何で、ヒバリさんがを連れてきたのかは分からないけど、オレからを奪う人に容赦をするつもりはない。

 は、オレにとって唯一の存在なのだから

 だからこそ、を傷付ける奴は許さない。
 どんな理由があったとしても、絶対に!









「ツナ!お願いだから、喧嘩売るのは止めて!!本当に、何もされてなくて、お茶をご馳走になっただけだから!!」

 構えたオレの耳にの制止の声が掛けられる。
 だけど、そんな言葉でも止める気はない。

 大体なんで、ヒバリさんがにお茶をご馳走してる訳!
 それこそ、餌付けしてるみたいで気に入らないんだけど

「なんで、ヒバリさんがにお茶をご馳走してるのかが気になるんだけど……」

 戦闘態勢は崩さないまま、の言葉に正直に口を開く。
 そして、目の前のヒバリさんへと殺気を送った。

 何で、にお茶をご馳走してるのか……

「そんなの、君には関係ないでしょ」

 オレが口を開いたそれに、ヒバリさんがキッパリと言い切った。
 だけど、その言葉にオレは益々不機嫌になる。
 何が関係ないだ、十分、関係あるんだけど……

「い、委員長さん!!そこで喧嘩売らない下さい!!えっと、だから……俺がここに居るのは……」

 ギッとヒバリさんを睨めば、何処か涼しい顔をしてオレを見てくる。
 本気でその顔を見ていると、イライラしてくるんだけど

 必死でオレ達を止めようと口を開いているが、何か言い訳をしようと言ったその言葉を耳にして、チラリとへと視線を向けた。

「居る訳は?」

 途切れた言葉の続きを促すように、問い掛ける。
 そう、オレが気になるのは、その理由なんだけどね。

「…えっと、だから……委員長さんが、美味しいお茶があるからって……うん、そう、美味しいお茶をご馳走してくれるって言うから!」
「……、胡散臭い相手の誘いはどんな事でも断れってちゃんと言ってるでしょ」

 多分、聞き返されると思ってなかったんだろうが、必死で言い訳をしてくる。
 だけど、その言われた内容に、オレは内心で盛大なため息をついて、思わず呆れたように口を開いてしまった。


 本当に、何でこんな相手を庇うんだか……

「誰が、胡散臭いの?」

 呆れたように言ったオレに、ヒバリさんが不機嫌な声で問い返してくる。
 この会話から、誰が胡散臭い相手か直ぐに分かる筈なのにね。

「本当に、誰でしょうね……」

 相手の質問に呟いて、ヒバリさんを見てから盛大なため息をついて見せる。

 まぁ、闇にあんたの事だと言うのを思いっきり主張して見せた。
 そうすれば、ヒバリさんが一気に殺気立つ。

「上等だね、今直ぐ咬み殺してあげるよ、沢田綱吉!」
「やれるものなら、やってみて下さいよ!!」

 バカにしたように言えば、トンファーで攻撃してくる。
 本当に、短気な人だよね。
 まぁ、怒らせるように仕向けたのはオレだけど

「草壁さん、逃げてください!!」

 戦闘を始めたオレ達に、が誰かに声を掛ける。

 草壁?誰の事だろう……人の心配するより、オレはに逃げて欲しいんだけど

 ヒバリさんのトンファーを避けながら、思わずそんな事を考えるのは、昨日を傷付けてしまったからだ。

「ねぇ、また避けるだけなの?」
「攻撃するつもりはありませんよ。こんな狭い場所で……いいんですか、校内でそんなに暴れても」
「君が気にする事じゃないでしょ……」

 攻撃を避けるだけのオレに、面白くないと言うようにヒバリさんが声を掛けてくる。
 オレは、それにため息をついて返す。
 場所は移動しないように、その場所だけで攻撃を避けるのはかなり厳しいかもしれない。
 直ぐ近くで、の声がする。

 本当に、話してないで早くこの部屋から出て行って欲しいんだけど……

 また、を傷付けるかもしれないという恐怖が頭を過ぎって、首を振った。

「ねぇ、そんなに余裕あるの?」

 その瞬間頬を掠めるヒバリさんのトンファー。
 それをギリギリで避けて、もう一度ため息をつく。


 本当に、厄介な相手だ。
 その辺の不良と違って、簡単にあしらえるような相手じゃない。

「本当に、面倒ですよね……」
「そう思うなら、本気で反撃してくればいいでしょ!」

 ポツリと呟いたそれに、ヒバリさんが言葉を返してくる。

 それが出来ないからこそ、面倒だといってるんだけど……。


 の目の前で、誰かを傷付ける事はしたくない。
 オレを嫌いになることはないと分かっているけど、出来ればには知らないで居てもらいたいから、オレがこの並盛で何と言われてるのかを……

 並盛最強として知れ渡っているヒバリさんと同じように、オレの名前もまた並盛では有名だ。
 だけど、どうしてオレの名前が知られているのかを、は当然知らない。

 喧嘩を売ってきた相手を返り討ちにしていた過去を


 攻撃してくるヒバリさんのそれを避けて、チラリとの方へと視線を向ける。

「あっ!!!!」

 見た瞬間、最近嫌と言うほど見慣れているその姿を見付けて、思わず声を上げてしまうのは仕方ないだろう。

 なんで、あいつがここに居るんだ?!

「ツナ?」
「リボーン、お前帰ったんじゃないのかよ!!」

 叫んだオレに、がキョトンとした表情でオレを見詰めてくる。
 意識を他所に移した所為で、ヒバリさんが拍子抜けしたようにトンファーを仕舞う。

「オレが何処に居ようと、勝手だぞ」

 オレの言葉に、リボーンは自分勝手な言葉を返してくる。

 しかも、飲んでるのはが飲んでいた紅茶のカップ。
 こいつ、と間接キスなんて、許せないんだけど……

「その赤ん坊は、君達の知り合い?」

 思わず殺気立ったオレに、ヒバリさんが質問してくる。
 知り合い?こんなモノと知り合いになりたくないんだけど、オレは!

「あ、あの、委員長さん……」
「おまえも、ボンゴレに入らねーか?」

 質問してきたヒバリさんに、が慌てて言い訳をしようとしたその言葉を遮って、口を開いたのはリボーンの勧誘の言葉。


 何、ふざけた事言ってるの、この赤ん坊……。

「ボンゴレ?悪いけど、アサリには興味ないよ」

 だけど、ヒバリさんはリボーンの言葉をあっさりと拒否する。

 まぁ、普通はそう言われれば間違いなく直訳するだろう。
 ヒバリさんも例外じゃなく、あっさりと口にされた言葉は当然と言えば当然の返事とも言える。

「アサリじゃねーぞ、ボンゴレはイタリア最大のマフィアだ」

 ヒバリさんの言葉に、リボーンが再度勧誘。

 こいつの気持ちは、分からなくもない。
 この並盛中学の風紀委員は、マフィアと言ってもいいぐらいの組織を誇っている。
 その頂点に君臨しているヒバリさんなら、勧誘されても不思議はない。

「マフィア?なら、ますます興味ないね」

 だが、あっさりと断るヒバリさんに、ホッとしてしまう。
 自分はマフィアのボスになるつもりはこれっぽちもないが、目の前の相手がマフィアになるのは、正直嵌りすぎて逆に怖いくらいだ。

「リボーン何勝手な事を言ってる訳!ヒバリさんを誘うなんて!!」
「うるせーぞ!これは、オレが決めた事だ」

 勝手な事を言う相手に文句を言えば、問答無用で突きつけられる拳銃。
 もっとも、そんな物で脅される自分じゃないけど

「何?そこに居る沢田綱吉が関係してるの?」

 だけど、オレとリボーンの遣り取りで、ヒバリさんが興味を示す。

「そうだぞ、オレはリボーン。ボンゴレ10代目候補となった沢田綱吉とのどちらかを立派なボスにするために居るんだぞ」

 質問されたその内容に、リボーンが何処か得意気に説明した。

 その瞬間、驚いたようにを見るヒバリさん。
 気持ちは分かるけどね、にマフィアのボスなんて似合わない。

「そこに居る、沢田も候補なの?」

 驚いたようにを見て、ヒバリさんが質問してくる。
 やっぱり、信じられなかったのだろう。

「そうだぞ。こいつも立派な候補に上がってる」

 何が、候補だ。
 本当は、候補にさえ上げられていないというのに……。

 をダシにして、オレをその気にさせる為のリボーンの戦略。
 もっとも、そんな戦略に乗るつもりは毛頭ないけどね。

「ふーん、考えてあげてもいいよ」

 ニヤリと笑いながら言われたリボーンの言葉に、興味を示したようにヒバリさんが返事を返す。

 考えてもいい?


 が、ボスになるなら、ボンゴレに入る事を考える……。
 その瞬間、嫌な予感がした。
 その続きの言葉を、聞きたくない。

「ただし、沢田をボクにくれればね」
「はぁ?」

 そして、楽し気に言われたその言葉に、自分の予想が当った事を知る。
 言われたそれに、が素っ頓狂な声を出した。


 ……この人、何を言っている訳。

 そんな事、オレが許す訳ないのを分かっていて……