今日も今日で、ツナを巻き込んで遅刻寸前。

 本当に、ごめん俺が寝坊したばっかりに……


 何度も何度も謝る俺に、ツナは全然気にしてないって言うけど、そう言う問題じゃないと思う。

 悪い事は悪いんだって、ちゃんと怒ってもらった方が楽と言うか何と言うか……
 ぶっちゃけ、ツナ一人なら遅刻しないんだろうし……って、まだ遅刻してないんだった!






「ま、間に合った」

 学校が見えてきた事で、ホッとする。
 何とか遅刻は免れそうです。

 今度遅刻したら恭弥さんに風紀の仕事を問答無用で手伝わされる事になっていたから、本気で助かった。
 それをツナに言ったらすごく殺気立っていたけど、こればっかりは遅刻する俺が悪いんだもんなぁ。

「良かったね、。ヒバリさんの手伝いは免れたみたいだよ」
「うん、ツナも一緒だろうけど、やっぱり風紀の仕事手伝う事になるのは、かなり大変だしね」

 前に一回手伝った事あるんだけど、本気で勘弁して欲しいと思ったんだけど

「……ねぇ、その口調から言うと、一度でも手伝った事があるように聞こえるんだけど……」

 ホッとしてニコニコとしながら言った俺の言葉に、一気にツナの機嫌が降下する。


 えっ、俺なんか変なこと言ったっけ?
 あれ?風紀の手伝いをしたことって、ツナに話してないことだったんだ。

 自分で言った事を思い出だして、サーっと血の気が下がる。


 そう言えば、アレは秘密にしなきゃいけない内容だった。そうしなきゃ、血の雨が降る〜っ!!


「あれ?」

 内心どうやって誤魔化そうかと必死で考えていた俺は、目の前に見えた人影に首を傾げた。

「どうしたの?」

 それが思わず声に出ていたのだろう、ツナが不思議そうに問い掛けてくる。

「あれって、獄寺くんと山本だよね?」

 そう言えば、今日は獄寺くんが迎えにこなかったような……それは別に問題じゃないんだけど、なんで獄寺くんと山本が何か言い合いしてるの?

「!10代目!」
「ツナに!」

 二人がなんでそんなことになってるのか分からなくって、再度首を傾げた瞬間、その二人が俺達に気付いて驚いたように声を上げた。

「ど…どーしたの?」

 そんな二人に、俺が恐る恐る問い掛けると、何処か罰悪そうな表情を見せる。

「何か問題?」

 俺に続いてツナも、とりあえずと言うような様子で問い掛けた。


 って、なんでそんな興味なさそうに質問してるの?!


「い、いや…あの…」
「別に、何でもないぜ…」

 そんなツナには気付いていないのか、明らかに慌てていると分かる様子で二人が言葉を返してくる。
 いや、どう見ても何でもないようには見えなかったんだけど……

「部活の片付けしねーとな」
「さー授業の準備、準備!」

 それからどう見ても挙動不審と言うように、思い出したように二人がお互いの背を向けて離れていく。
 えっと、獄寺くん授業の準備って、そんなに真面目だって話はツナから聞いた事ないんだけど、それに山本も、今から部活の片付けしてたら授業に間に合わないよ!

「な、なんか、明らかに可笑しかったんだけど、二人とも……」
「どう見ても、挙動不審だったみたいだね」

 獄寺くんは校舎の中に、山本はグランドへと行くのを見送って、言えばその言葉にツナも同意する。

「そう言えば、山本や獄寺くん以外の人も挙動不審だったんだけど」
「そうなの?」

 それで思い出したんだけど、昨日からビアンキさんやランボくん、それにハルちゃんの様子も可笑しかったような……
 思い出した事を呟けば、ツナが不思議そうに聞き返してきた。

「うん、ハルちゃんは、なにも言ってないのに忙しいって逃げって行っちゃったし、ランボくんは俺に隠れて様子を伺ってくるし、ビアンキさんは話しかけたら固まっちゃって動くなくなって本気で焦ったんだけど」
「確かに、バカ牛以外は可笑しいね」


 いやいや、バカ牛って……ランボくんの動作も明らかに可笑しかったから!
 なんか俺やツナを避けてるような行動だったよな……そう言えば、今日はリボーンの誕生日だっけ、明日は俺とツナの誕生日だけど

?」

 でも、だからって、俺やツナを避けるなんて……

「なんかあるのかなぁ?」
「さぁ、それは分からないけど、面倒ごとじゃなければそれでいいよ」

 理由に心当たりがなくて、考え込んでいた俺が呟いたその言葉にツナが答えてくれる。
 確かに、面倒ごとはイヤだけど、なんか仲間外れにされてるのは、ちょっと寂しいんだけど

「みんな誕生会の準備をしてるんだぞ!」
「リボーン」

 そんな事を考えている中聞こえて来たその声に、振り返る。
 当然そこに居るのは、黒いスーツ姿の最強ヒットマンのリボーン。

「ああ、そう言えば、今日はお前の誕生日だったっけ?」
「そうだぞ。お前には言ってなかったのに良く分かったな」

 ツナには、昨日の夜リボーンの誕生日の事は話しておいたから驚かないみたいだ。
 でも、なんでリボーンの誕生日に皆が皆、俺やツナを避けてこそこそしてるんだろう、や、やっぱり面倒な事があるんだろうか?!

「誕生日会だと、なんで皆が挙動不審になるの?」
「まさか、お前の誕生日に合わせてオレ達の誕生日会でも内緒で準備してるとか……」

 恐る恐る問い掛けた俺に、ツナが考え付いた内容を口にする。


 えっ、皆が俺達の誕生日会の準備!そ、それはちょっと嬉しいかも
 だって、家族以外で誕生日祝ってもらった事ってないから、俺。


「…嬉しそうだね、

 思わず綻んでしまった口元に気付いたのか、ツナが苦笑を零しながら声を掛けてくる。

「えっ、ツナは嬉しくないの?」
「まぁ、嬉しいとは思うけど、別にあいつ等に祝ってもらわなくても、が祝ってくれるだけで十分だからね」

 だから思わず聞き返した事に、返されたそれにはちょっと驚かされた。

 ああ、でも、その気持ちは分かる。
 俺も、ツナに祝ってもらえるのって、すっごく嬉しい。

「うん、俺も、ツナにお祝いしてもらえるのは嬉しいな」

 素直にその気持ちを笑顔で伝える。
 だから気付かなかった、その後ツナが小さくため息をついていたことには……

「お前等、遅刻しそうだったんじゃねぇのか?」

 その後に、リボーンが呆れたように言ったその言葉で現実に引き戻されてしまったから






 教室には、遅刻しちゃいました。
 まぁ、あそこでのんびり話していたんだから、仕方ないかもしれないけど
 でも、それ以外はいたって普通の学校生活を送る事が出来た。

 それが、嵐の前の静けさだったのかもしれないけど……


 ツナは何時ものように用事があるとかで、今日も一人で家に向かう。
 そう言えば、家に戻ったら昨日の夜焼いたケーキを飾付けしないとだよね。
 リボーンの誕生日会を何時にするのかは知らないけど、それまでに準備しなくっちゃ!

「ただいま」

 そんな事を考えながら玄関の扉を開いた瞬間、パンパンと言う賑やかな音と目の前を紙吹雪が舞う。

「えっ?!」
「誕生日おめでとう――!!」

 そして聞こえて来たのは、元気な声が数人分。


 あれ?なんで俺が祝われてるんだろう?俺の誕生日明日だし、今日の誕生日はリボーンのはずなんだけど


 状況が分からずに、思わず呆然としてしまうのは仕方いと思う。
 いや、だって、行き成り家に入った瞬間この状況って普通に考えたら有り得ないから!


「サンキュ――」

 だけど、呆然としていた俺の耳に別な声が聞こえて来た。
 それは足元からで、下を向けばそこにはリボーンの姿が!い、何時の間に!!

 でも、そのお陰で納得できたんだけど、さっきの言葉はリボーンに向けて言われた言葉なんだって
 そりゃ、明日は俺とツナの誕生日だから、一日早くても祝ってもらえるのはちょっとだけ嬉しかったなんて秘密。

ちゃんも、お帰りなさい。ツっくんは一緒じゃないのね?」
「ああ、うん、直ぐに帰るとは聞いてるから直ぐに戻ると思うけど……」
「ビックリさせちゃったわね。今日リボーンくんの誕生日だって聞いてね、皆が駆け付けてくれたのよ」

 呆然としている俺に、母さんが話しかけてくる。それに素直に返事を返せば、ニコニコと嬉しそうに今の状況を説明してくれた。

 うん、だからって、玄関入った瞬間にクラッカー鳴らされたりしたら、流石に心臓悪いからね。
 最近の日常を考えると、本気で心臓に悪過ぎる。

「ただいま……って、なんで玄関に集まってるの?」

 母さんの嬉しそうな言葉を聞いて苦笑を零したのは、ちょっと日常に疲れていたからかもしれない。
 いやだってね、問答無用で発砲される事がある日常だから、かなり心臓に悪いんだよ!

「お帰り、ツナ。皆リボーンの誕生日をお祝いに来てくれたみたいだよ」

 そんな中戻って来たツナが呆れた様な視線を向けてきたのに、俺も振り返ってツナに返事を返し状況の説明をした。

「ふーん、オレ達のお祝いは含まれてないんだ」
「え!!あら!いけない!ツっくんとちゃんお誕生日明日じゃない!すっかり忘れてたわ…」

 俺の説明に、ツナは興味なさそうに口を開けば、母さんが思い出した事を驚いたように口にする。

 って、母さん、俺達の誕生日忘れちゃってたんだ……別にいいんだけどね……。

「えぇー!!そうだったんですか?!」

 そして、母さんのその言葉で皆が驚いたように声を上げる。
 あれ?もしかして、誰も俺達の誕生日知らない……だったら、内緒で準備してるって言うのは、完全に俺の思い違い!?

「じ…じゃあ、今日一緒にやりませんか?」
「そーだな」

 ハルちゃんが言い出してくれて、山本もそれに同意。
 結局は、リボーンの誕生日と一緒に俺とツナの誕生日も祝ってくれる事になった。

「山本君ちから、おすしをいただいたのよ」

 そして、何故か分からないけどツナの部屋で誕生日会を開く事に

 な、なんでツナの部屋なんだろう?リビングでもいいような気がするんだけど……お陰で、ハルちゃんに恥ずかしい所見られちゃったし
 テーブルの上には、ずらりと並ぶお寿司と、母さんの手料理。

「山本、有難う。おじさんにお礼言っておいてね」
「おう!」
「ハル、とりわけます!」
「ご・ち・そ!ご・ち・そ!」
「うざいと殺すわよアホ牛」

 立派なお寿司に山本にお礼を言えば、ニッカリと笑顔を返してくれた。
 ハルちゃんは早速お皿を持ってニコニコしているし、ランボくんははご馳走に浮かれているのが良く分かる。
 その後のビアンキさんの言葉は聞かなかった方針で

 あれ?でもなんか、何時もと違って何ていうか静かって言うか平和って言うか……なんか足りないような気が……

?」

 思わずキョロキョロと辺りを見回した俺に、ツナが不思議そうに名前を呼ぶ。
 そして、気付きました、何て違和感を感じたのかを!

「ご、獄寺くん、そんな所で、どうしたの?!」

 部屋の隅で蹲っている獄寺くんを見付けて慌ててしまう。
 だって、すっごく顔色が悪い!!

「ああ、そう言えば、獄寺はビアンキが居ると体調悪くなるんだったけ」
「えっ、何それ?」

 慌てた俺に、ツナが思い出したと言うように口を開く。

 えっ、何その理由。
 俺、そんな話聞いた事なんだけど、いや、ビアンキさんと獄寺くんが義姉弟って言うのは聞いた事あったんだけど……

「そう言えば、が居る時に二人が一緒に居た事なかったから、知らないんだっけ?」

 た、確かにそうだけど、こ、これって尋常じゃないって言うか……

「獄寺くん、大丈夫?!」
「オレは、10代目の誕生日覚えてましたよ…」

 心配になって問い掛けた俺に、獄寺くんがぜーぜーと息をしながらそんな事を口にする。


 って、俺と綱吉を見間違ってるし!!


「無念です」
「え?」

 本気でヤバイと思って瞬間、物騒な言葉が聞こえて来て、バッタリと獄寺くんが倒れてしまった。

「獄寺くん!!」
「まぁ、死ぬ事はないと思うから、そのままにしてて大丈夫じゃないかな」

 慌てた俺と違って、ツナは苦笑しながらそんな事を口にする。
 いや、それもそれでどうなんでしょうか?!

「でも、こんなになるの分かってたら、無理してくる事なかったんじゃ……」

 リボーンの誕生日会なんだから、ビアンキさんが居る事は分かっていたと思うんだけど

「そうはいかないわ」
「ボンゴリアン・バースデーパーティーでは、不参加は不利だからな」
「ボンゴリアン・バースデーパーティー?何、それ?」

 獄寺くんを気遣うように言ったその言葉に、ビアンキさんがまず口を開き、それに続いてリボーンが意味の分からない言葉を口にする。
 その言葉の意味が判らなくって、俺は首を傾げながらリボーンに質問を返した。

「そーだぞ、うちのファミリーでは、奇数才の誕生日に伝説のボンゴリアン・バースデーパーティーをしなくちゃいけないんだ。ルールは簡単だぞ。誕生日を迎える主役が参加者の用意した"プレゼント"や"出し物"に点数をつけるんだ。そして一番高い点数をとった参加者は、ホストから豪華なプレゼントをもらえるんだ」
「えっと、結局は主役に喜んでもらって、更に周りの人にはドキドキしてもらおうって事?」
 
 淡々と説明してくれるのはいいんだけど、奇数才って、2年に一回って事になるんじゃ……それもそれで、大変なような気がするんだけど……
 しかも、プレゼントや出し物にに点数つけるって言うのは、何て言うか……

「ちなみに、最下位は殺されるんだ」
「って、有り得ないから!お祝いしてくれてるのに、殺されるって!!」
「掟だからだ」
「そんな掟許せるものじゃないから!!」

 リボーンの説明で何となく複雑なモノを感じていた俺に更に、爆弾投下。
 いやいや、お祝いしてるのに殺されるってどんな掟でも許されないから!!

「と、言うのは冗談だぞ」

 俺が突っ込んだら、流石にリボーンがそれを否定してくれた。

 よ、良かった。流石にゲームで殺されるのは、どうかと思う。
 ゲームの内容も、考えようによってはプレゼントに甲乙を付ける様で、正直言えば快く思う事は出来ないから!

「罰ゲームぐらいは用意してもいいだろう。みんなこの日の為に極秘で用意してきたんだぞ」
「……それで、態度がおかしかったんだ……」
「まぁ、普通の誕生日会だとは思ってなかったけど、まさかこんな面倒が待ってるとは思ってもいなかったんだけど……」

 リボーンの説明に、皆の態度がおかしかった理由が分かって、盛大なため息をついた俺と同じように、ツナももう既に疲れたと言うようにため息をつく。
 そう言えば、俺はケーキを用意したけど、ツナはリボーンにプレゼント準備していたのかな?

「まぁ、子供の遊びだ、つきあってやれよ」

 状況を理解してない山本は爽やかな笑顔であっさりと言っちゃってくれるんだけど、全然遊びじゃないから!
 しかも、殺されないと分かったけど、リボーンの罰ゲームなんて考えただけでも恐怖の対象なんだけど

「ちなみに山本はスシもってきてくれたから80点だぞ」

 言いながら、何処から出してきたのか大きな点数の書かれたボードに山本の顔シールを貼り付ける。

「点数はボンゴレジャッジボードにはられるからな」

 えっと、このボードがボンゴレジャッジボード……確かに何ていうか豪華と言うか何と言うかしっかりしてるんだけど
 本気で、何処から出してきたんですか?!

「80点ならなかなかじゃねーの?」

 山本は、点数の横にはられた自分の顔を満足そうに見ている。
 確かに高得点だけど、何ていうかプレゼントに点数つけるって言うのは、どうなの?!

「ハルは、プレゼントを作ってきました。いつもリボーンちゃんは黒いスーツなので、白いスーツを作ってきましたよ」

 複雑な表情をしながら見守っている俺に、今度はハルちゃんがバックからゴソゴソと何かを取り出す。

「ターゲット柄です」
「それは、狙ってくれと言ってるようなもんだぞ」

 ジャーンと取り出したそれを見た瞬間、ツナが呆れたように突っ込みを入れる。
 確かに、これでは狙ってくれと言っているようなもんだよね。

「はひ…そーいわれてみれば…」

 ハルちゃんはそこまで考えて居なかったのか、ツナの突っ込みにショックを受けているようだ。
 いや、普通に考えたら分かると思うんだけど……

「サンキュー、ハル。オレはこーゆースリリングな服は好きだぞ」
「リボーンちゃん」

 でも、当の本人は満足そうな笑みを浮かべて、ハルちゃんのフォロー。
 リボーンの言葉に、ハルちゃんは嬉しそうだから問題ないのかな?

「85点だ」
「キャ――やった―!!」
「おい、甘くないか?」
「そーか?」

 リボーンが点数を言って、ボードに今度はハルちゃんの顔シールを貼り付ける。
 それに対して、ツナが呆れたように呟くけど、基本的にリボーンって女の子に優しいよね。
 そう言えば、マフィアは女子供には優しくって言ってたから、当然かな。

「次は私ね」

 そして、次に名乗りを上げたのはビアンキさん。
 すっと立ち上がって、何処から取り出したのか手に何かを持っている。

「本場イタリアのピザ生地投げでリボーンの誕生日を祝うわ」

 ちょっと頬を染めながら言われた内容に、ああ、手に持ってるのはピザの生地なんだとちょっとだけ納得。

「キャー!ビアンキさん素敵です!!」

 そんなビアンキさんに、ハルちゃんが声援を送る。
 確かに素敵だけど、な、何となく嫌な予感がするのは、俺だけだろうか……


 ポーイと何度か生地を回しながら投げるビアンキさんの姿を見つめるけど、別段変わった事は何もない。
 少しずつ生地が大きくなっていくのは、凄いなぁと正直に思うけど


「うまいもんだなー」
「すごいです」
「へぇー」

 山本やハルちゃんは素直に感動する声を上げる。
 それに続いて、ツナも珍しく素直に賞賛の呟きを漏らす。

 でも、やっぱり嫌な予感が……

 そして、どんどん大きくなるピザの生地、そこで漸く気が付いた、ビアンキさんのピザ生地がまるで刃物のようにツナの部屋の物をスッパスッパと切っている事に
 その事に気付いて、皆が慌てたように避難する。

 結構な被害の後、漸く大きな生地が出来上がった。

 ああ、嫌な予感って、コレだったんだと、納得したけど、もう遅い。
 部屋の中で、ピザ作りするのは、止めればよかった……。

「実は新技だったの」

 でろーんと伸びた生地を手に、ビアンキさんが恥ずかしそうに口を開く。

「なかなかよかったぞ。90点」

 そんなビアンキさんにリボーンは何時もの顔であっさりと点数を言う。
 えっと、良かったって、ツナの部屋酷い事になってるんだけど?!

「YES!」

 リボーンから点数を聞いて、ガッツポーズで嬉しそうに頷くビアンキさんは何ていうか一途だなぁとは思うけど、この状況で素直に喜ぶ姿はどうかと思うんです。
 隣に居るツナが、怖い。

「すごいです、ビアンキさん」
「レベルたけーな」

 って、素直に絶賛できるハルちゃんと山本が羨ましいと言うか何と言うか……

「部屋の修理代は、ボンゴレに請求だよね」

 ツナは当然自分の部屋をボロボロにされたんだから、まぁ許せるものじゃないよね。
 本気で不機嫌そうに呟かれたそれに、苦笑を零す事しか出来なかった。

「じゃ私、コレ焼いてくるわ」

 されに、そんな凶器をビアンキさんは調理しに行ってしまうし、あ、あれ、食べられるのかな?
 

「あっ、俺もリボーンにケーキ焼いたのあるから最後の飾りして持ってくるね」

 そんな事を疑問に思いながらも、俺も今ここにリボーンへのプレゼントに用意したケーキがないからそれを用意する為に口を開いて立ち上がる。
 決して、あのピザが気になるからじゃないからね!


、何さり気なく逃げようとしてるの!大体、一人で階段の上り下りは禁止だって、何度言ったら分かる訳!ってことだから、を下に連れて行ってくるから」
「分かった。次はお前の番だから直ぐに戻ってこいよ」

 が、しっかりとツナに止められて一緒に部屋を出る事になる。
 その時、リボーンがしっかりと釘を刺す事は忘れない。

 結局問答無用で、ツナの部屋に向かった時と同じように階段を下りることになる。
 また、ハルちゃんに恥ずかしい所見られちゃったよ。

「じゃ、リボーンの奴が直ぐ戻れって煩かったから戻るけど、準備できたら呼ぶんだよ」
「うん、分かった」

 階段を下ろしてもらって、しっかりと今度はツナが俺に釘を刺す。
 ここで頷いとかないと、本気で説教される事になっているが分かっているので、俺は素直に頷いて返した。


 だから、その後ツナがリボーンに何をプレゼントしたのかは知らない。
 ちなみに、俺の焼いたケーキの点数は、コーヒーとセットで95点でした。
 多分コーヒーとセットだったのが良かったのかな?
 リボーンには、俺のコーヒー気に入ってもらってるから


 あれ、そう言えば、結局最下位って誰だったんだろう?
 まぁ、誰も罰ゲームしてないのなら、問題ないんだけどね。