日曜日、久し振りにツナと一緒に買い物に来ました!

 本当は一人で行く予定だったんだけど、たまたまツナもCDを買いに出掛けると言うので、一緒に行くことに
 日曜日の並盛商店街は、何時も以上に賑やかでした。



「もー帰っちゃうんですか?」

 そして、たまたま出会ったのはハルちゃん。
 愛しの綱吉に会えて嬉しそうに抱き付いて来たのには、かなり驚かされたんだけど

「当たり前だろう、オレもも、用事終わったんだからな」
「あっ!さんもご一緒だったんですね」

 ハルちゃんの腕から抜け出して、俺の名前が出された事で、漸く存在に気付いてもらえたみたいで驚いたように視線が向けられた事に苦笑を零してしまう。

「こんにちは、ハルちゃん。綱吉、ハルちゃんに付き合って上げなよ。俺は先に一人で帰るから」
「一人でなんて帰せる訳ないでしょ。前にここでしつこい奴にナンパされたの忘れた訳?!」

 でも、ツナの事が大好きだと言うオーラーを出しているハルちゃんを、このまま無視するのは流石に可哀想で、俺がそれを口に出したら呆れたように返されてしまった。
 確かに、ナンパされて山本の親父さんにご迷惑を掛けてしまった事はまだまだ記憶に新しい。

さん、それじゃ一人は危険です!では、二人でハルの買い物に付き合ってください!」
「俺は別にいいんだけど……」
「なんで、そんな面倒な事……」

 ツナの言葉から俺のことを心配してくれたハルちゃんが、俺の事も誘ってくれる。
 俺は別に問題ないんだけど、当然ツナは乗り気じゃなくて
 嫌そうに呟かれたその言葉に、再度苦笑を零してしまうのは止められない。

「そう言わずに、付き合ってあげようよ。女の子一人だと色々危ないからね」

 だから、俺なりにツナにフォローを入れれば、盛大なため息をつかれてしまった。

 まぁ、ツナは何だかんだ言っても優しいから、こう言えば大抵付き合ってくれるんだけどね。

「行くんだろう、さっさと終わらせて帰るよ」

 そして歩き出したツナが、言った言葉にパッとハルちゃんの顔が嬉しそうなものへと変わる。

 本当にツナは、優しいよね。

さん、有難うございます」

 俺達から少し離れて前を歩くツナの後を追ってハルちゃんと並んで歩いていれば、突然お礼を言われて、意味が分からない。

「俺は、お礼を言われるような事、何もしてないけど?」
さんが付き合ってくれたから、ツナさんも付き合ってくれてるんですよ」

 不思議に思って首を傾げた俺に、ハルちゃんがどこか寂しそうに口を開く。

「そんな事無いと思うよ。ツナは、優しいから」

 ツナは、優しい。
 それは、俺だけじゃなく、みんなに優しいと思う。
 だから、俺が行かなくてもきっとハルちゃんに付き合ってくれると思うんだけど

「確かに、ツナさんは優しいです。でも、それは、さんが居ての優しさだから……」

 ハルちゃんの言葉を否定して言えば、同意してから不思議な事を言われてしまった。

 俺が居るから、ツナが優しいって……
 俺が居なくても、ツナは優しいと思うんだけど、良く意味が分からない。

「ハル、目的の場所は何処だよ!」

 ハルちゃんが言う言葉の意味が分からない俺は、どう返していいのか分からずに言葉に困っていれば前を進んでいたツナが不機嫌な声でハルちゃんに質問してくる。

 そう言えば、目的地聞いてなかったのに、ツナは先を歩いてたんだっけ

「この近くにあるケーキ屋さんです!」

 ツナに質問されて、ハルちゃんが目的地を教えてくれる。

 えっと、この近くにあるケーキ屋さんって言うと『ラ・ナミモリーヌ』かな?
 俺も、ここのケーキ屋さんは美味しいから好きなんだよね。

「ケーキ屋って事は、ケーキ買うのか?」
「そーですよ。今日は月に一度ハルが定めたハル感謝デーですから」

 言われたそれに、ツナが再度質問した内容に、ハルちゃんが説明する。

 自分感謝デーか、うん、女の子らしくて可愛い。

「へぇ、自分へのご褒美か、そう言うのいいね」

 感謝デーと言うよりも、がんばった自分にご褒美って言うのは、いいよね。

「そうですよね!いいですよね!!」

 俺が感心したように呟いたそれに、ハルちゃんが嬉しそうに返してくる。
 その迫力に負けて、思わず力無く頷いてしまったのは、本気でハルちゃんの勢いが凄かったから
 俺が頷いた事で、ますます嬉しそうにハルちゃんが目的地のケーキ屋さんへと入っていく。

「大丈夫、?」
「うん、ちょっと迫力に負けちゃったけど、大丈夫……ついでだから、お土産にケーキ買って行こうか」
「そうだね。母さんやチビ達が喜ぶだろうね」

 そんなハルちゃんを見送ってから、ため息をついた俺に、ツナが心配そうに声を掛けてきてくれたので苦笑を零しながら返事をして、ついでにケーキをお土産に買って買えることを提案すれば、同意してくれた。
 俺も、ケーキ好きだし自分の分も買って行こう。

「ツナさんは生クリーム大丈夫ですか?」

 ツナと仲良く並んで店の中に入れば、ハルちゃんが早速ショーウィンドウを見ていて、ツナに質問する。
 俺に質問してくれないのは、俺が甘いものを好きなのを知っているからだと思う。

「ツナは、あんまり甘いもの好きじゃないんだ。チーズケーキは食べるけどね」
「そうなんですか?それじゃ、ツナさんはレアチーズケーキにしましょう!さんは、どうしますか?」
「うーん、どうしよう」
「ツナくん?」

 ハルちゃんの質問に、ツナの代わりに返事を返して、ハルちゃんの隣に並んでショーウィンドウを見る。
 その時、誰かの声がツナの名前を呼んだ。
 驚いて振り返れば、そこに居たのは京子ちゃん。

「こんにちは」
「あ…あの!こっ、これは、月に一度!」

 京子ちゃんに名前を呼ばれたツナも、相手に気付いて挨拶の言葉を口にする。
 だけど、京子ちゃんから返されたのは、意味の分からない言葉。

「第3日曜日は、ケーキ好きなだけ食べるって決めてて、毎日ケーキ3個も食べてるわけじゃないから……!!」
「……そ、そうなんだ…」

 更に続けられた内容に、ツナはなんとも言えない複雑な表情で返事を返した。
 でも、言い訳するように言われた京子ちゃんのそれは、どこかで聞いた事のある内容で……

「ハルと同じですー!」

 そう思った瞬間、勢い良く口を開いたのは、俺の隣に居たハルちゃん。

「ハルも第3日曜は、“ハル感謝デー”と言って自分へのご褒美にケーキをいっぱい買うんです!」
「わーっ、いっしょだ!」

 勢い良く京子ちゃんが言った事と同じような内容を口に出す。
 それに、京子ちゃんが、嬉しそうに返事を返した。

 更に目の前で続くのは、絶対に買うケーキの話。
 目の前で女の子二人の話に、花が咲く。

「えっと、確かに、ここのケーキは美味しいけど……流石に、俺も話しについていけない」
が、それなら、オレはもっとついていけないんだけど……」

 嬉しそうに話をする女の子二人に、困ったように口を開けば、ツナが疲れたようにため息をついた。
 確かに、甘いものがそこまで好きじゃないツナが、話について行けないのは仕方ないだろう。

「立ち話もなんだから、うちにきてゆっくり話せ」

 どうしたものかと考えている中、聞こえてきた声にみんなが一斉に振り返る。

「リボーン!!」

 そこに居たのは、何故かお茶を点てるリボーンの姿が……

「茶ぐらいだすぞ」
「なんで、和茶なんだよ!!!」

 シャカシャカとお茶を点てながら言われたそれに、すかさずツナが突っ込みを入れる。

 確かに、ケーキならコーヒーとか紅茶の方が合うと思うんだけど

「リボーンちゃん」
「久しぶりーっ」
「ちゃおっス、さー行くぞ」

 だけど、女の子二人はそんな事などまったく気にした様子も無く、普通にリボーンと挨拶を交わしている。
 更に、当然と言うようにリボーンが先導して家に行く事が決まったみたいなんだけど

「……と、とりあえず、ケーキ買った方がいいよね?ツナは先に帰とく?」
「オレも、と一緒に帰るよ」

 賑やかに店から出て行く女の子を見送ってから疲れたようにため息をついて、隣に居るツナに質問すれば、同じように疲れたようにため息をつきながら返事を返してくる。

 うん、あのノリには、流石に付いていけないよね。

 ハルちゃんと京子ちゃんがそれぞれケーキを買っていたのは知っていたけど、人数分のケーキを更に買い足しておいた。
 ただ、人数がどれぐらいなのか分からなかったので、自分の勘を信じてちょっと多めに

 ツナには『そんなに買うの?!』ってかなり驚かれたんだけど、多分その時には俺の超直感が働いていたんだと思う。
 うん、だって買わなきゃいけないってそう思っちゃったんだから





「モンブランもうめーな」
「よかった」
「イーピンちゃんも、どーぞ」

 帰り着いた家では、母さんにお茶の準備をしてもらった女の子二人が自分達の買って来たケーキをみんなにお裾分けしていた。
 リボーンは勿論、イーピンちゃんと何故か大人になっているランボくんにも

 出されたものを食べているリボーンが、感心したように言ったその言葉にハルちゃんが安心したように微笑んで、京子ちゃんはちょっとだけ緊張しているイーピンちゃんにケーキを勧めている。
 俺も、京子ちゃんからケーキを頂いて、ツナの勉強椅子に座った状態で状況を確認していた。

「ハルちゃんも京子ちゃんも、自分の分が減っちゃったけど、いいの?」
「いいですよーみんなで食べた方がおいしいですしー!」
「うん!ツナくんち、にぎやかでうらやましーなー」

 でも、俺達に配ってしまった事で、毎月楽しみにしているのにケーキが一つだけになってしまった事を心配して尋ねた俺の言葉に、二人がにこやかに返してくれる。

 そう言ってくれるのは嬉しいけど、毎月この日を楽しみにしているって言っていたのに、本当にいいのかなぁ?
 いや、言ってくれれば、大量にケーキは買って来てはいるから、二人にもっと出せるんだけど、今の状況でそれを言っていいのかが分からない。

「そうかなぁ、欲しいなら全員喜んで引き取ってもらいんだけど」

 京子ちゃんの言葉に、ツナがうんざりした様に本音を口にする。
 うん、ツナは、賑やかなのは嫌いだからね。

「で、なんでランボは大人になってるんだ?」

 そして、やっぱり気になっていたのかケーキをモクモクと食べている大人ランボくんに小声で質問を投げかける。

「子供のオレが10年バズーカーを誤射したっぽいですね」

 ツナに質問されて、あっさりと返事を返すランボくんの言葉に思わず納得してしまった。

 本当に、子供ランボくんは良く10年バズーカーだけじゃなく武器を乱射しちゃうから危ないんだよね。
 一度言い聞かせないといけないよね、うん。

「ハルは今日、自分感謝デーを持つ仲間にめぐり会えて幸せです!」
「私も、ハルちゃんに会えてよかったー!!」

 そんな俺達を他所に、女の子二人は仲良く来月の感謝デーの話で盛り上がっている。
 俺としては、ハルちゃんと京子ちゃんがこんなに気が合うなんて想像もしていなかったんだけど

「!どう、イーピンちゃんここのミルフィーユは?」

 女の子二人に挟まれたイーピンちゃんが、恐る恐るケーキに口を付けたのに気付いたハルちゃんがすかさず質問。
 質問されたイーピンちゃんの目から涙が
 あ、あれ、何でイーピンちゃんは泣いてるんだろう??

「みんな通る道です」

 明らかに感動していると分かるイーピンちゃんに、ハルちゃんが満足そうに頷く。

「やっぱり女の子ねー…」

 そして、京子ちゃんも感心したように頷いた。
 あれ?京子ちゃん、迷わずイーピンちゃんの事を女の子って……

「京子ちゃん、イーピンちゃんが女の子って知ってたの?」
「えっ?見た目の印象で女の子だと思ってたけど……」

 ナチュラルに言われた京子ちゃんの言葉に驚いて質問すれば、逆に不思議そうにされてしまった。

 いや、俺もツナもイーピンちゃんは女の子だって初めから分かってたんだけど、獄寺くんは分からなかったみたいだから……
 それってつまり、獄寺くんは京子ちゃんよりも見る目がないって事だよね。

「獄寺は、笹川京子よりも劣っているって事だね」

 内心でそんな事を考えていた俺の耳に、ツナが呆れたように呟いた声が聞こえてきて、思わず苦笑してしまった。
 うん、考える事は一緒だったみたいだ。

『ケーキのお礼に、秘伝の餃子饅を差し上げたい!』

 思わず苦笑した俺の耳に、イーピンちゃんが何かを言った声が聞こえてきた。
 相変わらず、俺にはイーピンちゃんが何を言っているのか分からない。
 それは、京子ちゃんも同じようで、不思議そうに首を傾げているのが見えた。

「えっと、何て言ったの?」

 ここでイーピンちゃんの言葉が分かるのは、ツナとリボーンで二人に通訳をお願いしようと問い掛けてみる。

「『ケーキのお礼に、秘伝の餃子饅を差し上げたい!』と言ったんだぞ」

 俺の質問に、答えてくれたのはツナではなくて、リボーン。
 でも、言われた内容に、なんと返していいのか分からなかった。

 今は、みんなでケーキを食べているから、餃子饅はちょっと……

「えっと、餃子饅は後でいいと思うよ。ほら、今はキーキ食べているから」
「おいしそーっ」

 苦笑を零して、それを否定した俺の言葉は、餃子饅を取り出して見せた瞬間二人が言ったその言葉で遮られてしまった。

「……凄い食欲だね。にも少しは見習ってもらいたいかも……」

 嬉しそうに餃子饅を受け取っている二人を前に、ボソリと聞こえてきた声は、ツナのもの。

 いや、俺も結構食べる方だと思うんだけど……ツナに言わせると、食べないらしい。
 俺は、ちゃんと食べてるんだからね、あれでも!

「そりゃそうですよ、若きボンゴレ。女性というのは、神秘的な胃袋を持つ仔猫ですよ」
「……確かに、神秘的な胃袋みたいだね。ケーキ食べている最中に餃子饅を食べる気は起きないよね、普通は!」

 『いただきまーす』と受け取った餃子饅にカブリ付く二人を見ながら呆れたように呟かれるツナの意見に、ちょっとだけ賛成。
 ほら、流石にニンニク料理はケーキを食べる時には、遠慮したいよね。

「じゅーしーですーっ」
「おいひーっ」

 嬉しそうに餃子饅を食べている二人を複雑な気持ちで見守っていれば、次の瞬間その二人の顔色がサーっと悪くなった。
 そう思った時には、二人が同時にパタリと倒れてしまう。

「な、なに、何で二人が倒れちゃったの?!」

 突然の事で、驚いて声を上げてしまっても仕方ないだろう。
 だって、二人が倒れる原因が分からないんだから

「一種のポイズンクッキングね」
「えっ?」

 驚いた声を上げた俺の耳に、新たな声が聞こえてきて思わず聞き返すように声を出す。

「ビアンキ、どう言う事?」

 視線を向ければ、開いたドアからビアンキさんが顔を覗かせている。
 そんなビアンキさんに、ツナが質問。
 だけど、ビアンキさんは大人ランボくんを見てハッとしたような表情を見せた。

「ロメオ!」

 そして呟かれたその言葉に、大人ランボくんが怯えた表情をしるけど、次の瞬間その姿が煙に包まれて一瞬で大人ランボくんの姿が子供ランボくんに変わる。
 子供ランボくんは、目の前のケーキに喜んだように食べ始めた。
 その姿を見て、ビアンキさんは興味を無くしたように視線をランボくんから外す。
 5分経って、命拾いしたランボくんに、内心ホッと胸を撫で下ろしたのは言うまでも無い。

「あ、あの、一種のポイズンクッキングって……」

 すっかりとツナの質問が無視されている事に、俺が再度ビアンキさんへと問い掛けた。

「餃子拳用に使う餃子饅は、秘伝の製法で作られた特殊なものよ。一説には一個に500万のギョウザエキスが入っていると言われているの。餃子拳の鍛錬をつんだ拳法家だから食べられるのであって、一般人がそんなもの口にしたらひとたまりもないわ」

 俺が質問した内容に、ビアンキさんが淡々と説明してくれる。
 えっと、それってつまり……

「こ、このままじゃ、二人が死んじゃうってこと?!」
「イーピン、おまえ師匠に餃子饅を他人にやるなって言われなかったか?」

 ビアンキさんの説明で分かった事を、声に出せば、リボーンが確認するようにイーピンちゃんに問い掛ける。
 リボーンの質問に、イーピンちゃんは覚えが合ったのか慌てたような表情を見せた。

 ああ、言われてたんだね、イーピンちゃん……

「この様子では、時間の問題ね」
「ど、どうすればいいの?」

 ビアンキさんが京子ちゃんとハルちゃんの様子を確認して、あっさりと口にしたその言葉に動揺して声が震える。

 だって、二人がこのまま死んじゃうなんて……

「大丈夫だよ、

 動揺している俺に、ツナが優しく抱き寄せて落ち着かせるように背中を撫でてくれる。
 だけど、大丈夫って言われても……

「こんなおっちょこちょいの殺し屋だぞ、師匠が解毒剤をもたせてるはずだ」

 ツナに抱き寄せられて、ちょっとだけ落ち着いたんだけど、だからって何とかなる訳じゃなくて不安気にツナを見詰めた俺に、リボーンがあっさりと言ったその言葉に、希望が見えた。

 リボーンに言われて、イーピンちゃんもそれを思い出したのか、慌てて持っていた荷物を漁リ始まる。
 そして取り出されたのは、丸の中に解と書かれた紙袋。
 笑顔でそれを見せてくれるイーピンちゃんに、漸くホッと息を吐いた。

「それで、二人を助けられるんだね?」

 取り出されたそれにホッとして、問い掛けるように質問したその言葉にイーピンちゃんがコクリと頷く。

「それじゃ、早く飲ました方がいいね」

 ツナの言葉にもう一度頷いて、袋から薬を取り出す。
 ポロリと袋から出てきたのは、一つだけの解毒剤。

「も、もしかして、一個しか入ってないの??」

 その後にも紙袋を振るが、中からは何も出てこない。

「一人分だな」

 出てきた薬を見て、リボーンが無常な言葉を口に出す。

「ひ、一人分だなんて、ど、どうするの?だって、二人居るんだよ?!」
「まぁ、運が無かったって事で、どっちかには諦めてもらうのが」
「そんな訳にはいかないから!!!」

 慌てる俺に、ツナがとんでもない事を口に出すのを遮って突込みを入れる。

 いや、そんな突込みを入れてる場合じゃないから!
 このままじゃ、本当に二人が死んじゃうんだからね!

「仕方ねぇぞ、こうなりゃ死ぬ気の生命力にかけるしかねーな」

 オロオロする俺に、リボーンがいきなりスチャッリと取り出したのは2丁の銃。
 それを迷う事無く、二人に向けて同時に撃った。

「なっ!えっ、なに、もしかして、死ぬ気弾??」
「初の同時撃ちだぞ。同時撃ちすると、死ぬ気弾の共鳴により復活の生命力はパワーアップするんだ。そのかわり2人の後悔がシンクロしてねーとだめだけどな」

 突然打たれたそれに、訳が分からなくて声を上げた俺に、リボーンが銃を手に持ったまま説明する。

 ちょ、ちょっと待って!
 2人の後悔がシンクロしてないといけないって、も、もしかして……

「って事は、シンクロしてなかったら死ぬんだ」
「なっ!?」
「仕方ねーだろ、2人を平等に助ける方法だ」

 ドクリと心臓が鳴る。

 俺が考えた事を、あっさりとツナが口に出した事に声を上げれば、リボーンが少しだけ不機嫌そうに返してくる。
 でも、2人の後悔がシンクロするって……
 あれ?もしかして、俺がケーキを買わなきゃって思ったのは……

「ツナ、俺が買って来たケーキ!」
「あっ!ああ、そう言えば、いっぱいケーキ買ってたね。可笑しいと思ったんだけど、そう言うこと」
「何だ?」

 だけど、話をしていて思い出した内容は、俺が大量にケーキを買った事。
 何でか、たくさん買わなきゃいけないってそう思ってしまった理由は……

 もこもこと二人の体が膨れて、パンッと下着姿の二人が同時に起き上がる。
 女の子の下着姿を見るのはどうかと思うんだけど、でも死ぬ気の状態の時は下着姿になるんだよね。

「いかなくちゃ」

 ポツリと呟かれたのは、二人同時の言葉。

「まっ、待って!ケーキなら、ここにいっぱいあるから!!」

 それに気付いて、俺は二人の目の前に自分が買って来たケーキの箱を広げて見せた。

「ケーキです!」
「一個じゃ足りなかったんだよね」
「はい、ハル感謝デーなんですから、一個じゃ足りません!」

 俺がケーキを見せた瞬間、二人が同時にケーキへと手を伸ばす。
 そして、言われた内容は予想通りの言葉だった。

 やっぱり、二人ともケーキ一個になったことを後悔してたんだ。
 だから、俺はケーキを買わなきゃいけないって思ったんだね。

「超直感か」
「…みたいだね。可笑しいと思ったんだよ、あんなにケーキ買うの」
「で、でも、流石に5分なんて時間は持たないよ」

 直ぐ傍でリボーンとツナが感心したように呟いているけど、流石に二人が5分もケーキを食べ続けられるほどの量は無い。
 二人の姿は、下着姿と言うのはまずいと言う事で、ビアンキさんとイーピンちゃんが二人に毛布を巻き付けてくれているお陰で何とか目のやり場に困る事は無いんだけど

「しよーがねーな」

 俺が泣き言を言えば、リボーンが何時か見た事がある1tと書かれたハンマーを取り出す。

「リバース1t」

 軽々とハンマーを振り上げて、二人同時にその頭を殴った。
 その瞬間、額から銃弾が飛び出して、バタバタと二人が倒れる。

「これで死ぬ気タイムを夢だと思うぞ」

 言われた内容に、ホッと息を吐いた。

 俺の手にあるケーキの箱の中身は綺麗になくなってしまっていたから、まさに時間ギリギリと言った所だろうか。
 もし、ケーキが無くなってしまっていたら、二人はもしかしてケーキ屋さんに押し掛けていたのかも知れないのだから……

、大丈夫?」
「な、何とか……超直感が役に立って良かったって言うべきなのかなぁ?」

 二人が気を失った事が分かった瞬間、へなへなとその場に座り込んでしまった俺を綱吉が心配して声を掛けてくれた事に苦笑しながら返事を返す。
 もし、俺がケーキ買ってきてなかったらと思うと、本気で怖い。

「ダメにしては、お手柄だったな」

 自分の超直感に、本気で感謝した日。
 リボーンに、初めて褒められた。


 うん、本当に超直感と言うか、自分の勘の良さを心から感謝した日だったのは言うまでも無い。
 ちなみに、ハルちゃんと京子ちゃんの服はビビアンキさんが自分の持っていた服を貸してくれた上に着替えさせてくれた。

 次の月、二人がケーキを我慢した理由を聞いて、何て言うか申し訳ない事をしたとしか言えなかったけど、俺が悪い訳じゃないとツナに言われたので、出来るだけ気にしない方向で

 
 なんにしても、京子ちゃんとハルちゃんが仲の良い友達になってくれた事だけが、今回良かった事じゃないかな。
 二人は死に掛けて、大変だったんだけど