子供って、騒ぐのが仕事だと思うから、俺としては気にしてないんだけど
でも、どうやらツナには、それが堪らなく我慢出来ないみたいなのだ。
そりゃ、確かにランボくんは普通の子供よりも賑やかだと思うけど、慣れてくれば問題ないと思うんだけどなぁ。
何で、あんなに怒るんだろう?
「だもんね!オレっちと一緒に遊ぶんだもんね!!」
学校から戻って、ドアを開けた瞬間飛び出してきたランボくんが足に抱き付いてくる。
咄嗟の事だったから全然想像もしていなかった俺は、その行動でバランスを崩してしまった。
前のめりに倒れそうになるのを、何とか扉に掴まった事で踏ん張ったまでは良かったんだけど、勢い余ったのか今度は後ろに倒れそうになってしまって焦る。
だって、このまま倒れたりしたら、ランボくんを蹴っ飛ばしてしまいそうだから……
「!」
ギュッと目を瞑ってしまったのは、自己防衛本能が働いたからだと思う。
目を閉じた瞬間、後ろから声が聞こえて来て誰かに支えられる。
声から考えてもその人物は一人しか居ないけど
「ツ、ツナ、助かった……」
ゆっくりと目を開ければ、予想通りの相手が心配そうに俺を見詰めていた。
「ランボ!に抱き付くなって何度も言ったはずだよな?」
それにホッと息をついて崩れた体制を元に戻してもらった後に、ツナが俺の足元に抱き付いているランボくんを怒鳴る。
「ツ、ツナ、そんなに怒らなくても……」
「何度怒っても聞かないんだから、これぐらいじゃ足りないぐらいだよ!」
ランボくんを怒るツナに、止めるように言えば、逆に怒られた。
だって、子供相手にそんなに怒っても……
抱き付かれて、支えられない軟弱な俺にも問題があるように思えるし……か、考えたら悲しくなってきた。
「お帰りなさい、二人とも。どうかしたの?」
ツナに怒られて、何時ものようにランボくんが泣き出してしまう。
それを俺が慰めたらきっとツナはもっと怒っちゃうんだろうなぁと思っていれば、母さんが姿を見せて不思議そうに質問して来た。
「どうしたじゃないよ!またこいつがに抱き付いて、危なかったんだからね!!」
「あらあら、それでまたツっ君に怒られちゃったのね」
姿を見せた母さんに、ランボくんが泣き付くのを母さんは少しだけ困ったように慰める。
「母さんがランボをちゃんとみてないから、悪さばっかりするんじゃないか!」
「母さんに怒るのはおかしいんじゃないのかしら…」
って、最後には母さんまで怒られてるし
でも母さんは、それに困ったような表情でしっかりと返してるのが流石としか言えないんだけど……
「そーよ、情けない男ね。そんなにイヤならアホ牛に保育係をつければいいでしょ?」
「保育係?」
どうこの場を収めようかと考えていれば、ビアンキさんとリボーンが続いて出てきて、ツナに呆れたように言葉を告げる。
言われた事に、俺は一瞬意味が分からなくて、思わず聞き返してしまった。
だって、行き成り保育係って一般家庭では付けられるものじゃないと思うんだけど……そ、そう言えば、獄寺くんとビアンキさんはお城暮らしするぐらいのお金持ちだった。
「仕方ねぇな、オレの知り合いの保育係を手配してやろーか?」
「お前がそんな事言うなんて珍しい。どう言う風の吹き回し?」
「こいつの所為で、ダメが怪我しちまうのは、オレも困るからな」
だけど、それに続いてリボーンが本気で仕方がないというように口を開く。
それにツナは胡散臭いというように聞き返したが、返されたのは俺の事を心配してくれるようなリボーンの言葉。
確かに、このままだと間違いなく俺が怪我をしてしまうのは明らかだもんな。
「ふーん、一応候補を護る仕事をしようって事。だったらお願いするよ」
それにツナが納得したように頷いた瞬間、ニヤリとリボーンが笑ったように見えたのは、俺の気の所為だとそう思いたい。
次の日、授業が終って学校の裏庭へと来るようにリボーンに言われたので、ツナと一緒にその場所へと行けば、そこに居たのは獄寺くんと山本。
「何スか、10代目」
「小僧に呼ばれたんだが」
どうやら事情を知らされていないらしい二人が、ツナに質問してくる。
それにツナは、盛大なため息を一つ。
「で、コレはどういう事なのか説明してくれるんだよね?」
「俺も、ランボくんの保育係を紹介してくれるって聞いたはずなんだけど……」
不機嫌なツナに続いて、俺もリボーンへと質問する。
「紹介してんじゃねーか、ボスであるお前らの部下から決めるにきまってんだろ」
だけど返されたのは、何て言うか理不尽なモノだった。
確かにリボーンの言ってる事は間違いじゃないかもしれないけど、だからって、この二人を候補に上げるのは……
「…お前に期待した自分がバカだったよ」
そんなリボーンに、ツナは疲れたように再度大きく息を吐き出す。
「ガハハハハ、ランボさん登場――っ!!!」
その瞬間聞こえてきたのは、賑やかな声。
それに、ツナの機嫌がますます悪くなるのが隣に居て良く分かった。
「またうぜーのがきやがった。ションベンタレはすっこんでろ」
どうしたものかと考えている中、獄寺くんがランボくんに冷たい言葉を投げる。
「ちっ、ちがうもんね!もらしたフリしたんだぞ!!」
そんな獄寺くんに、ランボくんは顔を真っ赤にして言葉を返す。
あれ?もらしたって、何の話だろう。
「あいつ、この前獄寺達の前でお漏らししたんだよ」
言葉の意味が判らなくて首を傾げた瞬間、ツナがそれを察したのか隣から説明する声が聞こえて来た。
ああ、そうなんだ……俺、知らなかったんだけど、そんな事もあったんだ。
「だまされてんじゃねーぞ、バカ者共ォ!!」
いや、その前にもらしたフリってどんなの?
舌を出しながら獄寺くんを馬鹿にしたように言うランボくんに、思わずため息をついてしまう。
「てんめ〜っ、いっぺん痛い目みなきゃわかんねーみてーだな!」
馬鹿にされて、獄寺くんは本気でランボくんに怒ってるし……何ていうか、こんな事考えるのは、失礼かもしれないけど二人とも同レベル……
「あら、あれ何?」
「ん?」
山本はそんな二人を見て楽しそうに笑ってるし、絶対にこの二人は保育係には向かないと思う。
そんな事を考えながら見守っていれば、ランボくんが突然指を指す、それに獄寺くんが素直にそちらへと視線を向けた。
「バカは見る」
その瞬間、獄寺くんの顔をランボくんが殴る。
獄寺くんの悲鳴が聞こえて来たんだけど、大丈夫なのかな?
「死にやがれ!!」
心配したその後に聞こえてきたのは、獄寺くんの怒鳴り声。
そして、容赦なくランボくんを蹴り付けるその姿。
山本が、それを慌てて後ろから引き止めている。
やっぱり、獄寺くんには絶対に無理だと思うんだけど
「んじゃ、ランボの保育係の適性テストをはじめるぞ」
「お前、今まで何見てたんだ?どう考えても、無理だろう」
そんな中リボーンの良く通る声が聞こえて来て、ちょっと驚いた。
それは流石にツナも同じようで、呆れたようにリボーンに突っ込みを入れている。
「こいつの保育係ってのは遠慮しときます。オレ、コイツ大嫌いなんで」
だけど、そんなリボーンに獄寺くんがキッパリと口を開く。
まぁ、それは予想通りの反応だよね。
「オレはいいぜ」
だけど続いて聞こえてきたのは、山本の声。
「山本、いいの?」
「ああ、今日はなんの遊びだ?」
恐る恐る山本へと質問すれば、ニッカリと笑顔で質問を返された。
って、完全に遊びだと思われているんだけど
「ちなみに、保育係になった奴がボスの右腕だからな」
「な!…右腕…」
「そりゃいーな」
山本への返答に困っていれば、リボーンがとんでもない事を口にする。
それに、獄寺くんの顔色が悪くなって、山本が楽しそうに笑う。
「オ、オレ…本当はランボ大好きです」
そして、明らかに無理な設定で口を開いた。
顔が引き攣ってるよ、獄寺くん……
「ルールは簡単だぞ、あいつを笑わせた方が勝ちだ」
そ、そこまでしてなりたいものなんだろうか、右腕って……
確かに、ツナとずっと一緒に居られるって言うのは嬉しいけど
「?」
「な、何でもない!」
思わず、自分が考えた事をブンブンと大きく首を振ることで吹き飛ばす。
そんな俺の行動に、ツナが不思議そうに名前を呼ぶ声が聞こえて来て、慌てて返事を返した。
「山本、てめーにだけは負けねーぞ。今日こそ白黒つけてやる」
「よっしゃ、やるからには勝たねーとな」
そんな俺の行動なんて全然気にした様子も見せずに、山本と獄寺くんは白熱してるみたいだ。
いつから、そんな勝負とか言うものになったんだろう??
「オレ、先攻でいくぜ」
「がんばれヨ!」
しかも、獄寺くんの様子はどう見てもランボくんを慰めるような雰囲気に見えないんだけど
何ていうか、ヤル気満々に見えて、正直言って怖い。
「制限時間は3分だぞ」
山本が獄寺くんを応援するように送り出す声と、リボーンの無常な声が聞こえる。
それに獄寺くんが頷く事で返事を返して、ゆっくりとした動きでランボくんへと近付いていく。
だけど、その瞬間ランボくんの鳴き声が大きくなった。
あ、明らかに獄寺くんが近付く事に反応しているようにしか見えないんだけど
「さっきは悪かったな、仲なおりしよーぜ」
それには獄寺くんも気付いているみたいで、その表情が複雑なモノに変わる。
だけど、何とか落ち着かせようとしているのか、やっぱり引き攣ったような表情を見せて、片膝をついた状態でランボくんへと手を差し伸べた。
「んっ」
その差し出された手に、ランボくんが手を出して何かをその手に乗せる。
「うわっ!!」
何を乗せたんだろうと思った瞬間、獄寺くんが驚いたようにそれを放り投げた瞬間、爆発音が……
い、一体何を手に乗せたの、ランボくん!!
「やっぱてめー死んでこい!!!」
次の瞬間には、獄寺くんがランボくんの首絞めてるんだけど!
「おちつけ獄寺!!」
その行動に慌ててたのは、俺と山本。
山本が獄寺くんを後ろから羽交い絞め状態でランボくんから引き離し、俺は慌ててランボくんを抱き上げて獄寺くんから遠去ける。
「はなせ山本〜!クソガキコロス」
山本に引っ張られていく状態で、獄寺くんの怒鳴り声が聞こえて気来るのに、俺はただ苦笑を零す事しか出来なかった。
本気で、こんな事してていいのかな?
腕の中では、俺に抱き付いて大泣きしているランボくん。
「……そのままトドメさした方が良かったんじゃないの?」
そんな状態に、今度は後ろからツナの殺気が……な、何で怒ってるの、ツナ!?
何とか獄寺くんが落ち着いて、山本と二人が戻ってきた時には、ランボくんも少しだけ落ち着いてくれた。
後ろのツナが怖かったけど、何とか落ち着かせる事が出来たんだと思う。
何で、ツナはこんなに不機嫌そうなんだろう?
「次、山本だぞ」
「オッケー」
戻ってきた山本に、リボーンが声を掛ければ、にこやかな笑顔で頷き、片手を上げてゆっくりとたランボくんへと近付いていく。
「真打登場だな、どーやってランボと打ちとけるのか見物だな」
そんな山本に、リボーンが何処か楽しそうに口を開く。
「確かに、山本なら子供に好かれそうだよね」
爽やかだし、何ていうか本人が遊ぶ事が好きだから、一緒に遊んでもらえそうだって言うので子供には好かれそう。
「おまえ、キャッチボールやったことあっか?」
それを予想付けるように、山本は野球のボールを片手にランボくんの前に座り込む。
その手には、しっかりとグローブも持っているみたいだ。何時の間に準備したんだろう??
「グローブで、このボールをとるんだぜ」
キャッチボールの説明をする山本に、ランボくんも興味を示しているみたいだ。
その手が、ゆっくりとグローブへと伸ばされる。
「ほらいくぞ、そー・・・」
ランボくんがグローブを持った事を確認して、早速キャッチボールを始める為に、山本がランボくんから少し距離をとった。
そして、ボールを投げるように動作をとり始めた瞬間、山本の表情が変わった。
「れっ!!」
掛け声と共に投げられたボールは、かなりのスピードで、どう考えても子供相手に投げるようなスピードじゃない。
山本、本気でボール投げてるし!!
勿論、そんなボールをランボくんが取れるはずもなく、ボールは凄い勢いでランボくんの顔面に命中した。
しかも、それだけじゃなく、勢い良くランボくんを壁まで吹き飛ばす。
い、一体どれぐらいのスピードで投げてるの、山本!!
「わ!わりい!野球の動作に入るとつい加減ができなくてな」
慌てて山本がランボくんに謝るけど、何ていうか、山本らしいといえばらしいかもしれないけど、それもどうかと思うんだけど……
そして、予想通りランボくんは火が付いたように泣き出してしまった。折角、落ち着いていたのに……
「山本にも、こんな一面があったなんてね」
「あいつにしては初めていい仕事しましたね」
感心したようなツナの言葉に続いて、獄寺くんが嬉しそうに初めて山本を褒めるような言葉を口にする。
中身は、あんまり褒められたよう内容じゃないんだけど
「何やってるんですか――!!!」
そんな中、突然聞こえて来た声に驚いてしまった。
だって、まさかここに居るような人じゃないから……
「ハルちゃん?」
信じられないというように声の方へと視線を向ければ、仁王立ちしているハルちゃんの姿が
「なんで君がうちの学校に?」
ツナのも流石に驚いたのか、ハルちゃんに質問している。
「転入か?」
「ちがいます!新体操部の交流試合にきたんです。やっとツナさんを見つけたと思ったらランボちゃんを泣かしてるなんて」
獄寺くんの言葉に速攻で返事を返して、ハルちゃんがここに居る理由を説明してくれる。
ああ、ハルちゃんて新体操してたんだ、だから初めて会った時塀の上を歩いてたんだね。
「へ〜、ハルが新体操ねぇ……想像できないんだけど……」
「た、確かにそうですね」
「ランボちゃん、大丈夫?」
初めて会った時の事を思い出して、納得している俺と違って、ツナも獄寺くんも複雑な表情でボソリと呟く。
そうかなぁ?結構想像できると思うんだけど
そんな俺達には全く触れないで、ハルちゃんは大声で泣いているランボくんへと声を掛けている。
「こんないたいけなチャイルドを泣かして!!」
「いや、これはオレが…」
ランボくんを抱き上げて、キッとツナや獄寺くんを睨み付ける。
そして、言われたそれに山本が困ったように頭をかきながら口を開くけど、多分ハルちゃんには聞こえてないと思う。
「たとえツナさんでも、ランボちゃんをいじめたら、ハルが許しません!!」
ギュッとランボくんを抱き上げたまま、しっかりとツナを怒っているところからして、やっぱり山本の声は聞こえてないようだ。
「あいつが一番保育係に向いてるな…」
「確かにね」
「……じゃあ、奴が右腕…?」
そんなハルちゃんに、リボーンが感心したように呟いて、ツナもそれに同意する。
そんな二人に、獄寺くんが信じられないと言うように銜えていたタバコを落とした。
「わあああああああああ!」
「はひ?」
ハルちゃんに抱えられているランボくんが何処から出したのか、あのバズーカを取り出して泣きながら自分の方へと撃つ。
突然のランボくんの行動に、ハルちゃんは意味が分からないようだ。
爆発音が辺りに響いて、現れたのは10年後のランボくん。
しかも、ハルちゃんは10年後のランボくんを抱えたままの状態。
「ヒャッ」
勿論ハルちゃんが、10年後のランボくんの重さに耐えられなくなるのは当然で、体制を崩してしまった。
その為、ランボくんにプロレスの技をかけるように膝で尾骶骨を打ち付けるような格好になってしまう。
仕方ない事かもしれないけど、これを遣られたランボくんは、きっと堪ったもんじゃないだろう。
「やれやれ、なぜいつも10年前にくると痛いのだろう…」
かなりの痛みだったのか、涙目になりながら腰を擦るランボくん。
「はひ―――誰ですか――――!!?」
そんな10年後のランボくんの姿に、ハルちゃんが驚いたように声を上げた。
確かに、子供を抱えていたはずなのに、その姿が大きくなったら誰だって驚くだろう。
初めて10年後ランボくんを見たときにも思ったんだけど、今のランボくんって、考えれば15歳になるんだよね?
俺と2歳しか変わらないのに、なんであんなに大人っぽいんだろう??
「そう言えば、ハルは大人ランボに会うのは初めてだっけ?」
「お久しぶりです。親愛なる若きハルさん」
ちょっとだけ現実逃避したくなった俺の耳に、思い出したように呟かれたツナの声が聞こえて来た。
それに続いて、復活したのだろうランボくんがウインクしながらハルちゃんに挨拶する。
「キャアアアアア!エロ!ヘンタイ!!」
だけど、ランボくんがハルちゃんに挨拶した瞬間、そのハルちゃんが、顔を真っ赤にして悲鳴を上げランボくんを叩く。
突然のハルちゃんの行動に、ランボくんは驚いたような表情を見せる。
「胸のボタンしめないとワイセツ罪でつーほーしますよ!!」
「こ、これは、ファッションで…」
「何か全体的にエロイ!!!」
ハルちゃんに叩かれた事でショックを受けているランボくんに、ハルちゃんは更に顔を逸らして文句を言う。
な、何ていうか、ハルちゃんは、10年後のランボくんはあんまり受け入れられないみたいだ。
「ハル、わかるぞ!おまえの言う事はもっともだ。それに何だこの変てこな首輪は」
顔を真っ赤にして視界にランボくんを入れないようにしているハルちゃんに、珍しく楽しそうな獄寺くんが同意するように口を開き、ランボくんが付けているアクセサリーを掴んだ。
「おめーは、鼻輪が似合ってるんだよ、アホ牛!!」
更に嬉しそうに笑いながら、何かとんでもない事言ってるし!!
絶対にさっきの仕返しだよね、獄寺くん!!!
獄寺くんに言われて、ランボくんはかなりショックを受けてるみたいだ。
「オ…オレ…失礼します」
フラフラしながら、生気のない表情なんだけど、大丈夫なんだろうか?
「おー、帰れ帰れ!」
「ご、獄寺くん!」
ボソリと呟かれたそれに、獄寺くんは容赦なく言葉を返す。
それに、俺はそれ以上は不味いと思って慌てて止めるつもりで獄寺くんを呼ぶ。
ハルちゃんは、まだ真っ赤な顔のままツナの後ろに隠れるようにしているみたいだ。
「ガ・マ・ン」
本気でフラフラしながら、その場を去ろうとしているランボくんに流石にかける言葉が見つからない。
何ていうか、本気で10年後ランボくんが気の毒でたまらないんだけど
「おい、おまえ、角落としてるぞ」
だけど、フラフラのランボくんに、声を掛けたのは意外な事に山本だった。
地面に落ちていたのだろうそれを拾って、ランボくんに声を掛ける。
山本に声を掛けられて、ランボくんが振り返った。
「あ…投げてください」
真っ青な顔色で、振り返って山本にお願いの声を返す。
って、投げる?……ちょっと待った!
「ちょ…」
「あいよ」
投げると言うその言葉に先程の事を思い出して、慌てて止めようとした瞬間、山本の声が聞こえて勢い良くそれが、投げられた。
それは、真っ直ぐにランボくんの額に直撃。
「ラ、ランボくん!!!」
もろに攻撃を受けた状態になったランボくんは、そのままバタリと倒れてしまう。
「わりぃ!!」
山本は、素直にランボくんに謝罪するけど、それは謝ってすむ問題じゃないようなきがするんだけど
投げられたそれによって、ランボくんの額から見事に血が流れている。
「が…ま…うわああああ」
何とか立ち上がったランボくんだったけど、やっぱり痛みに耐えられなかったのか、何時ものように泣き出してしまった。
「まぁ、結局こうなる訳だ」
そんなランボくんに、ツナは盛大なため息をつくけど、そう言う問題じゃないから!!
慌ててランボくんに近付いてポケットに入っていたハンカチを取り出して、傷口に当てる。
「大丈夫?」
「…さん…オ、オレ……」
「うん、大変だったね……10年後に戻ったら、少しでも早く手当てしてもらって」
ハンカチで血が出ないように押さえながら、心配して声を掛ければ、うるうる瞳で見られてしまった。
本当に、気の毒でしかないんだけど……
「やっぱりダメが面倒見るしかねーな」
「……そんな事、オレが認める訳ないだろう」
だから、ちょっと離れた場所で、そんな会話がされていたのには、気付けなかった。
うん、ツナとリボーンの間に火花が散っていたなんて、本気で気付きたくなかったんだけど……