笹川京子がの部屋を壊してくれたお陰で、久し振りに一緒に寝る事になった。

 勿論、部屋にはちゃんとオレが運んだに決まってる。
 は、捻挫までしてるんだから……

 もっとも、本人はそれを綺麗さっぱり忘れてるどころか、自覚さえしてないみたいだけど


 なんにしても、と一緒に寝られたから、それは全て水に流そう。

 だけど、残念なのは、の部屋が立った一日で元通りに戻ってしまった事だ。
 本気で、あと数日は直らなくっても良かったんだけど……





 日曜日の昼近く、はまだ幸せな夢の中だろう。

 チラリと時間を確認してから、そんな事を思って思わず笑ってします。
 休みの日は、お昼過ぎまで寝てるもんね、

「おい、ダメはまだ寝てるのか?」
「そうだろうね。は何よりも寝る事をこよなく愛しちゃってるみたいだから……」

 本当は、オレの事もそれぐらい愛してくれると嬉しいんだけど

「チッ、仕方ねぇヤツ……で、お前は何を読んでやがるんだ?」
「愛読書」

 オレの言葉に舌打して文句を言うけど、起こしに行く気はないらしいリボーンが質問してきたそれに、サラリと言葉を返す。
 読んでいるのは愛読書の医学書。もっぱら人体の構造などが良く分かる本。

「流石だな」

 すんなりに返事を返したオレに、リボーンがニヤリと笑みを浮かべる。

 別にお前に褒めてもらわなくっても良いんだけど
 いや、むしろ褒められたくないと言うか……

「そう言う本は役に立つからな、しっかりと読めよ」
「別に、お前に言われたからって読む訳じゃないよ。そんなことよりも、窓の外に居るヤツどうにかしてくれない。目障りなんだけど」

 満足気に言われたリボーンの言葉に、ため息をついて、いい加減窓のヤツが気になって話題に出す。
 窓の外にある木に登って、枝の上に居る牛柄の服を着たアフロ頭のガキがオレの部屋に向けて拳銃を構えているのが鬱陶しいんだけど

「死ね、リボーン!」

 そして子供がリボーンの名前を呼んで、引き金を引く。
 だがそれは、弾が入っていないらしくカチンと空しい音が聞こえて来た。

「ん?」

 弾が出ない事に何か思い出したのだろう、小さく『あ』と言う声が聞こえて来て子供の顔色がさっと悪くなる。

 多分、遊びででも使い果たしたって所だろう。
 呆れた視線で見詰める中、その子供が乗っている枝からミシリと音がする。

「ん?」

 子供が違和感に気付いた時には、ベキリと枝が折れてそのまま下へと落ちた。

「……一体、何なんだ?」
「さぁな」

 訳の分からない状況に首を傾げれば、リボーンも全く興味なさそうに呟く。
 その瞬間、下からけたたましく呼び鈴を連打する音が聞こえて来て、思わず俺は頭を抱え込んでしまった。

 まだ、が寝てるって言うのに……

 もっとも、連打されていたその音は直ぐに止まったから、母さんが出たのだろう。
 その後、激しい足音と共にオレの部屋のドアが派手な音を立てて開かれた。

「ひさしぶりだな、リボーン!!オレっちだよ、ランボだよ!!!」

「……リボーン、知り合いみたいだから、ちゃんと相手してやれよ」
「知らねーぞ」

 人の部屋に土足で入ってきて、元気良く自己紹介する子供に、鬱陶しいと思いながらリボーンへと振れば、きっぱりと返される返事。
 更に完全無視なのか、リボーンは自分の銃の手入れを始めてしまった。

「コラー!無視すんじゃねー!!いてまうぞコラー!!」

 完全に無視された子供がリボーンへと包丁を持って迫ってくるが、それはあっさりとリボーンの一振りで壁に叩きつけられる事になる。

「おーいて…何かにつまずいちまったみたいだ」

 激しく壁に叩きつけられたにも関わらず、子供は言い訳するように呟きながらヨロリと立ち上がった。

「イタリアから来たボヴィーノファミリーのヒットマン、ランボさん5歳はつまずいちまった!!大好物はブドウとアメ玉で、リボーンとバーで出会ったランボさんはつまずいちまった〜!!」

 そして、更に詳しく自己紹介してくれる。

 って、知らないって言われたから、しっかりと何処で会ったのかまで主張してるし……


 本気で、鬱陶しいんだけど

「ってことで、あらためて!いよぉ、リボーン!オレっちだよ、ランボだよ」
「最近撃ってねぇから、腕が鈍っちまう」

 必死でアピールしている子供に、リボーンは完全無視で愚痴を零す。
 まぁ、確かに銃を撃つ機会は少ないだろう、最も、オレはこいつに2回も撃たれてるんだけど……

 リボーンに無視されて、子供の動きがピタリと止まる。

「あ!そーだ。今回いろんなおみやげイタリアからもってきたんだよな〜っ」
「だったら、どっかで射的の練習でもして来いよ」

 ゴソゴソと鞄を開いている子供を横目に、オレは盛大なため息をつきながらリボーンへと言葉を返す。
 こいつが出て行ってくれれば、ちょっとの間でも平和になる。

「うるせぇ、オレが撃ちたいのは人間だぞ」
「お!?なんだこれ?きりたんぽだ。にゅるにゅる〜」

 オレが返した言葉に、不機嫌そうに言葉を返してきたリボーンに呆れたような視線を向けてしまう。
 なら、ここに居るうざい子供をなんとかし欲しいんだけど、オレとしては

「好きにしろよ!」

 完全に子供を無視してリボーンとの会話を続けていれば、とうとう子供が『が・ま・ん』と呟いてオレ達に背を向けて小さく震えだした。
 どうやら、泣き出したらしい。

「フォホホホホ、今回は、ボヴィーノファミリーに伝わる、いろーいろな武器をボスからお借―りしてきたのじょ〜」

 だけど、大人しかったのは一瞬で、今度は雰囲気を変えて泣きながらまた訳の分からない事を言ってくる。
 本気で、何がしたいんだろう、この子供……

「ジャジャーン!10年バズーカ!!これで撃たれた者は5分間10年後の自分といれかわる〜っ」

 嬉しそうに取り出してきたのは、一つのバズーカ。

 言われた内容に、一瞬だけ反応してしまう。
 10年後の自分と、入れ替われる?それが本当だとしたら、オレとの未来が分かる……

「でもこれは見本展示品〜!もったいないからしまっちゃお〜」

 だが子供は、それを人を馬鹿にしながら仕舞ってしまう。
 まぁ、本気でそんな非現実なモノがあるとは思えないけど、正直言ってそろそろムカついて来たんだけど

「まあっ!いいもん見っけ!あららのら、これ何かしら?」

 そろそろ我慢の限界を迎えていた中、嬉しそうに質問されたそれに視線を向ければ、子供が取り出したのは手榴弾。
 人の部屋で、そんなもの取り出すのはどうかと思うんだけど

「死にさらせっ!リボーン!!」

 ピンッと栓を抜き勢い良くリボーンへと投げ付けるが、当然それはリボーンによって返り討ちにあう。
 まぁ、予想通りの展開だが、その返された手榴弾によって、子供が窓の外へと放り出され、その瞬間景気良く手榴弾が爆発を起こす。

「……また、近所迷惑な……一応、お前の知り合いなんだろう?」
「何度も言ったが、あんな奴知らねーぞ」

 あっけなく返り討ちにあった子供が少しだけ気の毒でリボーンへと問い掛ければ、あっさりと返ってくる言葉。
 さっきあれだけ主張してたのに、知らないって……

「どっちみち、ボヴィーノファミリーっていったら、中小マフィアだ。オレは格下は相手にしねーんだ」

 そして続けて言われた言葉に、オレはただ深々とため息をついてしまった。
 まぁ、少しだけその気持ちは分かるけど、こう煩いと流石に近所迷惑なんだけど……

「どうやら、ダメの奴は起きたみてぇだな」
「えっ?」

 そんな事を考えている中、ボソリと呟かれた言葉に思わず反応してしまう。
 まぁ、あれだけ賑やかだったんだから、寝てられないよね、流石に……

「なら、オレはに挨拶でもして来ようかな」
「勝手にしろ」

 持っていた本を閉じ、床に置いてから立ち上がる。
 そして、当然と言うように言ったオレの言葉に、リボーンが興味なさ気に返事を返してきた。

 勿論、勝手にするさ。もっとも、止められても行くに決まってるけどね。




 階段を下りていると、下からの声が聞こえてくる。

「うん、綺麗になった。ほら、後は鼻かんじゃっていいよ」

 誰かと話していると分かるその声に、ピクリと反応してしまうのは止められない。
 が、誰かと話しているだけでも、許せなくなってきている自分が居る。

「あれ?もう起きてるの?」

 それが分かっているだけに、オレは今気付いたとばかりにへと声を掛けた。

「うん、おはよう、ツナ……って、あれ?」

 オレが声を掛ければ、は顔を上げてオレを見上げてきて朝の挨拶。

 って、もう既にお昼なのにね。

 だけど、その瞬間、の視線が下に向けられる。
 それに気付いてオレも視線を向ければ、先程までオレの部屋に居た子供がぎゅっとの足に抱き付いているのが見えた。

「ねぇ、なんでそいつがに抱き付いてる訳?」

 人の許可無く勝手にに抱き付いている子供に、本気で殺意が浮かぶ。
 リボーンがあんな生ぬるい対応するから、こんな事になってるんだけど

「ツナ、この子の事知ってるの?」
「先、オレの部屋に飛び込んできたからね」

 本気でイライラした視線を向ければ、更に怯えてに引っ付くのが許せない。
 の質問にあっさりと返事を返して、そのまま手摺を乗り越えて階段から下へと飛び下りる。

「ねぇ、いい加減から離れてくれる?」

 更ににしがみ付いている子供の頭を掴んで、ニッコリと笑顔で問い掛けた。
 だけど、子供は激しく泣き出してまるでの服で涙を拭くように顔を左右に振る。

「ツ、ツナ、子供のする事だから……」
「甘いよ、!子供の内からしっかりと教育しとかなくっちゃロクな大人にならないんだからね!!」

 無理やり子供をから引き離そうとしたオレに、は子供を庇うように口を開くけど、正直言って逆効果でしかないんだけど

 が庇うと、余計にこいつを噛み殺したくなる。って、雲雀さんの口癖が移っちゃったんだけど……

 そんな事を考えた瞬間、気付いてしまった。
 子供に抱き付かれ手居るが、痛みにその顔をしかめた事に

「ランボだったっけ?今すぐから離れろ!じゃなきゃ、容赦しないよ」

 それに気付いたから、本気の殺気を放って子供を脅す。
 オレのその言葉に、子供がビクリと大きく振るえて、から慌てて離れた。

、大丈夫?」
「うん、ちょうど傷痕の場所だったから……ちょっと……でも、大したことなくって、大丈夫……って、ツナ!子供相手だよ!!」

 子供が離れたので、慌ててに様子を確認すれば、苦笑交じりに返事が返ってくる。

 まぁ、大丈夫以外の言葉が返ってくるとは思ってなかったけど……
 だけど、こいつの所為で少しでもが痛い思いをしたのが許せなくって、オレの殺気はまだ治まらずに子供へと向けられる。
 そんなオレに気付いたが、慌ててそれを止めようと腕に抱き付いてきた。

「言ったでしょ!子供の内からしっかりと教育しとかないと!それに、に気安く触れるなんて、許せないからね」

 オレの腕に抱き付いてくれるのは嬉しいんだけど、こんな子供を庇う必要なんて全然ないんだよ。
 それに、こんな馬鹿なガキには少しぐらい痛い目を見てもらう方が教育的には必要な事だよね。

「ツナ、意味分からないから!それにほら、母さんから頼まれてるんだよ」
「……また母さんは、余計な事を……」

 オレの本心を言ったのに、それを分からないと言えるに脱力してしまう。
 そして、当然のように言われた言葉に、オレは深くため息を付いた。

「どうせ、『リボーンくんのお友達で喧嘩してるみたいだから、仲裁に入ってあげてちょうだい』とでも言ったんでしょう、母さんの事だから」

 母さんが言いそうな事を口に出して、再度ため息をつく。

 どうして、そんな事をに頼むかな。
 お陰で、が使命感に燃えちゃって困るんだけど……

「聞いてたの?」
「聞いてないよ。でも、大体の想像は付くでしょ、母さんの性格を考えれば」

 オレが言ったその言葉に、が少しだけ驚いたように質問してくる。

 どうやら、本当にそう言われたらしい。
 まぁ、母さんの性格を考えれば簡単に分かる事だけど

「でも、それ違うから!こいつ、ボンヴィノファミリーのヒットマンで、リボーンの事を狙ってるみたいだよ」
「えっ?!この子もヒットマンなの??」

 全然分かってないに、事実を教えれば、驚いたようにが声を上げる。
 まぁ、気付かないだろうね、普通は……。

 その後、が何処か複雑な表情で子供を見るのに気付いて、オレは小さくため息をついてしまう。

、それは、が考える事じゃないよ。それに、こいつ等見てると嫌々やってる様には見えないから、が気にする事なんかないんだからね」

 きっとの事だから、こんな小さい子供にそんな事させてるのとか、何とか考えてるんだろうね。

 本当に、分かりやすい。
 そう思って、再度ため息をついてしまう。

「ツナ?」

 君が、そんなに優しいから、だからオレは心配でたまらないんだよ。
 きっと、そんな事、思いもしないんだろうね、は……

「何でもないよ、それよりも、こいつどうするの?」
「どうするって……」

 心配そうにオレの名前を呼ぶに、小さく首を振って返し、今だに泣き続けている子供へと視線を向ける。

 オレの質問に、が困惑したような表情をした。
 本気で困っている時の表情だ。

「こいつもイタリアから来てるみたいだから、こっちには頼れる人は居ないと思うよ」

 これ以上困らせるのはどうかと思ったんだけど、これは事実だから知らせておかないとと口にしたその言葉に、も予想していたのだろう、小さく頷いて返してきた。
 でもその表情は、眉間に皺が寄っていて、本当に困った表情だ。

 もっとも、そんな顔も可愛いと思ってしまう自分は、本気でに惚れているんだと再度自覚させられてしまう。

「ツっくん、ちゃん、ごはんできたわよ。リボーンくんにも声を掛けてあげてね」
「はーい!あっ!母さん、もう一人増えても大丈夫?」

 真剣にが考えている中、何時ものように場を壊すような明るい声で母さんが、オレとを呼ぶ。
 それに、が返事を返して、更に信じられない事を口にした。

「ああ、あの男の子の分ね、大丈夫よ、ちゃんと用意しておいたわ」

 の質問に、母さんもしっかりと分かっていたのか、あっさりと返事を返してくる。

「ちょ、ちょっと!」

 そんな二人の遣り取りに、オレ一人だけが焦ってしまう。
 だって、こいつもマフィアなんだけど!

「食事は大勢でした方が楽しいものね。えっと、お名前は?」
「オレっち、ランボさんだもんね!」
「そう、ランボくん。お昼食べていってちょうだいね」

 母さんは、漸く泣き止んだ子供へと声を掛けて、名前を聞き出すと、その頭を撫でて序に手まで繋いで食堂へと入っていく。
 それに続いて、までもが全く気にした様子もなく、食堂へとその後に続いた。

 って、もうちょっと警戒とかして欲しいんだけど!!



「母さん隣に回覧板もって行くわね、みんなで仲良くしてるのよ」

 子供だけに席を空けて、母さんが回覧板を持って食堂から出て行くのをただ複雑な気持ちで見送る。

 子供はリボーンの前で固まってるし、はどうしたものかと考えあぐねてる様子。
 本当、こいつ等の事なんて放って置けば良いのに

「えっと、リボーン、ランボくんって友達なんだよね?」
「知らねーぞ、こんなヤツ」

 小さくため息をついた瞬間、がリボーンへと声を掛ける。
 その質問に、あっさりと返事を返すリボーン。

 更に、今まで固まって動けなかった子供が漸く動いたと思ったら、無い風呂リボーンへと投げた。
 もっとも、投げたナイフは、リボーンが食べていたナイフで弾き返してしまう。
 しかも、弾かれたナイフは、子供の額に……って、ちょっとは学習出来ないのか、この子供。

 呆れた表情で見守る中、子供が取り出してきたのは、あの10年バズーカと言う武器。

 見本展示品じゃなかったのか?

 その武器を取り出した瞬間、が慌てて椅子から立ち上がる。
 そして、自分に向けて撃とうとしている子供との間に割り込んでしまった。

!!」

 その行動に驚いて、その名前を呼ぶ。


 その瞬間、ドオンと言う音と共に、現れたのは可愛いとしか言えないスーツ姿の人。
 それは、10年後のの姿で、どうやら、本当にそのバズーカは10年後の自分と入れ替わるのだと言う事が分かった。
 そして、10年後のオレ達がまだ一緒に居る事が分かって、本気で嬉しい。


「……なんか、すごい体験しちゃったんだけど……」
「こっちは、心臓に悪かったんだけど」
「う〜っ、ごめん……でも、とっさに体が動いて……って、また!!」

 5分経って戻って来たに、抱き付きしっかりと説教したオレは、困惑気味のが呟いたその言葉に、チラリと睨んで言葉を返す。

 それにが、本当に申し訳なさそうに謝ってくれたけど、その言い訳は、悪いと思ってないでしょ、

 だけど、次の瞬間、その言葉は途中で途切れて、驚いたような声に振り返れば、またしても子供があのバズーカを自分に向けて撃っている姿が目に入った。
 今度は誰も止めることなく、先と同じようにドオンと言う音と共に、モクモクと煙が広がり今度出来ての来たのは、10年後のじゃなくって

「やれやれ、どうやら10年バズーカで、10年前に呼び出されちまったみてーだな」

 子供の10年後の姿。

「えっと、この人……」

 って、5歳って言ってたんだから、こいつ15歳って事だよな?
 オレ達と2歳ぐらいしか違わないのに、何でこんなに老けてるんだ?

「お久しぶり、若きボンゴレ10代目とさん。10年前の自分が世話になってます。泣き虫だったランボです」

 信じられないものでも見るようにそいつを見詰めていれば、その男が自己紹介してくる。

 は、オレと身長そんなに変わってなかったのに、こいつなんでこんなにでかいんだ?
 って言っても、山本とそんなに変わらない?

 オレも、10年後なら、もっと身長伸びてるんだろうか??

「よぉ、リボーン。みちがえちゃっただろう?オレが、おまえにシカトされつづけたランボだよ」

 複雑な気持ちで見守る中、現れた男は10年バズーカの説明をしてから、モクモクとご飯を食べているリボーンへと声を掛ける。

「ふーん、あれがあの泣き虫なガキだったなんて……すごいバズーカだね。先は、の10年後もここに居たから信じるしかないけど、信じられないんだけど……」

 説明もされたし、事実10年後のも見たから、信じるしかないんだけど、やっぱり今だに信じられない。
 それに、目の前のこの男、10年経っても全く進歩してないみたいだし……

「やれやれ、こうなりゃ実力行使しかねーな。10年間でオレがどれだけ変わったか見せてやる」

 当然のようにリボーンに無視されて、男が角を取り出し頭に付ける。

「サンダーセット」

 その瞬間、稲妻が流れた。

「オレのツノは100万ボルトだ」

 どうやら、この男は稲妻を扱うらしい。
 角が稲妻の力を借りて、光っているのが分かる。

「死ね、リボーン!!電撃角!!!」

 その電力を帯びた状態で、真っ直ぐと地ボーンへ向けて突進していく。

 って、本気で成長してないし……しかも、単純すぎる攻撃。
 当然リボーンは、持っていたナイフをその男の頭に突き刺す事でその攻撃を止める。

「が・ま・ん」

 フォークを刺された相手は、下を向いた状態で子供の時と同じ言葉を呟いた瞬間、泣き声を上げて部屋から飛び出していった。

 本気で、10年後も進歩なさ過ぎだぞ、あの子供!

ちゃん、仲裁に入ってあげてって言ったでしょう!」

 呆れ返って何も言えないでいる中、隣に回覧板を持って行っていた筈の母さんが、あの子供を連れて戻って来た瞬間、に文句を言う。
 って、仲裁も何も、喧嘩にすらなってないんだけどね。 

「ランボくん、リボーンくんと友達になりたいんですって」

 呆れてため息をつきながら、子供の事を話す母さんに、更に呆れてしまう。

 良くそんな嘘が言えるもんだな、この子供。
 も、それには流石に信じられないというような視線を子供へ向けている。

「なんてウソだよーん!!死にやがれー!!」

 そして予想通り、子供が取り出して来たのは、またしても手榴弾。

 先と同じようにそれを勢い良くリボーンへと投げた。
 が、リボーンは食べ終わった皿でそれを見事としか言えないぐらいの要領で子供へと弾き返す。
 後は、オレの部屋で起こった事を同じように、子供はその手榴弾の勢いで窓から外へと飛んで行き、派手な爆発音を響かせた。

「ママン、おかわり」

 そして、それを驚いた表情で見ている母さんへと、一言。
 流石に、こう何度も爆発音を響かせるのは近所迷惑の何者でもないと思うんだけど、こいつが居る以上、平穏を臨むのは無理な話だろう。



 それから、親父の馬鹿から、あの子供を家に居候させてやって欲しいと言う電話が来たのは言うまでも無い。
 久し振りに親父と話せた母さんが、その日上機嫌で話したその内容に、オレが更に親父に殺意を持ったのは、当然の事だろう。