今日は、何事もなく一日が終わった。
それに安心している自分が居て、思わず苦笑を零す。
本気で、毎日が騒がしくて嫌になるからだ。
HRも終わって帰ろうと荷物を持った瞬間、の事が気になった。
何時ものように校門で待っていようと思っていたのに、教室に迎えに行かなきゃと言う思いが強くなる。
「……これが、超直感、か……」
教室を出てからも、その気持ちは消える事がなかった。
それに、ボソリとあの偽赤ん坊が言っていた事を思い出して呟く。
何かを感じるからこそ、それを大事にした方が良いのだろう。
そう思って、オレはの教室へと足を向けた。
教室の中を覗くと、は自分の机に座った状態で荷物をカバンの中に入れている所でHRは終わっているようだ。
オレの姿を見たのクラスの女子達が、ザワザワと賑やかになる。
そのざわめきに不思議に思ったのだろう、の視線がオレの方へと向く。
視線が向けられた瞬間オレの姿を見付けたが、驚いたようにその大きな瞳を更に大きく見開いた。
「ツナ、何かあったの?」
カバンに荷物を詰め込み終わったがそれを持って、近付いてくる。
それから、不安そうに質問された内容に思わず笑ってしまう。
「何もないよ。ただ一緒に帰ろかと思ったんだ」
オレが笑った瞬間、周りが更に騒がしくなるが気にしない。
心配そうに見詰めてくるに、そう言えば更に恐る恐ると言うようにオレを見上げてくる。
「……俺、今日何かしたっけ?」
そして更に不安そうに質問された内容に、思わず笑ってしまった。
「どうしてそう思うの?」
思わず笑って、不安そうに自分を見上げてくるに質問で返す。
「ツナが迎えに来る時って、大体俺が心配掛けた時だから……」
質問したオレに対して、がボソボソと返事を返してくる。
確かに、それは間違いじゃない。
オレがを迎えに来る時は、必ず何かトラブルがあった時だけだから
「自覚がある事はいい事だけど、今日は違うよ。オレが確実にと一緒に帰りたかったんだ」
それが分かっているに満足して頷いてから、今日は違うのだと安心させるように言えば、が明らかにホッとしたような表情になった。
オレとしては、そんなに不安にさせるつもりは全然なかったんだけどね。
「えっと、それじゃ、帰ろう」
安心したが、一瞬考えるような素振りを見せてからはにかんだ様な笑みと共に口に出したそれは、照れ隠しだと分かる。
何処か照れたような表情で言われたその言葉に、オレも嬉しくなってクスリと笑う。
「そうだね、帰ろうか」
そんなオレ達の周りで悲鳴が聞こえて来たのは、あえて聞こえなかったフリをする。
本当は、煩くてたまらないんだけど
との大切な時間を邪魔されたくはないからね。
二人で、他愛のない話をしながら家へと帰る。
話の内容は大体、今日何があったのかと言うモノ。
だけど、の事が少しでも分かるからそんな時間が嬉しく思える。
けれど、楽しそうに話していたの顔が、家が見えた瞬間不安そうなものへと変化した。
「何かあったのかなぁ?」
その視線に気付いてオレも家へと視線を向ければ、黒スーツの群れが家の前を陣取っている。
それを見た瞬間、忘れていた嫌な予感が
「……なんか、嫌な予感がするんだけど……」
ボソリと呟いたオレの言葉に、更にが不安そうな表情でオレを見上げてくる。
「ツナ、父さんに不幸があったとかじゃないよね?」
心配だと言うように質問された内容に、複雑な気持ちになるのは止められない。
何を心配しているのかは大体想像できるんだけど、あのバカオヤジがそう簡単にくたばるとは考えられないだろう。
「あのくそオヤジは殺しても死なないから心配ないと思うよ。それに、あの連中どう見ても堅気には見えないしね」
だからこそ、思った事をそのまま口に出す。
オレに言われて、が少しだけホッとした表情をしてから再度黒服の男達へと視線を向けた。
「ツナの言うように、失礼だけど普通の人には見えないね……でもこれじゃ家に入れないんだけど……」
「なんだ、今この家は沢田家の人間しか通せないんだ…」
堅気に見えないと言う事に納得したのだろう、素直に頷いて困ったように呟かれたその言葉に黒服の一人がダメ出ししてくる。
何で、家に帰るのに誰かの許可が居るんだ?
「一応、ここの家の者だけど」
ダメだしされた内容にムッとしながら、言葉を返した。
「何?!では、この方が?!」
オレが返したそれに対して、そこに居た男達が驚いた声を上げる。
その内容から考えても、間違いなくあいつの仕業だろう。
「戻ってきたみてぇだな。おい、二人ともさっさと部屋に入って来い」
思い当たった内容にうんざりとしている中、このざわめきが聞こえたのだろうオレの部屋の窓から偽赤ん坊が顔を出し促してきた。
「やっぱり、あいつの仕業か……」
言いたい事だけ言って顔を引っ込めた赤ん坊に対して、盛大なため息をつくのは仕方ないだろう。
そんなオレに対して、は困ったように苦笑を零している。
「それじゃ、はまず自分の部屋で制服を着替えておいでよ」
面倒しか待っていない事が分かっているけど、このまま外に居るわけにもいかないので家に入ってからへは制服を着替えてくるように勧めた。
「でも、リボーンが部屋に来いって……」
「制服を着替えるぐらいの時間はあってもいいと思うよ。どうせ面倒事しか待ってないんだから、動きやすい服を着てた方がいいからね」
着替えてくるように勧めたオレに対して、不安そうにが見詰めてくるのに心配ないと言うように再度服を着替えてくるように促す。
オレの言葉に一瞬が考えるような表情を見せるけど、どうやら納得したのか小さく頷いた。
「分かった。それじゃ、着替えてくるね」
それから素直に頷いてから、自分の部屋へと向かうを見送って、オレは壁に背を預けてもう一度ため息をつく。
考える事は、オレが感じた嫌な予感。
その理由は今だ分からないが、不安はなくなってはくれない。
一体、どんな厄介ごとを持ってきたんだ、あの偽赤ん坊は……
「お、お待たせ、ツナ」
「そんなに急がなくても良かったのに……それじゃ、嫌だけど面倒事に巻き込まれにいこうか」
もう一度ため息をついた瞬間、が戻って来る。
声を掛けられて、視線を向ければ申し訳なさそうにがオレを見詰めて来た。
それに返事を返してから、再度盛大なため息をつく。
本当に、これからの事を考えると面倒で仕方ないんだけど
何時ものように、を抱えて自分の部屋へと向かう。
部屋のドアを開ければ、そこにも黒服の男が居た。
一体、何人居るんだか……
「遅かったじゃねぇか」
鬱陶しいと思った瞬間、聞こえて来たのは一番邪魔で厄介な偽赤ん坊の声。
「偽赤ん坊、また何の厄介事?」
その声に対して、不機嫌な声で質問する。
本気で、この赤ん坊は厄介ごとしか持ち込んで来ないのだから、不機嫌になるのは当然だろう。
「いよぉ、ボンゴレの大将」
だけど、オレの不機嫌な質問に返ってきたのは見知らぬ声。
人の部屋に、勝手に運び込まれたのであろう邪魔な椅子から聞こえてきた。
「はるばる、遊びにきてやったぜ」
見詰める先で、その椅子がクルリと回転して、そこに座っている相手がこちらを向く。
「オレは、キャバローネファミリー10代目ボスディーノだ」
そして、頼みもしないのに勝手に自己紹介してきた。
「あっそ、そう言うのは興味ないんだけど、オレ」
「ツナ!」
予想通り、相手はまたファミリーのボスだと名乗ったので、素っ気無く返せば咎めるようにがオレの名前を呼んでくる。
「す、すみません。俺は沢田です。こっちは、俺の双子の兄で沢田綱吉……あ、あの、一つ気になる事を言ってもいいですか?」
それから慌てて謝罪して、自己紹介。
なんで、が自己紹介する必要があるのか分からないんだけど
どうせ、偽赤ん坊がオレ達の事は説明しているだろうに
しかも、何その気になる事って、オレの方が気になるんだけど
「んっ?ああ、お前らの事はリボーンから聞いてるぜ。で、気になる事って何だ?」
予想通り偽赤ん坊から、オレ達の事を聞いているといった、どこぞのファミリーのボスは、が質問した内容に快く質問で返した。
その言葉に、気になったオレもじっとを見る。
「えっと……」
それに安心したのか、が口を開こうとした瞬間、聞きたくもない笑い声が聞こえてきた。
更に、聞こえてくるのはこちらに向かってくる派手な足音。
『ランボ、やめるアル』
「枝つきブロッコリーだぞ〜!」
声が聞こえてきたのと同時に扉を開けて入ってきたのは、爆弾人間とバカ牛。
何時ものように、バカ牛が人間爆弾をからかっているようだ。
「また、こいつらは……」
それを確認して、盛大なため息をつく。
一体何度注意すれば、止めるんだ?!
「おい、バカ牛手榴弾持って走り回るなよ」
手に持っているそれに対して、オレが注意する。
別段、部屋の中を走り回る事に対して怒りはない。
だが危険物を持って走り回る事に対しては、本気で怒る。
それは、少しでもが危険になる事につながるからだ。
案の上、バカ牛が器用に躓いて転んでしまった。
「ランボくん!」
転んだバカ牛に、が心配そうに名前を呼ぶ。
だが、転んだバカ牛は怪我もなくムクリと起き上がり、不思議そうに自分の手にあるそれを見ていた。
手にあるのは、手榴弾のピンのみ。
何をどうやったら、転んだだけで手榴弾のピンが外れるんだよ?!
「やべーな、外にはディーノの部下がいるぞ」
頭を抱えたくなるような状況に、珍しく焦ったような声が偽赤ん坊から聞こえてきた。
その声に視線を向ければ、どこぞのマフィアのボスが部屋の窓から飛び出して行く姿が見える。
「てめーらふせろ!!」
そして、外に居る黒服達へと注意を促す。
その手に握られているのは鞭で、それを器用に使ってバカ牛から離れていった手榴弾を上空へと放り投げた。
それと同時に響き渡るのは、うんざりするほど聞き飽きてしまった爆発音。
「……ディーノさんて、凄い人だね」
その後、綺麗に家の前の道に着地したどこぞのマフィアのボスを見て、ポツリと聞こえてきたのその言葉に、ぎょっとする。
視線をへと向ければ、何処かほんわりとした様子でマフィアのボスを見ているが居た。
「?」
それに驚いて名前を呼べば、その視線がオレへと向けられる。
その表情は、何時ものに戻っていた。
「ううん、なんでもない。リボーン、どうしてディーノさんが家に来てるの?」
フルフルと首を振って答えた事から考えても、オレがの呟きを聞き逃したと思ったのだろう。
それに答えてから、不思議そうに偽赤ん坊へと質問する。
「そうだな、バカ牛の所為で説明が遅れたが、あいつはお前等にとっては兄弟子になるから、紹介しておこうと思ったんだぞ」
「兄弟子?」
オレから偽赤ん坊へと向けられた視線を少しだけ残念に思いながらも、偽赤ん坊が説明したその内容に不思議そうに首を傾げたをただ何も言わずに見詰める。
先程のあの言葉だけが、嫌に頭に残っていて、オレの不安を掻き立てた。
が不思議そうに首を傾げた野を確認してから、チラリと視線をオレに向け偽赤ん坊が更に口を開く。
「オレはここにくるまでディーノをマフィアのボスにすべく教育してたんだぞ」
「で、今はオレ達の教育に来てるって……迷惑な話だね」
言われた内容が余りにも迷惑だったために、オレは不機嫌な声で口を開いた。
ここに来ずに、そのまま教育を続けてくれればオレ達は平和に過ごす事が出来たのに
「リボーンの言ってた通りみたいだな。本当に昔のオレにそっくりだ!」
オレが言った言葉に対して、新たな声が割って入ってくる。
部屋に戻ってきたマフィアのボスが、楽しそうに笑いながらドアの所に立っていた。
「オレも昔はマフィアのボスなんてクソくらえと思っていて、教育に来たリボーンを鬱陶しがっていたからな」
続けて言われた内容に、何処か納得したのだろうが小さく頷いているのが見える。
何となく、が何を考えているのかが分かるんだけど……
「それに、ハナからマフィアを目指す奴にロクな奴はいね――…おまえは信用できる男だ」
更に続けられたその言葉は、オレへと向けられたもの。
その言葉を聞いて、がどこか嬉しそうな表情を見せたのは気の所為だろうか?
だが、言われた内容に、これ以上の警戒は出来なくなって、大きく息を吐き出す。
「……毒気が抜けた。あんたに信用されてもねぇ……オレはただ将来医者になっての足を直す事だけが目標だから、マフィアのボスになるつもりなんてないよ」
「それも聞いてるぞ。医者になるとか、ますます信用出来るじゃねぇか!頼りになるボスになれるぜ」
オレが返したその内容に、ますます嬉しそうに返される言葉に、再度ため息をつく。
本気で鬱陶しいのが、もう一人増えたように思うのは気の所為じゃないだろう。
「それじゃ、ディーノ、今日は泊まってけ」
「ん、オレはいいけどこいつらがな」
うんざりとしていた中、聞こえてきた声に再度頭を抱えたくなる。
何を勝手な事をと文句を言う前に、どこぞのマフィアのボスが素直に頷いてくれた。
そして、傍に居る黒服達を指差す。
「部下は帰してもいいぞ」
「お前、またそんな勝手な事を……」
タイミングを逃してしまった文句をため息をつきながら言えば、部下だと言う黒服の男達が楽しそうに口を挟む。
「リボーンさんのとこなら安心だな」
「あー、せーせーすらー」
笑いながら言われたその言葉と同時に、部屋に居た黒服達が出て行った。
どうやらオレの文句は、そのままスルーされたらしい。
本当に、こいつが来てから面倒なことしかないんだけど……
「いただきます」
「はい、どーぞ」
オレの言葉は完全に無視されて、どこぞのマフィアのボスが泊まる事が決定してしまった。
そうなれば、当然一緒に夕飯を食べる事になる訳で、何とかの前と言う場所は避けて、オレの前の椅子に座らせる。
「そーいや、ツナ達のファミリーはできたのか?」
「今のとこ、獄寺と山本。あと候補がヒバリと笹川了平と…」
「……一応、友達と先輩のはずだけど……」
母さんからご飯を受け取ったマフィアのボスがそれを受け取ってから、質問を投げ掛けて来た。
それに対して、リボーンが変わりに返事をするのにため息をつきながら訂正する。
「っていうか、リボーンはなんでウチに来てんだよ。この一との方がうまくやってけそうなのに」
「ボンゴレは、オレ達同盟ファミリーの中心なんだぜ。何にしてもオレ達のどのファミリーより優先されるんだ」
「えっ?!ボンゴレって、そんなに凄いファミリーなんですか?」
それから、今更になったがこの偽赤ん坊を闇に引き取って欲しい事を訴える。
オレよりも、このボスとの方がリボーンにはちょうどいいと思うのだけど
そういったオレに対して、どこぞのファミリーのボスが態々説明してくれる。
その説明内容に、が驚きの声が上げた。
どうやら、はボンゴレがどれだけ巨大なファミリーであるかを知らなかったようだ。
「そーだぞ」
「あれ?は、知らなかったんだっけ?」
の疑問に、リボーンがあっさりと頷いて返す。
オレもが知らなかったのが余りにも意外だったから、思わず聞き返してしまった。
「まぁ、ディーノ君。あらあら、こぼしちゃって…」
オレが聞き返した事が意外だったのか、が驚いたように見詰めてきた瞬間、聞こえてきた暢気な声に視線をどこぞのボスへと向ければ、確かに悲惨な状態になっている。
その状態は、小さな子供と同レベルと言っても良いだろう。
「ディーノは部下がいねーと、半人前だからな」
「何それ?」
流石にそれは予想外だったためにオレにしても珍しく驚いていれば、リボーンが訳の分からない事を言い始める。
正直言って、どういう事か分からなかったので、素直に聞き返した。
「こいつは、ファミリーのためとか、ファミリーの前じゃねーと力を発揮できないタイプなんだ。部下がいねぇと運動能力が極端に下がるんだ」
オレの質問に対して、リボーンが淡々とした口調で説明する。
だが、説明された内容は、何とも言えない内容だった。
もしも、それが本当だとすると
「それって、究極のボス体質な訳?ある意味では、迷惑な話なんだけど……」
思わず、感心したように聞き返してしまう。
だが、部下が居ないと何も出来ないと言うのは、迷惑な話だ。
「またリボーンはそーゆーことを…ツナ達が信じるだろ?普段、フォークとナイフだから、ハシがうまく使えねぇだけだよ」
素直に返したオレに対して、どこぞのボスがそれを否定して、言い訳してくる。
だけど、どう考えてもそれが理由だとは到底思えない。
大体この偽赤ん坊が、そんな間違った情報を口に出すとは考えにくいだろう。
「それじゃ、フォークとナイフ持って来ましょうか?」
「いや、良いぜ。サンキュな、」
オレと違って、はその言葉を素直に信じたのだろう、気を使って質問した内容にどこぞのボスが笑顔でを呼んだ。
その瞬間、が顔を赤くしたのに、眉根に皺が寄ってしまう。
どうして、そこでが顔を赤くしているのかが分からないからこそ、不安を感じてしまうのだ。
「それじゃ、おフロ入れてくるわね」
何処か嬉しそうな表情で笑っているに、心が冷めていく。
母さんが何か言ったその言葉を何処か遠くに聞きながら、オレは不安な気持ちでを見ていた。
「キャアアアア!!」
「母さん!」
だけど、何かを考えているようなの様子を見ていた瞬間聞こえてきた悲鳴に、意識が引き戻される。
「どーしたんだ!!!」
その声が聞こえてきた瞬間、反射的に体が動いて椅子から立ち上がり、声のした方へと向かおうと一歩踏み出せば、派手な音をさせてどこぞのボスが見事にコケてしまったためその足を止められてしまう。
椅子から立ち上がっただけなのに、どうやったらコケるんだ?!
「えっ、あれ?」
突然転んだどこぞのボスに、同じように椅子から立ち上がったが、不思議そうな表情をする。
どうやら、にも転んだ理由が分からなかったのだろう。
「だ、大丈夫ですか?!」
だけど直ぐに現状を理解して、無事の確認をする。
「自分で、自分の足をふんじまった」
「えっ?」
のその質問に対して返ってきたのは、何とも言えない内容のモノ。
「ほれみろ、運動音痴じゃねーか」
それを聞いて、リボーンが馬鹿にしたように口を開く。
まぁ、これでリボーンの言っていた事が本当だと言う事が良く分かったけどね。
「オフロに、オフロに〜〜っ」
言われた内容に、が何とも言えない困ったような表情をした瞬間、母さんがバタバタと賑やかな足音をさせてキッチンに飛び込んで来た。
何時もはのんびりで、何があっても動じない母さんがここまで取り乱しているからには、何かあったと見て良いだろう。
「は、ここに居て!見てくるから!!」
そう考えれば、を出来るだけ危険から遠避ける必要がある。
そう思って、しっかりとにここに居るように言えば、納得したのだろうが頷くのを確認してから、部屋を出た。
急いで風呂場へと向かえば、そこには巨大なカメのような生き物が居て、浴槽を食べている。
「何、あれ?」
「あちゃー、エンツィオの奴いつのまに逃げたんだ?」
見た事もないカメのような生き物を見た瞬間、どこぞのボスがボソリと呟いた声が聞こえてきた。
ちょっと待て!今、こいつなんて言ったんだ?!
「エンツィオは、オレがディーノにやった水を吸うとふやけて膨張するスポンジスッポンだぞ。巨大化したエンツィオ、凶暴化して家一軒食っちまうんだ」
「何迷惑なもん連れて来てるんだよ!」
そりゃ、風呂の水吸ったらデカクなるだろう。
そんな危険なペットの面倒ぐらいちゃんと見られないなら、家には来るなよな。
『私が何とかするアルよ』
呆れている中、聞こえてきた声で視線を向ければ、既に餃子饅を食べて構えている人間爆弾の姿がある。
そのまま得意の餃子拳をカメに向けて放つが、それはまったく効力がなかった。
「カメは、長い間息を止められるからな」
得意気に説明するリボーンの言葉は、もっともだろう。
両生体生物なのだから、それが普通だ。
「下がってろ、誰も手を出すんじゃねーぞ。てめーのペットの世話もできねーよーじゃあ、キャバローネファミリー10代目の名折れだ」
呆れている中、かっよく取り出した鞭を手にしたどこぞのボスが、オレ達の前に出る。
だが、どう考えてもいい結果なんて望む事は出来ないだろう。
「静まれ、エンツィオ!!」
そして予想通り振り上げられた鞭は、オレの方へと向かって来た。
それを軽々避けて、深々とため息。
「スマン!すっぽ抜けたっ」
後ろに向けて飛んできたそれを避けたオレに対して、どこぞのボスが謝罪してくる。
本気で、が来てなくて良かったと思った瞬間だ。
その間にも、カメは遠慮なく浴槽を食べている。
「やめねえか、エンツィオ!!」
それに向けて、どこぞのボスが鞭を振るうが、ことごとく攻撃は後ろに居るオレ達へと向けられるから、堪ったものじゃない。
「おい、何とかしろよ、リボーン」
「手を出すなって言われてるしな」
勿論オレは攻撃をかわしたが、バカ牛には綺麗に決まったらしく大声で泣き出した子供に対して、どこぞのボスが謝罪している中、こちらも軽々と攻撃をかわしている偽赤ん坊へと苦情を言う。
それに対して、珍しく困ったように返事を返してくるリボーン。
「このままじゃ、家がなくなるかもしれないんだけど」
「仕方ねーな、レオンの出番だぞ」
「どうする気だ?」
バーンと出されたペットのレオンに、複雑な表情を見せて返す。
カメレオンに、この状況が打破できるとは思えない。
そう思ったが、目の前でそのカメレオンがどんどん膨らんでいって人型を作った。
「!ロマーリオじゃないか!みんなと帰ったんじゃなかったのか!?バカヤロ――!!オレにまかせて下がってろ!!」
人型になったレオンを見た瞬間、今までの動きが幻だったように、どこぞのボスが見事にカメを片付ける。
その動きは、今までのものを見ていなければ惚れ惚れとするものだったが、その前を知っている人間にとっては、何とも複雑な気分だ。
部下の前でしか力が発揮出来ない人間は、こんなに厄介で面倒なのだと正直に思う。
風呂が壊された事で、仕方なく銭湯に行く事になった。
オレは勿論、がどこぞのボスの前で裸になるのは反対だったんだけど、本人がシャワーでいいと言ったので、チビ達を連れて銭湯に行った。
勿論、そこでも一騒動あった事は、仕方ないだろう。
本気でこのどこぞのボスが、迷惑以外の何者でもないと改めて思い知らされた瞬間だった。
そして、今更ながらに気になったのは、が言い掛けた言葉。
ごちゃごちゃで聞けなかったのあの続きは、一体なんだったのか……
オレの不安は、消える事はなかった。