暑くって目が覚めたその日、玄関で何故だかスイカがグチャグチャになっていた。

 一体、何があったんだろう?

 そう言えば、目が覚める前に獄寺くんの声を聞いたような気がするよう……気の所為だったのかな??




「母さん、おはよう。玄関どうしたの?」
「あら、今起きてきたの?ずいぶん起きるのが遅いのね」

 当然のようにキッチンにいるのは母さんだろうと声を掛けたら、想像した声とは全く違う声で返されてしまう。
 あれ?母さんじゃない?

「あっ、おはようございます、ビアンキさん」
「おはよう、

 母さんじゃない事を疑問に思いながら、顔を上げて飛び込んで来た綺麗な顔に慌てて挨拶すれば、優しく笑って挨拶を返してくれた。

 ビアンキさんは、俺の事を呼びで定着してくれたみたいで、ホッとする。

 間違って毒殺してしまいそうになった事を本当に悪いと思っていたのか、畏まってくんなんて呼ばれた日には、誰の事を呼んでるのか本気で理解できなかったぐらいだ。
 それをなんとかくんと呼ぶのになって、必死で年下だから呼び捨てでって言ったら、漸く納得してくれた。
 ツナの事は、ツナ、もしくはボンゴレって呼んでるみたいだけどね。

「そうね、あなたにも授業をしなくってはいけなかったのよね」
「はぁ?」

 その時の事を思い出していた俺は、突然言われた言葉の意味が分からなくって、思わず首を傾げてしまう。
 えっと、授業って何の事でしょうか??

「ビアンキさん?」
「私も家庭教師になったのよ、ボンゴレの家庭科と美術を見る事になってるわ。にも教えてあげるわね」

 意味が分からずに問い掛けるように名前を呼べば、説明してくれたビアンキさんのその言葉に、一瞬複雑な表情をしてしまった。

 えっと、リボーンの話から考えると、ビアンキさんの作る料理って……ポイズンクッキングだったような……
 それは、流石に習いたくないかも……

 でもそう言えば、ツナが料理してるところって見たこと無いかも
 そっか、今の世の中男でも料理出来る事に越した事はないもんな、だから、ビアンキさんが料理と美術……でも教える料理が毒料理って習う意味あるのかな??


「俺は、母さんから料理習ってるんで、一通りの料理は出来るんです。だから、家庭科よりは美術習いたいかも……」
「あら、そうなの?ママさんの料理なら大丈夫ね。だったら、あなたには美術を専門に教えてあげるわ」

 俺としては毒料理だけは習いたくないと思って言った言葉に、あっさりとビアンキさんが頷いてくれる。
 よ、良かった。母さんから料理習ってて……あれ?でも、ビアンキさんがここに居るって事は

「もしかして、これからツナに料理の勉強ですか?」
「ええ、でもあの子ったら隼人と一緒に出掛けたまま戻ってこないのよ」
「隼人?」

 俺の質問に答えてくれたビアンキさんから、聞きなれない名前を聞いて思わず首を傾げてしまう。
 どっかで聞いた事あるような気がするんだけど、誰の事だっけ??

「あら?知らないのかしら?隼人は私の弟よ」

 えっ?!ビアンキさんの弟さん!!そ、それは、知らないかも……でも、ビアンキさんって誰かに似てるんだけど、誰だっけ??
 やっぱり、隼人さんって人に似てるって事だよなぁ……って事は!隼人さんって俺が知ってる人!?

「ビアンキちょっと来てくれる?」

 必死で誰だったのかを思い出している中、聞こえて来た声に思わず首を傾げてしまう。
 ツナの声だけど、あれ?出掛けてるんじゃなかったっけ??

「何かしら?」
「さぁ、でも、綱吉って出掛けてるんじゃなかったんですか?」
「そうね、何時戻ったのかしら?でも、戻ってきたんなら授業を始めないと」

 そう言いながら、片手になんか怪しい料理を持ってるんですけど、それってもしかしてケーキなんでしょうか??
 怪しい煙を吹いているその物体を不安に思いながら、呼ばれた声にキッチンを出て行くビアンキさんの後を付いていく。

「ムリヤリやらすのはキライだけど、そろそろ家庭教師はじめるわよ」

 リビングから庭の方へと視線を向ければ、10年後のランボくんがビニールプールに浸かっているのが見えた。
 ビアンキさんは先に外に顔を出して、ツナに声を掛けているんだけど、その10年後のランボくんを見た瞬間、ビアンキさんの空気が変わったのが分かる。

「ロメオ!!」

 ロメオ?えっ、それって誰?あれって、10年後のランボくんだよね?
 ビアンキさんに、驚いたように知らない名前で呼ばれたランボくんが不思議そうな顔をする。
 それにしても、何で服を着たままでプールに浸かってるんだろう??

「ロメオ!生きてたのね!」

 疑問に思いながら、ビアンキさんに続いて庭に顔を出そうとした瞬間、ビアンキさんが外に飛び出した。
 そう、あの明らかに怪しい物体を持って……

「ランボくん、避けて!!」

 直感が働いたのかその瞬間、不味いと思った俺は思わず声を出して、忠告。

「ロメオ〜〜〜〜!!!」

 だけど俺の声は聞こえていなかったのか、ランボくんは意味が分からないというような表情で走り寄ってくるビアンキさんを見ているだけで、次の瞬間

「ポイズンクッキングU――!!!」

 ぐしゃっと言う音と共に、ビアンキさんは持っていたそれをランボくんの顔目掛けて叩き付けてしまった。
 その勢いで、ランボくんがビニールプールの中で後ろに倒れこむ。

「ビアンキと元彼は別れる直前、とても険悪だったらしいぞ。よく元彼を思い出しては腹立ててたからな」

 信じられない状況に俺も慌てて庭に出た瞬間聞こえてきたりボーンの声で、複雑な表情をしてしまう。
 ロメオって、ビアンキさんの元彼で、ランボくんは彼に似ているが為に、攻撃されたと……

「が…ま…ん」

 ビアンキさんのポイズンクッキングをまともに食らってしまったランボくんは、何時もの言葉を口にした瞬間、コテッと気絶してしまった。

「ランボくん!!」
「10年後の医療なら助かるかもな」

 何時ものように泣かないランボくんに慌てて近付こうとした瞬間、聞こえて来たリボーンの声にぎょっとする。
 そ、それって、今の医療じゃ絶対に助からないって事?!

、多分ランボは大丈夫だからそんなに慌てなくってもいいよ。殺しても死なないからこいつの場合」

 って、何でそんなに落ち着いてるの、ツナ!!

「で、でも……」
「ランボには気の毒な事したけど、役には立たなかったな」

 取り合えず、助けようと手を伸ばした瞬間、ツナに止められてしまい反論しようと口を開きかけた瞬間、続けられたツナの言葉に何も言えなくなってしまう。
 えっと、何ですか、その発言……も、もしかして、10年後ランボくんがビアンキさんの元彼に似てるって知ってて呼び出したんじゃ……

「ツ、ツナ……」
「ああ、勿論知ってたよ」

 考え付いた事に恐る恐るツナを見上げたら、サラリととんでもない返答が返ってきてしまう。

「し、知ってたって!!!」
「ビアンキね、獄寺と義姉弟みたいだよ」

 信じられないというように口を開いた俺に、ツナが説明してくれる。
 思い出した!隼人って、獄寺くんの名前だ!!そっか、ビアンキさんが誰かに似てるって、獄寺くんに似てたんだよ。

「って、そうじゃなくって!」
「ほら、5分経ったから大丈夫だって」
 思い出してすっきりしたけど、そう言う問題じゃない!
 って、突っ込むように声を荒げたら、5分経ったらしく10年後ランボくんの姿が消えて5歳のランボくんが戻って来た。

「……本当に、大丈夫なのかな……」
が心配する事じゃないよ。それにしもて、あいつをどうやって追い出すか……」
「ツナ?」
「だって、を間違って殺そうとした奴なんだよ!そんな奴と一緒に暮らせる訳ないじゃない!!」

 えっと、ビアンキさんを追い出そうとして元彼にそっくりなランボくんを使ったんだ。
 もっとも、上手くいかなかったみたいだけど、10年後ランボくんにとっては本気で気の毒としか言えない。

「大丈夫だよ、ビアンキさん悪い人じゃないし」

 でも、そんなにツナが心配するような事無いと思うんだけど
 俺は、ビアンキさんのこと嫌いじゃないし、悪い人だとは思えない。
 ハッキリと言った俺の言葉に、ツナが盛大なため息をつく。

「……にかかれば、誰だって悪い人にならないんだろうね……」

 って、どう言う意味だろう??


 その後、気が付いたらビアンキさんが居なくなっていた。
 あれ?ツナの授業するって言ってたのに、一体何処に行ったんだろう。