「ねぇ、ツナ、きょうもお外にでかけるの?」
「うん、なに?も一緒に行きたいの?」
出かける準備をしていたら、珍しく弟が声を掛けてくる。
何時もはどんなに誘っても大人しく首を振るだけなのに、珍しい事もあると思って質問した。
それに返されたのは、プルプルと頭を振っての否定の返事。
何時もの返事に、思わずため息をつく。
「それじゃ、ぼくもう、行かなくっちゃ」
それと同時に、自分を呼ぶ友達の声が聞えてきて、不安気に自分を見詰めてくる弟の頭を一回撫でると玄関に向けて走り出した。
「あっ!」
後ろから弟の声が小さく聞こえて来たけど、気にしないで家を出る。
弟の事は、勿論嫌いじゃない。
自分に懐いてくるその姿は、可愛いと正直に思える。
だけど、大人しいと感じる弟とずっと一緒に家に篭っている事は流石に出来ないから、今日も自分は友達と一緒に遊びに出掛けていた。
それが、まさかあんな事になるなんて、思いもしなかったから……
何かを訴えるようなその瞳を無視しなければ、こんな事にならなかったのだろうか?
それは、信号が青になるのを確認して、渡りだした交差点での出来事。
「ツナ!!」
名前を呼ばれた瞬間、ドンッと背中を押されてしまった。
驚いて振り返って見た先には、可愛いと思える自分の双子の弟が車に撥ねられてしまう瞬間。
その小さな体が、宙を舞う。
一瞬、スローモーションのように動きがゆっくりに見えた。
「!!!!!」
その体が冷たいアスファルトに落ちた瞬間、真っ赤な血が流れ出す。
それを見た瞬間、その名前を必死に声が張り裂けるほどの大きな声で呼ぶ。
広がるのは、赤い赤い血の中で倒れている、君の姿。
「ウソだ、目を覚まして、!!!!!」
信じられない出来事に、オレはただその名前を呼ぶ事しか出来なかった。
ねぇ、君は知っていたの?
こうなる事を……
だったら、どうしてオレに教えてくれなかったの?
もしも、分かっていたら、こんな事にはならなかったかもしれないのに……