山本の入ファミリー試験が終わってホッとしたのも束の間、またしても問題多発。

 本当に、俺の人生波乱万丈だと、改めて思ったのは内緒の話。





「う〜っ、流石にあつい。のど渇いたかも……」

 起きて早々、母さんから頼まれて買い物に出てきたのは良いけど、この暑さで正直言って眩暈起こしそうなんだけど

 ツナに出掛ける前に自分が行こうかと言われたのを丁寧に断って出てきた手前、暑さで倒れるなんて惨めな事はできない。

 それにしても、今年の夏も何時も以上に暑く感じる。
 蝉の賑やかな声を聞きながら、俺はそっと空を見上げた。

 その瞬間、チリンチリンと言う自転車のベルの音が聞こえて来て振り返る。
 そして、振り返った瞬間、信じられない物を見てしまった。

 ママチャリに、メットとゴーグル??

 この暑いのに、しっかりとメットしてるのはすごいと思うけど、いや自転車にメットにゴーグルって言うのはどうかと思うんですけど
 ぶしつけだとは思ったんだけど、余りの格好に思わず凝視してしまったのが不味かったのか、その自転車の人は俺の前で止まりメットとゴーグルを外した。

 メットを外した瞬間、長い髪がフワリと流れる。
 メットとゴーグルに隠されていたのは、すっごく綺麗な顔。
 思わず見惚れてしまうほどのその人の顔に、またしても失礼ながら凝視してしまう。

「ちょっと聞いてもいいかしら?」
「あっ、はい!」

 ぼんやりとしていた俺に、その人が声を掛けてきて、慌てて我に返る。
 元気良く返事をした瞬間、クスクスと笑われてしまった。

 うっ、ちょっと恥ずかしいかも

「この辺に沢田って家があると思うんだけど、何処にあるか知っているかしら?」

 ちょっとだけ赤くなってしまった自分に、その人が更に質問してくる。

 沢田?この辺の沢田って言うと俺ん家しかないように思うんだけど、えっと、こんな人を知ってたら忘れられないと思うんだけど、俺はこの人を知らない。

 その瞬間、思い出したのはリボーンの存在。
 目の前の人はハーフみたいだし、もしかしたらリボーンの知り合いなのかもしれないとそう思う。

「あの、俺、沢田って言いますけど……もしかして、俺の家に用事ですか?」
「あなた、沢田なの?まさか、あなたが沢田綱吉?でも、写真と……」

 疑問に思って問いかけた俺に、その人はブツブツと何か言うのが聞こえて来た。
 えっと、沢田綱吉って、ツナの事知ってるのかなぁ?

「あの、沢田綱吉は俺の双子の兄ですが、兄のお知り合いですか?」
「ああ、あなたが双子の弟なの。でも、双子なのに似ていないわね」
「はい、二卵性ですから……えっと、家までご案内しましょうか?」

 俺が説明すれば、少しだけ驚いたような表情をした後言われた言葉に頷いて返事を返し、自分から案内を申し出てみる。
 だって、ツナの知り合いって言うのに、このまま無視してしまうわけにもいかない。

「あら、優しいのね。でも今は家の場所を確認したかっただけだから、教えてくれるかしら?」
「あっ!はい」

 俺の申し出に、綺麗に微笑んで言われたそれにまたしても元気良く返事をしてしまう。

 う〜っ、綺麗な人を前にすると、男として緊張するって言うか何と言うか……いや、これって相手が女性だからって訳じゃないんだけどね。
 委員長さんとか委員長さんを相手にする時だって、すっごく緊張するんです、実は俺。
 だって、委員長さんもすっごく綺麗な顔してるんだよ!


 簡単な地図を書いて説明すれば、頷いてお礼だといってジュースをくれた。

「助かったわ、有難う。これはお礼ね」
「いえ、大した事じゃないですから……」
「それじゃ、また会う事になると思うけど」

 って、意味深な笑みを浮かべてその綺麗な人が去って行くのを見送ってから気付く。

 そう言えば、俺、あの人の名前聞くのも忘れてたよ。
 でも、また会う事になるって……今、家の場所教えたから、それって家に来るって事なのかな??


 そんな事を考えていたら、炎天下の中呆然と突っ立っている状態になって、ますます眩暈がしてきた。

 う〜っ、こんな炎天下に日陰にも逃げないで直射日光浴びちゃって、俺って本当に馬鹿かも……熱中症になっても仕方ないって
 ちょっとでも水分を取らないとと思って、先程貰った冷たいジュースをそっと握った。まだ冷たいそれに、ちょっとだけ考えて頬に当てれば、すっごく気持ちいい。
 少しだけ顔の火照りを冷やしてから、それを開ける。

 ぷしゅっと言う音がして、蓋が開いた瞬間異臭が……

 あれ?これって、ジュースじゃない?

 その匂いに思わずもっていた缶を落としてしまい、中身が道に零れてしまった。
 更にその匂いと共に、飛んでいたカラスが落ちてくる。

 ちょっと待って、何でカラスが落ちて来る訳?あれ?そう言えば、何かますますくらくらしてきたんだけど、もしかして日射病で俺可笑しくなってるのかな?

!」

 クラクラする頭がぼんやりとしはじめた時、良く知った声に名前を呼ばれたような気がして顔を挙げた瞬間、意識がブラックアウトしてしまった。
 やっぱり、炎天下で突っ立てたのが不味かったらしい。




「気が付いたみてぇだな」

 目を開いた瞬間聞こえて来た声にそちらへと視線を向けて、驚いてしまった。

 いや、だって、リボーンの顔どころか体中に黒い虫が一杯。
 子供受けするような、虫だけど起き抜けに見たら心臓に悪すぎるんだけど……

「リボーンって、樹液分泌してるとか言わないよね?」

 こんな街中に、カブトムシが大量発生??
 思わず、間抜けだと思うような質問をしてしまっても仕方ないと思う。

「これはオレの夏の子分達だぞ。情報を収集してくれるんだ」

 そんな姿のリボーンを起き抜けに見て、悲鳴を上げなかった自分を少しだけ褒めてあげたい。
 でも、余りにも間抜けな質問をした俺に、呆れたように説明してくれるリボーン。
 説明してくれたりボーンの言葉と同時に、役目は終わったとばかりりにカブト虫達が一斉に窓から飛び出していく。

「それって、リボーンは虫語も話せるって事なんだよね?」

 だって、普通の人は虫語が分かるとか考えも付かないと思うんです、だから、あんな事を質問しても悪くないと思うんですけど……
 それにしても、読心術も出来て、更には虫語も話せるって凄過ぎるんですけど、リボーンさん。

「まぁな。でだ、お陰で情報がつかめたぞ、ビアンキがこの町にきてる」
「ビアンキ?」

 えっと、それは誰ですか?


 それに、よくよく考えたら、俺は何で自分の部屋のベッドに寝てるんだろう。
 確か、道の真ん中で倒れたような記憶があるんですが

、気が付いたの?」

 リボーンの言葉にも疑問を持ったけど、それ以上に俺は今のこの状況の方がかなりの疑問なんですが……

 首をかしげた瞬間、ドアが開いてツナが入ってくる。
 その手には、桶に氷と水が入ったそれを抱えて

 そう言えば、額が冷たかったような……
 気が付いたのは、俺が起きた時に落ちたのだろうタオルが一枚。

 どうやら、倒れた俺を、ツナが看病してくれたらしい。
 お陰で、くらくらしていた頭は、かなり楽になっていた。

「起きたんなら、首の後ろをタオルで冷やして、熱中症じゃなくってちょっと逆上せたのとあのジュースが問題だっただけだから、そんなに大した事はないと思うんだけど、ダメだよ!あんな道の真ん中でぼんやりと突っ立ってるなんて!あんまり遅いから様子見に行ったら案の定倒れてるし……せめて帽子を持っていくとか、日陰に入るとかしてよ」

 って、しっかりと状況の説明をしてもらって、全部納得できました。
 やっぱり、意識がブラックアウトする時に聞こえてきたのってツナの声だったんだ。

「う〜っ、ごめんなさい」
「謝らなくってもいいから、次から気を付けてよ」

 呆れたように言われて、コクコクと何度も頷いて返す。

 ああ、だからツナは俺が出掛ける前に、あんなにも心配してたんだ。
 本当に外は暑かったから、体力の無い俺には長時間居る事は耐えられないと分かっていたのだろう。

 俺、今からでも頑張って体力付けよう!
 決意した瞬間、玄関の呼び出しのチャイムが鳴り響く。

「イタリアンピザでーす」

 その後から聞こえてきたのは、宅配屋さんの声だろうか。

 あれ?でも、女の人の声に聞こえるんだけど、気の所為?
 ああ、でも、今は女の人でも配達ってしてるのかな?あんまり知らないんだけど

「母さんがピザ頼んだの?」
「あの母さんがピザなんて頼むと思う?」

 珍しい事もあるもんだなぁ、と思いながら首を傾げた俺に、ツナが逆に聞き返してきた。

 いや、だから珍しいと思って口にしたんだけど、俺。
 だって、母さんなら自分で何でも作りそうだし……流石にピザを作ってるところは見た事無いんだけど、あの人なら作っても可笑しくない。

「リボーン!」
「……分かってるぞ」
は、ここを動かないでよ」

 って、何で二人で分かり合ってるんですか?
 俺には、何がなんだか分からないのに……

 複雑な気持ちでツナに押し付けられた冷やされたタオルを首の後ろに当てていた俺は、もう二人を見守る事しか出来ない。
 その後、俺はその場を動く事も出来なくって、本当に大人しくツナ達が戻ってくるのを待っていました。

 だって、ツナの言葉に逆らったら、後が怖いから……
 その間、銃声が聞こえてきたのと、何か言い争うような声が聞こえてきてすっごく気になったんだけど、何とかツナ達が戻ってくるまで大人しくしていました。

「結局、何だったの?」

 疲れているツナに、そっと問いかければ、盛大なため息をつかれちゃいました。

「来ていたのは、毒サソリ・ビアンキっていうフリーの殺し屋だ。あいつの得意技は毒入りの食い物を食わすポイズンクッキング」
「毒?もしかして、俺が貰ったジュースって……」
「そのまさかだよ。が貰ったのは毒ジュース。だから、その匂いを嗅いで意識を失ったんだよ」

 頭を抱えるように言われたツナの言葉に、今更ながらゾッとする。

 もしかしなくっても、俺も命狙われたんだろうか?
 だから、あのジュースを……
 でも、そのわりには、また会いましょうって言ってたような……あれ?

は、間違って殺されそうになっただけだから、命を狙われる事はもうないと思うよ」
「えっ?」
「オレに渡そうと思っていたジュースを間違ってに渡したらしい。それに気が付いて慌ててたみたいだね。ちゃんとが無事だって言ったら、ホッとしてたよ」

 えっと、それって、間違いなくツナは命狙われてるって事だよな?
 俺が間違いだって言うのは嬉しいけど、ツナの命が狙われるのは嬉しくない!

「何で、そんなことになってるの?!」
「ビアンキはオレにゾッコンだからな。お前達の家庭教師の仕事をしているのが気にいらねぇんだ。だから、生徒であるツナの事を殺そうとしてるんだぞ」

 って、説明してくれたリボーンの言葉の意味が良く分からないんですけど、もし俺が会ったあの人がビアンキさんだとしたら、明らかに年の差が在り過ぎるんですけど

「つきあっていたこともあるしな」

 さらっと何言っちゃってるんですか!!
 えっと、それって、ビアンキさんとリボーンが付き合っていたって事なんだよね?

「えっと、それって、ビアンキさんって言う人がリボーンの彼女だったって事?」
「オレはモテモテだなんだぞ」

 た、確かに、モテモテかもしれないけど、人の命狙う恋人って……あっ、殺し屋だったっけ?

「ビアンキは愛人だ」

 内心で考えていた事なんて、知らないだろうリボーンが、4本の指を立てて愛人宣言。
 いやいや、それってどうなんですか?!

「迷惑な愛人だね」

 って、ツナさん、それだけで済ませられないですよ、普通は!!
 それに、こんな子供に4人の愛人って……リボーンさん、子供としてどうかと思うんですが……


 そして、次の日、何でか知らないけど、ビアンキさんが家に住み込む事になっていた。

 えっと、何がどうなってこう言うことになったのか、俺にはさっぱり分からないんだけど、学校中でツナが京子ちゃんのおにぎりを食べたって言う話が広がっていたんだけど……

 そう言えば、その日の朝、京子ちゃんが調理自習でおにぎり作るって話してたような……
 俺にも食べてもらいたいって言ってたけど、クラス違うからそれは流石に無理だし……だから、ツナに俺の分も食べてもらったんだろうなぁと思ってたんだけど、違うのかな??

 一体、何があったのか、勿論ツナは何も話してくれませんでした。