結局、訳の分からないままその日の授業も半日受けてない事に気付きました。
委員長さん、もっと早くに起こしてくれれば良かったのに……
帰ったらしっかりと、ツナに勉強見てもらわなくっちゃだよね!
そう心に決めて、今日のお昼もツナと山本と一緒に屋上で食べました。
階段は、ツナにお姫様抱っこされたのが恥ずかしかったけど、屋上で食べたご飯は何時もより美味しかったです。
でも、思うんですが、お姫様抱っこで階段の上り下りする方が危ないと思うのは、俺だけですか?
「で、何でこんな事になってるんでしょうか?」
満足して、昼の授業を全て終えた俺が、家に帰ろうと教室を出た瞬間拉致られてしまいました。
えっと、目の前に居るのは、今日大変お世話になってしまった先輩で、並盛の秩序さん。
「気が変わったんだよ。教えて上げようか、沢田綱吉の事」
優雅に紅茶を飲むその姿に、一瞬見惚れてしまう。
何、何でこの人こんなに綺麗で優雅なの??
「ねぇ、聞いてるの?」
思わず呆然と見惚れていた俺に、不機嫌な声が聞えてハッと我に返る。
「き、聞いてます!多分……」
「どっちなの?」
慌てて返事をすれば、呆れたように聞き返された。
う〜っ、だって、この人と居ると緊張するんだよぉ!!
「あ、あの、ツナの事、教えてくれるって、何をですか?」
ずっと言われているツナの事を教えるって、何を教えてくれるんだろう。
興味がないと言えば、嘘だ。
正直に言えば、ずっと気になっていた事。
「だからそれを教えて上げるって言ってるんだよ、沢田」
て、フルネームで名前呼ばれちゃいました。
この人の癖なのかな?フルネームで名前呼ぶのって……
教室を出た瞬間、学生服を来たリーゼント頭の大きな人が『委員長がお呼びだ』と言って俺を応接室へと案内してくれた。
そして、今の状況に至る。
うん、紅茶入れてもらって、とっても待遇はいいんですが、緊張してて味わう事なんて出来ません。
とっても香のいい紅茶なのにぃ〜っ
今は、ツナの事よりも、出されている紅茶の銘柄が知りたいって言ったら、怒られるんだろうか?
だって、ツナ本人の事を他人から聞かされるのは、正直言って遠慮したい。
知りたいなら、本人から聞くし……
もし聞いて、教えてくれなかったら、それは俺に知られたくないと言う事だ。
「あ、あの、ツナの事を教えてくれると言うのは、その、すごく有難いんですけど、でも、俺が勝手にツナの事なのに、他の人から聞かされるのは……」
「何?知りたくないの?」
知りたくないと言えば、嘘になる。
だって、本当は知りたいと思っているんだから……
でも、本人を無視して聞く事なんて出来ない。
「……知りたくない訳じゃないんです……でも、ツナの事なのに、委員長さんから話を聞くのは……」
「変な子だね。知りたいなら、話を聞けばいいのに」
えっ?!そこで、変な子扱いなんですか??
確かに知りたいけど、話を聞く聞かないだと、別問題だと思うんです。
うん、だから変じゃないと思うんですけど……
「えっと、変、ですか?」
でも、変じゃないと否定する事は出来なくて、恐る恐る聞き返してしまうのは、小心者だからです。
だって、この人に逆らったら、咬み殺されちゃうんだよ!
痛いのには、慣れてるけど、喜んで痛みを受けたい訳じゃないからね!!
「うん、変だよ」
俺の質問に、キッパリと返される言葉。
う〜っ、やっぱり変って言われた。
でも、委員長さんにとって、俺が変な子なのは確定してしまったようなので、これなら心置きなく質問できるかも
「あの、それじゃ、変次いで、質問してもいいですか?」
「何?」
意気込んで、委員長さんに質問すれば、答えてくれるつもりがあるのか、質問で返されました。
聞き返されたって事は、質問していいって事だよね?
「えっと、この紅茶の事おしえてくれませんか?」
いや、だって、すっごく香がいいんだよ、この紅茶!
しかも、ちょっと落ち着いて飲んでみたら、めちゃめちゃ俺好みの味。
紅茶好きの人間としては、何処で買ったのかが知りたいんです!!
「……紅茶の事を聞きたいなんて、本当に変な子……いいよ、教えてあげる」
って、やっぱり変な子なんですね、俺……。
でも、教えてくれるって言った委員長さんの言葉に、パッと期待に満ちた目で相手を見てしまった。
うん、変な子って言われても、仕方ないかも……
きっと、キラキラした目で委員長さんの事を見ていたんだと思う、ちょっとだけ委員長さんが引いてしまったのが分かった。
あの、並盛最強の委員長さんをドン引きさせたのって、俺が初めての人間かも……
「これは、母がお土産で買ってくる紅茶だから、詳しい事は知らないよ。草壁」
って、委員長さんがこの紅茶を準備してくれた人を呼ぶ。
うん、こんなに怖そうなのに、とっても美味しい紅茶入れられるって、尊敬出来るんだけど
「はい、委員長」
委員長さんに呼ばれて、草壁さんが手に何かを持って近付いて来た。
「有難う」
それを当然のように受け取る委員長さんは、人に命令しなれてるんですね。
うん、全然違和感がないんです、何でそんなに当然って言う顔なんでしょうか?!
「はい」
「えっ?」
そして、草壁さんから受け取ったそれを、俺へと差し出してきた。
一瞬何がなんなのか分からなくて、俺は思わず間抜けな声を口に出してしまう。
「何?知りたかったんじゃなかったの?」
俺のその声に、委員長さんが不思議そうに質問。
ああ、これって、この紅茶がそうなんだ……
漸く委員長さんの考えが分かって、慌ててそれを受け取る。
「あ、有難うございます」
礼を言って受け取った瞬間、ピキリと固まってしまった。
な、何てモノを飲んでるんですか!中学生が優雅に飲む代物じゃありませんから、これ!!
さ、最近紅茶は少なくなって食器とかは良く耳にするんですけど……
昔は、とっても高い紅茶で有名だったんだよね。
も、もしかしなくても、このカップも??
「ロイヤルコペンハーゲン!!」
「ああ、知ってるの?こっちではあんまり見ない紅茶だから、どうかと思ったんだけど……母親の趣味でね、そこの物を良く置いてあるんだよ」
って、サラッと何言っちゃってるんですか、この人!!!
そんな凄いティセットなら優雅な筈です、だって、結構な値段だよね、あそこのモノって……
いや、ウェッジウッドやマイセンに比べれば少しは安いかもしれないけど、……でも、ピンからキリまであるのは本当の事。
確かに、有名なのは絵皿や陶器人形だけど……だからって、そんな高級なモノを学校に置かないで下さい!!
「心配しなくても、そんなに高いものじゃないからね。割られたとしても問題ないよ」
って、俺の心を読んだようにサラリと言わないで下さい。
割られても、問題ないじゃありませんから!!
「何で、そんな高級なモノを学校に持って来てるんですか!!!!」
「言ってるでしょ、高いものじゃないよ」
いやいや、そんな問題じゃありませんから!
高い安いは、関係ありません。
人として、それってどうなんですか!!
「そう言う問題じゃありません!割られても問題ないじゃないんですよ!そりゃ、確かに形あるモノは何時かは壊れてしまうかもしれませんけど、だからって、そんな言い方はダメです!だって、これは委員長さんのお母さんが、気に入っているモノで、それを委員長さんに差し上げてるものじゃないんですか!そんな大事なものを、そんなに軽く言っちゃ絶対ダメです!!」
一気に言って、思わずぜーぜーと肩で息をしてしまう。
そして、ハタッと気付きました。
お、俺、委員長さんに何言っちゃってるんでしょう!!
いや、間違った事は言ってないけど、何偉そうに説教してるんだ!本気で、咬み殺されても文句は言えません。
それを証拠に、少し離れた場所で、草壁さんが驚いたような、そして哀れなものでも見るかのように、俺の事を見ちゃってます。
「……本当に面白いね……」
殺される!と思った瞬間、クスリと笑い声が聞えて来た。
えっと、何か、笑われているように思うんですが、気の所為でしょうか?
「い、委員長さん?」
恐る恐る委員長さんの事を見れば、ほ、本当に笑ってるんですけど!!
不敵な笑みじゃなくって、無邪気な子供の笑顔なんですが……
ど、どうしよう、本当にこの人綺麗だから、笑うととっても可愛いんですけど……
って、どうしようじゃなくて……何で、俺はこんなにも笑われてるんだ??
「ねぇ、君は本当に沢田綱吉のモノなの?」
「はぁ?」
一通り笑って満足したのか、委員長さんが俺に質問してきた。
えっと、咬み殺されなかったのは、本当に有難いんですけど、何でそんな質問されてるんでしょうか?
えっと、俺が、ツナのモノってなんですか?俺は、モノじゃないんですけど??
「ねぇ、聞いてるんだけど、君は沢田綱吉のモノなの?」
「えっと、委員長さんの質問の意味が分からないんですけど……」
意味が分からずに質問で返した俺に、委員長さんが一瞬怪訝な顔をした。
えっ?その質問の意味が分からないと、可笑しいの?
でも、本気で意味が分からないんですけど……俺は、綱吉の弟で、モノじゃないから……
「だったら……」
「何で、またを攫っちゃってくれてるんですか!!!」
委員長さんが何かを言いかけた瞬間、バンッと派手な音をさせて扉が開く。
って、扉壊れてるように見えるんですけど、ツナさん!!!!
「……邪魔が入ったようだね」
って、邪魔って何ですか?委員長さん!!
スッとトンファーを構えて迎え撃たないで下さい、ツナは俺の大事な兄なんですから!!!