あの後、を部屋に置いてお風呂場からあるモノを持って来た。

、ここに乗って」

 持って来たモノを床に置いて、部屋の中でぼんやりとしているへと声を掛ける。

「ツナ?」

 問答無用で声を掛けたオレに、訳が分からないというようにがオレの名前を呼ぶ。

 まぁ、それもそうだろう。
 突然行動したっていう自覚は、ちゃんと持っている。
 でもね、を抱えて分かったんだけど、確実に体重落ちてるって、自覚してもらうにはコレが一番手っ取り早いでしょう。

「いいから、乗って」

 行動を起こさずに、オレの事を見詰めてくるへ促すように再度口を開く。

 それでも、動かない

 多分、はちゃんと自覚してるんだろう、自分の体重が減ってるって事。
 よく考えたら、この前の検査入院の時に体重量ってるだろうから、知らないはずはない。

「なんなら、オレが抱えて乗ってもいいんだけど?」
「いや、あの……」

 待っても行動を起こさないに、じれったくなって質問するように口を開けば、困惑したようにが言葉に言い淀んでしまう。
 だけど、その表情が一瞬考えるような色を見せたのは見逃さない。

 まぁ、が考える事なんてお見通しだけどね。

「ちなみに、ここに持ってくる前にしっかりと自分の体重量って来てるからね」

 多分、が考えているだろうと思われる事をしっかりと否定しておく。

 嘘は付いてない。

 だって、が嫌がることなんて分かっていたから、ここに持ってくるまでにちゃんと自分の体重は量ってきた。
 それぐらいしないと、の逃げ道は塞げないからね。

 流石にそこまで言われて諦めたのが、小さいため息をついてが漸く体重計の上に乗った。

「39.5」

 それを確認してメーターを確認した瞬間、信じられない数字にボソリと口を開けば、ビクリとの体が小さく震える。

 の体重って確か前には42キロだったと思ったんだけど……
 たった1ヶ月で何でこんなに体重が落ちちゃってるの!!

「ねぇ、どうしてこんなに体重減ってるの?」

 信じられない数字に、思わず声が低くなってしまうのを止められない。

 理由なんて分かってるけど、聞かずには居られなかった。
 だって、3キロも減ってるってどう言うことな訳!!

「えっと、何でだろう……」
「『何でだろう』じゃないでしょう!が夏バテしてるの知っていたから何も言わなかったけど、何でこんなにも体重減ってるの!やっぱり、無理にでも食べさせるべきだったみたいだね」

 オレの質問に、首を傾げて不思議そうに答えたに思いっきり突っ込む。

 呆れたように言ったオレの言葉に、が不思議そうな表情を見せる。
 ああ、きっとちゃんと食べてるのに何でだろうとか考えてるんだろうね、の事だから

「あれで食べてるつもりだと思っているなら、何時ものは大食らいになると思うけど」

 の考えている事が分かって、呆れたようにため息をつきながら口を開けば、驚いたようにオレの事を見上げてくる。
 その瞳が語っている事にオレはもう一度ため息をついた。

「超能力でも何でもないから!は全部顔に書いてるんだよ!」

 呆れたように理由を口にすれば、今度はぺたぺたと自分の顔を触り始める。

 本当に分かりやすいよね、

「ちなみに、顔触っても消えないからね。ほら、はそのままベッドに入る!」
「ベッドに入るって、俺は別に眠く……ご、ごめんなさい!大人しくしてます!!」

 そんなを前に呆れたように再度ため息を付いて、をベットへと行くように背中を押した。
 そんなオレに反論しようと口を開いたの言葉を睨むことで遮れば、大人しくベッドへと移動する。

「だから、素麺だけだったのに注意したんだけど……素麺だけだと栄養ないんだから」

 大人しくベッドに横になったに少しだけホッとして、思わず呟いてしまった言葉は、自分が考えていた以上にの体重が落ちていた所為だ。
 こんなに体重減ってるって分かっていたら、無理やりにでも食べさせたのに

「……ごめんね、心配掛けて……」
「そう思うなら、もうちょっと食べてくれる?取り合えず今日は母さんに言って栄養あるモノで食べやすいモノでも作ってもらうからね。それは全部食べるように!」

 思わず呟いたオレの言葉に、が申し訳なさそうに謝罪する。
 多分にはどうしてオレが母さんに文句を言ったのか、その理由が分かったのだろう。
 本当、そう言うところは鋭いのにね。

 そんな事を考えながら、しっかりとに釘を刺すように言葉を返せば、素直に頷いて返してくる。

「それじゃ、後はしっかりと寝る事だね。夜もあんまり寝てないんでしょ?クーラー好きじゃないからね、は」

 頷いたに満足して、その頭を撫でてから確認するように問い掛けたオレの言葉にが言葉に詰まってしまった。
 それだけで、その通りだと肯定してるんだって分かるのだという事を分かってないよね。
 本当、嘘も隠し事も出来ないんだから

「ちょっとだけクーラー付けとくから、ちゃんと寝るんだよ」
「うん、有難う……」

 漸く快適になってきた部屋に安心してに声を掛ければ、素直に頷いてお礼の言葉が返された。
 でもそう返してきたは、もう既に眠そうでその瞳がうとうととしているのが良く分かり思わず笑ってしまう。

 暫くすれば、聞こえてくるのは規則正しい寝息。

「おやすみ、

 聞こえて来たそれにホッとして、オレは眠っているの額に、悪い夢を見ないようにと言う祈りを込めてそっと唇を落とした。