家に居候が増えた。

 うん、家族3人だけで生活していたはずなのに、どんどん家が賑やかになる。
 それは、悪い事じゃないけど、ちょっとだけ近所迷惑になっているように思うのは、気の所為じゃないだろう。

 銃声とか爆発とか……どんどん、普通の家じゃなくなっているんですが……




、大丈夫?」

 眠くって眠くって欠伸が止まらない。
 数回目の欠伸をした俺に、ツナが心配そうに声を掛けてきた。

「うん、何とか大丈夫……」

 眠くって目がシバシバするけど、何とか大丈夫。

 それにしても、ツナだって同じ状況のはずなのに、何でこんなに元気なんだろう。
 やっぱり俺に体力がないって事なんだろうか?

「よぉ!ツナ、!」
「おはよう、山本」
「ん〜っ、はよう、山本……」

 自分の体力の無さに少しだけ打ちひしがれていた瞬間元気な声が聞こえて来て振り返れば右手に包帯をした状態の山本が居た。
 それにまずツナが挨拶を返して、俺も普通に挨拶を返そうと思った瞬間またしても欠伸が出てしまって、返せたのは何とも情けない挨拶だった。

「なんだ寝不足か?クマできてんぞ」
「えっ、いや……」

 そんな俺に気付いて山本が肩に手を乗せて質問してくる。
 それに俺は、何と返していいのか分からずに言葉を濁した。


 だって、流石に家に居る殺し屋を他のマフィアの殺し屋が暗殺しに来て返り討ちにあったために泣いて大変な状態になっていたなんて説明出来ないよね。
 って言うか、そんな話行き成り言われても普通は信じられないと思う。

 俺は、絶対に信じないな、うん。

「山本」

 内心でどうしたものかと考えている瞬間、ツナが山本を呼ぶ声が聞こえて来た。

「っと、悪い!」

 ツナに名前を呼ばれた瞬間、山本が俺の肩に乗せていた手を慌てて退ける。
 えっと、何でそんなに慌ててるんだろう?

「もしかして勉強でもしてたのか?なら、オレにも勉強教えてくれよな」

 訳が分からない俺を置き去りに、山本が何事も無かったように話を続けた。


 勉強か……そう言えばもう直ぐ期末なんだけど、俺も全然勉強してないんだけど……

 ツナは勉強しなくっても大丈夫かもしれないけど、俺は無理だ。
 それにここ最近まともに授業を受けてないように思うのは気の所為だろうか……


 な、何か、今度の期末が本気で心配になってきたかもしれない。

「そうだね、と一緒に勉強見てあげるよ、山本」
「ラッキー!頼むな、ツナ」
「うっうっ、頼りにしてます、ツナ兄」

 本気でどうしようかと考えている中、ツナが楽しそうに山本に言葉を掛けるのを聞いて思わず縋ってしまう。
 俺、今からでもがんばって勉強しよう!うん、ちょっとでもツナに迷惑掛けないでいいように……




 って、そう思った今日は何事も無く平和に一日を過ごす事が出来たのに、なんでこんな事になってるんだろう……

「リボーン、どう言う事なの?」

 学校のプールで夏を満喫しているリボーンに俺とツナが呼び出されたのは本当に突然だった。

「っつーわけで、獄寺を納得させるためにも山本の『入ファミリー試験』をすることにしたんだ」

 意味が分からないと言うように質問した俺の言葉に、再度同じ言葉で返されてしまった。
 あれ?確か山本はもう既にファミリーに入っていたよう気がするんだけど、今更試験なんて……

「別に、好きにすれば……獄寺が納得しないとかにも、興味ないんだけど……」
「ツナ!そう言う問題じゃないから!!大体、山本は一般人なんだよ!それに、野球で忙しいのに巻き込んだりしたら……」
「もう遅いぞ、獄寺に山本を呼びに行かせたからな」

 あっさりと認めたツナに、本気で突っ込んでしまう。
 だけど、続けて止めるように言った俺の言葉はあっさりとリボーンの言葉によって無駄な事だと知ってしまった。

「な、何してるの?!獄寺くんに呼びに行かせたって……」
「あ〜っ、獄寺、今頃切れてないといいんだけど……」

 って、何しみじみ言っちゃってるの!!獄寺くんて、スモーキン・ボムとかって呼ばれてるくらい有名な人なんだよね?
 そんな人相手に、山本漸く腕の怪我が良くなってるって言うのに……

「止めに行かなきゃ!」
「あっ!、走っちゃダメだよ」

 何でそんなに落ち着いちゃってるの!ツナは!!
 慌てて二人を探しに行こうとした俺に、ツナが暢気な声を掛けてきたのに、心の中で突っ込んでしまう。

「落ち着いてる場合じゃないよ!山本、怪我してるんだからね!それに、獄寺くんの事やマフィアの事だって知らないんだから!」
「そうなのか?」
「う〜ん、ごっことは言ってたけど、あれってただ単に腹黒なだけだと思うんだけど……」

 一人慌てている俺を完全に取り残して、暢気に話をする二人に本気で複雑な表情をしてしまった。

 何でそんなに落ち着いてるの!!

「まぁ、なんにしても、が急いでも意味が無いから、ちょっと落ち着いた方がいいよ」

 そして、続けて言われた言葉と同時にフワリと抱き上げられる。

「オレが連れて行くから」

 抱き上げられた瞬間に聞こえて来た声と同時に、走り出したツナに俺は驚いて相手に抱き付く。
 しかも、かなり速いスピードで走ってるんだけど、ツナ……。

「ツ、ツナ……」

 こ、怖い。

 そのスピードに目を瞑って、ツナにぎゅっと抱き付く。
 何で俺を抱き上げてるのに、こんなに早く走れるんだろう、ツナは……

「どうやら間に合ったみたいだね」
「10代目!」
「よぉ」

 その動きが止まった瞬間に聞こえて来た声に、そっと目を開ければ目の前には獄寺くんと山本の姿があった。

「って、何でそいつを抱き上げてるんですか?!」
「そうだね、趣味?」

 って、何で疑問系なんですか?

 ツナに抱き上げられている俺に、突っ込んでくる獄寺くんに対して、ツナが疑問系で返事を返す。
 更に、趣味って何ですか、お兄様。

「本当に、仲良いよな、お前等って」

 山本は山本で、全く気にしてないって言うのもすごいと言うか何と言うか……
 仲が良いっていう事で納得できるような状況じゃないように思えるんですけどね、うん。

「おっ、久しぶりだな。確かツナの家庭教師だったよな、坊主」
「ちゃおっス」

 って、リボーンの声が……

 山本がしゃがみこんで声を掛けるから思わず俺がツナの肩越しに後ろを振り返ったら、ツナの腰辺りにロープを付けてその先をスケーボーに乗ってるリボーンが持ってる状態なのが見えた。
 って、もしかしてずっとそうやって付いて来てたんだろうか、リボーン。

 それなのに、あんなにスピード出るのか普通、ツナ、どれだけ力持ち……

「そうだぞ、オレはマフィア、ボンゴレファミリーの殺し屋リボーンだ」
「そうだったそうだった。こんなちっせーうちから殺し屋たぁ、大変だな」

 普通に山本に挨拶するリボーンは、しっかりと自己紹介してしまった。
 それに、あっけらかんとして返す山本は、本気で大物かもしれない。だって、全然動じてないよ、この人。

「オレも、そのファミリーに入れてもらったんだよな」
「そうだぞ、お前もツナの部下だ」

 そう言えばそんな会話を聞いた記憶が……
 あれって、やっぱり冗談じゃなかったんだ。

「でも、まずは入ファミリー試験だぞ」
「っへー試験があったのか」
「試験に合格しなくちゃ正確なファミリーとしては認められねぇぞ」

 思わずと遠い目をしてしまった俺なんて全く気にした様子も無く、山本とリボーンの会話が続く。
 えっと、それって、山本が試験を合格しなければ、こんな危ない事に巻き込まなくっても良いんだろうか?

「ちなみに、不合格は死を意味するからな」

 ちょっとだけ内心で考えた事を無駄だとでも言うように続けられたりボーンの言葉で、複雑な表情をしてしまう。

「心配しなくっても大丈夫だよ、ちゃんとフォローするから」

 どう回避するべきかを考えていた俺に、ツナがそっと耳打ちしてきた。

「ツナ?」
「だから、は心配せずに見てて」

「試験は簡単だ。とにかく攻撃をかわせ」

 って、リボーンが拳銃を両手に持ってるし!!

 嬉々とした表情で言うリボーンの姿に恐怖を感じるのはどうしてだろう。
 大体、攻撃を全てかわすって、無茶な試験だし!!

「ツナお前も参加しろよ」
「……分かってるよ、でも、は無理だからな」
「勿論だ。ダメはこっちに来い。って、何時までツナに抱えられてんだ」

 内心で突っ込んでいる俺には全く触れないで、リボーンが当然のようにツナ声を掛ける。
 声を掛けられたツナは、盛大なため息をついて頷いた。その言葉からも、予想はしてたみたいだ。

 そして、呆れたようにリボーンに言われたそれで、漸く俺はまだツナに抱き上げられたままだった事を思い出してしまった。

「ご、ごめん、ツナ!下ろしてもらって大丈夫だよ」

 そんな事にも気付かないなんて、俺って何て間抜けなんだろう……慌ててツナに自分を下ろすように口を開く。

「別に、このままでもいいんだけど……でも、試験をするなら、を危険な目には合わせたくないから、仕方ないね」

 下ろすようにお願いした俺の言葉に、ツナが本気で残念そうに口を開きそっと、下に下ろしてくれる。

 えっと、仕方ないってどう言う事だろう?

「おい、さっさとはじめっぞ。ダメはこっちに来ていろ、巻き込まれるかんな」

 言うが早いか、リボーンの手には既に数本のナイフがある。

 あれ?さっきまで持ってた銃は何処に??

「まずは、ナイフ」

 そしてそのままナイフをツナと山本に向けて、投げた。
 ナイフを投げられた山本は、突然の事に慌てて避けたけど、ツナは本当に簡単にサラリと避ける。

「ま!まって、リボーン!!本当に山本を殺す気?!」

 ツナはたぶん平気だと思うのは俺の勘が働いてる所為なのかは分からないけど、山本も無傷で居られるとは到底思えない。
 確かに野球部のエースだから運動神経は一般の人に比べれば十分すごいとは思うんだけど、それはあくまでも一般と言うレベル。
 最近、ツナや委員長さんを見ていると一般の人からはかけ離れているようにしか見えません。

「まあまあ、大丈夫だって!オレも試験に受かって正式なツナのファミリーになるからよ」

 って、何サラリと言っちゃってるんですか!山本さん!!
 そんなに簡単じゃないから!

「大丈夫だよ、

 本気で信じられない目の前の状況に頭を抱え込んでいた俺に、再度ツナが声を掛けてくる。
 いや、だから、何が大丈夫なんですか?

「ツナも一緒だからな、心配する事ねぇって!」

 そして続けて言われた自信満々の山本の言葉に、複雑な表情をしてしまっても許されるだろうか。
 って、本気でこの状況を楽しんでいるようにしか見えないんですけど……

「んじゃ、再開すんぞ」

 聞こえてきたりボーンの声と共に、またしても大量のナイフが宙を飛ぶ。

「……いい肩してらー」

 リボーンの投げるナイフを軽々と避けながら、感心したように呟いた山本のその声が聞こえて来る。
 って、命懸けの状況楽しんじゃってるよ、この人。

「さすが野球で鍛えてるだけあるな。反射神経は抜群だ」
「そーすかねえ……」

 そんな山本を前に、リボーンが感心したように呟いたそれに、今まで黙って状況を見ていた獄寺くんがボソリと呟く。
 って、俺獄寺くんの存在を今の今まで忘れてたんですけど……ごめん。

「次の獲物はボウガンだ」

 次々に投げられるナイフを、二人は本当に軽々と避けている。

 それをハラハラしながら見ているしか出来ない俺に、何時の間に移動したのかツナや山本の前に先回りしたリボーンが今度はボウガンを手に立ち塞がった。

 本気で、何時の間に移動したんだろう?
 全く見えなかったんだけど……

 それに走っていた二人も気付いて、慌ててその足を止めUターン。

「ガハハハハ、リボーン見ーっけ!!」

 それを確認した瞬間聞こえて来た元気な子供の声に、ビクリと肩が震えてしまう。
 って、何で、今この声がここで聞こえてくるんだ。

「今度は何だ?」

 その場で足を止めた二人が、同時に声のした方へと視線を向ける。
 でも、ツナの表情は、うっとうしいとハッキリと書かれてたのが見えたって事は、その声の主に見当が付いていたのだろう。

「オレっちは、ボヴィーノファミリーのランボだよ!!5歳なのに中学校に来ちゃったランボだよ!!」

 俺も同じように視線を向けた先には、予想通りの人物が……

 3階の昇降階段踊り場から身を乗り出しているランボくんの姿に、目を見張る。
 そんなに身を乗り出したら、危ないって!!

「ボヴィーノ?聞かねー名だな。リボーンさんどーします?」

 必死で自分の存在をアピールしているランボくんに落ちないかとハラハラしながら見詰めている俺の耳に、獄寺くんの声が聞こえて来て思わず振り返った。

「続行」

 その瞬間、リボーンは容赦なくボウガンをツナと山本へ向けて放つ。

「ちょ、リボーン!!」

 そんな容赦ないリボーンに俺は慌てて止めさせようと声を掛けるけど、聞き入れてもらえるはずも無かった。

 ランボくんは必死で存在をアピールしていたけど、それを軽くスルーされた事で別な方法を考えているのかその姿が見えなくなったのに、少しだけホッとする。
 だって、あんなに身を乗り出したりして落ちたりしたら大変だし……

 って思ってたのに、チラリと視界の端で見えたのは何かの武器を肩に担いでいるランボくんの姿。

「パンパカパ〜ン!ミサイルランチャ〜〜〜ッ!!」

 ミ、ミサイル!!

「死ね、リボーン!!」

 聞こえて来た武器の名前にギクリとした瞬間には、最近聞きなれてしまった言葉が聞こえて来て発射される数発のミサイル。
 それが、ツナや山本目掛けて流れていく。

「ツナ、山本!!」

 地面にそれが当たった瞬間聞こえてきたのは、爆音と爆風。

「おしいな、あと10メートル」

 って、ランボくんの声が聞こえてきたけど、全然惜しくないから!!
 リボーンの居る場所からかなり離れてるし!明らかに、ツナと山本に向けられてたから、標準!!

「フーッ、こいつぁなめてっと合格できねーな」
「別に、合格しなくってもいいんだけど……」

 ランボくんにミサイルを撃たれた事で、山本の表情がかなり真剣なものに変わる。
 だけど、そんな山本に盛大なため息をついて呟くツナの言葉はやる気なしだ。

「リボーン!!試験なんてやめようよ。見ただろう?ランボくんがミサイル撃ってきたんだよ!!」

 二人はどう見ても試験を続行する気満々だけど、こんな危ない状況で試験もなにもあったもんじゃない。

 いや、その前にリボーンのする試験こそ危険極まりないものだけど……
 試験の中止を申し出た俺に、リボーンは持っていたボウガンをポイッと後ろに投げ捨てた。
 そして、次に取り出されたのは……

「次はサブマシンガンだぞ」

 ってマシンガンを手に持って、当然のように試験は続行状態に……

「まずは見習いの殺し屋レベルだ」
「リボーン!」
「うるせーぞ、ダメ。おまえは黙って見てろ!」

 容赦なくマシンガンを撃つリボーンに、非難を込めて名前を呼べば逆に怒られてしまった。

 黙って見てられないから、止めようとしてるのに……
 その間にも、リボーンの攻撃とランボくんのミサイルがツナ達を容赦なく襲う。

「獄寺も、ぶっぱなしていいぞ」

 そこで、一歩後ろに居る獄寺くんにまで声を掛ける始末。

「!し、しかし……」

 だけど、流石にツナも一緒に居るからか、獄寺くんは困ったような表情で言葉に詰まった。

「山本をぶっ殺すつもりでいけ」

 それに少しだけ安心してたら、続けて言われたその言葉に、獄寺くんが反応したのが分かる。
 って、ぶっ殺すって!いやいや、それダメだから!!
 しかも獄寺くんは、少しだけ嬉しそうな表情で爆弾をその手に持って、準備万端状態だ。

「10代目!!!」

 そんな状態でツナを呼ぶけど、ツナは嫌そうな顔で振り返るだけで、きっと獄寺くんの気持ちには気付いてないだろう。

 だって、嬉しそうな表情で片目瞑って手を左右に振っても伝わらないと思うよ。
 案の上ツナは、複雑な表情をしているのが見えた。

「ちくしょーリボーンめ〜〜〜!こうなったら10年バズーカだもんね」

 その瞬間聞こえてきたのは悔しそうなランボくんの声とボフンと言う爆発音。
 驚いて振り返った先には、10年後のランボくんの姿。

「やれやれ、10年後のランボがやるしかねーな」

 って言いながその手に持ってるのは、子供ランボくんが今まで持っていたミサイルランチャ。

「最後はロケット弾だ」

 続けて聞こえてきたのはリボーンの武器の名前を言う声。
 それにギョッとして振り返った瞬間、聞こえてきたのは獄寺くんの声だった。

「果てろ!」
「サンダーセット!」

 10年後のランボくんの声と同時に、辺りを稲妻が走る。
 獄寺くんのダイナマイト。リボーンのロケット弾。そして、10年後ランボくんの必殺技の電気をまとったミサイルがツナと山本に向けて放たれた。

「おいおい……」

 流石の山本もその状況にかなり驚いてその表情は硬い。
 ツナはやっぱり複雑な表情で面倒くさそうにため息をつくだけだけど……

「ツナ!!山本!!!」

 俺はそんな中で二人の名前を呼ぶことしか出来ない。
 その瞬間、辺りを爆音と爆風が響き渡る。
 バラバラと地面が受けた衝撃が砂煙となって辺りに降り注ぐ。

「ツナ!!山本!!」
「10代目―!!大丈夫ですか、10代目!!」
「あそこだぞ」

 余りの状況に、二人の安否が分からずに名前を呼ぶ俺の声に重なって、慌てている獄寺くんの声が聞こえてくる。
 そんな俺達に、冷静なリボーンの声。
 確かに、リボーンが指差した方に人影が……

「ツナ!山本!!」

 かなり爆風だった所為か汚れてるけど、無傷の二人がそこに立ってるのに、ホッとする。

「あ〜っ、やっぱりツナの動きには負ける……」
「あれが避けられるなら、山本も十分だと思うけど」

 何て、暢気な声が聞こえてくるんだけど、何?何でそんなに余裕そうなの、二人とも?!
 普通の人なら、無傷ってありえないから!!

「試験合格だ。おまえも正式にファミリーだぞ」
「サンキュー」

 無傷でその場に立っている二人、いや山本にリボーンが試験合格を言えば嬉しそう礼を言う山本。
 そんな山本に、ズンズンと近付いていく獄寺くんに気付いてちょっとだけ焦った。
 しかも、胸倉掴んでるし……
 だけど、下から見上げるように言われた言葉は

「よくやった」

 褒め言葉だった。

 晴れ晴れしい顔で言われた獄寺くんの言葉に、ホッと胸をなでおろす。
 このまま殴り合いになるかと思って、本気で焦ったんだけど……

「あれ位避けられねぇようじゃ、10代目の部下としては認められねぇけどな。10代目と同等に渡り合ったんだから、ファミリーとして認めねーわけにはいかねえ。でも10代目の右腕はオレだからな、お前はケンコー骨だ」

 だけど、続けて言われた言葉に、思いっきり複雑な表情になってしまうのは止められない。
 えっと、ケンコー骨って……
 それに、何でそこまで右腕にこだわるんだろう??

「け…ケンコー骨!?前から思ってたけど、獄寺って面白ぇーヤツな!」

 ケンコー骨呼ばわりされて、一瞬驚いていたけど、言われた事に、大笑いして獄寺くんの肩に腕を回す山本を俺はすごいと思うんだけど

「だがツナの右腕を譲る気はないね。おまえは耳たぶってことで」

 その認識は、大爆笑した後に真剣な顔で言われた内容で更に強くなった、いや、言ってる事は獄寺くんと変わらないんだけどね。
 って言うか、山本が黒く見えるのは気の所為?


 その後暫くどっちが何かだと言い合う二人は、しっかりと意気投合していたように見えた。
 そして、言い合いを終えてから、何事も無かったように部活に向かう山本を、俺はもう既に一般人とは言えなくなっていたのは言うまでもないだろう。