ても堅気の人間には見えない奴等がこれだけ居るのだ、警戒するなと言う方が無理な話だろう。

「よぉ、悪童スモーキン・ボム。会うのは初めてだな」
「!そのタトゥ-…跳ね馬のディーノ…!!」

 そんな獄寺に対して、ディーノさんが声を掛ければ、獄寺が驚いたようにその名前を呼ぶ。
 どうやら、獄寺もキャバローネファミリーのボスであるディーノを知っているようだ。

 もっても、オレにとってはどうでもいい事だけど
 に危害がないのなら、何も文句はない。

 警戒している獄寺を前に、興味なく大きな欠伸を一つ。
 そして、近付いてくる気配にチラリと視線を向けた。

「ツナに、それに獄寺じゃねーか」

 獄寺とディーノさんの雰囲気に、オロオロしている
 そんなに、近付いて来た気配が声を掛ける。

「何やってんだ、おめーら、遅刻するぜ!!」
「山本!!」

 そして、その気配はオレとの肩に腕を回してウインク一つ。
 そんな山本に声を掛けられて、が驚いたようにその名前を呼ぶ。

 本当、何時もいつも馴れ馴れしくに触るのは、止めてもらいたいんだけど、こいつにだけはオレも文句が言えないんだよね。
 これが、こいつのスキンシップだと分かっているから、表情に出す事しかしない。
 言っても、無駄だともう分かっているから

「ども」
「よ」

 オレとの肩に腕を回したまま、山本が急かすように歩き出す。
 そして、一度振り返ってからディーノさんへと短く挨拶。

 もっとも、表面上は笑顔を見せているが、その態度は明らかに警戒していると分かるものだ。

「さっさと行こーぜ」
「10代目に馴れ馴れしくするんな!」

 明らかに、ディーノさんからオレ達を遠去けるように言われたそれに、獄寺が文句を言ってくる。
 そんな獄寺に対して、山本はただ笑っているだけだ。

 獄寺のヤツは、本気で単純だよね。

 もう既にディーノさんに対して喧嘩を売ろうとしていた事さえ忘れているだろう。


「へぇ、あのディーノさんがねぇ…」
「ええ、あいつが先代の傾けたファミリーの財政を立て直したのは有名な話っス。マフィア キャバローネファミリーつったら、今じゃ同盟の中でも第3勢力ですしね」

 獄寺が熱心にディーノさんの説明する事を、興味なく聞きながら曖昧に頷いて返す。
 言われる内容は、昨日知り合った人には不似合いな内容だ。

「そんなに凄そうには、見えなかったんだけど……」

 だから素直に、そう呟いてしまう事は仕方ないだろう。
 財政を立て直したとか、マジでそんなに凄い人には見えなかった。
 もっとも、あの偽赤ん坊が家庭教師をしていたような人物ではあるのだ、それぐらいはしてくれなきゃ困るだろう。

 しかも、人のモノに馴れ馴れしくしてくれたんだから


「どっちにしろオレは好かねースけどね」

 昨夜の事を考えて、不機嫌になりそうになったオレの耳に、獄寺が言い捨てる。
 それは、間違いなく不機嫌だと言うような態度だ。

「えっ、なんで?」

 そう言った獄寺に対して、が信じられないと言うような表情で質問してくる。
 多分、にはディーノさんを尊敬できる人物だとインプットされただろから、当然の質問だ。

「オレにとって、年上の野郎は、全部敵スから」

 そんなの質問に、獄寺が面倒くさそうに返事を返す。
 それは、なんとも獄寺らしい返答だと言ってもいいだろう。

 マフィアの世界では、周りは全て敵なのだから

「なあ、さっきマフィアって言ってたけど…」
「えっ?」
「変な会社名だな」

 獄寺の心情を心の中で、理解していたオレの耳に、今まで黙って話を聞いていた山本が声を掛けてくる。
 それに、が困ったような表情をするが、次に続けられた言葉によって複雑な表情へと変わった。

 何て言うか、の心情が手に取るように分かるんだけど
 山本も山本で、何処まで惚けるつもりなのか検討もつかない。

 こいつの天然は、絶対計算だからな。

 それが分かるだけに、小さくため息をついた瞬間突然聞こえてきた車のエンジン音に身構える。

 こんな道を、車が通る事なんて殆どないからだ。
 警戒してその車を見れば、真っ赤なスポーツカーが、こちらに向かって走ってくるのが見えた。

!」

 それが直ぐ傍に来た瞬間、ドアが開きの体がその中へと引き込まれる。
 それに気付いた時には、体が無意識に動き車の上に飛び乗っていた。

 を乗せた車は、そのまま走り続けている。
 振り落とされないように身を屈めて、車体を抱えるように体を固定させた。

「は、離せ!ツナ!!」

 その瞬間聞こえて来た声は、の声。

 窓から顔を出して、オレの名前を呼ぶ。
 身を乗り出すようにするに、オレの方が焦った。

「おい、そんなに身を乗り出したら、危ないぞ!」

 それはを攫ったヤツも同じようで、咎めるような声が聞こえてくる。

 オレも、その意見には賛成だ。
 頼むから、に危険がないようにして欲しい。

「今、停める。頼むから大人しくしてくれ!!」

 そして、焦ったような声が聞こえてきたと同時に、車がゆっくりと停車した。
 それと同時に、が車の外へ飛び出してくる。

「ツナ!」
!大丈夫だった?」
「それは、俺のセリフだよ!怪我してない?!」

 切羽詰ったような声で、名前が呼ばれる。
 オレも車の上から飛び降りて、質問すれば逆に聞き返された。

「オレは大丈夫だよ。それにしても、どういうつもりですか、ディーノさん」
「えっ?」

 そんなに苦笑を零してから、真剣な表情をして気配の元へと問い掛ける。
 オレが言ったその言葉に、が驚いたような声を上げるけど、今は説明できないから、敢えてスルーした。

「悪かったな、お前等のファミリーを試させてもらったんだ」

 俺の問い掛けに、気配の元はあっさりと姿を見せる。

 出てきたのは、勿論偽赤ん坊とキャバローネファミリーボス、ディーノ。
 こちらに姿を見せながら言われたのは、オレの質問に対する答え。

「ダメを攫えば、綱吉の行動は簡単に予測できたからな、それを利用させてもらったんだぞ」
「試す必要がどこにあるの!!」

 淡々とした口調で説明される偽赤ん坊の言葉に、続けられたのは珍しく声を荒げたの言葉だった。

「試すのなら、もっと正当な事で試して!なんで、こんな危険な試し方なんてするんだ!!」

 その声に視線を向ければ、怒りに震えているが言葉を続ける。

 真っ直ぐにリボーンとディーノさんに向けられる視線は、逸らされる事のない強い光を宿していた。


 それは、純粋な怒り。


 滅多に見る事は出来ないけれどが怒るその姿は、人を魅了する。

、オレの為に怒ってくれるのは嬉しいんだけど、ちょっと落ち着いて」

 正直言って、そんなを誰かに見せるなんてしたくなかった。
 その気持ちがため息となって、オレの口から出るが、何とかを落ち着かせようとその肩を叩く。

 それでも、の怒りは収まる事はなく、純粋な怒りを宿した瞳がリボーンとディーノさんを睨み付けている。
 リボーンもディーノさんも、そんなから目が離せないようだ。

「で、試す内容として、山本達に何を言ったんだ?」

 だからこそ、現実に引き戻すように、静かな声で問い掛ける。
 オレが問い掛けた事で、漸く意識を取り戻した二人が視線をから逸す。

 あのリボーンでさえも、それは同じでから視線が逸らせなかったのだろう事が窺えた。

「車は、桃巨会のもので、お前等を攫った事になっているぞ」
「……桃巨会ねぇ……」
「それは心配ない。それは、でっち上げのヤクザだからな」

 も、オレの言葉で怒りは消え、今度は心配気な表情でリボーンを見ている。
 それに先程の事を感じさせない淡々とした口調で、リボーンがあっさりと山本達に何を言ったのか口に出す。

 言われた内容に、オレはため息をつきながらそのヤクザと呼ばれる組の名前を口にした。
 それに対してディーノさんが慌てて弁解するが、その内容に更にため息が止まらない。

「お前、ディーノさんにまで嘘付いたの?」
「どう言う意味だ?」

 呆れたようにリボーンを睨み付けながら言ったオレの言葉に、ディーノさんは訳が分からないと言うように聞き返してくる。
 それはも同じだったのだろう、不思議そうにオレを見てきた。

「桃巨会は、この町に実在するヤクザですよ」

 そんな視線を受けて、ため息をつきながら簡潔にそれを説明する。
 もっとも、そんな大したヤクザじゃないから、気にするようなモノでもないかもしれないけど

「ちょっと待って!二人は、どうしたの?」
「あいつ等は、お前等を助ける為に桃巨会に殴り込みに行ったぞ」

 オレが説明した内容に、サーッとの顔色が悪くなり慌てたように質問してくる。
 それに対してあっさりとリボーンが返答を返せば、ますますの顔色が悪くなった。

「直ぐに、止めに行かなきゃ!!」
「お前が行っても無駄だぞ」

 そして続けられたその言葉に、オレは慌ててその腕を掴んで今にも走り出そうとするぐらいの勢いを見せるを引き止める。
 リボーンもそれは同じようで、容赦ない言葉がへと向けられた。

「そうだよ、が行ってどうするの?」

 腕を掴んだままの状態で、オレもを止める。
 の気持ちは分かるけど、多分、が行っても何も出来ない事は分かっているから

 しかも、その足で走ろうとしないで欲しいんだけど
 どれだけオレが、心配しているかなんて、きっとは気付いていないだろう。

「わ、分からないけど、でも山本達を放って置ける訳ない!」
が行っても意味ないよ。オレが行くから、は先に学校に行ってて」
「で、でも」
「ディーノさん、不本意ですが、を学校に送って頂けますよね?」

 オレの問い掛けに、予想通りの言葉が返される。
 それに対して、オレもはっきりと言葉を返した。

 オレの言葉にそれでもは、納得できないと言うように口を開くけどそれを遮って、不本意だけどディーノさんにを預ける事にする。

「あっ、ああ。でも、お前だけで大丈夫なのか?」
「心配はいらねぇぞ、お前はツナが言うようにダメを学校に送って行け」

 オレの言葉にディーノさんが心配そうに聞き返してくるけど、それに対してオレが返事を返す前にリボーンが言葉を返す。
 その間、は何かを言いたそうな表情をしていたけど、敢えて気付かないフリをした。

 が今何を思っているのか分かっているけど、危険だと分かっている場所に連れて行く事なんてしたくない。
 それなら、不本意極まりないけど、ディーノさんに預けて学校に送ってもらう事を迷わず選ぶ。

「それじゃ、ディーノさん、をお願いします」

 チラリと一瞬に視線を向けてから、ディーノさんに一声掛けリボーンを肩に乗せ桃巨会へ向けて走り出す。

「……良かったのか?」
「不本意だと言っただろう。桃巨会が大した事のないヤクザだと知っているけど、好き好んで危険な場所にを連れて行く事なんて出来ないからな」

 達から少し離れた場所になってから、ポツリとリボーンが質問いてきたそれに、不機嫌な声で返した。


 それが、オレの本心なのだから

「…そうか……」

 そう返したオレに、リボーンは納得したのか小さく呟くだけで返してくる。

「リボーン、お前が怒っている姿に、魅了されただろう?」

 そんなリボーンに対して、オレは確信しているそれを問い掛けた。

「何の事か分からねぇぞ」

 だが、それに返されたのは惚けるようなリボーンの言葉。

は、滅多に怒る事はないけど、その純粋な怒りは人の目を惹き付ける」


 それは、人を魅了する輝き。

 自分の為にその光を見せてくれる事が嬉しいと思う反面、誰にも見せたくないとそう思う光。


「正直言って、誰にも見せたくないと思える程に、ね」

 リボーンは何も言わずに、ただ黙って話を聞いているだけだった。

 何を考えているのかは、相変わらず分からないが気にはならない。
 こいつには、オレの気持ちなんてとっくの昔に知られているのだから、隠すつもりはないからね。

「……あいつの光は、確かにオレ達のようなヤツには眩し過ぎる。だからこそ、惹かれちまうんだろうな」

 暫くの沈黙の後、ポツリと呟かれたリボーンの言葉に、オレはただ頷いて返した。


 まさに、その通りだ。
 だからこそ、惹かれる。

 その光に………






 桃巨会の件は、あっさりと片付いた。
 前に一度体裁を加えた事があり、オレの強さを知っている相手が逆に謝罪の言葉と謝礼金を渡してくると言う事で話が付いたからだ。

 もっとも、謝礼金を受け取るつもりはなかったので、そのまま金は置いてきた。
 全ての原因は、何も考えていなかった偽赤ん坊の所為なのだから

「流石、ツナなのな」

 迎えに行ったオレに対して、そこそこの強さを見せていた山本が感心したように口を開く。
 いや、ヤクザ相手に同等以上の力を見せていたお前も、十分凄いと思うんだけど

「あいつら、10代目の姿を見た瞬間、態度が変わりましたものね!」

 キラキラと尊敬の眼差しを向けてくる獄寺に、苦笑を零す。

 確かに、並盛のヤクザは、オレの実力を知っているからこそ、恐れている。
 もっともそんな存在は、オレと風紀委員長の二人だけだろうけど

「それにしても、騙すなんて酷いのな」
「騙される方が悪いんだぞ」

 そして、この原因を作ったリボーンに山本がため息をつきながら口を開く。
 それに対して返されたのは、全く悪いと思ってないと分かるリボーンの言葉。

 確かに、それは間違いではない。

 騙される方が、悪いのだ。

 大体、あの車がヤクザの車だと思う方がどうかしている。
 マフィアに関しては興味ないが、日本のヤクザは黒塗りの車が殆どで真っ赤なスポーツカーを所持しているなど聞いた事もない。
 しかも、それを誘拐する車に選ぶはずがないのだ。

 更に、オレの事を知っているのに、自分達から態々爆弾を招き入れる事はしないだろう。

「手厳しいのな。でも、友達が危険な目に合ってるのを放っておく事なんて出来ねぇしな」
「当然です!10代目をお助けするのが、オレの務めですから!!」

 騙された自分達が悪いのだと言うリボーンに対して、山本が苦笑を零しながら言葉を返す。
 それに続いて、獄寺も胸を張って宣言した。

「……いい仲間に出会えたじゃねぇか」

 そんな二人に、フッと笑みを浮かべてリボーンが満足そうに呟く声が聞こえる。
 確かに、オレの強さを知っているにも拘らず、助けに行くような友人が出来るなんてね。


 正直、有難いと思える。

 もっとも、もう少し冷静な判断をしてもらいと、同時に思ったのは秘密にしておこう。
 そのまま並んで、学校へ向かう。

 そう言えば、は大丈夫だろうか?

 を冷たく突き放してしまったから、多分泣いてしまっただろう。

 それをディーノさんに見られただろうと思うと、かなり複雑な気持ちになるが、あの時はそれが最善の方法だったのだから仕方ない。
 もう既に昼休みとなっている事を時計で確認して、山本達と別れの教室へと向かう。

 だがそこに、目当ての人物は居なかった。

「沢田なら、今朝遅刻してきて、風紀委員長に連れて行かれてたぜ」

 のクラスメートに聞けば、そんな言葉が返って来た。

 詳しく話を聞いてみると、校門に真っ赤なスポーツカーが止まったと思ったら、それを委員長がトンファーで殴り車からを下ろしてそのまま連れて行ってしまったとの事。

 あのへたれディーノ、本気で役に立ってないんだけど!

 心の中で、ディーノに対して文句を言うのは止められない。
 それが伝わったのか、話を聞かせてくれた生徒が怯えたように後ろに下がる。

 その後の行動は、何時もと同じだった。

 行き先は分かっているのだから、応接室に向けて走り、勢いのままにその扉を開いて大切な大切な相手の名前を呼ぶ。

!!!」

 何時ものように、扉が壊れようが知った事じゃない。
 全ては、人の大事なモノに手を出してくれる腐れ風紀委員長が悪いのだから

「ツ、ツナ……」

 勢い良く飛び込んだオレに、が驚いたように名前を呼ぶ。

 その手には書類の束。
 どうやら、風紀委員の仕事を手伝わされていたらしい。

「毎回毎回、よくもを掻っ攫ってくれますよね」
「遅刻したこの子が悪いんでしょ。それに、君があんな男にこの子を預けるからいけないんだよ」

 それを確認して、遠慮なく部屋の中に入り、とヒバリさんの間に立ち涼しい顔をしているその相手を睨む。
 睨み付けながら言ったオレの言葉に対して、ヒバリさんが冷めた視線を向けてきた。

 それは、オレを非難するような目。

 それを証拠に、その口調はを誰かに預けた事を咎めていた。

「あの人に預けたのは、オレとしても不本意です。そのお陰で、がこんな所に居るんですから!」

 自分としても、間違った選択をしてしまったと本気で反省している。
 あんな役立たずに預けた所為で、がヒバリさんと一緒に居るのだから

「……罰はもういいよ。沢田
「は、はい!」

 射抜くように相手を睨み付ければ、小さくため息をついてヒバリさんがを呼ぶ。
 それにが、慌てて返事を返した。

「さっきの事だけど、戦うだけが力じゃないでしょ、だから、教えてあげるよ、君の戦い方を」
「俺の、戦い方……」

 そして、続けられたのは信じられない言葉。
 ニヤリと笑いながら言われたその言葉を、がゆっくりと口に出す。

 なんで、そんな話が今、ここで出てくるのか分からない。

「何勝手な事言ってるんです、そんなの、オレが許すとでも思っているんですか?」
「それは、君が返事をする事じゃないでしょ、沢田綱吉。すぐに返事をしろとは言わないよ、考えてみるんだね」

 信じられない内容に、オレが冷たく言えば呆れたようにヒバリさんが言葉を返してくる。

 確かに、それを考えるのは、だ。
 でも、だからと言って、そんな事許せる訳がない。

、ヒバリさんの言葉なんて聞いちゃダメだからね!」

 ヒバリさんの言葉を真剣に考えているに、拒否するように言う。
 だけど返って来たのは、曖昧な言葉。

 は、ただ真剣に考えているようだった。

 嫌な予感を、この時のオレには拭えなかったのは、そんなを見ていたからかもしれない。