あれから何度も笑われて、不機嫌になりながらも、ご飯を食べて、やって来たのは並盛遊園地。
こう言う場所に来るのは、本当に久し振りだ。
俺の足がこんなだから、母さんも遠慮して来なくなってしまったので事故に合う前に来たのが最後。
「ツナ!何処から行く?」
笑われた事でずっと不機嫌だったけど、こう言う場所に来たら、楽しまなくっちゃ損だ。
3等の並盛遊園地ペアチケットは、乗り物乗り放題だから特に!
そんなに大きくない並盛遊園地なら、一日で十分全部回り切れるだろう。勿論、俺の歩きの速度でも……
「何でも良いよ、が行きたいのはどれ?」
入り口で貰ったパンフレットを手に、ツナが逆に質問してくる。
いや、この場合、ツナが誘ったんだから、ツナが決めるのが普通じゃないのか?遊びたいから、俺を誘ったんじゃ……
「オレの事は気にしなくていいよ。が行きたい所から行こう」
そんなことを考えていた俺の心を読んだように、ツナがニッコリと優しい笑顔で言ってくれる。
えっと、最近ツナに心を読まれているように思うのは気の所為だろうか?実は、リボーンに読心術を習ってるのか?!
「うん、多分、違うから。はね、顔に全部出てるんだよ」
「顔に出てる?」
またしても、クスクスと笑いながら言われた事に、思わず自分の顔を触ってしまう。
それって、どうなんだろう……俺って、そんなに分かりやすいんだろうか??
「そうだね。それに、オレとはずっと一緒にいるから、何となく分かるのかもしれないね」
俺の疑問に、ツナが返事をくれる。ツナには何となく俺の事が分かるらしいけど、俺にはツナが何を考えてるのか全然分からないんだけど……
何か、不公平だ!
むっとしてしまった俺に、ツナが困ったような顔をする。
「う〜ん、何となく何を考えたのか分かるんだけど、オレが考えてる事も、に伝わってくれればいいのにね」
何処か、悲しそうな表情で言われたその言葉に何と返していいのか一瞬困ってしまう。
どうして、ツナがそんな顔をするのかが分からない。
「……そ、それなら、リボーンに読心術習った方がいいのかな?」
必死に考えて、答えられたのはそれぐらいなんて、本当、俺って情けないです。
んで、案の定、俺のその質問に、ツナがむっとした表情になる。
「そんなの習わなくっていいよ……で、何処から行く?」
不機嫌に言われて、再度質問。
あ〜っ、そう言われると分かってたからこそ、言葉を選ばなきゃいけなかったのに……
「えっと……それじゃ、近場からゆっくりと回って行こうか」
なので、俺に返せたのは、それぐらい。あう、本当に自分が情けなさ過ぎるよ。
それから、不機嫌なツナと並んで歩き出した。
何も話さなくなったツナに、俺はどうしたものかを考える。
そんな事を考えていた俺の隣で、ツナが盛大なため息をつく。
「こんな所に着てまで不機嫌になってても仕方ないね……ごめん、」
そして、申し訳なさそうに謝罪されて、俺はブンブンと大きく首を振って返す。
「そ、そんなの気にしてないよ!俺が、気の利いた事返せないから……ツナを怒らせる原因作るんだよね……」
「そうやって考えるのが、の悪い癖だよ。は悪くないんだから、そこで謝ろうとしない事!」
謝罪しようとした言葉を遮られて、ツナがまたしてもため息をついて怒ったように言われたそれ。
うっ、俺が、悪いと思ったから謝ろうとしたのに…逆に怒られた。
「でも…」
「『でも』は聞かないよ。にはね、もう少しだけオレがどれだけを大切に思ってるかって事を知って欲しい」
言い訳しようとした言葉をまたしても遮られて、言われたのは真剣な言葉。
そんな事、分かってる。
ツナが、俺の事を本当に大切に思ってくれている事……でも、俺は、そんなに大切にして貰える程の価値なんてないのに……
獄寺くんの言うように、俺はツナにとって、足手纏いでしかない。
「……ごめん……」
「だからね、謝って欲しい訳じゃないんだよ……オレの方こそごめん、こんな話、ここでする事じゃないよね……ほら、乗り物制覇するんでしょ、楽しもう」
謝った俺に、ツナが複雑な表情を見せて、咎めるように言う。それは、何度も言われてきた事。
だけど、その後、慌てて笑顔を作って、話を誤魔化すように、見えて来た乗り物を指差した。
何時ものように話を切り替えてくれたのは、本当にありがたいんだけど、俺は、その指された先を見て、思わずその場に立ち止まってしまった。
小さい遊園地にあるモノらしく、園内を走っている汽車の駅……。
ここ並盛遊園地は、並盛駅からバスで60分の並盛山の傍にある自然を生かした造りになっているので園内を散歩するのにもいい感じだから、確かに全部の乗り物がタダだからこれだって、乗るのはいいかもしれないんだけど……
「ツ、ツナ、これ乗りたいか?」
流石は、春休み。
子供が一杯居る。うん、それはいいんだけど、小さい子供しか居ない汽車に、流石に乗りたくはないんですけど……いや、園内を見て回れるって言うのは、魅力的なんだけどな……
「オレは、あんまり気にならないよ。だって、はこう言う乗り物好きでしょ?」
恐る恐る質問した俺に、ツナがニッコリと笑顔。
いや、うん、確かに好きなのは認める。
俺は絶叫系よりも、こう言うのんびりとした乗り物の方が好きだ。
だけど、虚しくなるからあんまり考えたくないんだけど、俺はまだいいかもしれないけど、ツナはこの中では確実に浮きまくるように思うんですけど……
「ほ、本当にいいの?」
「いいよ。ほら、汽車が戻ってきたみたいだから、急ごう」
って、思いっきり急かされちゃったんですけど……
本当に、いいんですか?ツナさん!!
………乗ったのはいいんだけど、子供達の視線が痛いです。
しかも、ご両親まで、俺達を見て来るんですが……いや、俺達を見てないで、景色を楽しんでください、お願いですから!!
「、次は、あれに行こうか?」
そんな視線を全く気にせずに、見えて来た乗り物を指差して言われた言葉に視線を上げる。
「どれ?」
「あれ」
聞いていなかった俺が質問すれば、指差されるのは遊園地の定番、メリーゴーランド。
いや、流石にあれは乗れないから!
「ツナ、俺の年齢間違えてないか!流石に、あれは……」
「大丈夫、大丈夫」
本気で、何が大丈夫なのか伺いたいんですけど……質問してみて、外見って返事が返ってきたら立ち直れないので、聞かずにいよう、うん。
自然に居ると、親子の視線も気にならなくなって、景色を素直に楽しむ事が出来た。
なんて言うか、やっぱり緑が気持ちいい。
「ツナ、ツナ!ここって、動物園もあったよな?後で行ってみよう!」
「了解。でも、無理だけはしないでね。足が痛くなる前にちゃんと言ってよ」
「うん、大丈夫!」
隣から聞えてくる動物の鳴き声に、そう言えば心配そうに言われてしっかりと笑顔で返事を返す。
その後、呆れたようにため息をつかれたのは、何故??
そんなこんなで、園内を汽車で回って楽しめました。
うん、子供達と一緒でも、楽しかったので良しとしよう。
きっと注目を集めていたのは、ツナの所為だよな……あんなかっこいい格好で子供の乗り物に乗るなんて、違和感ありまくりだ。
でも、俺も一緒になって見られてたのは、何でだろう??
その後、言われた通りメリーゴーランドに乗りました。はい、勿論、ツナも一緒に……。
二人乗りで、一匹の馬で乗ったから、すごい目立ちまくり……恥ずかしいから嫌だって言ったのに、却下されたのは何でだ?!
メリーゴーランドの次に乗ったのが、観覧車。うん、のんびりと回る観覧車からの景色も綺麗で、並盛の町並がちょっと遠くに見えていた。
そんな景色を楽しんではしゃいでいたら、ツナに笑われてしまう。どーせ、子供っぽいよーだ!
「ツナ、次は?」
観覧車から降りて、ツナを振り返る。
「、足は大丈夫?」
「全然平気!なぁ、なぁ、何処行く?」
俺の質問に、逆に心配そうに尋ねられた事に、笑顔で返して再度質問を返せば、ツナが笑い返してくれた。
「一ヶ所行きたい所あるんだけど、と一緒に!」
「うん、何処?」
俺ばっかりが楽しんで申し訳ないので、ツナが行きたいと言う場所を聞き返す。
俺と一緒に行きたいって、何処だろう??
「ここなんだけど、一緒に行ってくれるよね?」
そして、ツナが指を指した場所を覗き込んだ瞬間、サーッと自分の顔から血の気が引いたのが分かった。
「ヤダヤダ!絶対行きたくない!!」
「オレは、と一緒に行きたいんだけどな」
ツナが指した場所は、俺が絶対に行きたくない場所。
思わずブンブンと首を横に振って拒否。だが、ツナが何処か悲しそうな表情を見せたのに、う〜っ、と呻き声を上げた。
ツナが指指したのは、遊園地の定番……恋人同士ならお勧めの場所。
お化け屋敷。
でも、ホラーが苦手な俺にとっては、一番近付きたくない場所。
「そこだけは、ヤダ!」
いくらツナの頼みでも、行きたくないものは、行きたくない。
「それじゃ、はずっと目を瞑っててもいいから、行ってみない?」
妥協案というように言われた言葉に、少しだけ考える。
目を瞑ってまで、行きたいとは思わない。しかも、目を瞑っても、怖いものは怖いのだ。
「ツナは、俺がホラー苦手なのに知ってるのに……」
「うん、だって、ここの遊園地ってお化け屋敷はお勧めみたいだから……」
恨めし気にツナを見れば、苦笑交じりに言われた言葉。
だ、誰だよ!そんなの勧めたの!!
「す、勧めるって、それって、本当に怖いって事?!」
大体、勧められるって事は、怖いって言う事だ。
怖いのが分かってるのに、行きたくなんかない。
「怖いって言うのは聞かないけど、楽しめるみたいだよ」
お化け屋敷で楽しめるって何?!何で、お化け屋敷で楽しむんだよ!!
俺には無理だから、ダメだから!!
「オレとしては、と一緒に行けるの楽しみにしてたのに」
って、そんな縋るような目で見ないで!!ダメだから、本当に俺は、幽霊嫌いだから!!!本物居たらどうするんだよ!!!
「そんな目で見ても、ヤダ……お願いだから、それだけは勘弁して!」
「、全部制覇するって言ってたんだから、お化け屋敷も行っとこうよ」
た、確かに全部制覇する気は満々だったけど、お化け屋敷は入ってなかったから!
だって、お化け屋敷は楽しくないもん。
「お化け屋敷はいらないから!」
「そう言わずに、行こうよ。後で、の大好きなケーキ奢ってあげるから」
行くもんかと拒否した俺に、ツナがグラリと揺らぐような事を口にする。
「それに、オレがずっと傍に居るから大丈夫だよ」
た、確かにツナが傍に居てくれれば大丈夫だと思う……そ、それにケーキを奢ってくれるって言うのは、とっても魅力的。
「ほ、本当に、目を瞑っててもいいの?」
「勿論!ちゃんと出口まで一緒に居るよ」
心配気に質問すれば、即答で返される言葉。
それに、俺は真剣に考えてしまう。
ツナにずっと引っ付いていれば、確かに怖くないかもしれない……それだけで、ケーキを奢ってもらえるのは、美味しい話。
「う〜っ、本当に、本当に離したりしない?」
「勿論だよ。心配しないで、」
再度確認した俺に、ツナが頷いてくれる。
「なら、行く……」
それにホッとして、同意の言葉を返した。
頷いた俺に、ツナが嬉しそうな笑顔を見せる。って、何でそんなに嬉しそうなんだろう?そこまで、お化け屋敷行きたかったんだろうか??
それから、約束通り、お化け屋敷に入って、本当にツナに引っ付いたまま目を瞑って中を歩いた。
時々聞えてくる音楽や悲鳴なんかに、ぎゃーぎゃーと悲鳴を上げては強くツナに抱き付いていた俺と違って、ツナはすっごく嬉しそうだったのは何でだろう。
その後、残りの乗り物を制覇して、隣の動物園で和み。しっかりとケーキを奢ってもらって家に帰った。
うん、久し振りに遊んで楽しかったのは、本当。
最後には、ツナも機嫌良かったのは、念願のお化け屋敷には入れたからだろうか?
目を瞑ってたから、中がどんなだったのか分からないけど、『楽しかったよ』って笑いながら言ってたから、きっと満足できるものだったのだろう、うん。