「ツナ!聞いて、俺本当は、ツナの弟じゃなかったんだ!」

 4月1日。

 世間で言うエイプリルフール。
 この日だけはウソを付いてもいいと言う世間では4月バカと呼ばれる日。

 その日俺は、嬉々として双子の兄にウソをついた。
 勿論、どう聞いてもウソだと分かる内容のウソを……。

「そうだったんだ。ごめんね、気付いてあげられなくて……」

 嬉々としてウソを付いた俺に、俺のそのウソを付いた内容を聞いて、ツナが申し訳なさそうに謝罪してくる。
 俺が考えていた内容と全く違う事を言われてしまって、一瞬反応に困ってしまう。


 えっ?どうしてそこで、謝罪するの?
 普通は、『ウソでしょ』って言われるんじゃ……。

 軽くパニックになってしまったのは、本当に申し訳なさそうなツナの表情が目の前にあるから

「でも、これで問題は、性別だけになったね」
「ほぇ?」

 そして、ニッコリと言われた内容に、思わず間抜けな声を出してしまう。

 えっと、何の問題ですか、お兄様??


「でも兄弟よりも、問題が少なくなったから、良かったかも……」

 だから、何の問題ですか?全く、意味が分からないんですけど…

「好きだよ。だけが」
「えっと、ツ、ツナ??」

 スッと立ち上がって、俺に近付いて来たツナの手が俺の頬に触れてくる。
 そっと触れられた手が、なぞるように頬を滑って少しこそばゆい。

 言われた内容と、真剣なツナの顔を前に行き成りの告白。

だけを……性別なんて、関係ないぐらい……」
「……ツナ…あ、あの、今日はエイプリルフールで、その……」

 真剣な瞳で見詰めてくるツナに、俺は申し訳なくなって素直に今日が何の日であるかを口にする。

 俺のその言葉に、目の前に迫っていたツナが、ニッコリと笑顔を見せた。

「勿論、知ってるよ。でも、オレはウソなんて付いてないからね」

 ニッコリ笑顔で言われたそれに、思わず混乱する。

 えっと、それって……

「オレは、だけが好きだよ。例え兄弟じゃなくてもね」

 ニッコリと言われたそれに、思わず俺も笑顔を返す。

「んっ、俺も、例え兄弟じゃなくっても、ツナが一番好きだから!これは、ウソじゃないよ」

 ツナの言葉に、素直に返せば、何処か複雑な表情のツナの笑顔が返された。

 何で、そんな複雑な表情を見せるのか分からないんだけど、ツナが自分の事を好きだって言ってくれたのが嬉しかった。


 うん、ウソも偶にはいいのかも……。

 でも、相手を傷つけるウソだけは、絶対ダメだよね。