ボンゴレさんのお仕事は迅速で、次の日には部屋が元通りになっていた。
 一体、何時作業したのかさえ気付かなかったんですけど……
 俺としては、部屋が元通りになったので、良しとします。





 今日は、日曜日。
 のんびりお昼まで寝て過ごしていた俺は、家の呼び鈴を連打している音で叩き起こされた。

「な、何??」

 非常識なその音に飛び起きて、辺りを見回す。

 もっとも、自分の部屋は変わりない。
 連打されている音は、直ぐに止まったから母さんが出たんだろう。
 それにしても、あんなに呼び鈴を連打しなくってもいいと思うんだけど……
 いや、昼まで寝てた俺も悪いのか?

 きっと、神様が早く起きろと言ってるんだろう。
 仕方なく起き出して、パジャマのまま部屋を出る。

「おはよう、母さん……」
「おそうよう、ちゃん。お休みだと言っても、もうお昼よ」
「うん、呼び鈴の音で目が覚めた……誰が来たの?」

 お昼ごはんの準備をしている母さんに朝の挨拶をすれば、『おそうよう』で返されてしまった。
 うん、確かにもうお昼だから、おはようって挨拶は間違いかもしれないけど……
 だからって、そんな楽しそうに言わなくっても……

「多分、リボーンくんのお友達だと思うんだけど……ドアを開けた瞬間、家の中に飛び込んで来てそのままツっくんの部屋に猛ダッシュしちゃったのよ」

 それで、素直に起きた理由を口にして質問すれば、ちょっとだけ困ったように母さんが口を開く。

 リボーンの友達?リボーンに、友達?!
 えっと、それって、どんな??
 母さんがリボーンの友達って言うんだから、きっと小さい子供だったんだろうって事は想像できるんだけど……
 だけど、リボーンに、普通の子供の友達が出来るとは思えない。

 そう思った瞬間、ドカーンと言う爆発音が直ぐ近くで聞こえて来た。
 驚いて窓の外を見れば、確かに爆発の煙が!!

「あらあら、賑やかね」

 って、母さんそれだけですむ問題じゃないから!!
 一体、リボーンの友達って、どんな子なんだろう……


 って、思ってたら、直ぐに会う事が出来た。

「あっ!ちゃんいい所に!!」

 母さんに何時までもパジャマで居ないで着替えてきなさいって言われて、部屋に戻って着替えてから母さんの手伝いでもしようと思っていたら、その母さんに名前を呼ばれる。

「どうしたの?」
「リボーンくんのお友達みたいなんだけどね、喧嘩しちゃったみたいなのよ。ちゃん、仲裁に入ってあげてちょうだい」

 呼ばれて、質問すれば母さんのズボンを掴んだ小さな牛柄の繋ぎ服を着たアフロヘアーって言うのか、そのアフロの髪に牛の角を生やした男の子が居た。

 だけどその姿はすっごくボロボロなんだけど、何かあったのかな?

「仲裁に入るのはいいんだけど、どんな喧嘩したの?」

 と言うか、どんな喧嘩すればこんな姿になれるんだろう……
 そ、そう言えば、先の爆発音って、もしかして……

「さぁ、そこまでは分からないのよ。母さん、ごはんつくるからお願いね」
「……分かった。俺、手伝わなくっていいの?」
「大丈夫よ。その子の事をお願いね」

 ボロボロの原因が思い当たって少しだけ遠い目をした俺は、小さくため息をついて母さんに返事を返した。
 それから俺の質問に笑顔で返事を返してから、母さんがキッチンへと入っていく。

 そうするとその場に残されたのは、俺と小さな男の子だけで、まだ泣いている男の子にどうしたものかと考えた。

「ほら、男の子がそんなに泣いちゃダメだぞ。取り合えず、鼻水と涙を拭かなくっちゃな」

 その場でぐっと何かを耐えている男の子に、俺はその場にしゃがみこんで男の子の目線に合わせて持っていたハンカチを取り出してその顔を拭いて上げる。

「うん、綺麗になった。ほら、後は鼻かんじゃっていいよ」

 そう言ってハンカチを手渡せば、男の子がコクリと頷いて俺のハンカチで鼻をかむ。

「あれ?もう起きてるの?」

 その瞬間、声が降ってきて驚いて振り向けばツナが階段から下りてくる所だった。
 って、その言葉も酷いように思うんだけど……いや、何時もの俺を考えたら仕方ないかもしれないんだけどね。

「うん、おはよう、ツナ……って、あれ?」

 ツナの言葉に複雑な気持ちになりながらも、それでも返事を返し他瞬間、ぎゅっと俺の足に抱き付いてきた男の子に少しだけ驚いてしまう。
 あれ?何かこの子怯えてるように見えるんだけど……

「ねぇ、なんでそいつがに抱き付いてる訳?」

 更に、ツナが不機嫌な声で質問してきた瞬間、男の子がビクリと震えたのが分かった。
 明らかに怯えちゃってるだけどんだけど、この子!!一体、何があったんだろう??

「ツナ、この子の事知ってるの?」
「先、オレの部屋に飛び込んできたからね」

 って、ツナさんがめちゃくちゃ不機嫌そうなんですけど、この子一体何やらかしちゃてんの?!
 ツナの言葉に更に男の子が怯えたように、ギュッと抱き付いてくる。

「ねぇ、いい加減から離れてくれる?」

 い、何時の間に!

 そんな男の子に困っていたら、直ぐ傍でツナの声が聞こえてかなり驚いた。
 しかも、無理やり引っ付いているその子を俺から引き離そうと頭に手を置いてニッコリと問いかけるように口を開くけど、でもその笑顔が滅茶苦茶怖いです、ツナさん。
 案の上、折角泣き止んでいたのに男の子はまた泣き出して、俺の服で涙を拭くように首を左右に激しく振る。

「ツ、ツナ、子供のする事だから……」
「甘いよ、!子供の内からしっかりと教育しとかなくっちゃロクな大人にならないんだからね!!」

 いや、確かに教育は大事だけど、何もそんなに無理やり引き離そうとしなくっても……

 しっかりと俺の足に抱き付いているから、その力が強くなるとちょっとだけ足が痛いんですが……
 古傷がある足の方だから、流石に辛いです……

「ランボだったっけ?今すぐから離れろ!じゃなきゃ、容赦しないよ」

 足の痛みに、ちょっとだけ顔をしかめてしまったのに気付いたんだろうツナが、本気の殺気を放ち脅しの言葉を口にする。
 それにビクリと大きく震えて慌てて男の子が俺から離れてくれた。

、大丈夫?」
「うん、ちょうど傷痕の場所だったから……ちょっと……でも、大したことなくって、大丈夫……って、ツナ!子供相手だよ!!」

 俺の言葉を最後まで聞かずにツナが男の子に向けて更に殺気を向けるのに、慌ててそれを止めるように腕を掴んだ。

「言ったでしょ!子供の内からしっかりと教育しとかないと!それに、に気安く触れるなんて、許せないからね」

 いや、あれ?後の言葉って、どう言う意味が??

「ツナ、意味分からないから!それにほら、母さんから頼まれてるんだよ」
「……また母さんは、余計な事を……」

 何で俺に気安く触れるのが許せないのかは分からないけど、母さんから子のこの面倒を頼まれているんだから、放って置くことは出来ない。
 そう言う事情だからと口を開いた俺に、ツナが深く深くため息をついた。

「どうせ、『リボーンくんのお友達で喧嘩してるみたいだから、仲裁に入ってあげてちょうだい』とでも言ったんでしょう、母さんの事だから」

 そして続けられた言葉は、まるでその場で聞いていたかのように正確な母さんの言葉。
 あれ?あの時ツナ居なかったよね?

「聞いてたの?」
「聞いてないよ。でも、大体の想像は付くでしょ、母さんの性格を考えれば」

 思わず疑問に思って首を傾げて問いかければ、ため息をつきながらツナが返事を返してくる。
 う〜ん、そう言うもんなんだ……でも、母さんの事を考えれば、分かるのかな??

「でも、それ違うから!こいつ、ボンヴィノファミリーのヒットマンで、リボーンの事を狙ってるみたいだよ」
「えっ?!この子もヒットマンなの??」

 こんな小さい子が……って、リボーンはこの子よりも小さいんだけど……
 ファミリーって事は、やっぱりマフィア関係って事なんだよね?マフィアって、こんな小さい子にまで、そんなことさせるんだ……

、それは、が考える事じゃないよ。それに、こいつ等見てると嫌々やってる様には見えないから、が気にする事なんかないんだからね」

 ちょっとだけマフィアに対して反感を持っていた俺に、その心を読んだかのようにツナが声を掛けてくる。

 俺って、そんなに分かりやすいんだろうか?
 ちょっとだけ心を読まれた事に、疑問に思えばまたしてもため息とつかれてしまった。

「ツナ?」

 何でため息を疲れたのか分からなくって、ツナの名前を呼べば普通に笑顔で返されてしまう。

「何でもないよ、それよりも、こいつどうするの?」
「どうするって……」

 折角泣き止んだのに、またしても泣いている男の子を前に、途方にくれる。

「こいつもイタリアから来てるみたいだから、こっちには頼れる人は居ないと思うよ」

 そうだよね。ファミリーって言ってたんだから、やっぱりお家はイタリアだんだよね……
 どうするも何も、本気でどうすればいいんだろう。

「ツっくん、ちゃん、ごはんできたわよ。リボーンくんにも声を掛けてあげてね」
「はーい!あっ!母さん、もう一人増えても大丈夫?」

 どうするべきかを考えている中、キッチンから顔を出した母さんがご飯が出来た事を知らせる。

「ああ、あの男の子の分ね、大丈夫よ、ちゃんと用意しておいたわ」

 それに質問すれば、当然と言うように返される母さんの返事。う〜ん、流石だ。

「ちょ、ちょっと!」

 俺と母さんの会話に、慌てたようにツナが名前を呼ぶけど、だからって、小さい子供を追い出す事も出来ないから、仕方ないと思うんだけど……

「食事は大勢でした方が楽しいものね。えっと、お名前は?」
「オレっち、ランボさんだもんね!」
「そう、ランボくん。お昼食べていってちょうだいね」

 慌てているツナとは違って、母さんが男の子に名前を聞けば、泣いていた男の子が元気良く返事を返した。

 へぇ〜、ランボくんって言うんだ……やっぱり、変わった名前だと思うのはきっと俺だけだよな……



「母さん隣に回覧板もって行くわね、みんなで仲良くしてるのよ」

 お昼ごはんは、スパゲティとサラダ。

 母さん、俺、起き抜けなんですけど……
 食べられない訳じゃないけど、もうちょっとあっさりした物が食べたかったと思うのは、贅沢な事でしょうか?
 そんな事を考えている中、母さんが回覧板を持って部屋から出て行く。
 それを見送ってから、思わずため息をついた。

 リボーンは何時も通りなんだけど、ランボくん固まっちゃてるように見えるのは、俺の気の所為?
 そのお陰か、滅茶苦茶シーンとした空気が流れる。って、リボーン全く気にせず食べてるし……

「えっと、リボーン、ランボくんって友達なんだよね?」
「知らねーぞ、こんなヤツ」

 って、俺が声を掛けた瞬間即答で返されちゃいました。
 その瞬間、ランボくんが手に持ってたナイフをリボーンに向けて投げるのが目に入って一瞬慌てたけど、リボーンは全く顔を動かすことなく、食べていたフォークでそのナイフを弾く。
 弾かれたナイフは、ランボくんの額に……
 そりゃ、ナイフが額に当たれば痛いだろう。当然の如く、ランボくんは火が点いたように泣き出してしまう。
 そして、椅子から降りて、部屋の隅の方へ行くと何かをゴソゴソと取り出した。
 って、取り出したのはバズーカ!!それを自分に向けて撃とうとしているのに驚いて、俺も椅子から立ち上がってランボくんの傍へと急ぐ。

 大体、こんな大きいのを何処から取り出したんだろう?
 それは分からないけど、兎に角危ないと思ってランボくんを庇ったのがいけないのか?!

!!」


 慌てたようにツナが俺の名前を呼んで、それから良く分からないままに、10年後の世界へと来てしまった。
 色々説明してもらって、ランボくんが持っていたのが10年バズーカと言うもので、それに撃たれた者は、10年後の自分と入れ替わってしまうらしい。

「……なんか、すごい体験しちゃったんだけど……」
「こっちは、心臓に悪かったんだけど」
「う〜っ、ごめん……でも、とっさに体が動いて……って、また!!」

 5分経って戻って来た俺に、ツナが抱き付いて来て、何時ものように説教を受けた後、またしてもランボくんがあのバズーカを持ち出して自分に向けて撃った。
 ドオンと言う音共にモクモクと煙が広がり、その中から出てきたのは……

「やれやれ、どうやら10年バズーカで、10年前に呼び出されちまったみてーだな」

 伊達っぽいお兄さん。えっと、胸元が見えてるんですけど……
 牛柄のシャツの上に黒のジャケットを着てるけどボタンは2個ぐらいしか留められてないので先も言ったけど、胸が見えてます。

「えっと、この人……」

 先程の説明を考えれば、10年後のランボくん??
 えっと、ランボくんって一体幾つ??

「お久しぶり、若きボンゴレ10代目とさん。10年前の自分が世話になってます。泣き虫だったランボです」

 やっぱり、ランボくんの10年後?!って事は、どうがんばっても10代のはずだよね?
 なんで、こんなに大きくなってるの?ツナも大きくなってたけど、子供の成長って……

「よぉ、リボーン。みちがえちゃっただろう?オレが、おまえにシカトされつづけたランボだよ」

 俺とツナに挨拶してから、10年バズーカの説明をしたランボくんは、続いてモクモクとご飯を食べているリボーンへと声を掛ける。
 だけど、声を掛けられたリボーンは全く反応を返さずご飯を食べ続けてるんですけど……

「ふーん、あれがあの泣き虫なガキだったなんて……すごいバズーカだね。先は、の10年後もここに居たから信じるしかないけど、信じられないんだけど……」

 ポツリと呟かれたツナの言葉に、俺はそちらへと視線を向ければツナが複雑な表情でランボくんを見ていた。
 けど、その当人であるランボくんはリボーンにシカトされてポケットから、角を取り出す……
 あれ?あれって、小さなランボくんも付けてたヤツだよね??

「やれやれ、こうなりゃ実力行使しかねーな。10年間でオレがどれだけ変わったか見せてやる」

 そして、取り出したそれを小さなランボくんが付けていたように頭に付けた。

「サンダーセット」

 その瞬間、ピカッと稲妻を感じたのは気の所為?

「オレのツノは100万ボルトだ」
 稲妻を感じた瞬間、ランボくんの声が聞こえて視線をそちらへと向ければ、角が光ってます!!
 ありえませんから!!

「死ね、リボーン!!電撃角!!!」

 その電流を帯びた角で、まるで牛が突進するようにリボーンへと向かっていくランボくんに、あろう事かリボーンはまたしても持っていたフォークをその頭に突き刺した。

「が・ま・ん」

 フォークを刺されたランボくんの表情は下を向いているから分からないんだけど、ポツリと呟かれた言葉と同時に、『うわぁああ』と言う悲鳴と共に家を飛び出して行く。


 えっと、小さいランボくんとあんまり変わってないような気が……
 リボーンはリボーンで何事もなかったように食べ続けてるし……

ちゃん、仲裁に入ってあげてって言ったでしょう!」

 呆然としている中、突然名前を呼ばれて怒られてしまう。
 どうやら、お隣さんと話をしていた所にランボくんが出てきたらしい。

「ランボくん、リボーンくんと友達になりたいんですって」

 と泣いているランボくんの事を話す母さんに、俺は思わずチラリとランボくんに視線を向ける
 も、もしかしてリボーンの気を引きたかったからやってたのかな、今までの行動って……

「なんてウソだよーん!!死にやがれー!!」

 ちょっと信じられないなぁと思っている中、ランボくんがゴソゴソ何かを取り出した瞬間、それをリボーンへ向けて投げる。

 って、それって、手榴弾?!
 投げた物の正体が分かってギョッとした瞬間、リボーンが食べ終わったお皿を手に持って、見事にその手榴弾を弾き返した。
 そして弾き返したものは全部ランボくんへと勢い良く戻って、開いている窓からランボくんが勢い良く飛んで行き手榴弾が勢い良く爆発していく。
 響きわたる爆音なんて全く気にした様子もなく、リボーンは持っていたお皿を母さんへと差出して一言。

「ママン、おかわり」

 って、それでいいんでしょうか?


 それから、一本の電話がかかってきてランボくんは家に居候する事になった。
 電話の相手は、父さんだったみたいだけど、ランボくんが来た事なんで知ってるんだろう??