山本の屋上飛び降り事件の放課後、結局俺はツナに保健室から出して貰えずその日の授業は受けられなかった。

 うん、無茶した俺が悪いんだけど、屋上から飛び降りようとした山本が一番悪いと思うんだけど……
 って、そんな事口に出して言える訳もないんだけどね……
 まぁ、今は山本が笑ってくれてるから、こうやって心の中で文句が言えるんだけど、そうじゃなかったら文句も言えなかっただろう。

 二人がどうやって助かったのかは分からないけど、本当に無事でよかった。
 多分、リボーンが撃ったあの弾が何か関係していると思うんだけど、あれが前にリボーンが話してくれた死ぬ気弾だったのかな??

 一瞬だけど、ツナの額に炎が見えたような見えなかったような……
 うん、気の所為だよね、きっと……






「あれ?お客さん??」

 何時ものように、問答無用でツナが俺の事を抱えたまま連れ帰ってくれたので、近所の人達に暖かな言葉を頂いて漸く帰り着いた家の玄関で降ろしてもらった俺は、その玄関に見かけないサイズの靴を見付けて首をかしげた。
 えっと、学校指定の靴なのは間違いないんだけど、何でここにあるんだろう?

「お帰りなさい、ツっくん、ちゃん。それがね、リボーンくんが並中の女の子と一緒に帰って来たんだけど……」

 疑問に思って首を傾げた俺に、母さんがキッチンから顔を出してチラリと2階へと視線を向けながら説明してくれる。

「ただいま、母さん……並中の女の子?誰だろう??」

 母さんの言葉に挨拶を返してから、同じように視線を2階へと向けて首を傾げた。

 2階に視線を向けた母さんの行動から、お客さんをツナの部屋に入れちゃったんだと気付いて思わず苦笑をこぼす。
 ツナが居ないのに、勝手に部屋に入れるのはどうかと思うんだけど………

「ほら、リボーンくんが連れて来たから、一応ツっくんの部屋に通したんだけど……」
「母さん知らない女の子を勝手にオレの部屋に通さないでよ」

 予想通りの母さんの言葉に、ツナが不機嫌そうに盛大なため息をついた。

 まぁ、普通はそうだよね。

 しかも、ツナのファンの子とか普通に居るから、そんな事したら大変な事になっちゃいそう。

「でも、今はリボーンくんの部屋でもあるでしょ……ほら、リボーンくんのお友達みたいだったから……」

 ツナに怒られて、母さんがモゴモゴと言い訳した。
 確かに、リボーンが連れて来たのなら、リボーンのお客さんって事で、今ツナの部屋に居候しているんだからそれは間違いないかもしれないんだけど……

「だからって、オレの許可なく部屋に通さないでよ!」
「ごめんなさい!それでね、飲み物を準備したから、ツっくん持って行ってくれないかしら……」

 言い訳した母さんに再度盛大なため息をついてツナが文句を言えば、母さんが素直に謝罪してオズオズとお願い。
 まぁ、ツナはこれから部屋に行くんだから、ついでといえばついでだけど、ああ、ツナってば不機嫌そうだ。

「えっと、俺が持っていこうか?」

 そんなツナの様子に母さんが気の毒になって、自分がその役目を引き受けると言うように口を開けば、またしてもツナに盛大なため息をつかれてしまった。

が持っていく必要はないよ。オレが持っていくから……それに、を2階に一人で上がらせる気はないって何時も言ってるでしょ!」

 そして続けて言われた言葉に、シュンとしてしまっても許されると思うのだ。
 だって、申し出たそれを逆に叱られるってどうなんでしょうか?

 そりゃ、階段上るのは俺にとって大変な作業だけど……

「有難う、ツっくん!はいこれ!ちゃんとツっくんの分もあるから、一緒に上でくつろいでらっしゃいね」

 ツナの言葉に、母さんが嬉しそうに持っていたそれをツナに押し付ける。
 あれ?俺も一緒に上に行けなの??

「……分かった。はまず荷物を部屋に置いて来ていいよ。来てる人を確認してからどうするか考えるから……」

 母さんの言葉に、どうしたものかと考えていた俺に、ツナがまたため息をついてしっかりと言い渡していく。


 う〜ん、絶対に階段を一人で上るなって事だよね……階段を上って行くツナを見送ってから、言われたように一度部屋に入る事にする。
 それから、部屋に入ってどうしたものかと考えて、一応制服を着替えるかとYシャツを脱いだ瞬間、ノックの音。

、入るよ」

 返事を返す前に、ドアが開いてツナが入ってくる。

「ツナ、誰が来てたんだ?」

 入ってきたツナは一瞬俺から顔を逸らしたけど、そのまま中に入ってきてベッドに腰を下ろして深くため息をつく。
 そんなツナに、TシャツとGパンと言うラフな格好に着替えた俺は声を掛けた。

「笹川京子」
「京子ちゃん?だったら、問題ないよね」

 俺の質問で帰って来たその名前に、俺が口を開けば更にツナの眉間の皺が深くなる。
 あれ?何でそんなに複雑な表情をしてるんだろう?

「何かあったの?」

 疲れた様子のツナに、訳が分からなくって再度質問。
 だって、京子ちゃんはツナのファンクラブとは関係ないから問題ないはずなのに、何でそんなに困った表情してるんだろう??

「……京子ちゃん、リボーンと話が合うらしくって……」
「へぇ、それはちょっと意外かも……」

 俺の質問に、ゆっくりとツナが口を開く。
 言われた内容に、俺は少しだけ驚いた。

 京子ちゃん大人しそうに見えるけど、実はワイルドな人なんだろうか……?

「しかも、オレが部屋に入った瞬間ロシアンルーレットを嬉々として始めちゃって……」
「えっと、ロシアンルーレットって確か……拳銃に弾を一発だけ入れてシャッフルして、自分の米神に当てて撃つってヤツだよね?そ、それを京子ちゃん、リボーンとしちゃったの??!!」

 ほ、本当にワイルドと言うか何て言うか、怖いモノ知らず?
 いや、まさか子供が本物の銃を持ってるとは思わないから、仕方ないかもしれないけど……相手って、あのリボーンだし……

「一回目は、勝負がつかなくって今は二回目……」

 淡々と状況を説明するツナの言葉を遮るように銃声の音が響き渡る。

「って、やっぱり本物でやってたの!!」
はそこに居て、様子はオレが見てくるから!」
「ツナ!」

 慌てて部屋を出ようとした俺を無理やりベッドに座らせてから、ツナが部屋のドアに手を掛けた瞬間、そのドアが外から破壊された。


 って、あの、京子ちゃん???

 そして、その壊されたドアの前に立っていたのは、下着姿の京子ちゃんで、その額には炎が見える。

「私、二人が幸せになるところを見ないと、死んでもしにきれない!!」

 そして、言われた言葉は訳の分からない内容。
 えっと、誰と誰が幸せになればいいんだろう……しかも、何で下着姿で、額に炎が……

「京子の後悔は、おまえ等みてぇだな」
「リボーン!どう言う事、京子ちゃん一体どうしちゃったんだよ!」

 新たな声に、俺はその声の主に状況の説明をしてもらおうと声を掛けた。

「どうして、ツナくんとくんの部屋が一緒じゃないの!!!」

 だが、続けて言われた京子ちゃんのその言葉に訳が分からずキョトンとしてしまう。


 俺とツナの部屋??
 普通、中学生にもなったんだから、一緒って言う方が可笑しいと思うんだけど……

「……リボーン、お前京子ちゃんに死ぬ気弾撃ったんだな」
「オレは撃ってねぇぞ。京子が自分で撃ったんだからな」

 一人状況が分からない俺を残して、ツナとリボーンが話をしている声が聞こえて来た。
 って、死ぬ気弾って、前にリボーンが話していた……
 じゃあ、山本を助ける時にツナの額に炎が見えたのって、気の所為じゃなかったんだ……


 その間にも京子ちゃんは訳の分からない事を言って、俺の部屋がグチャグチャに〜っ!!

「しかたない」

 京子ちゃんがちょっと触れるだけで部屋の中の家具が壊されていく。
 これって、俺の部屋がツナと一緒じゃなかったから?
 そんな理由で、部屋を破壊されるのは嫌だ!!

「あれを使うしかないな」

 グチャグチャになっていく部屋に俺が頭を抱え込んでいる中、リボーンが持っていたアタッシュケースを開く。

「リバース1t」

 ケースの中に入っていたのは大きなハンマー?

「リ、リボーン?」

 今、1tとか聞こえたのって、気の所為じゃないよね?
 しかも、リボーンがそれをズルズルと持って行く後の床がバキバキと壊れていくのが見えるのは気の所為にはどう見ても見えない。

「さっさとこの状況を収めろよ!」
「分かってるぞ」

 その間京子ちゃんの相手をしていたツナが、リボーンへと声を掛けた瞬間、それを大きく振りかぶった。

「ちょ、それで京子ちゃんを殴る気……」

 その行動に慌てて止めようとした俺の声も空しく、リボーンが容赦なく京子ちゃんの頭をそれで殴りつける。
 その瞬間、京子ちゃんの額から一つの銃弾が……

「銃弾が……」

 床にコロコロと銃弾が転がった瞬間、まるで糸の切れたマリオネットのように京子ちゃんがパタリと倒れてしまう。
 それに気付いて、俺は慌てて京子ちゃんに俺のタオルケットを被せる。

 後に残ったのはグチャグチャになった俺の部屋と倒れてしまった京子ちゃん、それから疲れたように床に座り込んだツナ……

「リバース1tには死ぬ気弾を無効化する力がある。オレにしかできない技だけどな」

 そして、軽々と1tのハンマーを肩に担ぐように持っているリボーンが状況の説明をしてくれた。
 いや、そんな事が聞きたかった訳じゃないんだけど……

「これで、死ぬ気タイムを夢だったと思うはずだ」
「なら初めから使えよ!の部屋が大変な事になっただろう!!」

 俺も、疲れてその場に座り込んだけど、ツナがリボーンに文句を言っている声が聞こえてきて思わず苦笑をこぼしてしまった。


 えっと、俺、今日は何処で寝ればいいんだろう……
 ツナの部屋に泊めてもらえるかな……

 それにしても、恐るべし死ぬ気弾。

 あれ?でも、ツナは服着てたよね?
 何で京子ちゃんは下着姿だったんだろう……?

 それにしても、女の子の下着姿見せられたのに、こんなに落ち着いていられる俺とツナもすごいとは思うんだけど……
 中学生男児として、これでいいんだろうか?
 せめてもの救いは、京子ちゃんが夢だと思ってくれると言う事だろう。
 やっぱり、同級生の男に下着姿を見られたなんて、女の子にとってはショックだろし、うん。


 そして今最大の問題は、どうやって京子ちゃんに服着せるかだよな……
 母さんに頼む訳にもいかないし(理由を説明出来ない)、俺かツナって訳にもいかない……

「服はオレが着せてやるから、綱吉が京子を家に送ってやれよ」

 どうするべきかを考えていた俺の心情を読んだかのように、リボーンがきっぱりと口を開く。
 えっと、それもそれでどうかと思うんだけど……俺やツナが服を着せるよりは遥かに状況としてはマシ。

「何でオレが!!」
「なら、京子をここに泊めるのか?」

 だけどツナはそれが気に食わなかったようで文句を言えば、逆にリボーンに質問されて言葉に詰まった。
 確かに、俺だと京子ちゃんを送って行くのは無理だから、ツナが送って行くのが一番だけど……
 流石に京子ちゃんを家に泊める訳にはいかないので、リボーンのその言葉にツナは言葉に詰まって、しぶしぶ頷く。

 それから、京子ちゃんの服をツナが持って来て、それをリボーンが着せてから京子ちゃんをツナが送っていった。

「……俺は、その間に少しでも部屋を片付けよう……」

 二人を見送ってから、自分の部屋に戻って深く深くため息をつく。
 これの修復代金って、京子ちゃんから貰う訳にもいかないので、俺の自腹ですか?!
 折角コツコツと貯めた貯金で、足りるだろうか?
 そんな心配をしながら、せっせと部屋を片付ける。

 勿論、その日は自分の部屋で寝る事が出来なかったので、ツナの部屋にお泊り。
 階段上るのは、ちゃんとツナに抱えられて上りました。
 そして唯一の救いだったのは、めちゃめちゃになった部屋の修復は、ボンゴレが持ってくれると言う事。
 それだけは、本当に助かりました。