最近のを見ていると、心配でたまらない。

 だって、明らかに痩せていると思うのに、どうして誰も突っ込まないんだろう。

 多分、本人も気付いてない。

 だって、それがだから……






「母さん、またソーメンなの?」

 今日のお昼もソーメン。
 お歳暮で貰ったから経済的だって言う母さんの気持ちは分かるんだけど、流石にこう毎日だと栄養偏っちゃうんだけど

「いいじゃないの、経済的で」

 呆れたように言ったオレの言葉に、母さんが不機嫌な声で文句を言う。
 それは、オレが考えていた通りの答えだったけど、そう言う問題じゃないんだよ。
 経済的かもしれないけど、それが今のにとっては全然経済的でも何でもない。
 だって、ソーメンだけだとどうしても栄養がないから、だから体力が付かない。
 結果、夏バテ気味のには十分な栄養が足りてないのは明白だ。

 チラリと視線をに向ければ、時間を気にしているのかの視線は時計へと向けられている。

「さっきから時間を気にしてるけど、どうかしたの?」

 それに気付いて、不思議に思いへと質問する。
 別段、何かの用事があるって言うのは聞いてないんだけど……

「えっと、久しぶりに皆とお昼食べてるんだなぁって、そう考えちゃって……」

 オレの質問に、が曖昧な笑顔と曖昧な言葉を返してきた。
 でも、その言われた言葉は確かにその通りで、間違いじゃない。

「そう言えば、今日は早かったね。何か悪い夢でも見たの?」

 何時ものなら、この時間まだ寝ている事の方が多いから
 だから、その言葉を素直に聞き入れて再度質問する。
 そうすれば、がピクリと小さく反応を返した。

?」

 黙りこんで何かを考え込んでしまったに、不思議に思ってその名前を呼ぶ。
 そんなオレに、が慌てて言葉を返してきた。

「な、何でもない!今日も、暑いなぁって考えてて……」
「ダメ、全然誤魔化せてねぇぞ」

 でもそれは見栄見栄の言い訳で、そんなの言葉にリボーンが呆れたように会話に割り込んでくる。
 確かに、全然誤魔化せてなかったのには認めるけど、折角と話していたのを邪魔されたのはちょっとムカつくんだけど

「本当に、誤魔化したとかそう言うんじゃなくて……」
ちゃんも、ソーメンばっかりで、イヤだと思ってたのかしら?」

 リボーンに言われて、更に必死で言い訳しようとするだけど、どうやら何も思いつかないらしく明らかに言葉に困っている。
 そんなに、母さんが心配そうに声を掛けた。
 よっぽどオレに、『また、ソーメンなの』って言われたのが効いたみたいなんだけど

「そんな事、思ってないから!」

 心配そうに母さんが見守る中、が慌てて否定して返す。

 まぁ、はそんな事全然考えないだろうね。
 基本的に、作ってくれたモノに文句を言うような事は絶対にない。
 どんなにそれが不味い料理でも、ね。

「オレは、ママンのつくったソーメン好きだぞ」
「私も好きよ」

 の言葉に続いて、リボーンとビアンキまでもが母さんを慰めるような言葉を口にする。
 それはどう考えても、人を悪者にするような言葉だ。

「まあ、ありがとう。さすがリボーンちゃん、ビアンキちゃん!」

 二人の言葉に、母さんは素直に感激して喜んでる。
 けど、オレも別に文句を言いたい訳じゃない。ただ、ソーメンだけって言うのが問題なだけだから

「はいはい、オレが一人で悪者だって言いたんだろう」
「そんな事言ってないわよ!それに、もう一人ソーメン好きがいるのよ」

 だけど、この中で文句を言ってるのは自分だけだと言う事に、盛大にため息を付いて口を開けば、母さんが慌てて言葉を返してきた。
 そして、続けられた言葉に、複雑な表情をしてしまう。


 って、何時から素麺好きの話になったんだろう?
 疑問に思った瞬間、何処かから嫌な気配を感じて思わず眉間に皺が寄ったのが、自分でも分かる。

「ほら、きた」

 扉が開く音が聞こえて、母さんが嬉しそうに笑顔を見せた。
 そして聞こえてくるのは、『ガハハハハハ!』と言うバカ笑。

「……このバカな、登場は……」

 相手なんて確認しなくっても分かってるけど、いい加減イライラすんだけど、このバカには!
 もう少し静かに登場できないのか!

「オレっちだよ!ランボだよ!!」

 自分の名前を言いながら入ってきたバカ牛を思わず睨んでしまうのは仕方ない事だろう。
 何せ、こいつには多大な迷惑しか掛けられてないんだから

「角ぐらいちゃんとつけてからこい!」

 そして、視線を向けた瞬間思わずその姿に突っ込んでしまった。
 明らかに角の位置が可笑しいだろう、お前!!
 出てくるんなら、鏡で確認してから出て来い。

「わざとだもんね、一応直すけど」

 オレに突っ込まれ明らかに気付いていなかったバカ牛が慌てて角の位置を直す。
 そう、何時ものように言い訳しながら……

「本当に、わざとだもんね!!リボーン死ね――!!」

 そして、照れ隠しだと明らかに分かる行動で、リボーンへと攻撃を仕掛けた。
 本当に懲りない奴だと思いながら、ため息をついた瞬間リボーンは撃たれた弾を箸でキャッチしてそのままバカ牛に投げ返してしまう。
 攻撃を返されたバカ牛は、何時ものように開いていた窓から外へと飛んでいってしまった。

「あ、あの、飛んでっちゃったんだけど……」

 そんなバカ牛に、と母さんが飛んで行った方へと視線を向けるけど、オレは気にもならない。
 もあんなバカ牛の事なんて気にしなくってもいいのにね。

 ポツリと聞こえたの声は聞こえなかったフリをして、モクモクとソーメンを食べる。
 だけどはその後、食欲が失せてしまったのか、お昼もそこそこに『ご馳走様』と頭を下げた。
 それじゃなくっても、あんまり食べてなかったって言うのに、今日のお昼もオレ達の半分も食べてないんじゃないだろうか。
 もしかなくっても、の体重が減ったのって、あのバカ牛の所為でもあるんじゃ……

 本気で、あのバカ牛処分したいんだけど






 の食欲が明らかに減っている事、見た目にも痩せてしまった事を考えて、母さんに相談する事にする。
 まぁ、家の食事を作ってるのが母さんだからって言うのが一番の理由だけど、お昼に素麺だけって言うのを本気で改善してもらわないと、栄養面がボロボロになりそうだから

「母さん」
「あら?どうしたの、ツッくん??」

 後片付けをしている母さんに声を掛ければ、不思議そうに振り返ってオレの名前を呼ぶ。

「お願いがあるんだけど」
「あら?何かしら??」

 一通り片付けを終えた母さんが、濡れた手をエプロンで拭きながら水を止めオレの方へと向きを変えてニコニコと笑顔を見せながら質問してくる。

「気付いてる?の食欲が明らかに落ちてるんだ」
「そうね、ちゃんは夏バテ気味だから、毎年この時期になると食欲が落ちちゃうのよね……それに最近見るからに痩せちゃってるから心配なのよ」

 そんな母さんにオレは問い掛けるように口を開けば、やっぱり気付いていたのだろう母さんが困ったと言う様な表情でため息をつく。

 母さんも気付いてたんだ。
 でも、気付いてるなら、もう少し栄養のあるものを作ってくれると嬉しいんだけど……

「なら、素麺だけって……」
「でもね、ちゃん、他に作っても食べてくれなかったのよ。母さんも心配して、色々作ってみたのよ。でもね、普通の素麺が一番食べてくれたのよね」

 文句を言おうと口を開きかけたそれを、母さんが遮って教えてくれる。


 ……もしかして、オレ達には普通の素麺を出してたけど、にはちゃんと他にも出してたんだ。
 それを食べてないって、の食欲は何処まで落ちてるんだろう。

「兎に角、胃に優しくって栄養のあるモノを食べてもらわないと、そのうち倒れちゃうよね」

 母さんも出来る限りの事をしてくれていたのが分かって、どうしたものかと小さくため息をついてしまうのを止められない。
 このままじゃ、間違いなく倒れちゃうのは目に見えている。
 それに、夜もあんまり寝てないみたいだし……
 夏が終れば、大丈夫だって分かってるけど、まだまだ先は長い。

「それじゃ、ちゃんだけ別メニューにした方がいいわね。ツッくんも、こんなのがいいって言うのをネットででも探してくれるかしら?」
「分かった。良さそうなのを出しとくよ」
「お願いね」

 母さんと話をして、だけ特別メニューを作るという事で納得して、早速ネットで検索してみようと思った瞬間、聞こえて来た爆発音。
 その音を耳にして、頭を抱える。

「今度は、何かしら?」
「さぁ、兎に角様子見てくるよ」

 母さんもその音に苦笑を零すのは、もう慣れてしまったからかもしれない。

 こんな事慣れたくないんだけど
 母さんに言って、キッチンを出てリビングの方へと移動する。

「だれだよ、爆破したのは!!変な噂が立つと迷惑するってあれほど……」

 リビングの窓から外を見て、文句を言えば飛び込んでくるのはビアンキの信じられない格好。

「バカ牛よ」

 オレの質問に簡潔に答えるけど、その格好は一般家庭の庭でするような格好ではない。
 ビキニ姿で立っているビアンキに、オレは盛大なため息をついた。

「って、なんてかっこうしてんだよ!ご近所に頭が可笑しいと思われるだろう!!」

 そうじゃなくても、最近は変な噂しか流れてないと言うのに、コレ以上余計な事は言われたくないと思っても仕方ないだろう。
 ビアンキに文句を言って、その先に立っているが目に入って驚いて目を見開いた。

も!そんな所に突っ立て!!顔色が悪くなってるし!リボーン、お前の所為じゃないだろうな!!」
「ちげーぞ」

 こんな炎天下に立っているだけで、の顔色は明らかに悪い。
 それを心配して声を掛け、その直ぐ傍に立っているリボーンを睨みつける。
 もっとも、それに対して返ってきたのは、否定の言葉だけど

「お前の事だから、に無茶な事だって平気でさせるんだか……」
「本当に、違うから!俺は大丈夫……それより」

 だけど、そんな言葉信じられるはずもなく、オレはそこにあった草履を履いて外に出てリボーンに文句を言いながら二人の方へと近付いていく。
 そんなオレに、がその言葉を否定して、何かを口にしようとした瞬間、またしても聞こえてくる爆発音。

「やれやれ、また10年前に呼び出されてしまったようだな……お久し振りです、若きボンゴレ10代目とさん」
「やっぱり、今の爆発音は、お前か!!」

 そして、爆発音の後に現れた10年後ランボを睨み付ける。
 睨み付けたランボは、オレの後ろに居るビアンキに気付いてその顔色を青くした。

「やれやれ……今日のところはこれで…」
「心配しなくっても、一応ビアンキには説明しておいたよ。もっとも信じてるかどうかは分からないけどね」

 そんなランボにため息をつきながら、に言われた通りビアンキには説明してある事を伝える。
 面倒だったから、あのバカ牛が10年経つとコレになるって言うことしか言ってないから、納得してるとは思えないけどね。

「生きていたのね、ロメオ…」

 ボソリと聞こえて来たビアンキの呟き。
 まぁ、予想通りランボの姿を見た瞬間、ポイズンクッキングを手に走り出すビアンキ。

「あ〜っ、やっぱり信じなかったか……」

 にはちゃんと説明してあげてとしか言われてないから、信じる信じないはビアンキ次第と思っていたので、本気でどうでもいいと言うようにため息をつく。
 本気で逃げるランボを追いかけるビアンキを見ていれば、何処から出してきたのかライフル銃がその手に

「わっ!」

 その銃をビアンキが撃った瞬間、の悲鳴が聞こえて来た。

!」

 驚いて名前を呼び数歩離れているに近付こうと足を前に出した瞬間、その前にビアンキが撃ったであろう銃弾が
 そんなに離れた距離じゃないのに、流れ弾がこちらに飛んできてに近付けない。

「ビアンキの射撃の腕は最悪だからな、どこに飛んでくるかわかんないぞ」
「なんて迷惑な!!」

 チッと舌打した瞬間聞こえてくるリボーンの説明に思わず突っ込んでしまった。
 本気で迷惑な話なんだけど、もしもを傷付けたら、本気で許さないからな。

「危ない!」
!!」

 に近付けない事にイライラしている中、聞こえて来たの声。
 そして、見ず知らずの誰かを庇うように覆い被さったが見えて、驚いてその名前を呼ぶ。

 それでも、オレはの傍に行けない。
 銃弾に阻まれて、近付けない事に舌打し、ただにその弾が当たらない事だけを祈る。

「大丈夫だった?」
「あっ、はい……でも」
「ここ、傷付いてる。本当に大丈夫?」

 何とか銃弾が落ち着きが起き上がって、庇っていた相手へと質問する声が聞こえてきた。
 そして、続いて目に飛び込んできたのは、その相手に手を伸ばしてコトリと首を傾げて質問しているの姿。


 って、何て顔を見せてるの?!
 そんなを前に、に庇われていた相手が顔を真っ赤にするのが見える。

「あ、あの……」
「ああ、今日も暑いから、熱中症とかになってない?」

 顔を真っ赤にした相手に、はまた突拍子もない事を口にして、更にその相手の額にそっと手を伸ばす。
 その手は、流石に相手に避けられた。

「大丈夫です!!あの、僕は、この荷物を!!」
「うん、態々届けてくれたんだよね、有難う」

 それを近くで見て、ホッとしながら急いで二人の傍へと近付く。
 その瞬間、へと渡される木箱。それをは笑顔で受け取れば、またしても相手の顔が真っ赤になった。

「大丈夫?家で、冷たい物でも飲んで……」
!知らない人を家に誘っちゃダメだってあれほど!!」
「いえ、本当に大丈夫だから!!用事も終わったし、僕は帰ります!!」
「えっ、でも……」

 そんな相手を心配して、がとんでもない事を言う前にその体を抱き締めながら遮れば、オレに睨まれた相手がビクリと怯えたような表情をして、の申し出を断ると大きく両手で拒絶の意を示す。
 全身で拒絶を表す相手を引き止めようよと口を開きかけたに気付いて、ギュッと抱き締める事でそれを遮る。

「ツナ?」
「帰るって言うのを、無理に引き止める必要はないよ」

 オレに抱き締められて、不思議そうに名前を呼ぶに、小さくため息をついて見れば分からないと言うような瞳とかち合った。
 本当に、どうして分からないんだろうね、は……

「それじゃ、失礼します!!」
「あっ!」

 不機嫌になるのを止められない自分に、目の前の男子が頭を下げ、そのまま凄いスピードで走り去っていく。
 そんな相手に、が更に引きとめようとするけど、相手には聞こえていないようだ。
 もっとも、引き止める必要なんて全然ないはずだけど

 どうしたものかと必死で考えているに、オレはもう一度ため息をついて彼が何者で、何が起こったのかを説明してもらおうと口を開いた。

、どういう事なの?」
「えっと、俺も良く分からないって言うか……」

 だが、から返されたのは、全く答えになっていないもので、更にため息をついてしまう。

「ツナ?」
「分からない事を聞いても仕方ないしね。そんな事より、顔色悪いけど大丈夫?」

 ため息をついたオレを心配そうにが見詰めてくるのに、もう一度ため息をついて質問。
 もっとも、から返される言葉なんて分かってるけどね。

「俺は大丈夫だよ。ここにずっと居る訳にもいかないから、中に入ろうか」

 ニッコリと笑顔で言われた言葉に、更にため息。
 本当に、どうして自分の事を分かってないんだろう。

「……そうだね」

 だけど、何かを言っても無駄だって分かっているし、何よりもこれ以上炎天下の中を外に出して置くのは本気で不味いと考えて素直に同意の言葉を返す。

「あっ、そうだ!リボーン、コレ」
「分かった。オレが預かっておくぞ」

 オレが同意すれば、は思い出したというようにあの見知らぬ少年から受け取った荷物をリボーンへと渡した。
 リボーンも、渡されたそれを素直に受け取る。
 受け取ってもらって、ホッとしたのかが嬉しそうな表情を見せた。

「ねぇ、あれは?」

 オレはそれが気になって、問い掛ければ『さぁ』とが首を傾げる。
 って、そんな訳の分からないモノを受け取らないでよ!!

「さぁって、訳の分からないモノを気軽に受け取るなんて!!」
「いや、気軽って言うか、あれは何かリボーン宛みたいで、間違って配達されたのを、態々持って来てくれたんだと思うよ」

 理不尽なの返事に文句を言えば、何処か困ったようにが説明する。
 それを聞いて、あの少年がここに何をしに来たのかが少しだけ納得できた。

「それじゃは家の中に入って水分取るんだよ」
「うん、分かってる……」

 まだ座り込んだままのを立たせて、中に入るように促した瞬間目の前の体がクラリと揺らいだ。

!」

 それに気付いて、慌ててその体を支えればの顔が真っ赤になっていた。
 明らかに日射病。

 ああ、何でもっと早くを家の中に入れなかったんだろう、後悔しても仕方ない。

「ツナ?」

 顔を真っ赤にしているの体を何時ものように抱き上げる。

 ああ、やっぱり前から比べるとかなり軽い。
 もう、本当に何でこんなに軽くなってるの?!

「大人しくしててよ」

 不機嫌になるのはもうこの際、仕方ないと思う。だって、全部が無茶な事ばっかりして自分の身を大切にしてくれないのが悪い!

 問答無用でを部屋に連れて行き、部屋の冷房をつける。
 もう、冷房が苦手とかそんな意見聞かないから

「ツナ」

 オレの行動を大人しく見守っているが、不安気にオレの名前を呼ぶ声が聞こえる。

「何?」
「……怒ってる?」

 ビクビクと怯えたようにオレの事を上目使いで見ながら心配気に質問してきたに、盛大なため息をついてしまった。
 そんな顔されたら、怒ってるなんて言える訳ない。

「……怒ってたよ。が無茶な事ばっかりするから……」

 大きく息を吐き出して、過去形で話すのは、もう怒ってないと伝える為。

「ごめん」

 それでも君は、シュンとして謝罪の言葉を口にする。

「悪いと思うなら、これからオレがする事に文句を言わない事!」

 再度息を吐き出して言ったそれに、がコクコクと大きく頷く。

 まぁ、今はそれで許しておこう。
 ちゃんと約束も取り付けた事だし


 そして、その後正式にの体重を量って、もう一回機嫌が悪くなるのは別の話。


 本当に分かってる?
 オレが、君の事だから、こんなに心配してるんだって事を