また、馬鹿親父からの連絡の所為で居候が増えた。

 リボーンの命を狙うのは、別に構わない。大いに遣ってくれと、言ってやってもいい。
 だけど、だからと言って、オレやにまで被害を向けるのだけは許せないんだけど……

 その上、煩い事この上ない。
 オレは、煩いガキは嫌いだ。
 しかも、に懐いてるのが、何よりも許せない。

 リボーンが手を出さないと言うのなら、オレが止めを刺したいぐらいだ。

 人のモノに手を出すという事が、どういう事なのかしっかりと分からせてやるべきだろう。





、大丈夫?」

 学校に向かう中、何度も何度も欠伸をするが心配で声を掛ける。
 昨日も、あの馬鹿牛が賑やかにしてくれたので、はすっかりと寝不足のようだ。

「うん、何とか大丈夫……」

 オレの質問に、目を擦りながらが返事を返してくる。
 でも、どう見ても大丈夫そうには見えないんだけど

 あの馬鹿牛帰ったら、どうしてやろう。

「よぉ!ツナ、!」
「おはよう、山本」
「ん〜っ、はよう、山本……」

 の寝不足の原因であるあの馬鹿を思い出している中、元気良く声を掛けてきた相手に気付いて返事を返す。
 も、勿論返事を返すが、それは欠伸交じりの何とも情けない挨拶だったために、思わず苦笑を零してしまった。

 本当に、かなりの体力奪ってるんだけど、あの馬鹿牛。

「なんだ寝不足か?クマできてんぞ」
「えっ、いや……」

 寝不足状態のに、山本が心配そうに質問してくる。
 だけど、の肩に手を乗せる状態。

 それに、オレがピクリと反応したのは仕方ないだろう。
 何せ、は足が悪い。山本が冗談で体重を掛けでもしたら、には負担が掛かってしまうのだ。
 それに何より許せないのは、にそんなに馴れ馴れしくしている事。

「山本」

 不機嫌を露に、山本を呼ぶ。

「っと、悪い!」

 オレに名前を呼ばれた瞬間、山本が慌ててに回していた手を退ける。
 勿論、そう仕向けたんだから当然の結果だ。もしもそれで退けなかったら、実力行使に出ていたところだけど

「もしかして勉強でもしてたのか?なら、オレにも勉強教えてくれよな」

 そんな山本の行動が理解できなかったのか、不思議そうにオレと山本を交互に見詰めて首を傾げるに、山本は何事もなかったように話を続ける。
 質問されたが、その言葉に思い出したと言うように複雑な表情を見せた。

 そう言えば、最近授業まともに受けてなかったみたいだよね。
 もっとも、授業受けて無くっても、はそんなに馬鹿じゃないから万年補修の山本と違ってしっかりと期末もクリア出来ると思うけど
 それに、何よりもオレがの勉強を見て上げるのに、補修なんて絶対にさせる訳が無い。

「そうだね、と一緒に勉強見てあげるよ、山本」
「ラッキー!頼むな、ツナ」
「うっうっ、頼りにしてます、ツナ兄」

 必死に考え込んでいる達に、声を掛ければ素直に頼りにされる。

 勿論、に頼られるのは、何よりも嬉しい事だから、しっかりと勉強見て上げるよ。
 当然、山本はスパルタにだけど、には丁寧にね。

 そう心に、決めながら3人で学校の校門を潜った。

 今日は獄寺が居なくって、かなり平和だったんだけど……
 そう思ったのは、が教室に入る瞬間に呟いた言葉からだった。
 うん、オレはすっかりとその存在自体忘れてたのにね。






「リボーン、どう言う事なの?」

 無事に迎えた放課後。

 珍しく何事も無く終わったと言うのに、リボーンにと一緒に呼び出されたのは、学校のプール。
 しかも、呼び出した相手は夏を満喫してプールでのんびりくつろいでいる状態。

 この子供、本気で自分の好き勝手してるところは、ヒバリさんと張る様な気がするのは気の所為じゃないよね?

「っつーわけで、獄寺を納得させるためにも山本の『入ファミリー試験』をすることにしたんだ」

 そんな事を考えていれば、の質問にリボーンがもう一度同じ言葉を繰り返す。
 ああ、やっぱり始めに聞こえてきたのは空耳じゃなかったらしい。

「別に、好きにすれば……獄寺が納得しないとかにも、興味ないんだけど……」
「ツナ!そう言う問題じゃないから!!大体、山本は一般人なんだよ!それに、野球で忙しいのに巻き込んだりしたら……」
「もう遅いぞ、獄寺に山本を呼びに行かせたからな」

 本気で山本の試験とかどうでもいいんだけど、オレは
 山本が、ファミリーに入る事さえどうでもいいと言うのに

 正直に言ったオレの言葉に、が本気で突っ込んでくる。
 本当、なんで人の事にそんなに一生懸命になれるんだろう、

「な、何してるの?!獄寺くんに呼びに行かせたって……」
「あ〜っ、獄寺、今頃切れてないといいんだけど……」

 の言葉を遮るように言われたその言葉に、思わず正直に零してしまう。
 獄寺の性格を考えれば、山本とは水と油だろう、間違いなく。

「止めに行かなきゃ!」
「あっ!、走っちゃダメだよ」

 オレの呟きに慌ててが踵を返す。
 勿論、それはオレが腕を掴んで引き止めた。

 そうじゃないと、本気で走り出しそうな勢いだったから……
 、自分の体の方もちょっとでいいから、労わって上げた方がいいと思うんだけど

「落ち着いてる場合じゃないよ!山本、怪我してるんだからね!それに、獄寺くんの事やマフィアの事だって知らないんだから!」
「そうなのか?」
「う〜ん、ごっことは言ってたけど、あれってただ単に腹黒なだけだと思うんだけど……」

 オレに腕を掴まれた事で動く事ができなくなったが慌てたように口を開くけど、その内容にリボーンが不思議そうに首を傾げる。

 まぁ、分かり難いかもしれないけど、あれは絶対に腹黒だと思うんだけど
 ごっことか言ってるけど、多分本当だという事をちゃんと分かっているだろう、あいつの場合。

「まぁ、なんにしても、が急いでも意味が無いから、ちょっと落ち着いた方がいいよ」

 のんびりとリボーンと会話しているオレ達に、が本気で焦っているのが分かって小さく息を吐き出してその体を抱き上げる。

「オレが連れて行くから」

 が一人で焦っても、意味がないから

 それに、オレの目の前でに無理をさせる事なんて出来るはずもない。
 だからこそ、オレがしっかりと面倒を見る方が確実な上にの体に負担を掛ける事がなくなるのだ。
 しっかりとを抱き上げて、そのまま走り出す。

「ツ、ツナ……」

 そんなオレに、がギュッと抱き付いてきた。
 が抱き付いてくる事は珍しいから、こんな状態でも嬉しくなるんだけど
 そんな内心は隠して、見当をつけた場所に探していた人物達を見付けて、その足を止める。

「どうやら間に合ったみたいだね」
「10代目!」
「よぉ」

 まだ何も起こってないみたいだけど、獄寺の手にはしっかりと武器であるダイナマイトが見えて、それがギリギリだった事を知らせていた。

「って、何でそいつを抱き上げてるんですか?!」
「そうだね、趣味?」

 間に合ったのはの心配が減ったんで良しとしようと思った瞬間、オレとを見た獄寺が驚いたように質問してくる。
 それに、オレは逆に聞き返すように疑問形で返した。

 勿論、趣味と言うのは間違ってない。
 だって、を抱き上げるのは、オレの楽しみでもあるんだから

「本当に、仲良いよな、お前等って」

 疑問系で返したオレに、山本は全く気にした様子も見せないで当然のように返してくる。

 うん、こう言う所が黒いと思えるんだけど、こいつ。
 だって、山本はオレの気持ちを知っているんだから……

「おっ、久しぶりだな。確かツナの家庭教師だったよな、坊主」
「ちゃおっス」

 こっそりとため息をついた瞬間、山本がオレの後ろに声を掛ける。
 やっぱり、リボーンが付いて来てたんだな、しかもかなり楽をしながら……

 の体重だけじゃないモノはしっかりと気付いていたけど、あえて無視してただけだ。
 もっとも、人の服にロープを引っ掛けてきた時点で気付いてたんだけどね。

「そうだぞ、オレはマフィア、ボンゴレファミリーの殺し屋リボーンだ」
「そうだったそうだった。こんなちっせーうちから殺し屋たぁ、大変だな」

 ナチュラルに会話する山本とリボーンに、思わず盛大なため息をついてしまう。
 本気で何処まで冗談で言ってるのか分からないんだけど、こいつの場合……。

「オレも、そのファミリーに入れてもらったんだよな」
「そうだぞ、お前もツナの部下だ」

 サラリと言われた山本の言葉に、ピクリと腕に抱いているが反応する。
 どうやら、ここに来た目的もあのナチュラルな会話の所為で忘れかけていたのかもしれない。

「でも、まずは入ファミリー試験だぞ」
「っへー試験があったのか」
「試験に合格しなくちゃ正確なファミリーとしては認められねぇぞ」

 そして、当然のようにここに来た目的をリボーンが口にした。

 本気で試験するつもりなのか、この子供。
 いや、こいつが冗談を言わないのは、短い付き合いでも分かっていたつもりだけど……本気で、迷惑な子供だ。

「ちなみに、不合格は死を意味するからな」

 どうせオレも、その試験に巻き込まれる事は分かっている。
 だからこそ、ギュッとオレの服を掴んだに気が付いて、小さくため息をつく。

 勿論、にばれないように

「心配しなくっても大丈夫だよ、ちゃんとフォローするから」

 それから、必死で考えているの耳元へそっと声を掛けた。

「ツナ?」
「だから、は心配せずに見てて」
「試験は簡単だ。とにかく攻撃をかわせ」

 オレの言葉に、が驚いたように顔を見上げてくるのに、安心させるように笑顔を見せる。
 更に心配させないように言葉を続けた瞬間、リボーンが両手に拳銃を持って嬉々として口を開いた。

「ツナお前も参加しろよ」
「……分かってるよ、でも、は無理だからな」
「勿論だ。ダメはこっちに来い。って、何時までツナに抱えられてんだ」

 更に、予想通りオレに声を掛けてくる。
 勿論分かっていた事だから、驚く事はない。
 だけど、これだけは言っておかないとと思って、口を開けば今のこの状況を突っ込まれてしまった。

 もっとも、オレとしてはこのまま参加しても全然問題ないんだけど、少しでもを危険にさらす事になるかもしれないのなら、それは避けたい。
 不本意だけど、を安全な場所へと確保する事が今は最優先だ。

「ご、ごめん、ツナ!下ろしてもらって大丈夫だよ」

 リボーンに突っ込まれて、が慌てて下ろすように言って来る。
 本気で、下ろしたくはないけど、を危険な目に合わせる事なんて、絶対にしたくないのが本音だ。

「別に、このままでもいいんだけど……でも、試験をするなら、を危険な目には合わせたくないから、仕方ないね」

 本気で残念に思いながらも、リボーンの傍へを連れて行くとゆっくりと下に下ろした。

「おい、さっさとはじめっぞ。ダメはこっちに来ていろ、巻き込まれるかんな」

 言うが早いか、身を乗り出していたをしっかりと自分の後ろに移動させるリボーンに、少しだけホッとする。
 こいつでも、流石にには無茶な事は出来ないらしい。

「まずは、ナイフ」

 持っていた銃をナイフに変えて、オレや山本に向けて投げてくるリボーンの攻撃に子供だまし過ぎて簡単に避けると小さくため息をつく。

 本気で退屈な試験になりそうだ。
 勿論、に余計な心配は掛けたくないから、山本に傷を付けるようなヘマはする気もないけどね。

「ま!まって、リボーン!!本当に山本を殺す気?!」

 当然のように試験を始めたりボーンに、が慌ててリボーンを止める。
 確かに、オレは平気だと思ってくれるのは嬉しいんだけど、山本の心配だけをするに、ちょっとだけ山本に嫉妬してしまうのは止められない。

「まあまあ、大丈夫だって!オレも試験に受かって正式なツナのファミリーになるからよ」

 だけど当の本人が、サラリと口を開く。
 当然のように、試験に合格する気満々のようだ。

「大丈夫だよ、

 それでも心配そうな視線を向けてくるに、オレが再度声を掛ける。
 が心配するような事には、絶対にさせないから

「ツナも一緒だからな、心配する事ねぇって!」

 オレの気持ちを汲み取ったのは言われたではなく山本のようで、当然のように言われたその言葉にの表情が複雑なものになった。
 どうやら、山本自身この試験を楽しんでいるようだ。

「んじゃ、再開すんぞ」

 オレ達の会話に乱入して、リボーンが試験を再開する。
 その瞬間、容赦なくナイフが宙を舞う。

「……いい肩してらー」

 その攻撃を避けながら呟かれた山本のその言葉に、苦笑を零す。

 どうやら、本気でやる気になったらしい。
 野球以外では本気にならない山本が本気になったのなら、心配する事は無いだろう。

「次の獲物はボウガンだ」

 そう思った瞬間先回りしたのだろうリボーンが、今度はボウガンを持ってニヤリと笑みを浮かべた。

 本気で嬉しそうなんだけど、この子供……。
 気付いた瞬間には、既に体はUターンしてリボーンに背を向ける。
 山本も、同じようで、オレより少し遅くに同じように行動した。

「ガハハハハ、リボーン見ーっけ!!」

 が、その瞬間聞こえて来たその声に、一瞬殺意が浮かぶ。
 最近のオレにとって、一番係わり合いになりたくない子供だ。

「今度は何だ?」

 確認しなくっても、相手は分かっている。
 だけど、睨むように相手を見てしまうのは止められない。
 本気で、うっとうしいんだけど、この子供。

 意味の分からない山本は、突然の声に疑問を口にしながその子供へと視線を向ける。

「オレっちは、ボヴィーノファミリーのランボだよ!!5歳なのに中学校に来ちゃったランボだよ!!」

 当然のようにその場所に居たのは、今本気で殺気を送りたい相手No1の子供だった。

 3階の昇降階段踊り場から身を乗り出しているその姿に、そのまま落ちてしまえと本気で念を送りたくなってしまう。

「ボヴィーノ?聞かねー名だな。リボーンさんどーします?」

 自己紹介したその子供に、獄寺がリボーンへと質問する声が聞こえてくる。
 本当に弱小のファミリーみたいだな、ボヴィーノって。

「続行」

 獄寺の質問に、考える素振りも見せずに当然のように判断を下したリボーンがボウガンを乱射打ちしてくれる。

「ちょ、リボーン!!」

 それに慌てたのか、が止めるようにリボーンを呼ぶけど、そんなの聞くような奴じゃない。
 本当、そろそろリボーンの性格を理解した方が早いと思うんだけどね。

「パンパカパ〜ン!ミサイルランチャ〜〜〜ッ!!」

 そんなにため息と付きながらボウガンの矢を避けていたオレの耳に、またしても賑やかな声が聞こえて来て思わず眉間に皺が寄ってしまうのを止められない。
 本気で、耳障りな声なんだけど、こいつの声って……

「死ね、リボーン!!」

 うんざりしながら振り返った瞬間見えたのは、オレ達に向けて放たれたミサイル。
 リボーンを狙っているのだろうが、明らかに標準はオレと山本の方だろう。
 それに気付いて、慌ててその場は離れる。
 山本もそれに気付いたのだろう、当然のように同じように行動に移した。

「ツナ、山本!!」

 避けた瞬間、爆音と爆風が目の前を遮ってくれる。
 本気で邪魔な子供だよな、あいつ。

「おしいな、あと10メートル」

 それに残念そうに呟かれた言葉に、殺意を新たにしても許されるだろう。

「フーッ、こいつぁなめてっと合格できねーな」
「別に、合格しなくってもいいんだけど……」

 本気で面倒になってきたオレと違って、山本の表情が真剣なものになる。
 オレとしては、こんな面倒な試験さっさと終わらせたいんだけど

「リボーン!!試験なんてやめようよ。見ただろう?ランボくんがミサイル撃ってきたんだよ!!」

 その状況に、が必死にリボーンを止めようとするけど、当然リボーンは試験を続行する気満々なのは分かっている事だ。
 に言われて、リボーンが持っていたボウガンを投げ捨てる。

 それは勿論、試験を中止するのではなく

「次はサブマシンガンだぞ」

 新たな武器を手にする為で、次に取り出されたのはサブマシンガン。

「まずは見習いの殺し屋レベルだ」
「リボーン!」
「うるせーぞ、ダメ。おまえは黙って見てろ!」

 そして、容赦なくマシンガンを撃つリボーンに、非難するようにが名前を呼ぶ声が聞こえてくるけど、その後逆に怒られる声が聞こえて来た。
 本当、もリボーンの性格をもっと分かった方がいいと思うんだけど

 容赦ないリボーンの攻撃に続いて、馬鹿牛のミサイルまでもがうっとうしい程降ってくる。

「10代目!!!」

 それらを全部面倒だと思いながら避けていれば、獄寺の声が聞こえて来て一応振り返る。
 振り返ったオレに、獄寺が片目を瞑って手を左右に振るんだけど、一体何が言いたいんだ、こいつ?

 うっとうしいのが、もう一人って所だ。

「最後はロケット弾だ」

 響き渡る爆発音とマシンガンの音がうっとうしくなって来た頃、聞こえて来たリボーンの声に、漸く終わるのかとホッとする。

「果てろ!」
「サンダーセット!」

 それと同時に、獄寺の声と10年後の馬鹿牛の声が聞こえて来て、視線を向ければ洒落にならない状況が出来上がっていた。
 獄寺のダイナマイトに、リボーンのロケット弾。そして、何時なったのか知らないが10年後のランボの必殺技だか知らないけど、電撃を纏ったミサイルが複数。

「おいおい……」

 流石に山本もその状況に気付いて、かなり驚いているようだ。
 まったく、どうしてこうも面倒な状況を作ってくれるんだろう、こいつ等は……

「ツナ!!山本!!!」

 思わずため息をついても許されるだろう。
 そんな中、聞こえてきたのは必死にオレと山本を呼ぶの声。
 それと同時に、辺りを爆音と爆風が響き渡った。


 爆音の所為で、若干耳が可笑しいけど、がオレを呼ぶ声だけはしっかりと聞こえて来た。

 当然、攻撃は山本を庇うように避けたに決まってる。
 もっとも、オレが庇わなくっても、山本もしっかりと自分で攻撃を避けられただろうけど

「ツナ!山本!!」

 再度がオレ達を呼ぶ声が聞こえてくる。
 本気で、心配していたのだろうその声は、安堵したというのがヒシヒシと伝わってきた。

「あ〜っ、やっぱりツナの動きには負ける……」
「あれが避けられるなら、山本も十分だと思うけど」

 山本は山本で、オレに庇われたのが悔しかったのだろう、残念そうに呟かれたその言葉に、オレもしっかりと言葉を返す。
 多分、オレが庇わなくっても、山本は大丈夫だっただろう。

 こいつも、十分一般人からは掛け離れているという事が良く分かった。
 もっとも、よくよく考えれば、オレの友達をしている時点で、一般人にはなれないだろうけど

「試験合格だ。おまえも正式にファミリーだぞ」
「サンキュー」

 当然のように無傷だったオレ達に、リボーンが試験合格を伝えてくるのに、山本が素直に礼を言う。
 それに続いて、獄寺が近付いてきたと思った瞬間、山本の胸倉を掴んだ。

「よくやった」

 一体何を言うのかと思ったら、獄寺が口にしたのは、山本を褒める言葉だった。
 まさか、獄寺が山本を褒めるとは思いもしなかったので、少しだけ驚かされる。

「あれ位避けられねぇようじゃ、10代目の部下としては認められねぇけどな。10代目と同等に渡り合ったんだから、ファミリーとして認めねーわけにはいかねえ。でも10代目の右腕はオレだからな、お前はケンコー骨だ」

 だが、続けて言われた言葉は、本気で下らない内容だった。
 誰が、お前を右腕にするって言ったのか、教えてもらいたいくらいだ。

「け…ケンコー骨!?前から思ってたけど、獄寺って面白ぇーヤツな!」

 呆れているオレと違って、山本は言われた言葉に一瞬驚いてはいたけど、大笑いして獄寺の肩に腕を回す山本は、流石としか言えない。
「だがツナの右腕を譲る気はないね。おまえは耳たぶってことで」

 が、続けて言われた言葉は、改めて山本の黒さを実感させられる。

 本気で、何処まで黒いんだ、山本。
 そんな山本に、が少しだけ驚いているのが分かった。
 多分、山本の黒さに気付いたんだろう。
 は、そう言うところは鋭いからね。自分に向けられる好意には、鈍感なのに……


 その後暫くどっちが何だと言い合う二人が、本気でうっとうしかった。

 オレとしては、が居てくれれば、他はどうでもいいんだけど

 誰が、右腕になろうが興味ない。
 と言うよりも、右腕なんて必要なんだけど