今日は、がなかなか起きなくて、何時ものように時間ギリギリになってしまった。
 その事で、ずっとが謝ってくる。

 気にする事ないって何度も言うけど、聞き入れてくれない。

 本当に、オレは全然気にしてないのにね。

 オレとしては、こうやって毎朝のんびりと登校出来る事が一日で一番大切な時間なのに






「ま、間に合った」

 学校が見えてきた瞬間、が明らかにホッとしたように呟いたそれに思わず苦笑してしまう。

 まぁ、遅刻が免れたのだからその気持ちは分からなくもないんだけどね。

「良かったね、。ヒバリさんの手伝いは免れたみたいだよ」
「うん、ツナも一緒だろうけど、やっぱり風紀の仕事手伝う事になるのは、かなり大変だしね」

 そう、だって遅刻したら風紀委員の手伝いをさせるなんてどう言うつもりなんだろうね。
 オレが、そんな事許すわけないのに

 オレがを安心させるように言ったその言葉に、心底ホッとしたと言うように返事が返ってくる。
 だけど、その返された言葉に、オレはピクリと反応した。

「……ねぇ、その口調から言うと、一度でも手伝った事があるように聞こえるんだけど……」

 どう聞いても、それは手伝いをした事があると言う風にしか聞こえない。

 一体何時?

 分からないから、じーっと様子を伺うようにを見る。
 そうすれば、明らかにが不味い事を言ったと言うような表情になった。
 どうやら、本気で手伝いをした事があるのだろう。

「あれ?」

 どうやって、その事をから聞き出そうかと考えていれば、突然が不思議そうに首を傾げた。

「どうしたの?」

 突然呟いたのそれに反応して、聞き返す。
 まぁ、半分はオレを誤魔化す為だったのかもしれないけど

 誤魔化したって事は、聞いても、は理由を話さないと分かってしまった。
 だから、仕方なくその誤魔化しに乗る事にする。

「あれって、獄寺くんと山本だよね?」

 オレの質問に、が前を指差して再度問い掛ける様に口を開く。
 言われて視線を前へと向ければ、確かに山本と獄寺の姿。

 ああ、そう言えば、今日は獄寺が迎えに来なくて平和だったな。

「!10代目!」
「ツナに!」

 明らかに何かあったのだろうと分かる二人が、オレとの存在に気付いて驚いたように声を上げた。

「ど…どーしたの?」

 そんな二人に、が恐る恐る問い掛ければ、明らかに何処か罰悪そうな表情。

「何か問題?」

 だから、興味はないが一応は質問してみる。
 だって、面倒な事は本気で嫌だからね、それが、に関わる事だとしたら、どんな事があっても阻止しなきゃいけない。

「い、いや…あの…」
「別に、何でもないぜ…」

 オレの質問で、二人が慌てたように口ごもる。
 でもそれはどう見ても、何かがあったと分かる態度。

「部活の片付けしねーとな」
「さー授業の準備、準備!」

 更に、明らかにその場を誤魔化すように行動を起こす二人を、冷たい目で見送った。
 アレでバレないと思っているなら、本気でただのバカだよね。

「な、なんか、明らかに可笑しかったんだけど、二人とも……」
「どう見ても、挙動不審だったみたいだね」

 そんな二人の態度に、が心配そうに口を開く。
 その言葉に、オレも正直に同意の言葉を返した。

 だって、にさえ気付かれるなんて、間抜け過ぎる演技だからね。

「そう言えば、山本や獄寺くん以外の人も挙動不審だったんだけど」
「そうなの?」

 同意したオレに、が思い出したと言うように口を開いた事に、思わず聞き返してしまった。

「うん、ハルちゃんは、なにも言ってないのに忙しいって逃げって行っちゃったし、ランボくんは俺に隠れて様子伺ってくるし、ビアンキさんは話しかけたら固まっちゃって動くなくなって本気で焦ったんだけど」
「確かに、バカ牛以外は可笑しいね」

 オレが質問したそれに、が誰の様子が可笑しかったのかを説明してくれる。

 まぁ、確かにそれは可笑しい反応だよね。
 全員が全員何時も挙動不振な点を引いたとしても、確かに何時も以上に変な行動だと言ってもいい。

?」

 納得したように頷いたオレに、が考えるように俯いてしまう。
 そんなに気付いて、オレはそっと名前を呼んだ。

「なんかあるのかなぁ?」
「さぁ、それは分からないけど、面倒ごとじゃなければそれでいいよ」

 だけど、考えても理由が思い付かなかったのか、ポツリと呟かれたそれに、小さくため息をついて返事を返す。

 本気で、これ以上厄介事は勘弁してもらいたいんだけど
 とくに、あいつ絡みだったら、面倒この上ない事になりそうだ。

「みんな誕生会の準備をしてるんだぞ!」
「リボーン」

 そう思った瞬間、聞こえて来たのはその元凶の声。
 その声に、驚いたようにが振り返ってその名前を呼ぶ。

 そう言えば、今日はこの厄介な偽赤ん坊の誕生日だって聞いたような。

「ああ、そう言えば、今日はお前の誕生日だったっけ?」
「そうだぞ。お前には言ってなかったのに良く分かったな」

 言われた言葉に思い出して質問すれば、リボーンが感心したように頷く。
 でも、だからと言って、こいつの誕生日会をするのに、なんで山本達が挙動不審になる必要があるんだ?

「誕生日会だと、なんで皆が挙動不審になるの?」
「まさか、お前の誕生日に合わせてオレ達の誕生日会でも内緒で準備してるとか……」

 が恐る恐る質問したそれに続いて、一つだけ考え付いたそれを口にする。

 まぁ、オレはあいつ等に誕生日は教えてないから、知っているとは思わないんだけど、一応可能性としては否定はできない事だから

 オレの可能性の呟きに、が嬉しそうな顔をする。
 そう言えば、家族以外で誕生日を祝ってもらう事はなかったかな?

 オレは、何処から知ったのか面倒な女子から無理矢理祝われる事はあって迷惑だったんだけど

「…嬉しそうだね、

 だから嬉しそうに笑ったに気付いて、声を掛ける。
 が嬉しそうなのが、嬉しいと思える反面、寂しいんだけど

「えっ、ツナは嬉しくないの?」
「まぁ、嬉しいとは思うけど、別にあいつ等に祝ってもらわなくても、が祝ってくれるだけで十分だからね」

 オレの質問に、が聞き返してくる。
 質問されたそれに、オレは正直に自分の気持ちを返した。

 だって、他の誰に祝ってもらっても嬉しくないから、オレはが祝ってくれるだけで、十分。

「うん、俺も、ツナにお祝いしてもらえるのは嬉しいな」

 オレの言葉に、が更に嬉しそうに返事を返してくれる。
 だけど、それはオレが欲しいと言えるものじゃないんだよね。

 ねぇ、何時になったら、オレのこの気持ちに気付いてくれるのだろう。
 オレは、君だけが居れば、それだけでもう他には、何もいらないのに……

「お前等、遅刻しそうだったんじゃねぇのか?」

 ため息をついたオレに、リボーンの声が現実へと引き戻す。
 それに、慌てたのはだけで、オレはもう一度ため息をつくことしか出来なかった。









 結局教室へは遅刻してしまったのは、仕方ない事だと諦めよう。

 学校に遅刻しなければ、ヒバリさんも文句は言わないだろう。
 結局を問い詰めることも出来なかった。
 だって、の顔が話したくないと言っていたから

 でもね、オレはの事ならどんな些細な事でも知りたいと思ってしまうのだ。
 なんて、ただの我侭だと分かっているけど、そう思う気持ちを止める事はできない。

「本当、重症だよね……」

 ポツリと呟いたその声は、誰に伝えるためでもなくため息と共に思わず零れてしまった。

 本当に重症だ。

 だって、今君がここに居なくても、考える事は君の事だけなんだから……

 そして、放課後君の所に行こうとした俺を引きとめたのは、何時もの呼び出し。

 はっきり言って無視したい。
 どうせ断るんだから、態々行く必要もないと思うのに、そんな事をしたらきっとが悲しむと分かっているから無碍にも出来ない。

 ため息をついて、の居る教室に行き先に帰るように伝えれば、あっさりと頷いてくれるから、ちょっとだけ寂しいんだけど……

 ああ、そう言えば、明日は誕生日だから呼び出しが倍になりそうで怖い。
 に悪い虫が付かないように、しっかりと害虫駆除はしなきゃだよね。

 が帰るのを見送りながら、明日の事を考えて対策を練る。
 本当、何処で調べてくるのか面倒この上ないよね。

 そんな事を考えながら、オレとの折角の時間を潰してくれた面倒な呼び出しをさっさと終らせる為にため息をつきながら移動する。
 予想通りの呼び出しを簡単に済ませ家に帰れば、玄関の扉が開いている事に気付いて首を傾げた。

 どうやら、も帰り着いたばかりのようだけど、なんで玄関のドアが開いたままなんだか……
 疑問に思いながらもドアを開いて中に入れば開けた瞬間の背中。

「ただいま……って、なんで玄関に集まってるの?」

 一応挨拶をして疑問を口に出す。
 並んでいるメンバーを見せれば大体の予想が付くけど、なんで玄関で集まっておく必要があるのかは分からない。

「お帰り、ツナ。皆リボーンの誕生日をお祝いに来てくれたみたいだよ」

 オレの質問に答えてくれたのはで、振り返って挨拶を返して状況を説明してくれた。
 それは予想通りの答えだったけど、一つだけ疑問が浮かぶ。

「ふーん、オレ達のお祝いは含まれてないんだ」
「え!!あら!いけない!ツっくんとちゃんお誕生日明日じゃない!すっかり忘れてたわ…」

 遣るとすれば一緒にまとめて祝うだろうと思っていたのに、自分達の誕生日の話をしない事に興味ないながらも口を開けば母さんが思い出したというように声を上げる。

 母さん、オレ達の誕生日忘れてたんだね。
 別に、興味ないからいいんだけど

「えぇー!!そうだったんですか?!」

 母さんの驚きの声を聞いて、集まっていた皆が次々に驚きの声を上げる。

 そんな皆の様子に、がちょっとだけ残念そうな表情を見せた。
 祝ってもらえるかもって、嬉しそうにしていたから当然と言えば当然かもしれない。

「じ…じゃあ、今日一緒にやりませんか?」
「そーだな」

 ハルが言い出して、それに山本も同意する。
 そんな訳で、結局はリボーンと一緒にオレ達の誕生日祝いをする事になった。

「山本君ちから、おすしをいただいたのよ」

 当然と言うように、オレの部屋で誕生日会が行われる。
 そのお陰でオレはを運べるって言う役得を得られたんだけど

 母さんの言葉通り、小さなテーブルには立派なお寿司と母さんが準備しただろう大量の手料理。

「山本、有難う。おじさんにお礼言っておいてね」
「おう!」
「ハル、とりわけます!」
「ご・ち・そ!ご・ち・そ!」
「うざいと殺すわよアホ牛」

 母さんの言葉に、オレに階段を抱えられて恥ずかしそうにしていたが山本へとお礼の言葉を口にする。

 先まで、ハルに恥ずかしいところを見られたって、落ち込んでたのにね。

 にお礼を言われて山本がニッカリと返事を返し、続いてハルが小皿に料理を取り分け始める。
 バカ牛は浮かれててかなり、鬱陶しいんだけど

?」

 そんな事を考えていたオレは、突然何かを探すように辺りを見回し始めたに気付いてその名前を呼ぶ。

 一体、何を探してるんだろう?

「ご、獄寺くん、そんな所で、どうしたの?!」

 何を探しているのかは、直ぐに分かった。
 部屋の片隅に蹲っている獄寺の姿を見つけると、が驚いて近寄っていく。

 ああ、静かだと思ったらそんなところに居たんだね。
 しかも、その体調は最悪みたいだ。
 そう言えば、確か……

「ああ、そう言えば、獄寺はビアンキが居ると体調悪くなるんだったけ」
「えっ、何それ?」

 慌てているに今更ながらに思い出した事を伝えれば、驚いたように質問してくる。

 あれ?もしかして、は知らなかったんだっけ?

「そう言えば、が居る時に二人が一緒に居た事なかったから、知らないんだっけ?」

 驚いて質問してきたに、更に思い出した事。

 そう言えば、二人が一緒に居るところを見た事がなかったんだっけ、
 別に大した事じゃないから、オレも話してなかったしね。

「獄寺くん、大丈夫?!」
「オレは、10代目の誕生日覚えてましたよ…」

 聞き返すように言ったオレの言葉に、が心配気に獄寺へと声を掛ける。
 それに獄寺が、ぜーぜーと肩で息をしながらに反応した。

 一瞬でもと視線を交わらせるなんて、許せないんだけど

「無念です」
「え?」

 本気でどうやって獄寺とを引き離すかを考えていた瞬間、ポツリと聞こえたその言葉と同時に獄寺が力尽きる。

「獄寺くん!!」
「まぁ、死ぬ事はないと思うから、そのままにしてて大丈夫じゃないかな」

 そんな獄寺には慌てているけど、オレとしては願ってもない状況だから心配しているに問題ないというように声を掛けた。

「でも、こんなになるの分かってたら、無理してくる事なかったんじゃ……」

 本気で体調の悪い獄寺に、困ったようにが呟く。
 どうやら、体調が悪くなるのが分かっているのにここに居るのが不思議だったのだろう。

「そうはいかないわ」
「ボンゴリアン・バースデーパーティーでは、不参加は不利だからな」
「ボンゴリアン・バースデーパーティー?何、それ?」

 獄寺の事を気遣うように言われたそれに対して返されたのはビアンキの否定のそれと分からないリボーンの言葉。
 当然のように、は意味が分からないと言うように首を傾げて聞き返す。

「そーだぞ、うちのファミリーでは、奇数才の誕生日に伝説のボンゴリアン・バースデーパーティーをしなくちゃいけないんだ。ルールは簡単だぞ。誕生日を迎える主役が参加者の用意した"プレゼント"や"出し物"に点数をつけるんだ。そして一番高い点数をとった参加者は、ホストから豪華なプレゼントをもらえるんだ」
「えっと、結局は主役に喜んでもらうようにしたゲームって事?」

 の質問に、リボーンが淡々と説明する。
 明らかに厄介な内容に、オレは思わずため息をついた。

「ちなみに、最下位は殺されるんだ」
「って、有り得ないから!お祝いしてくれてるのに、殺されるって!!」
「掟だからだ」
「そんな掟許せるものじゃないから!!

 さらいに続けて言われたそれに、が激しく突っ込みを入れる。

 お祝いして殺されるなんて、どうなんだ。
 ボンゴレは仲間を大切にするんじゃなかったのか?どうやら、それはオレの記憶違いだったのだろうか?

「と、言うのは冗談だぞ」

 の突っ込みに、あっさりとリボーンが否定するけど、その顔から見て多分冗談じゃなかったのだろう。
 物騒以外のナニモノでもないな、ボンゴレ。

「罰ゲームぐらいは用意してもいいだろう。みんなこの日の為に極秘で用意してきたんだぞ」
「……それで、態度がおかしかったんだ……」
「まぁ、普通の誕生日会だとは思ってなかったけど、まさかこんな面倒が待ってるとは思ってもいなかったんだけど……」

 小さくため息をついての提案と皆の態度がおかしかった理由を口にしたリボーンに、が頷きオレは面倒事が増えたと最大なため息をついた。

 オレは、リボーンにプレゼントなんてものは準備してないんだけど

「まぁ、子供の遊びだ、つきあってやれよ」

 ため息をついたオレに、山本が笑顔で声を掛けてくる。

 こいつにとっては、なんでも遊びかもしれないけど、厄介な事に偽赤ん坊は遊びじゃなく本気なだけに性質が悪い。
 こいつの考える罰ゲームなんてものは、面倒以外のナニモノでもないだろう。
 本気で厄介だな、ボンゴレ。

「ちなみに山本はスシもってきてくれたから80点だぞ」

 爽やかな笑顔で言った山本に、何処から出してきたのか分からない大きなボードに点数を言いながらシールを貼り付ける。

 マジで、何処から出したんだこのボード。
 人の部屋に、余計なものを置かないで貰いたいんだけど

「点数はボンゴレジャッジボードにはられるからな」

 ニヤリと笑いながら言われた言葉に、再度ため息をつく。
 プレゼントに点数つけるって、どうなんだよ。

「80点ならなかなかじゃねーの?」

 だけど、普通に気にもしていないのか山本は自分の点数に満足そうな表情をみっせた。

 本気でズレていると思うのは、オレなんだろうか?
 そう思った瞬間、複雑な表情を見せたに気付いて、どうやらも同じ事を考えているのが分かった。

 普通の観念で考えると、こいつ等が可笑しいんだよな!

「ハルは、プレゼントを作ってきました。いつもリボーンちゃんは黒いスーツなので、白いスーツを作ってきました」

 複雑な表情をしているオレ達には全く気付かずに、今度はハルがバックの中から何かを取り出す。

「ターゲット柄です」
「ハル、それじゃ、狙ってくれって言ってるようなもんだぞ」

 効果音でも付きそうな勢いで出したそれは、本人満足そうだが内容としてはどうかと思う。
 それを素直に口に出せば、ハルがショックを受けたような表情を見せた。

「はひ…そーいわれてみれば…」

 いや、言われなくても、それぐらい気付けよ。
 やっぱり、こいつ紙一重のバカなのか?

「サンキュー、ハル。オレはこーゆースリリングな服は好きだぞ」
「リボーンちゃん」

 だが、貰う当事者が満足そうな笑みを浮かべて素直に礼の言葉を口にする。
 そんなリボーンに、ハルが嬉しそうな表情を見せた。

「85点だ」
「キャ――やった―!!」
「おい、甘くないか?」
「そーか?」

 明らかに甘い点数の付け方に思わず呟けば、リボーンが聞き返すように返事をする。
 無意識なのかどうなのか分からないが、こいつ女子には滅茶苦茶甘くなるよな。

「次は私ね」

 続いて名乗りを上げたのが、リボーンの4番目の愛人のビアンキ。
 すっと立ち上がり、コレも何処から出したのか分からないが何かの生地を手に持っているようだ。

「本場イタリアのピザ生地投げでリボーンの誕生日を祝うわ」

 何の生地か分からずに眺めていれば、ビアンキが頬を僅かに染めながら説明する。
 ああ、ピザ生地だったのか……ピザ生地投げって、確かグルグル生地回すヤツったっけ?

「キャー!ビアンキさん素敵です!!」

 そんなビアンキに対して、ハルが良く分からない声援を送る。

 いや、素敵かどうかはまだ判らないと思うんだけど

 だけど、ポーイと何度か生地を回しながら投げるビアンキの姿は、確かに凄いと思う。

「うまいもんだなー」
「すごいです」
「へぇー」

 山本やハルが感心したように声を上げるのに続いて、オレも思わず素直に声を出した。

 確かに、コレはコレで凄いと思えるものだ。
 どんどん大きくなるピザの生地、だがここ気が付いた。
 ビアンキのピザ生地が、刃物のように部屋の物を切り刻んでいく事に
 しかも、オレの頬にまで切り傷を作ってくれたのには、かなりムカつくんだけど

 人の部屋に散々な傷跡を残して、ビアンキのピザ生地が出来上がる。

「実は新技だったの」

 でろーんと伸びた生地を手に、ビアンキが恥ずかしそうに口を開くが、コレも迷惑以外のナニモノでもない。

「なかなかよかったぞ。90点」

 だがそんなビアンキに、リボーンは何時もの表情であっさりと高得点を出した。

「YES!」

 リボーンから言われた点数を聞いて、ガッツポーズで嬉しそうに頷くビアンキ。
 その変わりに、オレの部屋は悲惨な状態になっているけどな。

「すごいです、ビアンキさん」
「レベルたけーな」

 山本とハルは素直に感心したように口を開くが、流石に今度は感心できるはずもなく不機嫌になるのは仕方ないだろう。

「部屋の修理代は、ボンゴレに請求してやる」

 ボソリと呟いたオレの言葉に、が隣で苦笑を零したのが分かる。

「じゃ私、コレ焼いてくるわ」

 点数を聞いて満足したのだろうビアンキが、更に厄介な言葉を口に出す。

 焼くって事は、それ食べるのか?!
 更に面倒な事を……

「あっ、俺もリボーンにケーキ焼いたのあるから最後の飾りして持ってくるね」

 考えただけで面倒な事この上ない内容に、顔をしかめた瞬間、ビアンキに続いてが思い出したと言うように立ち上がる。
 さらりと言われた内容だけど、その内容にオレはいち早く反応を返した。

、何さり気なく逃げようとしてるの!大体、一人で階段の上り下りは禁止だって、何度言ったら分かる訳!ってことだから、を下に連れて行ってくるから」

 さっさと部屋から出て行こうとするの腕を掴んで引き止め、しっかりと注意。

「さっさと戻って来いよ」
「分かってるよ」

 そんなオレにリボーンが声を掛けてきたから、素直に返事を返してを抱えて階段を下りる。

「じゃ、リボーンの奴が直ぐもどれって煩かったから戻るけど、準備できたら呼ぶんだよ」
「うん、分かった」

 階段を下りてから床にを下ろして、しっかりと釘を刺すことは忘れない。
 そうしないと、また一人で階段を上ろうとするのが分かっているから

 オレに言われて、が素直に頷くのに満足して、部屋に戻った。

 戻った瞬間、アホ牛が最低点数を貰って落ち込んでいる姿が目に飛び込んで来る。
 一体、何をプレゼントしたんだ、こいつ。

「次は、綱吉の番だぞ。棄権するなら0点で罰ゲームだからな」
「オレは何も用意してないんだけど」
「だったら、罰ゲームだな」

 オレの言葉に、リボーンが楽しそうな笑みを浮かべる。
 明らかに、オレに罰ゲームできる事が嬉しくて堪らないと言うような笑みだ。

「10代目、オレと組みましょう!」

 さて、どうするかと考えた瞬間、聞こえて来た声に驚いて振り返る。
 そこには、ベッドに肩肘を付いて何とか座っている獄寺の姿。

「獄寺、大丈夫なの?」
「アネキさえ居なければ平和なもんです」

 ヨロヨロと立ち上がって、オレ達の方へと歩いてくる獄寺に、一応様子を伺うように質問すれば、さらりと返される返事。
 確かに、今はビアンキが居ないけど、何時戻ってくるかは分からないんだけど

「リボーンさん、確か、ボンゴリアン・バースデーパーティーでは、コンビでの出し物は許可されてますよね」
「ああ、いいぞ」
「ま…まさか、獄寺おまえ…!」
「うるせ――おめーはもー関係ねーだろ!」

 コンビの出し物?
 一体、オレに何をさせるつもりなんだ?

 山本は、獄寺が何をするつもりなのか分かったのだろう、顔を青くして驚いたように獄寺を見る。
 それに獄寺が、怒鳴り声を上げた。

「実は山本と組むつもりだったんスよ」
「ふーん、オレでいいの?」
「当然です!あのアホは役に立ちませんから!」

 一体何をするつもりなのかは分からないけど、山本と組むつもりだったと言う獄寺に質問すれば、元気良く返される言葉。
 どうやら、体調はしっかりと戻っているようだ。

 体調悪い方が、静かで良かったかもしれないな。

「オレの出し物は手品です!」

 キラリと目を光らせて言われたその言葉に、少しだけ以外に思ってしまう。

 へぇー、獄寺は手品が出来たのか……だが、感心したそれは、一瞬で後悔へと変わった。

「タネもしかけもないこの箱に、このように10代目をとじこめます」

 何処から出してきたのか分からない箱にオレを入れると、しっかりと外れないように皮バンドで固定して、出られないようにする。
 オレは、首から上を出した状態。

「本格的な箱だな」
「そして、このようによく切れる剣をつきさしていきます」

 感心したように呟いた瞬間、獄寺が剣を手にすっぱりと大根を真っ二つに切って見せる。
 確かに、剣にも仕掛けはないようだ。

「はひ――――」

 すっぱりと切れた大根を前に、ハルが驚いたような声を上げる。
 その隣で、バカ牛もドキドキした表情だ。

 正直言って、オレにもこれからの展開が分からないから、ただ状況を見守る事しか出来ない。

「じゃあ10代目、うまくよけてくださいね!」

 だが、そこで獄寺が爆弾を投下してくれた。
 こいつ、本気でタネない状態で手品するつもりなのか?!

「オレはムリだって言って断ったんだけどな」

 どうりで、珍しく山本と獄寺が喧嘩していた訳だ……

「山本のアホはムリでも10代目ならできますって!」
「誰が出来るんだよ!!そう言うなら、お前がやって見せろ!変わってやる」

 そういった瞬間、箱から出る。
 勿論、しっかりと閉じ込められた状態だったが、オレにとってはこんな箱から抜け出すのは簡単な事だ。

「す、すごいです!一瞬で抜け出しました。流石はツナさんです!!」
「確かに、すげーな」

 だがその瞬間、ハルが感心したような声を上げる。
 それに続いて山本までもが、声を上げた。

「確かに、完璧な脱出だったな。100点だぞ」
「さすがっス!」

 リボーンまでもが珍しく満足そうな表情を見せて、しっかりと満点を出す。

 って、手品の内容が変わってるのにいいのか?
 感心したような獄寺の呟きを聞いて、盛大なため息をつく事は止められない。

 その後直ぐに、オレを呼ぶの声が聞こえて来て、迎えに行く事で何とか自分を落ち着かせた。


 正直言って、かなり疲れたんだけど
 なんで、あんなにも面倒な事しか起きないんだ。
 全部、あの偽赤ん坊の所為だと分かっているからこそ、恨まずにはいられない。


 もっとも、その後オレにとっては色々と嬉しい得点が満載だったから、良かったのかもしれないけど