事故の後、良く熱を出すようになった。
それは無茶な事をしている俺に、これ以上無茶な事をしないようにと体がストップをかけているんだと言われたのは何時だっただろうか?
自分では、そんなに無茶な事をした自覚はないんだけど
でも、ツナに言わせれば、俺は無茶ばかりしてるらしい。
やっぱり、自覚は全然ないんだけどね。
「38.2度」
電信音をさせた体温計を手に取って、低い声が数字を読み上げる。
「そんなにあるの?」
だけど、言われた数字に俺は逆に驚いた。
確かに少しだけだるいなぁとは思っていたんだけど、そんなに熱があるなんて流石に思ってもいなかったんだけど
今日は朝からずっと右足が熱を持っているような気がしたんだけど、それを無視して普段通りにの生活をしていたのが問題だったんだろうか?
「『そんなにあるの?』じゃないよ!何でこんなに上がる前に一言言わないの!!」
驚いたように呟いた俺に、ツナが俺を叱る。
確かに、分かっていれば、ちゃんと報告したと思うんだけど
「えっと、全然自覚がなかったから、無理かなぁ……」
「昨日、寒い中出掛けたりするからだよ」
だけど、自覚がないのに報告するのは無理だって言ったら、盛大なため息をつかれてしまった。
しかも、昨日俺が寒い中出掛けた事を咎められてしまう。
だって、用事があったんだもん、仕方ないと思います!
って、口に出しては言えないんだけどね。
「兎に角、絶対安静だからね」
「うん、ちゃんと大人しくしてるから、ツナは部屋に戻って大丈夫だよ」
当然のように絶対安静命令を食らったので、素直に頷いて返しツナには部屋に戻るように言う。
だってね、俺の部屋にずっと居るのも退屈だと思うんだよ。
ツナにだってしたい事があるだろうし
きっと、宿題とか出てると思うんだよね。
うん、事実俺のクラスでは出されているんだけど、多分宿題するとか言うとツナにダメ出しされるだろう。
「オレが部屋に戻ったら抜け出すつもり?」
「そんな事しないから!」
だけど、部屋に戻るように勧めた俺に、ツナが不機嫌そうに質問してくる。
その内容に俺は、慌てて否定の言葉をちょっと大きな声で返してしまった。
その直後、目の前がくらくらしてしまう、熱がある時に大声を出すものじゃないよね、本当に
けど、抜け出すとか、俺は一度もした事ないのに、そんなこと言われたのがちょっとだけショックだったから
「そんな大声出さない。ほら、ちゃんと大人しく寝て」
「だって、ツナが……」
打撃を受けた俺に気付いたツナが、呆れたようにため息をついて起き上がり掛けていた体をまたベットへと戻された。
だけど、そんなツナに俺は恨めし気な視線を向ける。
「オレが悪かったから、大人しく寝てる事。多分、夜中にまた熱が上がると思うから、今日はずっとの傍に居るよ」
「えっ、でも、明日も学校……」
「一晩ぐらい寝なくても、大丈夫だよ。だから、は大人しく寝る」
オレの視線を受けて、ツナがまたため息をついてしっかりと宣言されてしまった。
それに慌てたように口を開けば、それを遮って当然と言うように返される言葉。
いや、全然大丈夫じゃないから!
「あの、無茶したのは謝るから、だから、ね?」
「何が、『ね?』なの?意味分からないから、さっさと寝る事。後で母さんが夕飯と薬届けてくれるからね」
無茶した自覚は全然無いんだけど、とりあえずと言うように言った俺の言葉に、呆れたように再度促すように言われてしまう。
いや、確かに行き成り、『ね』とか言われても分からないかもしれないけど、絶対にツナは分かってるんだから!
でもこれ以上何か言うと確実にツナを怒らせる事が分かっているので、俺は素直に瞳を閉じた。
熱でだるくなっている体は、その瞬間に休息を望むように力を失くす。
ああ、本当に俺って、無茶してたんだなぁと自覚するのはこんな時。
だからこそ、ツナがどんどん過保護になっちゃったのかなぁ……
そんな事を考えながらも、意識は闇の中へと沈んで行った。