「ツナ!聞いて、俺本当は、ツナの弟じゃなかったんだ!」

 突然部屋に入ってくるなり、がそんな事を言う。

 今日は、エイプリルフール。
 この日だけはウソを付いてもいいと言われている日。

 だからこそ、直ぐにが何を考えているのかは分かったんだけど、オレはその嘘に騙されたフリをする事に決めた。
 だって、それはオレが望んでいる事だから

「そうだったんだ。ごめんね、気付いてあげられなくて……」

 嬉しそうに入ってきたに、オレは申し訳なさそうに謝罪する。
 だって、本当に兄弟じゃなかったら、こう言う反応が一番合うよね?


 謝罪したオレに、がギョッとした表情になる。
 まさか、そんな反応が返ってくるとは思ってなかったんだろう。
 心の中で笑いながら、オレはただ申し訳なさそうにを見た。

「でも、これで問題は、性別だけになったね」
「ほぇ?」

 そして、軽くパニックを起こしかけているに、ニッコリと笑顔を向ける。
 突然のオレの笑顔と、言われた内容にが意味が分からないと言うように首を傾げた。


「でも兄弟よりも、問題が少なくなったから、良かったかも……」

 何も分かっていないを無視して、考えた事を口にする。
 きっと、にとってはオレは兄弟と言う領域から抜け出す事は出来ないと分かっているから

「好きだよ。だけが」
「えっと、ツ、ツナ??」

 スッとソファから立ち上がって、の傍へと移動する。
 そうすれば、驚いたようにがオレを見上げてきた。
 そして、ゆっくりとの頬に手を添える。

 真っ直ぐに、の瞳だけを見詰めて、自分の本当の気持ちを口に出した。
 もう何度も何度も、心の中で繰り返してきた言葉を

だけを……性別なんて、関係ないぐらい……」
「……ツナ…あ、あの、今日はエイプリルフールで、その……」

 の両頬を手で包み込んでゆっくりと顔を近付けて行く。
 そんな中、慌ててが今日の日がどう言う日であるかを口にした。

 慌てて言われたその内容に、オレは近付けていた顔を離して、ニッコリを笑顔を見せる。
 オレが、そんな嘘も見抜けないようなダメ人間だと、思ってるところがだよね、本当……

「勿論、知ってるよ。でも、オレはウソなんて付いてないからね」

 は、オレに嘘を付いたかもしれないけど、オレは嘘偽りなどない思いを口にしたのだ。

 兄弟である今でさえも、オレはこんなにも君の事だけを考えている。

「オレは、だけが好きだよ。例え兄弟じゃなくってもね」

 だからこそ、想いを込めて自分の気持ちを口にする。
 もう、心の中だけに留めておく事が出来ないから……。

「んっ、俺も、例え兄弟じゃなくっても、ツナが一番好きだから!これは、ウソじゃないよ」

 オレの真剣な告白も、の前では何の意味もなさない。

 オレの事を好きだと言って貰えるのは嬉しかった。
 でも、オレが欲しいのは、そんな好きじゃない。


 ねぇ、君に『愛してる』って伝えれば、オレのこの狂おしい想いは満たされるんだろうか?

 でも、今は、君が好きだといってくれるだけで、我慢しておこう。