の事を心配しながらも、朝御飯を食べて一緒に学校へと向う。
オレ達と一緒にリボーンまで来ている事だけが、疑問だったんだけど……
本当、こいつは学校を何だと思ってるんだか……
まぁ、気がすんだら居なくなるだろう。
そう思って、リボーンの存在は綺麗に忘れ去る事にする。
「よぉ!ツナ!」
を教室に送ってから、自分の教室に入った瞬間、元気な声で名前を呼ばれてそちらへと視線を向け盛大なため息をついてしまった。
「なんだよ、暗いぜ。また弟に何かあったのか?」
盛大なため息をついたオレに、声を掛けてきた人物が質問してくる。
どうやら、オレのため息の理由=に何かあったと言う方程式が出来ているらしい。
間違いじゃないんだけどね。
「何かあった訳じゃないんだけど……何かを隠してるのが心配で……」
学校に着くまでも、何かを考えているようでどこか上の空だったの事を思い出して再度ため息。
「隠し事?」
ため息をつきながら言ったオレの言葉に、山本が質問してくる。
オレだって、全部を分かっている訳じゃない。
ただ分かっているのは、が何かを隠していると言う事だけ
でも、があんな表情をした後には……
「うん、時々見せるんだけどね、何を隠してるのか聞いた事は一度もないんだ。ただね、がそんな表情をした後には必ず何かが起こってる」
「何か?」
そう、何かが起こるのだ。
初めて、があの表情を見せたのは何時だっただろう。
確か、が歩けなくなったあの事故の前………?
「……憶測なんだけど、がね、怪我しちゃうんだ。誰かを庇って……」
それは、オレだったり、母さんだったりが友達だと言った相手を庇って………
ずっと疑問だったんだけど、今日のあの顔を見てその事を思い出した。
「気の所為じゃねーのか?」
オレの言葉に、山本が首を傾げるそれに、ただ苦笑を零した。
気の所為。
多分、その言葉では片付けられない何かを感じているからこそ、返事を返すことが出来なかった。
「ツナくん!」
返事の出来ないオレに山本が不思議そうな顔をした瞬間、名前を呼ばれて振り返る。
「京子ちゃん?」
「おはよう、ツナくん、山本くん」
振り返れば、自分達の方に近付いてくる笹川京子の姿。
直ぐ傍に来て、ニッコリと笑顔で朝の挨拶。
この子、本当に天然って言うのか、マイペースだよね。
「おはよう、京子ちゃん」
「よっ!」
そんな彼女にニッコリと笑顔を返す。
山本も、短く挨拶を返した。
「どうかしたの?」
挨拶をしたオレ達にもう一度ニッコリと可愛らしく笑顔を見せる彼女は、確かにアイドルと言われる理由が良く分かる。
もっとも、オレにとっては以上に可愛いと思える女の子なんて居ないんだけど……
「あのね、今日のバレーの試合なんだけど、相手が1-Cなんだって!」
そんな事を考えながら質問したオレに、京子ちゃんが今日の球技大会の相手クラスを教えてくれた。
1- C組と言えば、の居るクラス。
「……それは、には応援してもらえないかな……」
まぁ、昨日自分のクラスだったとしても応援するって言ってくれたんだけど、流石に表向きはクラスを応援するしかないだろう。
「大丈夫だよ!くんのクラスの子達に協力してもらったから、くんはちゃんと貸し出して貰ってるんだよ!」
「はい?」
ニコニコと言われた内容に思わず聞き返してしまう。
えっと、貸し出すって、を?
1-Cの連中って、人の弟を何だと思ってるんだ。
「そりゃ、すげーな」
って、何暢気に返しちゃってるの、山本!!
「だから、心配しなくても大丈夫だよ」
ニッコリと笑顔で言われるような内容じゃないと思うんだけど……
でも、折角を貸し出して貰っていのなら、それはオレにとっては確かに嬉しい事だ。
もっとも、何でそんな事を京子ちゃんがしてるのかは、謎なんだけど・……
やっぱりこの子って、今流行りの腐女子?
「なら、オレからもお願いしていいかな?」
だけど、折角の好意だ、有難く受け取る事にしよう。
が関わる事なら尚更、ね。
の為の特等席。
立ちっ放しになるのは、の足に負担をかけるから、オレの有志を見てもらうために一番前に椅子を用意して貰った。
ボールが飛んだ時に危ないって?
そんなの、オレがを危険に晒す訳ないよ。
山本にお願いして、をそこに連れて来てもらうように言えば、不安げな表情で連れてこられた姿を見付けて思わず口元が綻んでしまう。
相手がのクラスだからって諦めていたけど、オレは一番に君に応援してもらいたかったのだから
欲を言えば、山本に迎えに行かせるんじゃなくて、オレが自分でを呼びに行きたかったんだけどね。
仲良くと話をしている山本を見て、ちょっとだけ殺意が芽生えたのが正直なところだ。
「お疲れ、ツナ!それから、楽勝だったね」
試合結果は、オレ達Aクラスの圧勝。
もっとも、が見ているのだから、無様な姿なんて見せられる訳がないので、オレも少しだけ本気を出させてもらった。
それでも、十分手は抜かさせてもらったんだけど
「うん、が応援してくれたからね、負ける訳にはいかないよ」
試合が終わっての傍へと近付けば、労いの言葉と一緒に渡されたタオルとその笑顔。
タオルは、京子ちゃんから渡されていたみたいだけど、確かに彼女からタオルを受け取るよりも、に渡して貰った方が何倍も嬉しい。
思わず笑顔で返したオレに、京子ちゃんは満足そうな顔でオレとを見ている。
「いや、俺が応援したからって、勝てないから!それに、俺自分のクラスそっちのけでツナを応援しちゃってたんだけど、本当に良かったのかなぁ」
「気にしなくってもいいよ。球技大会に命掛けてるような人は居ないだろうからね」
そんなオレに、が困ったような表情で口を開くそれに、ニッコリと笑顔を見せてキッパリと返事を返す。
ただの球技大会に、グダグダ言う馬鹿が居たのなら、一瞬で黙らせる自信はある。
勿論、に対して文句を言おうモノなら、容赦なんてする気はない。
「そこそこの動きだったな、及第点はだしてやるぞ」
「……なにこれ、何でこれが居るの?」
から渡されたタオルで軽く汗を拭いていた瞬間、嫌な声が聞えて来て思わず不機嫌な顔になるのは止められない。
なんで、これがここに居る訳?
本気で邪魔なんだけど、しかも何が及第点だ!偉そうに!!
「あのね、ツナ、リボーンも応援してくれたんだよ」
「こんな奴の応援はいらないよ。それに、応援よりも、人が失敗する方が良かったんじゃないの、こいつの場合!」
多分、失敗していたら、『情けないぞ』と言って喜んで修行してくれただろう、こいつの場合は
「失礼な奴だな。まぁ、オレは寛大だから気にしねーぞ」
「……寛大、ねぇ……で、また何を企んでるんだ?」
チラリと下に居るそいつを見てあからさまにため息をついて見せながら質問する。
誰が、寛大だか……良く言うよ、この子供。
「ツ、ツナ!他の人の目もあるから……」
「何も企んでねーぞ。おまえがバレーに出るって聞いたから見に来てやったんだからな」
険悪な雰囲気を作ったオレとリボーンに、が恐る恐ると言った感じで間に入ってくる。
それに、リボーンが偉そうに言葉を続けた。
「本当、このボーズおもしれーよな、!」
睨み合うオレとリボーンに、山本が楽しそうに笑いながら暢気な言葉を口にする。
気が抜けるような山本のその言葉に、オレはもう一度ため息をついた。
「面白くないから!全然!!」
そんな山本に、が必死な表情で突っ込みを入れる。
確かに、の言うように周りから見てもオレとリボーンの雰囲気は穏やかではないだろう。
それを笑いながらそう言える山本は、ある意味凄いのかもしれない。
険悪なオレ達を前に、が少しだけ離れていくのが感じられる。
本気で、この子供が邪魔なんだけど……
「昨日も来てたよね?くんとツナくんの弟さん?」
「えっと、分け合って預かってる子供です」
そして聞えて来たのは、京子ちゃんの声と慌てて説明するの声。
それをどこか遠くに聞きながら、オレはただ小さくため息をついた。
「ツナ、おまえ、気付いているのか?」
そして、そっと質問されるそれにチラリとリボーンを見る。
「それが、何を意味してるのか分からないんだけど?」
「気付いてねーのなら、気にすんな」
分からないと言うように質問すれば、オレから顔を逸らすリボーン。
それに、ピクリと反応してしまう。
この子供、何を知ってるんだ、が隠している事を知っている?
「リボーン……おまえ……」
「あっ!何か、俺達のクラス集合掛かってるみたいだから、教室戻るね。京子ちゃん、悪いんだけど、ツナに言っといてくれるかな?」
「うん、いいよ。気を付けてね」
リボーンを問いただそうとした瞬間聞えて来たの声に、思わず視線をそちらへと向けてしまう。
それに、心配そうな京子ちゃんの声が返されて思わず苦笑を零してしまった。
多分、を知っている人なら気付いているだろう、今日のが何かを隠して居ると言う事に……
だからこそ、心配してしまうのだ。
どこか張り詰めた雰囲気を持っているに……
「知っている訳じゃねーぞ、それは、オレも同じだ」
体育館から出て行くを見送っていたオレの耳に、ポツリと聞えて来たのはリボーンの声。
それは、オレが質問しようとした内容への言葉。
ねぇ、君は一体何を隠しているの?
お願いだから、抱え込まないで
それだけが、オレの願い。
君が、傷付かないでいてくれる事が……