ため息をつくと幸せが逃げて行く。
ああ、確かに幸せはどんどん逃げていってるかも……。
目の前では、今だ睨み合っている二人が居た。
ツナさん、子供相手に大人気ないとは思うんですが、その相手が普通じゃないから仕方ないかと納得してもう一度ため息をついてしまう。
一体この数時間の間に俺の幸せはどれだけ逃げていったんだろうと、遠い目をしたくなっても許されるだろうか?
母さんから半分の荷物を貰ってキッチンへと戻れば、やっぱり母さんを出迎える前と同じ状況が目の前にあった。
キッチンのしかも食卓テーブルで睨み合っているツナとリボーンなのだから、キッチンに入ればいやでも眼に入る。
そうなると、自然と母さんも二人の存在に気付く訳で……。
「ツっくん帰ってたのね」
先にツナの姿が目に入ったのだろう、母さんがキッチンに入るなりツナへと声を掛けた。
「ただいま、母さん……それから、お帰り」
母さんに声を掛けられて、漸く二人の睨み合いが終了。
ツナは今までリボーンを睨んでいた視線を母さんへと向けて、素直に挨拶をする。
「ただいま、えっと、こっちに居るのは?」
ツナに向けられたそれに母さんはニッコリと笑顔を見せながら、持っていた荷物をテーブルの上に置き、見慣れない子供の姿を見付けて不思議そうに首を傾げた。
って、多分察しは付いてるんだろうけど、やっぱり黒のスーツ来た子供なんて、違和感在りまくりだろう。
「ちゃおっス、オレはリボーンだぞ」
母さんの疑問に、リボーンが素直に名前を名乗る。
そう言えば、今思い出したんだけど、『ちゃお』って確かイタリアでは挨拶の言葉だったよね、確か?
「貴方が、リボーンくん?何もない家だけど、今日から自分の家だと思ってちょうだいね」
リボーンの自己紹介に、母さんが納得して優しく微笑んでみせる。
どうやら、手紙にはちゃんとリボーンの名前が書かれていたのだろう。
それなら、あのチラシに意味はないような気がするんだけど……もしかして、父さんとリボーンは意思の疎通が出来てないんじゃないだろうか?
まぁ、あの独創的な父さんの事だから、確認せずに手紙出していても可笑しくはないだろうなぁ。
そう思ったのは、リボーンのポーカーフェイスにほんの少しだけ驚きの色が見えたらからだ。
父さん、自分勝手に行動するのは、回りに迷惑になるから、控えてください、切実な息子からのお願いです。
「ツっくん、今日から家で面倒見る事になってるから、仲良くしてあげてね」
リボーンの驚きにも気付かないで、ニコニコと嬉しそうに母さんがツナへと問題発言。
どう考えても、ツナとリボーンが仲良く出来るようには見えない。
ここに入って来た時に、あの険悪な空気は気付いていなかったのだろうか?
母さんなら有り得るんだけど、お願いだから、もう少しだけ空気読んで欲しいと思うのは贅沢な望みでしょうか?
「ちょ!そんな話聞いてないんだけど!!」
「ええ、言うの忘れてたのよ」
母さんの爆弾発言に、ツナが慌てて口を開けば、ニッコリと笑顔で返事を返す。
……俺は、本気で母さんを尊敬します。
サラリと笑顔でそんな事が言えるのは、きっと俺の母さんぐらいだと思います、あのツナ相手に!
「何それ!」
当然、そんな笑顔で納得できなかったツナが、聞き返すように口を開く。
うん、気持ちは分かるんだけど、こうなった母さんに何を言っても無駄だと思うよ、俺は。
少しだけツナを気の毒に思いながら、母さんのマイペースに、俺はこっそりとため息を付いた。
「リボーンくんは、イタリアから来てるのよ。良く、一人で来られたわね、偉いわ」
ツナの聞き返しには全く気にした様子もなく、母さんがリボーンの頭をポンポンと優しく撫でて、感心したように口を開く。
いや、ツナの言葉はそのままスルーですか、お母様!そんでもって、リボーンの年で一人で来たって言う時点で、既に何もかもが可笑しいから、普通は!
もう、何をどう突っ込めばいいのか分からずに、俺はただ心の中だけで、母さんに突っ込みをしてしまう。
俺、本当にこの人の息子なんだろうか……いや、顔は本気でそっくりなんだけど、この思考だけはどうしても共感できないんですけど……。
「当たり前だぞ、オレに出来ねー事はねーぞ」
母さんに感心されたように言われて、リボーンは子共扱いされている事を気にした様子もなく、母さんに返事を返す。
「そう、偉いわ。ツナも小さい頃からしっかりしてたけど、リボーンくんの方がもっとしっかりしてるみたいね」
完全にリボーンの事を普通の子供扱いしている母さんは、やっぱり偉大だ。
「ごめん、オレこいつと話がしたいから部屋に行くね」
「そう、早速面倒見てくれるのね、お願いするわ、ツっくん」
そんな母さんとリボーンの微妙に成り立っていない会話に、ツナが割り込んでリボーンを椅子から抱き上げるように抱えてキッチンから2階へと駆け上がって行く。
その後姿に、母さんが感心したように口を開くけど、えっと、面倒見るのはどっちなんだろう、この場合……。
リボーンって、俺達の家庭教師に来たって言ってたから、面倒見られるのはツナの方になるのかなぁ?
う〜ん、それはそれで、ものすごく微妙なんだけど
「母さん、俺もちょっと様子見てくるね。夕飯の準備は……」
「今日は大丈夫よ。ちゃんもリボーンくんの面倒見てあげてちょうだい。二人がリボーンくんの面倒見てくれてる間に、リボーンくんの歓迎用のお料理作っちゃうわね」
「分かった。手がいるようなら、呼んでね」
やっぱり、二人っきりにしてしまうのは、危険だ。
だって、なんて言うのか、水と油?全く交わる事のない状態に陥りそうなんだもん。
そう思って、俺は母さんに声を掛けて自分もツナの部屋に行く事を申し出る。
本当なら、夕飯作る準備を手伝いたいんだけど、それよりも今はあの二人の方が心配だから……。
素直にそう言った俺に、母さんは気にするなと言うように明るく返事をしてくれた。
それにホッとして、でも手が必要になったら呼ぶように言う事は忘れない。
「そうね、その時はお願いするわね。それじゃ、ツっくん達に飲み物持って行ってくれるかしら?」
「うん」
俺の言葉に母さんが頷いて、コップと冷蔵からお茶の入ったペットボトル出してきてそれをお盆に乗せてから俺に渡してくる。
それを素直に受け取って、久し振りに上がる事になった階段の事を考えてそっと息を吐き出した。
「階段、気を付けてね」
「うん、大丈夫」
お盆を持ってキッチンを出て行こうとした俺に、心配そうな母さんの声が聞えてきて振り返り返事を返す。
そしてキッチンを出て直ぐ目の前にある階段を見上げて、気合を入れた。
足が不自由だから、階段を上るのは俺にはかなり大変な作業になるのだ。
別段膝が曲がらないとかそう言う訳じゃないんだけど、片足に体重を掛け難い身としては、階段を上るのは本当に大変な事なのだ。
学校の階段を上るのも、一段一段でなければ上がる事は出来ない。
だから、移動教室の時は確実に遅刻してしまう。
まぁ、その辺は大目に見て貰っているんだけど……。
若干右足を引き摺るように、一歩一歩階段を上っていく。
そう言えば、良く階段を上る俺に見かねたツナが抱え上げて運んでくれる事があるんだよね。
うん、なんでか、お姫様抱っこで……xx
それを学校でやられるのは、本気で恥ずかしいのでやめて欲しいんだけど、ツナは何でか嬉しそうに見えるのだ。
俺なんて抱き上げて運ぶのは大変だと思うんだけど、何で嬉しそうなんだろう??
「!そこで止まって!」
考えながら階段を上っていた俺は、突然部屋から顔を出したツナに言われて、ピタリとその歩みを止めた。
これはきっと条件反射だ。
良く、階段を上っている時に、同じ言葉を聞いている。
昔、無視した事があったんだけど、その時すっごく怒られた記憶があるのだ。
しかも、その後一人で階段を上る事を許してもらえなかったと言う記憶がある。
だからこそ、ツナの言葉には逆らわないように、体が勝手に動いてしまうのだ。
だって、本当に恥ずかしいんだよ。
階段を上る時、絶対お姫様抱っこで運ばれるのだから、出来れば遠慮したいと思うのは仕方ないだろう。
「ツナ?」
突然部屋から出て来たツナに、不思議に思って思わずその名前を呼ぶ。
どうして、俺が階段上っている事に気が付いたんだろう。
足音は、そんなにさせてなかったと思うんだけど……
だって、出来るだけツナに気付かれないように、これでも頑張って音を立てないようにしていたんだよ、俺なりに!
「飲み物は先に貰うね。あっ!はそこから動いちゃダメだよ!」
疑問に思って首を傾げている俺に、ツナはさっさと持っていたお盆を取り上げて、さらにしっかりと動くなと言う釘を刺して部屋に戻っていってしまった。
ツナにそう言われてしまうと俺には逆らう事が出来ないので、素直にその場でツナが戻ってくるのを待つ。
きっと俺が階段を上っていると気付いて、慌てて出て来たのだろう。
それは分かるんだけど、何で俺が階段に居るって分かったんだろう?
う〜ん、俺ってそんなに存在感あるんだろうか?
ツナにバレないように頑張って、気配とか消す練習しよう!じゃないと、一人で階段も上る事が出来なくなりそうだ。
別に階段を上れない訳じゃないのに、本当にツナは過保護過ぎると思う。
「お待たせ」
直ぐに戻って来たツナは、予想通り俺の前に来ると何時ものように、俺の事を軽々と持ち上げてしまった。
今日はお姫様抱っこじゃなくって、片手で抱えるように抱き上げられる状態。
うーん、最近軽々と片手で持ち上げられてるんですが、コレは俺が軽いのか、それともツナに力が付いたのかどっちなんだろう……出来れば、後者である事を願いたいんですが……
「はい」
「有難う……でも、階段ぐらい上れるのに……」
後数段と残っていた階段を軽々と上り切って、ツナはそこで俺を降ろしてくれる。
それに素直にお礼を言って、ちょっとだけ文句を言うのは男としてのプライドがあるから
「オレが居る時は、は階段上るの禁止って言ってるでしょ!落ちたりしたらどうするの?」
いや、そんなに簡単に落ちないから!って、突込みを入れたいんだけど、真剣に言っているツナにそんな事返せるはずもなく、俺はその言葉を飲み込んだ。
だって、反発したら、また長い説教が待っていると分かっているから……。
「随分甘やかしてるじゃねーか?」
返答に困っていた俺の耳に、多分俺達の遣り取りを見ていたのだろうリボーンが部屋のドアから顔を覗かして、呆れたように声を掛けてくる。
うん、俺もその意見には賛成です。
本気で、甘やかされ過ぎです、俺ってば!
「甘やかす?そんな事、事情も知らない赤ん坊に言われたくないんだけど」
いや、事情知りまくりの俺でも、甘やかされてると思うんですが……
だって、俺は歩けない訳じゃないんですけど!
「事情?事情なら、知ってるぞ。弟の方は事故で足を悪くしてるんだったな。だが、十分歩けてるんじゃねーか」
ツナの言葉に、リボーンはサラリと問題発言。
って、本気でその事情を誰から聞いたんですか!
……そして、何処まで知ってるんだろう、俺の足の事を……
知られても、別にいいんだけど、同情されるのだけは嫌だ。
「知ってる?それだけで知ってるなんて、言わないでくれる。どうせ渡された資料でしか知らない事情なんて、たかが知れてるよ」
リボーンの言葉に、ツナが冷たい視線を向けてこれまた喧嘩腰の口調。
あれ?でも、ツナの言葉に渡された資料ってあったんだけど、何でそんなモノがあるんだろう?
俺なんかの資料作っても、意味ないと思うんですけど……。
「やっぱり、お前は知っているみてーだな。なら、話は早い。お前の好きなヤツを愛人に出来るんだぞ。どうだ、ボスにならねーか?」
う〜ん、意味がさっぱり分からないと言うように首を傾げている俺を無視して、リボーンが感心したようにツナに質問する。
って、何?
好きなヤツを愛人にって……いや、子供の言う言葉じゃないから、それ!
サラリと提供された言葉に、俺は思わず驚いてリボーンを見詰めてしまった。
だって、愛人なんて、普通なら薦めないよね、中学生相手に、しかも子供が!!
「そんな言葉に乗るとでも思ってるの?」
「思ってるぞ。マフィアのボスになれば、そいつをずっと自分だけのモノに出来るんだからな」
って、何かチラッて俺の方をリボーンが見たのは気の所為だろうか?
それから、ツナも俺の方を見る。
えっと、状況が本気で分からないんだけど……
なんで、そこで二人して俺の事を見てるの?
愛人って、やっぱりあの愛人だよね?
そんでもって、好きな人をずっと自分のモノに出来るって事は、やっぱりツナには好きな人が居るって事なんだ……
誰だろう?えっと、確かツナのクラスには学園のアイドルって言われてる子が居たよね。
可愛くって、無邪気な笑顔がかなり人気な女の子……やっぱり、ツナもその子の事が好きなのだろうか??
「愛人じゃなくて、本妻に欲しいんだけどね」
ツナの好きな人の事を考えていた俺の耳に、ツナが小さくため息を付く声が聞こえてくる。
えっ、本妻?!
いや、愛人よりは、いいと思うんだけど……一体、誰の事なんだろう??
「勿論、それも可能だぞ」
ツナのその呟きに、ニヤリとリボーンが笑った。
えっと、本気で俺は、置いてきぼりなんですけど……。
リボーンは、ツナの好きな人を知っているんだろうか?
もし知っているのなら、ちょっと教えてもらいたいんですけど!本気で!!
何か良く分からないんだけど、真剣に考えているツナと楽しそうに笑っているリボーンを前に、俺はただ疑問に思う事しか出来なかった。
ツナなら、確かにマフィアのボスにもなれるかもしれない。
俺と違って、強いし頭もいいから
だけど、昔約束してくれたのに……。
お医者さんになって、俺の足を治してくれるって……
もう、その約束も忘れてしまったんだろうか?
そう言ってくれたツナが、俺にとっては誰よりも頼りになる相手になったのに……。
「折角のお誘いだけど、オレは医者になっての足を治す事が目標だからね。悪いけどそれ以外の事に興味はないよ」
真剣に考えて、そしてツナが出した答え。
その答えを聞いた瞬間、俺はそっと息を吐き出した。
自分との約束。
それを忘れないでいてくれた事が、嬉しい。
俺の足なんて、治る可能性は皆無と言ってもいいけど、真剣に俺に言ってくれたツナに、もしかしたらと言うそんな可能性を見つけてしまった。
だって、ツナは言った事は絶対に護ってくれるから、それがどんな約束でも……。
「別に医者になっても問題はねーぞ。むしろ、そう言う知識を持っているヤツがボスになる事に反対はしねーかんな」
「……今直ぐって訳じゃないんだ」
ツナの答えに、満足そうにリボーンが笑う。
そして、言われた言葉に、ツナがその言葉の意味を読み取って小さく息を吐き出した。
「言ったはずだぞ、オレはお前達の家庭教師だってな」
ツナの呟きに、ニヤリとリボーンが笑う。
って、それじゃ何で俺を連れて行くとかそんな物騒なこと言ってたの!
「本当に喰えない赤ん坊だね」
全て計算されているそれに、ツナが盛大なため息をつく。
「まだまだお前等には教える事が一杯だかんな。んじゃ、改めて、俺がここに来た経緯を説明してやるぞ」
諦めたようなツナのそのため息に、リボーンが満足気に頷いて、ツナの部屋に移動する事を促される。
確かに、階段の近くで話をするような事じゃないから、俺とツナは一瞬顔を見合わせてから頷き合った。
「オレはボンゴレファミリーのボス・ボンゴレ9世の依頼で、お前達をマフィアのボスに教育するために日本へきた」
部屋に入って、リボーンは当然のようにツナの椅子に座ってそう言った。
ある男って、俺達の父さんの事だと思ってたんだけど、違うみたいだ。
俺とツナはベッドに腰掛けて、リボーンの話を聞く。
「ボンゴレ9世は高齢ということもあり、ボスの座を10代目に引きわたすつもりだったんだ」
淡々と話すリボーンの言葉を聞きながら、チラリと隣に座るツナの様子を伺う。
こんな話、正直言って信じられない。
いや、散々同じような内容の事は聞かされてきたけど、普通ならこんな突拍子のない話を聞き入れられるものじゃない。
あのチラシが気になった理由は、分かった。
だけど、マフィアのボスなんて俺達みたいな普通の中学生には遠い話だ。
それこそ、小説や映画のような世界でしかない。
「大丈夫だよ、」
そっとツナを見た俺の視線に気付いたのか、ツナがニッコリと優しい笑顔を見せて、そっと手を握ってくれる。
暖かなその手の温度を感じた瞬間、不安に思っていた心がスッと軽くなった。
10代目の候補に上がっていた人達が皆殺されてしまったと言う事までも、淡々と話すリボーンに、俺の眉間に皺が寄ってしまう。
どうして、人が死んだ事をそんなに簡単に口に出せるのだろう。
それが、マフィアだと言うのなら、俺はそんな所と係わり合いになりたくない。
そう思った俺の心を読んだように、ギュッとツナが握っている手に力を込める。
まるで、大丈夫だと言われたようで、俺はそっと息を吐き出した。
「ボンゴレファミリーの初代ボスは、早々に引退し日本に渡ったんだ。それが、お前等のひいひいひいじいさんだ。つまりお前等にはボンゴレファミリーの血を受け継ぐれっきとしたボス候補なんだ」
そして、漸くリボーンがここに来た理由が話される。
俺達のご先祖様が、初代ボンゴレのボス?
いや、そんな話初耳なんですけど!
「そんな話聞いたことないんだけど……」
「当たり前だ。お前等には何も伝えられてねーんだからな。でも、お前は知っていたんだろう、綱吉」
伝えられた信じられない内容に、俺が呟いたそれにリボーンがツナを見る。
「ツナ?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
だって、ツナは俺達の先祖がマフィアのボスだったて事を知っていたなんて……。
「知ってたよ。でも、には知って欲しくなかった……」
「ツナ!」
ジッと俺が見詰める先で、諦めたようにため息をつくツナに咎めるようにその名前を呼ぶ。
知っていたのなら、教えて欲しかった。
だって、俺にも関係している事なのだから
「だって、そんな何代も前の話なんだから、オレ達には関係ないでしょ……そのまま、関係なく終わって欲しかったんだけどね」
咎めるように名前を呼んだ俺に、ツナが少しだけ困ったような表情で口を開く。
そんな表情を見ていたくなくって、俺はギュッとツナに抱き付いた。
「大丈夫、オレ達は10代目になんかならないよ。だって、にはそんな世界一番似合わないからね」
「心配すんな、オレが立派なマフィアのボスにしてやる」
えっと、なんて言うのか、二人の言葉が聞えてきて、俺が不安を覚えたのは言うまでもない。
だって、ツナは俺にはって言った。
ツナだってそんな世界似合わないのに、俺だけをそんな世界に入れないって事だ。
そして、何よりも不安なのは、リボーンは絶対に諦めないだろう。
俺かツナのどっちかをボスにする為に……。
それが仕事だと、言い切っていたのだから……。