本気で、何を言われたの分からないんですけど……

 えっと、俺をくれればって、何ですか?
 風紀委員に役に立つなら、俺じゃなくてツナの方だと思うんですが
 俺なんて貰っても、足手纏いにしかならないと思うんですけど……


 足手纏いならまだ救いで、邪魔にしかならないんじゃなかろうか……。
 委員長さんも、滅茶苦茶物好きな人かもしれない。

 だって、俺なんて、何の役にも立つとは思えないんだから……








「何を、仰ってるんですか?」

 委員長さんの言葉に、ピクリと反応したのはツナで、殺気だった表情で委員長さんを睨みつけながらの言葉は敬語なのに、めちゃめちゃ怖い。
 まるで、『誰が、そんな事許すか!!』ってそう聞えたのは俺の耳が可笑しいんだよね、きっと。

「もう一度言った方がいいなら、繰り返してあげるよ」
「聞くつもりはありませんけど!」

 質問したツナの言葉に、不敵な笑みを浮かべて委員長さんが言えば、ツナが噛み付くような勢いで言葉を返した。

 えっと、俺としては、冷静に考えた方がいいんだよな。
 委員長さんが何でそんな事を言い出したのかは分からないけど、きっと理由があるはず!!
 キョロキョロと辺りを見回せば、立派な書斎机の上に置かれている大量の書類が目に入った。

 うん、きっとこれが理由の筈!

「俺を貰っても多分、役に立たないと思うんですが……書類整理も風紀の仕事も俺なんかよりツナの方が役に立つと……」

 風紀の仕事は、不良を相手にするものだから、俺なんかでは役に立たないのは分かりきっている。
 だったら、溜まっている書類整理に必要なんだろうなぁと思ったんだけど、それも俺なんかよりもツナの方が役に立つと思うんですけど……。

 そう思って口に出した言葉に、一斉に3人の視線が自分に向けられた。
 えっ?あれ?何でそんな驚いたような顔で俺のこと見てくるんだろう??

「俺、変な事言った??」

 怪訝な表情を向けられて、しかも人の顔を見た瞬間3人同時にため息をつかれてしまった。
 何で、そんな疲れたようなため息を……

「……本当にダメダメだな」

 やれやれと言うように、リボーンが呟いたそれにやっぱり、自分が何か変な事を言ったって事だけは分かったんだけど、何が可笑しかったのかはさっぱり分からない。

「何だか、気が削がれたよ……もういいから、君達さっさと帰ってくれる?」

 首を傾げてみんなを見ていた俺に、委員長さんが深い深いため息をついて呆れたように書斎机へと歩いて行く。


 う〜ん、何でそんなに呆れられているんだろう?
 それが、俺にはさっぱり分からないんだけど……。

「そうだ、それは君にあげるよ」

 そして、席に座ってから思い出したと言うように言われた言葉。
 えっと、それって多分これの事だろうか?
 テーブルの上に置かれている紅茶を手に持って、思わず首を傾げれば委員長さんがコクリと頷いてくれた。

「えっと、でも……」
「まだ沢山あるからね、気にしなくてもいいよ。そんな事より、さっさと出て行ってくれる。群れてるとみなして咬み殺したくなるんだけど」

 それを手に持って、困惑している俺に委員長さんがそう言って、お昼休みと同じようにトンファーを取り出して俺達に見せる。
 あう、どうして昼と同じ事が起こってるんだろう……。

 やっぱり、その言葉にツナが反応して、俺は慌てて部屋を後にしようとして困った。
 ド、ドアが壊れてるから、扉が閉められない?!

「さっさと消えてくれる?ああ、ドアは、そのままでも許してあげるよ」

 壊れたドアに、オレが困っていれば、追い討ちを掛けるように委員長さんが口を開いた。
 えっと、その言葉を考えると、このままにしててもいいって事なんだよね?

「し、失礼しました!」

 その言葉に、本気で急いでその場を離れる。
 勿論、しっかりと委員長さんに貰った紅茶を手にして……

 いや、だってくれるって言ったし、置いてくる方が怖かったんです、本気で!!

!何でそんな物貰ってきてるの!!!」

 んで、予想通りツナに怒られました。
 あう、だってくれるって……

「しっかり賄賂を受け取りやがって……」

 って、リボーンまで、しかも、賄賂って何?
 いや、だって、これはただの紅茶なんだけど!!
 賄賂って、俺に貢いでも何の特にもならないと思うんだけど……
 俺が、委員長さんに渡すのなら、まだ分かるような……

「賄賂って……意味違うように思うんだけど……」
「違わねーぞ。本当に、おまえはだめだめだな」

 リボーンの言葉に考えるように呟けば、再度呆れたように深々とため息をついかれてしまう。

「賄賂とかそんなのどうでもいいよ。なんで、がヒバリさんなんかとお茶してたのかが、一番気になるんだけど!」

 あれ?何か初めに戻ってるように思うのは俺の気の所為?

「美味しい紅茶があるって言うのは聞かないからね」

 って、俺の言い訳先に取られた!!

 た、確かに、その理由で納得できないのは、分かるんだけど、必死で考えた俺の言い訳なのに!!

「ねぇ、部屋の前で話してないで、さっさと行ってくれる。目障りなんだけど」

 応接室のドアが壊れている為、俺達は部屋を出た状態で話をしていたので、委員長さんからの呆れたような声が掛けられてしまいました。
 う〜っ、やっぱり、直ぐに離れた方がいいですよね?

「す、すみませんでした……って、ツナ!」
「邪魔みたいだから、さっさと移動した方がいいんだよね。暴れないでよ、

 委員長さんに謝ってその場を去ろうとした瞬間、浮遊感。
 ツナに、突然抱え上げられてしまった。
 あう、昼間は委員長さんに担がれて、放課後はツナに担がれるなんて……。


 ズカズカと歩くツナは本当に不機嫌そうで、やっぱり俺が紅茶貰ったのがダメだったんだろうか……
 でも、紅茶に罪はないと思うんだけど……

「多分、てめーの考えてる事は、見当外れだと思うぞ、ダメ

 複雑な気持ちでそう思っていた俺に、リボーンが心底呆れたというように声を掛けてくる。
 あれ?もしかして心読まれてたの??

「リボーン」
「余計な事は言わなくてもいいよ。それよりも、しっかりと説明はしてもらうんだから、ちゃんと考えておいてね」

 そんなリボーンの名前を呼んだ俺に、ツナが不機嫌な声で言う。
 あう、やっぱりあの話はまだ終わってなかったんだ。
 美味しいお茶で、納得してくれればいいのに……なんで、ダメなんだろう??

「ダメに決まってるぞ。お前とヒバリは、そんなに親しい仲じゃねーみたいだしな」

 ……また心読まれた。
 そうか、うん、そう言えば、俺今日初めてあんなにゆっくりと委員長さんと話したかも……
 そりゃ、確かにそんな相手が行き成り美味しいお茶とか行っても、説得力は皆無だよね。

「騙されてくれる訳ないんだ……」

 そして、それを一番良く知っているツナが納得する訳がない。
 初めから、バカな言い訳をしたと言う事になるのだ。

「だから、ダメダメなんだぞ」

 納得した俺に、リボーンが『やれやれ』と言うようにため息をつく。
 はい、確かに俺がダメダメでした。

!このまま連れて帰るからね」

 本気で自分のお馬鹿さに泣きそうになっていた俺に、ツナがキッパリと口にする。
 えっと、このまま連れて帰るって……

 このまま?!

「ちょっ、ツナ!!」
「聞く耳は持たないよ。大丈夫靴はちゃんと履き替えさせてあげるから、心配しないでいいからね」

 いや、誰もそんな心配してないから!
 だって、このままって、このままなんだよね?!

 俺を抱え上げたまま、家まで帰るって、そうツナは言ったのだ。
 幾らなんでも、人一人抱えてそこそこの距離を歩こうなんて、無茶過ぎると思うんですが

「リボーン。の靴を履き替えさせてあげてくれる?」
「………仕方ねーな……」

 って、ここでも降ろしてくれないんですか?

 そのまま下駄箱まで来たツナは、俺の靴箱から靴を取り出して、リボーンへと声を掛けた。
 迫力あるツナに言われて、リボーンがため息をついてその言葉に従う。

 てっきり靴箱では降ろしてもらえると思っていた俺は、その言葉にギョッとした。

「お、降ろして!自分で履けるから!!」
「言った筈だよ。このまま帰るからって」

 本気で怒っているらしいツナには言っても無駄みたいで、何を言っても聞き入れてもらえない。

「諦めろ、今のこいつに何をいっても無駄だぞ」

 どうしようか本気で考えていた俺に、リボーンが俺の靴を履き替え終わって、ため息を付きながら声を掛けてきた。
 確かに、今のツナに何を言っても聞き入れてもらえないだろう。

 でも、だからって……

「ずっと、俺を抱えたまんまなんて、重いだろう!」
「………そんな心配しなくって大丈夫だよ。は軽いんだから」
「つーか、そんな心配してる場合じゃねーと思うぞ……」

 本気で心配して言った俺の言葉に、靴箱へと俺の上履きを直していたツナが、ちょっとだけ呆れたように口を開き、こっちは本気で呆れ返っているリボーンが盛大なため息をつきながらバカにしたように言葉を投げ掛けてくる。

 いや、それが一番大変な心配だと思うんだけど……
 他に大変な事なんて、何かあるのかなぁ?

「まぁ、そこがのいいところなんだけど……」

 俺を抱えたまま、ツナが自分の靴箱へと移動して行く。
 ポツリと言われたその言葉に、俺は思わず首を傾げた。

 肩に担がれた状態の今の俺からは、ツナの顔を見ることは出来ない。

「ツナ?」
「沢田くん!!明日、バレーの試合出るんだって?!」

 聞き返そうとした瞬間、聞えて来た声。
 後から聞えて来たから相手の顔は見えないけど、えっと、明日のバレーの試合って何の事だろう??

「……一応、球技大会のバレーの補欠選手だからね。選手に怪我人が出れば、否応無しに出なきゃいけなくなるよ」

 声から考えれば、多分女の子に声を掛けられたのだろうツナが、複雑な声で返事を返す。

 そう言えば、今は球技大会の時期だったっけ?
 自分には関係ないから忘れてたんだけど……
 ツナ、バレーに出るんだ。

「応援してるから、頑張ってね」
「……有難う」

 にこやかな声で言われたその言葉に、ツナが礼の言葉を言って、盛大なため息。
 その後足音が聞こえてきたから、きっと声を掛けてきた相手が去って行ったのだろう。

「ツナ、球技大会出るんだ……」
「ああ、仕方ないけどね」

 ポツリと洩らした俺に、ツナが返事を返してくれる。
 仕方ないなんて言ってるけど、頼まれたら断れないのがツナのいい所だもんな。

「うん、俺、応援に行くから!」
「……相手がのクラスじゃない事を祈っとくよ」
「大丈夫!俺のクラスが相手でも、ちゃんとツナを応援するから!」

 久し振りにツナが何かをしているところが見れると、嬉しくなりながら行った俺の言葉に、ため息をつきながらツナが呟くのに、キッパリと言葉を返す。

 うん、自分のクラスと対戦でも問題なし!
 俺が応援するのは、ツナであってツナのクラスを応援する訳じゃないからね!

「あのね、それは嬉しいんだけど、クラスメートの前ではちゃんと自分のクラス応援してよ」
「うんうん、大丈夫!ちゃんとツナの事は心の中だけで応援するから!」

 心配そうに言われたツナの言葉に、素直に頷く。

 俺だって、そこまでバカじゃない。
 だから、ちゃんとクラスメートの前では自分のクラスを応援します。
 元気良く返事を返した俺に、横から盛大なため息が零れた。

 あれ?俺、変な事言ったっけ?

「ツナ?」
「何でもないよ。早く帰ろうって、思っただけだから」
「やっぱり、重いん……」
「訳じゃないからね!早く帰ってにちゃんと説明してもらわなきゃと思ったんだよ」

 自分の靴箱から靴を取り出して、履き替えツナがもう一度ため息をついたのに反応して口を開けば、しっかりと言葉尻を取られてしまう。

「オレも、興味があるぞ」

 って、リボーンが俺とツナの荷物を持ったまま後から付いてきた。
 あれ?何時の間に俺とツナの鞄を……

「って、訳だから。急いで帰るからね」

 爽やかな声で言われたそれに、ただ頷いて返す。
 って、俺はツナに担ぎ上げられたままだから、楽なんだけど……。


 本当に、重くないんだろうか??